POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - 27 -


ハコニワノベル

「ビランチャさん! 起きて下さい!」
「ちょっとミツル、もう夜遅いから、明日出直しましょう」
「あぁん? お前さんこんな夜更けになんの用だよぉ」
「ちょっと教えて欲しいんです」
「ロケットのことなら、また明日なぁ」
「ね、明日でいいじゃない。帰りましょう、ミツル」
「ビランチャさん、ロケットじゃなくて、ファルファッラのことなんです」
「あーん?」

 不機嫌そうに身体を起こすビランチャさんに、チキューでファルファッラと呼ばれている星がフィオーレだと言うことを話した。ビランチャさんは古びたカップにコーヒーを注いで飲み、僕の話を聞き終わると口を開いた。

「ワシもあれは星ではないと考えてる。つまりお前さんがやって来たフィオーレっちゅうのは、星というより巨大な衛星だな?」
「そうですね。フィオーレの裏側は太陽電池パネルで覆われていて、常にそのパネル側を太陽に向けてエネルギーを得ているんです。前に一度だけフィオーレからチキューが見えた時、かなり急速に角度を変えていたんです。それからチキューとフィオーレの間には穴の開いた白い星、多分ルーナという星があったので、その位置関係を考えるとあの無限のような形も納得できます」
「つまり、チキューの影とルーナの影によって、お前さんの星であるフィオーレの形があの形に見えとるわけか」
「はい」
「なるほどなぁ。まぁ、お前さんが燃料なしのロケットでチキューに辿り着いてるからよぉ、フィオーレっちゅーのはチキューの重力が影響する範囲にあると思ってたんだよぉ。それでもルーナしかないと考えてたけどよぉ。でも今の話で行くと、フィオーレっちゅー所は人の目で目視出来る距離にチキューもルーナもあるってことだから、納得出来る話しだわなぁ」

 ビランチャさんは古びたカップをテーブルに置くと、懐かしむように話を始めた。

「人類はなぁ、星を二つ滅ぼした。一つは青い星、もう一つは黄色い星。これはチキューとルーナのことなんだよぉ。最初の最初はな、人類はみんなこのチキューで暮らしてた。他の動物よりも高度な文明をもってたから天敵なんていなかくてよぉ。だけどな、文明を発展させることに注力し過ぎて、気が付いたらチキューの環境破壊が止められない段階になった。必死にチキューを元に戻そうとする奴らもいたが、一部の奴らはチキューを捨てて別の星に移住しようと考えた。それでその一部の奴らは一番近いルーナへ移住したんだよぉ。それで終わればいいんだけどよぉ、人類ってのは欲深くて浅はかな生き物でなぁ、チキューで暮らしてる奴らとルーナで暮らしている奴らで妙な対抗意識を持ちだすんだわ。それが次第に戦争に変わってしまう。でもなぁ、ルーナはチキューの四分の一しかないからよぉ、強力な兵器で攻撃されたら勝ち目が無い。だからルーナの奴らは、その戦争に勝つ為だけに、植物を死滅させる菌だとか、オゾン層を破壊するミサイルだとかいろいろ言われてて正確には何かは解らんが、とにかくチキューの環境破壊を加速させる兵器をチキューに対して使ったのよぉ。それまで武力行使が行われなかった戦争で、それが最初に使われてなぁ」
「酷い。同じ人類なのに……」
「それに怒ったチキューのやつらは、何も考えずに巨大なロケットをルーナにぶつけたのよ。古い物語の中で出てきた星を貫く槍をモチーフにしたそのロケットは、グングニルと呼ばれてなぁ、その一撃でルーナには穴が開いた。でも、砕けたルーナが星屑になってチキューに沢山降り注いでしまってな、それが原因でチキューも滅びた。……という話を昔ワシのじいさんから聞いたことがある」
「僕が教えられた歴史と随分違いますね。青い星……つまりチキューの環境破壊による温暖化でチキュー上の氷が溶けて大地が水没。その後も続く温暖化で大量の水が気化することによる急激な寒冷化で生き物が住めない星になって、人類は滅亡しないために黄色い星へ移住。その黄色い星で、権力争いから戦争に発展して黄色い星も滅んだ。黄色い星のコアを使って新たに人類が生活する環境が作られた、それがフィオーレだと」
「今の話、両方とも変な話じゃない? だって、ビランチャさんの話もミツルの話もチキューは滅んでることになってるけれど、私達はチキューで今もこうして暮らしてるじゃない」
「ヒヒヒ、それはなぁ。チキューは滅ばなかったのよぉ。もちろん沢山死んじまったけど、全員じゃない。生き残ったワシらの先祖が必死に生きてきたおかげでワシらは、今日も生きてる訳だよぉ」
「それと、少なくともルーナに人は移住していたんでしょうね。その生き残りがフィオーレを作った。……あれ? その話はかなり昔の話ですよね? フィオーレを管理している会社の社長が、自分はチキュージンだとか言ってたのはなんでだろう」
「もしかするとだけどよぉ、そいつはフィオーレに後から辿り着いたのかも知れんなぁ。一昔前なら、今よりもロケットを定期的に打ち上げてた時代だしのぉ。それに、ほれ、お前さんがフィオーレに残してきた娘っ子も、チキュージンなんだろぉ? ここ以外にもロケットを作って打ち上げてるロックな奴らがいるってことよぉ」
「そうか、ここ以外にもチキューには沢山の人がいるのか。それにロケットがあればフィオーレに辿り着くのは別に難しい話じゃない。テラだってチキューからやって来たんだし。だから、僕らが知らないぐらいの、数十年前に、あの社長はフィオーレに辿り着いたのかも知れない」
「一昔前はなぁ、ルーナで生き残ってる人を助けよう。人類はもう一度チキューで生きていこう。そんなことを本気で望んで、本気で取り組んでいたんだよぉ。けどな、次第にみんな諦めちまって、今じゃここらでロケットを作ろうとしてるのはワシぐらいになってたんだよぉ。そんな時に、お前さんが落っこちてきやがった。しかも、気が付けば集落の奴らまで巻き込んじまってよぉ、どえらいロックンローラーだよぉ、ヒヒヒ」
「ビランチャさん、チキューとルーナの距離で通信って出来ますか?」
「あん? そりゃアンテナありゃ出来るよぉ」
「じゃぁ、ルーナとフィオーレでも出来ますよね?」
「お前さん、また何かどえらいロックンロールかます気だなぁ? ヒヒヒ」

 ロケットを作る理由。それはもちろん、テラを迎えに行ってチキューへ送ること。それともう一つの理由が僕の中で、この日の夜に出来た。




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