POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - 04 -


ハコニワノベル

 朝。居住区の照明が明るくなる時間。残していたプチトマトはこっそりダストボックスへ放り込んでから、昨日の晩御飯のトレイを送信ボックスへ入れる。
 今日も学校へ行き授業を受けて、カンクロとペーシにいじめられながら放課後になったら外へ出る。そんないつもと変わらない一日になる。そう思うと妙にやる気が出なくなった。このまま朝から外へ出たらどうなるだろう。そう思ったけれど実行に移せない理由が一つある。それはカプリコルさんに「朝は外に出ちゃならねぇ、危ねぇからな」と言われていて、今まで一度も朝の間に外へ出たことがないからだ。何がどうして危ないのかは解らないけれど、カプリコルさんがわざわざ嘘を付くわけもない。本当に危険なのだろう。それに学校を勝手に休むと強制的に学内でのボランティア活動をさせられてしまう。今時オートクリーン機能をあえて取り付けていないトイレを、洗いたくもないのに洗わされるのは苦痛だ。
 朝食は食べる気にならなかったので、そそくさと着替えを済ませて家を出た。今日もいつもと変わらない一日になると思っていた。未だに慣れることのないエレベーションから開放されるまでは。

「やぁ、ミツル君。おはよう」

 ペーシだ。朝から気色の悪い笑顔で挨拶をしてきた。軽く辺りを見回してみるけれどカンクロの姿は見えない。

「おい、ミツル! このペーシ様が挨拶してやってんだ、挨拶ぐらいしたらどうなんだよ!」
「ペーシ…さま、ねぇ? まぁいいや、おはよう」
「何か言ったように聞こえたけど、それはまぁいいや。一緒に学校まで行こうぜ」

 カンクロがいない時、ペーシはなぜか偉そうになる。そしてペーシが気色悪い笑顔をする時は、大概よからぬことを考えている時だ。

「なぁ、ミツル。お前、俺の子分になれよ」
「嫌だ」
「なんだと! ? お前、せっかくこのペーシ様が誘ってやってるのに、なんで断るんだよ!」
「嫌なものは嫌だ」
「ふーん、お前いいのか? この誘いを断ったこと、カンクロさんに言いつけてやるぞ?」
「あのさ、そうやってカンクロの名前使うなよ。それ、別にお前が偉いわけじゃないだろ?」
「はぁ? 別にカンクロなんて関係ない! 俺がこの辺りで一番偉いんだ! カンクロなんてただ力が強いだけ。実は裏でカンクロに命令してるのは俺なんだぞ」

 ペーシの訳の分らない熱弁を聞き流しながら学校へ向かう。早足で歩いても、少し走っても、それでもペーシは着いてくる。学校まであと少しという所でペーシが急に僕のシャツを引っ張った。

「何?」
「さっきまでの話、全部忘れろ。いいな」
「何が?」
「とにかく、忘れろよ! ちくしょう、今日は休むって言ってたくせに…」
「はぁ?」

 視線を前に戻してその意味を理解した。威風堂々と仁王立ちをして行く手を阻む人影。その姿には同い年とは思えない貫禄さえ感じる。――カンクロだ。

「やぁ、諸君。おはよう」
「おはようございます、カンクロさん」
「…」
「ミツル君、君は挨拶ってものを知らないのか?」
「そうなんですよ、こいつさっきも私に挨拶しませんでした」
「ふーん。でもなんでペーシがミツルと一緒に学校に行くんだ?」
「いや、それは、その……」
「ペーシが僕を……」

 言いかけるとペーシが僕の口を押さえた。

「なんだって?」
「いや、なんでもないですよ、カンクロさん」
「怪しい。怪しいなぁ、二人とも」
「そ、そそ、そんなこと、ないですよ…な? ミツル君」

 こちらを見やるペーシの顔が物凄く必死に何かを訴えかけてきている。これ以上の面倒に巻き込まれたくなかったので、一度ため息をこぼしてから答えた。

「偶然途中でペーシに会ったんだよ」
「そ、そう!そうなんですよ、カンクロさん」
「本当かぁ? なんかうそ臭いぞ」
「それはそうとカンクロさん、今日学校は休むんじゃ…?」
「そのつもりだったけどな、俺がいないとお前ら寂しいだろ?」
「トイレ掃除が怖いんだろ」
「んー? おいペーシ、今ミツル何か言ったよな?」
「言いました! 絶対言いました!」
「よーし、俺に対する口の聞き方ってやつを教えてやる。ペーシ! ミツルを捕まえとけ!」

 歯をギチギチと食いしばりながら、怒りと笑顔の中間という気味の悪い表情でカンクロが近付いてくる。後ろからペーシが羽交い絞めにしてきた。

「ペーシ、今離さなかったら、さっき言ってたことをカンクロに言うぞ」
「そ、そんなこと出来るかよ」
「ふーん、じゃぁ言ってもいいんだな? おい、カンクロ。さっきペーシが…」
「わ! わ! わ!」

 いきなり羽交い絞めを解かれてバランスを崩した。もう目の前にはカンクロが迫っている。慌ててるペーシをカンクロの方へ押しやって、今来た道を戻るように駆け出した。

「待ぁてっ!」
「カ、カンクロさん! ミツルのやつ、さっきカンクロさんは力が強いだけの単細胞! って言ってました!」
「ミーツールー! !」

 ペーシの余計な一言で更に真っ赤になりながらカンクロが追いかけてくる。角を曲がってとにかく走る。後ろから物凄い足音と怒声が聞こえる。気になって少しだけ振り向くと、驚くほど近くまでカンクロが迫ってきていた。慌てて前に向き直る。息を吸い込んでから歯を食いしばる。呼吸を止めて腕を振った。次の路地を左に、それから階段、公園を抜けて、それからそれから、――あの細い通路を通ろう!あそこならカンクロはなかなか進めない。逃走ルートが決まった。路地を左に駆け抜ける。階段を駆け上って息を吐き出した。後ろからカンクロの「待ちやがれ!」の声に振り向きもせず、また息を吸って呼吸を止める。とにかく逃げるしかない。公園を真横に突っ切ってビルの裏側にあるビルとビルの間に出来たほんの数十センチ幅の通路へ駆け込む。身体を横にして息を吐き出しながら後ろを振り返ると、入って来たのはいいものの、お腹がつっかえるのか思うように進めなくなったカンクロが見えた。

「くそ、待て! 待てよ! ミツル!」

 言葉だけは偉そうだけど、その姿はどうにも笑えてしまう。思わず噴出しそうになった。――ガシャン。身体が何かにぶつかった。「え?」驚いて前を見るとそこにはフェンス。この前ここを通った時は開いていたはずのフェンスが目の前に閉じられている。ゆっくりと後ろを振り返ると、つっかえながらも徐々に近付いてくるカンクロが見える。何度かフェンスを揺らしてみるけれど開く素振りは感じられない。後ろから笑い声。

「ははは! 上手く逃げたと思ったか? 待ってろよ、もうすぐ追いつくからなっ!」

 走ってきたから汗が出てきているのか、これから起こることを想像して出てきている冷や汗なのか分らないほどに汗が噴出している。後ろからはズリズリと音を立てながらカンクロが近付いて来ている。「もうダメだ」そう思って視線を上へ投げかけた、その、ほんの数メートルほど先に、フェンスの切れ目。もう一度視線を戻すと既に目の前にカンクロがやって来ていた。

「捕まえたぞ! ミツル!」

 カンクロの腕が伸びてくる。行けるかどうか分らない。だけどここでやらなきゃカンクロに何をされるか分らない。カンクロに背を向けてフェンスに飛びついた。

「あ、この野郎! 待ちやがれ!」

 指にフェンスがめり込んで痛い。痛いけれどそんなことに構っている時間はない。つま先をっフェンスの隙間へめり込ませながら上へ、上へ。――突然、右足を引っ張られた。完全に追いついてきたカンクロが僕の足を捕らえている。

「逃がすかよ!」

 乱暴に引っ張られれば引っ張られるほど、手にフェンスがグイグイとめり込んでいく。それでも逃げたい一心で足をバタつかせせると、突然の浮遊感。いや、カンクロが僕の靴と一緒に尻餅を付いた。今度は右足にもフェンスがめり込んでくる。それでも上へ。やっとの思いで左手がフェンスの一番上を捉えた。一気に身体を引き寄せて靴の無い右足を反対側へ回す。そこでようやく下を見下ろすと、カンクロがフェンスへ体当たりをしようとしている瞬間だった。――ガッシャーン。フェンスが大きく揺れる。その振動でフェンスの向こう側へ落ちた。

「くそ、痛ぇ! そこで待っとけよ、ミツル!」

 偉そうな物言いのままカンクロはフェンスを登ろうとしているものの、その体重が仇になっているのか、二、三度登ろうとしては手に息を吹きかけている。その手は既に真っ赤になっていた。カンクロも少し涙目になっている。僕はそのまま何も言わず、右足は靴下のままその場を去った。

「ちくしょう! ミツル! お前、絶対に許さないからな!」

 何度もフェンスを揺らす音と一緒に、カンクロの声がビルの合間から響いていた。




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COMMENT

外出ちゃいましたね。
楽しみです!!
  • 2008.09.16[火]

ぅわぁ~
ドキドキすりゅっ(><)

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