POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - 28 -


ハコニワノベル

「くっそー、負けたぁ!」
「ノロマに追いつけない気分はどう? コメタ」
「だぁー、解ったよ! もうノロマなんて呼ばないって」
「これでやっとノロマから解放された。なんとかフィオーレに帰る前に間に合ったよ」
「ちぇ、これでもうミツルに何も勝てなくなっちまった」
「ま、年齢差もあるしね。コメタが僕ぐらいになるころには、また追い抜かれてると思うよ」
「慰められても嬉しかねーよ。あーあ、ついに負けたー、悔しいな。チキュー最速を破ったんだから、向こうで誰にも負けるなよな」
「ははは、頑張るよ」

 毎日のトレーニングのおかげなのか、やっとチキューの重力に自分の身体が対応したのか解らないけれど、僕は集落の誰よりも早く走れるようになった。
 ファルファッラがフィオーレだと気付いてから一年後、ロケットは完成した。今は打ち上げに向けて組み上げ作業が進んでいる。出来上がったロケットはビランチャさんに「もっと発光ダイオード付けて、ロックにしろ」とか言われるがまま、かなりの電飾で彩られていて無駄にピカピカと光る仕様になってしまった。ピカピカ光る衛星アンテナを、羽のように取り付けた奇抜なロケット。名前はFARFALLAと名付けた。

「ついに明日だね」
「うん」
「なんかあっという間だったなぁ」
「そうだね、集落のみんなが手伝ってくれるようになってから、かなり作業が進んだからね」
「……ちゃんと飛ぶといいね」
「飛ぶさ。チキューのロケット技術はすごいし、みんな協力してくれたんだしね」
「そうだね、私も祈ってる」
「ありがとう、クローチェ」
「……あのね、ミツル」
「なに?」
「私、ミツルのことが……ううん、なんでもない」
「え?」
「なんでもない。いよいよ明日なんだなぁって思っただけ」

 クローチェは夕日を見つめていた。フユと呼ばれるチキューのモードを二回越えて、もうじきハルと呼ばれるモードになろうとしている。もうフィオーレを飛び出してから二年が過ぎていた。やっと帰れるのかという思いと、もっとチキューにいたいような感情がせめぎ合って、なんとも言えない気分だ。

「私、ミツルがちゃんと飛び立てるように、はちまきして応援するね」
「はちまき?」
「昔の人がしてた頭に巻く布のこと。古い資料の中でシンセングミって呼ばれてる人達もしてたんだよ。決意とか決断とか、気合いを込めたりしていたらしいの。だから私もはちまきして、ミツルを応援する」
「嬉しいけど、僕がすることなんてロケットに乗るだけで、後はロケットが頑張ってくれるだけなんだけどね」
「応援したら嫌?」
「いや、そんなことはないけど……」
「なんならラッパも吹こうか?」

 二人で笑った。ひとしきり笑いあった後、目立った会話はしなかったけれど、いつもよりみちくさをしてゆっくり、ゆっくりと家に帰った。
 明日、僕はフィオーレへ帰る。FARFALLAに乗って。




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