POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - 01 -


ハコニワノベル

 僕たち人類は、星を二つ滅ぼした。

 一つ目は青い星。

 二つ目は黄色い星。

 三つ目はこの星になるのだろうか。



 退屈な授業がやっと終わり、僕は一目散に教室から抜け出した。廊下へ飛び出した瞬間に身体が少しだけ浮かぶ。これは乗った人を自動的に運んでくれるエレベーションと呼ばれるもので、沢山の人が使う建物内では設置が義務付けられている装置だ。だけどエレベーションは急いでいるときには煩わしいものに他ならない。ゆっくり歩くよりも少し早いぐらいの速度で勝手に進んでいく。別に早くなるわけでもないのに空中で足踏みをしてしまう。廊下を進んで階段を下りて、また廊下を進んでいく。途中で他の人を入れるために何度か止まる事だってある。やきもきしながらやっとの思いで校門に到着すると僕の両足は久しぶりに地面を踏みしめた。

「おやおや? なんだかゴミ臭くないか?」
「ほんとですねぇ…、あぁ解りましたよ、カンクロさん。ほら、あそこにミツルがいます」
「んー? あぁ、ほんとだ。どおりでゴミ臭いわけだな、ペーシ」
「ほんとほんと、臭い臭い」
「おいミツル。お前またゴミあさりに行くのか?だったらこれやるよ、受け取れ…よっと!」

 何かが飛んで来て、僕の顔面にぶつかった。驚いて尻餅を付く。どうやら太っちょのカンクロが振りかぶってペットボトルを投げ付けてきたみたいだ。

「おいおーい、大切なゴミだろ? ちゃんと受け止めろよ」
「いやいや、カンクロさん。ちゃんと顔面で受け止めたんですよ」
「そうか、そうかもな。はっはっは!」

 この二人は学校内でも有名ないじめっ子で、カンクロは力も強くボスを気取ってる。一方のペーシはチビで力もないくせに、カンクロの背中に隠れながら弱いものいじめをするやつだ。僕は転がったペットボトルを拾い上げてから走り出す。

「大事そうに持って行きますよ、カンクロさん」
「おい、ミツル! 大切にするんだぜ!」
「ははははは…」

 二人のバカにした笑い声を背中に聞きながら走る。角を曲がって階段を駆け上り、橋を渡った先にあるゴミ箱にペットボトルを投げ込んだ。

「僕はゴミあさりなんかしてない!」

 誰もいない場所で反論しても無意味だ。叫んだあとで空しくなる。一度深呼吸をしてからまた走り出す。僕はこんなことで落ち込んでいる場合じゃない。僕の未来、いや人類の未来は僕にかかっているかもしれないのだから。
 僕たちが生活をしているこの巨大人工衛星フィオーレには四千万人ほどの人が暮らしている。そしてその数は人類の総数でもある。人類の歴史の中で一番繁栄していた時代には七十、八十億という人がいたという記録がある。その頃の人類は青い星い住んでいたのだけれど、環境破壊による温暖化で星中の氷が溶け、人々が暮らしていたほとんどの大地が水没し、更に続く温暖化の影響で星全体で水の気化による急激な寒冷化で、人類はおろか他の生物もそのほとんどが生きていけない星になった。人は最悪の事態を免れるために黄色い星への移住を進めていくことになるけれど、移住できたのはほんの数億人だけだった。やっとの思いで黄色い星へ移り住んだ人類が平穏に暮らした時期は短い。
 新たにスタートした人類の生活の中で、我先にと権力を欲する者たちが現れる。やがてそれは争いになり、争いは次第に他者を巻き込む戦争へと姿を変えていく。激化する戦争の影響で黄色い星は簡単に崩れ始めていて、人類がそれに気が付いた頃には、既に黄色い星の崩壊は誰にも止められないものになっていた。崩れた黄色い星のコアを使って、新たに人類が生活する環境を構築するハコブネプロジェクト、通称ノア計画が急ピッチで進められ、なんとか逃げ延びたのが僕たちの何世代か前の人たちになる。とにかく人類はそうやって簡単に星を滅ぼしてきた。
 このフィオーレを統括し管理しているのはリベルラ社という一企業だ。ノア計画の中心出資企業でもあったらしい。リベルラ社はフィオーレにおける人の生活を、争いが起きないことを最優先にしている。だからフィオーレには人類が長く使ってきたお金という概念がまったくない。過去の人類の過ちはお金による優劣から発生する小さな争いが、すべての火種になっていることが多いらしい。リベルラ社が管理を行うようになったのはほんの数百年前かららしいけれど、それ以降フィオーレで争いらしい争いが起きた記録はどこにもないところを見ると、リベルラ社の管理が人類にとって間違っているものではないのだと思う。
 沢山の倉庫が立ち並ぶエリアを駆け抜ける。三つ目の倉庫を右に曲がって更に四つ。今度は左に曲がる。そこに積み上げられているコンテナによじ登ると見えてくる僕の秘密の場所。尻尾の長い黒猫のマークが付いているのが目印の、今は誰にも使われていない倉庫だ。コンテナの反対側に下りて一番はじっこの、ところどころがボロボロになったその倉庫へ向かう。いつ割れたのか解らない窓から中へ入ると、居住区では行き届いている空調が、ここらにはないため妙に埃っぽい。鞄を投げるように置いて奥へ向かう。ガタガタと立て付けの悪くなったロッカーから、スペースジャケットを引っ張り出して身に付ける。ロッカーの横に置いたエアタンクの残量を確認してから装着した。更に倉庫の奥にある妙に分厚い扉を三度越えた先にある部屋へと進む。既に身体がふわふわと浮かんでくる。エレベーションのように一定の高さで安定はしないため、歩くのもなかなか難しい。部屋の奥にある扉に取り付けられたキーロックを慎重に解除する。

 ――ガタン、シュウィン! ウィン! ウィン!

 三重に閉じられたその扉が開くと目の前数千、数万、いや数億の星が輝いている。ここはフィオーレの居住スペースの外だ。こうやって勝手に外に出ることは禁止されている。だけど僕には人類の未来を救う使命がある。

「この中の一つぐらい、人類が住める星があるはずなんだ」

 僕は人類の四つ目の星を見つけようと思っている。誰もがもう人類は自ら滅ぶようなことはしないと信じているけれど、きっと人類は同じ過ちを繰り返してしまうはずだ。惑星ヴェーネレ、惑星マルテを人が住める星にしようとテラフォーミングを進めているらしいけれど、仮にそれが成功したとしても、人が住めるようになるまでにはあと数百年ほど時間がかかってしまうらしい。もしかしたら僕が生きているうちにフィオーレが滅びるようなことがあるかもしれない。だから僕は、僕自身の力で四つ目の星を見つけるんだ。
 飛び跳ねるようにしながら、いつもパーツを探しているポイントに移動すると先客がいた。

「カプリコルさん!」
「おー、ミツル!」

 スペースジャケットの通信機能で会話をする。この人は僕に夢の叶え方を教えてくれた人だ。




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COMMENT

始まりましたね。
今度はSFっぽいのかな?
楽しみにしてます♪

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