POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - 05 -


ハコニワノベル

 固い。フィオーレ居住区の地面は固い。靴を履いていない右足を、地面にぺたりと付ける度にその固さを実感する。他に言いようのないほど平らな地面に、僕の右足は吸い付くようにくっついて離れることを繰り返している。当ても無く歩いてしばらくしてから、学校をサボっていることに気が付いた。これはトイレ掃除は免れないだろうな。
 そのまま歩いていると、いつの間にか倉庫エリアに来ていた。ふと、カプリコルさんの言葉が頭に過ぎる。

「朝は外に出ちゃならねぇ、危ねぇからな」

 カプリコルさんがわざわざ嘘を付くはずはない。ないのだけれど、してはいけないと言われるとしてみたくなる衝動に駆られる。いや、ダメだ。だけど…と何度も自分の中で葛藤を繰り返しているうちに、長い尻尾の黒猫が描かれた自分だけの倉庫に辿り着いてしまった。エアタンクの圧縮酸素の残量が半分以下なら辞めよう。だから圧縮酸素の残量を確認するだけ。そう自分に言い訳をしてから、いつもの窓から中へ入った。
 ストラトキャスター――僕のロケット。少しだけ深い緑色のシートを捲って中を確認する。残りのパーツはアブレータだ。もしかしたらこの時間帯に外に出たら、普段とは違う物が見つかりやすいのかも知れない。シートを元に戻してから、立て付けの悪いロッカーへ移動して、その横に置いてあるエアタンクの残量を確認した。――満タンだ。昨日外から戻って来たときに、カプリコルさんが圧縮酸素を補給してくれたんだったっけ。

「これは、行くしかないよな」

 急に神妙な顔をして、そんなことを呟いた自分が可笑しくなって笑った。笑い声が倉庫の中に響く。一頻り笑ってからスペースジャケットに袖を通し、満タンにまで補給されたエアタンクを背負った。分厚い扉を三度越えた先にある部屋へと進み、キーロックを慎重に解除する。

 ――ガタン、シュウィン! ウィン! ウィン!

 目の前数千、数万、いや数億の星が輝いている。それはいつも外に出ているときと同じ光景だった。だけど、普段目にしている外の様子とはまるで違っている。――フィオーレ自体が大きく動いているからだ。何度も旋回し角度を変えるので、フィオーレの外に放置されているロケットの残骸や、開拓地に残されていた作業マシンなどがゴロゴロと転がっている。きっとこれが、カプリコルさんが言っていた「危ない」という意味だろう。
 どこからかアブレータが転がり出てこないかと、あちこちに目配せしていると目の前が急に明るくなった。その光の方へ視線を向ける。かなり遠くにあるはずなのに、その光はスペースジャケットを着ていても暖かいと感じた。カプリコルさんの話に聞いていた太陽かもしれない。
 その光る赤い星をしばらく眺めていた。すると、フィオーレの角度が赤い星目掛けて変わろうとしていく。その瞬間、目の前に丸く穴の空いた白い星が現れた。更にその空いた丸い穴の中に、今まで見たこともない青い星が見えた。フィオーレは瞬く間に角度を変えると、今までの動きが嘘だったかのように静まり返った。それと同時に、さっき一瞬だけ見えた白い星とその先の青い星は見えなくなっていた。
 もし、さっきの光る赤い星が太陽ならば、リベルラの言っていることの意味が益々怪しくなる。確かに物凄いエネルギーではあるけれど、スペースジャケットのゴーグル越しに直視しても問題なさそうだし、言うほどの危険はなさそうだ。太陽電池パネルで覆われているフィオーレの裏側を、常に太陽の方向へ向けているのは本当だとは思う。でもさっき見えたのは何だったんだろうか。太陽というよりは、あの白い星と青い星に裏側を向けているように感じた。
 今まで外に出ていたときは、外と中とを繋ぐ出入り口付近から遠く離れたことはなかった。けれど今は違う。さっき見えた白い星、それから青い星をもう一度見てみたい。そんな衝動に駆られた。そもそも朝に外へ出ることを随分葛藤しながら迷ったのに、今は葛藤すらせぬまま駆け出していた。フィオーレの端まで行けば、裏側に隠されているモノが全て見えるかもしれない。まだ誰も知らない本当のことを知れるかもしれない。そう思うと自然と踏み込む足に力が入った。スペースジャケットの中から踏みつける外の感触は、あまり良く分らないけれど、少なくとも中の平らとしか言いようの無い地面よりは、確実に踏み応えがある。不安定な浮遊を何度も繰り返しながら、未だかつて行ったことのないフィオーレの端を目指す。
 どれぐらい進んだのか正確には分らないけれど、およそ出入り口とフィオーレの端との中間まで進んで来た。圧縮酸素の残量を確認するとまだ三分の二ほど残っている。戻ってくる分を考えると、半分無くなった時点で引き返さなければならない。足りるだろうか。少し不安になって、それまでよりも強く地面を蹴って行く。フィオーレの端とエアタンクとを交互に見ながら進んでいく。まだ先へ、もっと先、あの先端部分まで。
 しかし、そこからしばらく進んだ先でエアタンクが圧縮酸素の残量が半分になったことを知らせた。端までまだ距離がある。ここで無理に進んで本当のことを知ったとしても、無事に戻れないならば誰にそれを話せるだろうか。それまでの衝動に駆られていた自分とは別人のように、冷静に現状を判断して、今まで真っ直ぐに進んで来た道を戻ろうと振り返えろうとした、その瞬間。青白く輝くものが視界の中に飛び込んできた。まるでそれはこちらに近付いて来ているように見える。

「流れ星か…」

 その流れ星は視界の中でフィオーレに衝突した。突然の衝撃にバランスを崩しながらも、その衝突箇所へと走った。エアタンクは圧縮酸素の残量が三分の一になったことを告げている。だけどそんなことよりも、僕の目の前で起こっていることの方が重大だ。今目の前でフィオーレに衝突したのは流れ星じゃない。もちろん役目を終えた衛星でもない。これは紛れもなくロケットだ。それもただのロケットじゃない。だってカプセル状のそのロケットの中に女の子が乗っているのだから。




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COMMENT

女の子!?
その子との恋愛が始まろうとしてるんですね(違

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