POSITISM

適度に適当に。

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コネクテッド・シグナル 第十五話


ハコニワノベル

「会って、話がしたい」

 彼がいなくなってから一ヶ月が過ぎようとしていたころ、それまで音信不通だった彼から連絡が入った。彼に指定された公園へ行く。日差しがジリリと暑かった。一ヶ月ぶりに見る彼は酷く痩せていて、とても小さく見えた。彼は軽く手を上げながら話し始める。

「やぁ、久しぶり」

「……」

「単刀直入に言うね、別れよう」

 この一ヶ月、ずっと彼のことを考えていた。彼は癌に侵されている。それは藤山国立病院で結婚する予定だなんだと言って、無理やり聞き出したので確実だ。彼は自分が癌であることを、私には知られていないと思っているだろう。私はずっと考えていた。どうして家から出て行ったのか。そしてある結論に辿り着いた。彼は私に”何も背負わせないようにした”ということ。残り少ない自分の人生を賭けて、私のこれからの人生を辛くないものにしようとしてくれているのだろう。そんなことされても私は何一つ嬉しくなんてない。だから彼を張り倒してやろうとも思っていた。
 ――だけど、彼はきっともうすぐその命を終える。その彼自身の心残りが悲しんでいる私だとしたら、彼は安らかに眠れるだろうか?だから私は決めた。最後の最後まで、彼に騙されている私でいることを。だから涙は絶対に流さない。抱きついて泣きたい気持ちを振り切って、少し怒りながら切り出す。

「ちょっと待ってよ。そもそも何も言わずにどこに行ってるの?」

「ごめん。だけど、僕はもう君とは付き合っていけない」

「そんなの意味が解らないよ」

「ごめん」

「謝らないでよ……私が悪いみたいじゃない」

「……」

 長い沈黙を破るように、電車の音が聴こえた。私達は公園を出て向かい合う。彼は「じゃぁね」と小さく言ってから手紙を差し出した。

「読み終わっても、振り向かないで」

 彼はすれ違うように私の背中方向へ歩いていく。私は涙を堪えるので精一杯だった。それでもゆっくりと、ゆっくりと手紙を開く。



   ◇



 カナエへ
 
 突然君の前から消えて
 突然現れて別れを告げたこと、ごめん。
 
 僕は君を嫌いにはなれなくて
 だけど僕は君に相応しい男でもない。
 
 勝手に決め付けて
 自分の事ばかり考えてしまう
 弱い僕を許してください。
 
 だけど、僕は君の前から消えます。
 自分勝手でわがままで、弱虫の僕なんかより
 君には相応しい人がいるはずです。
 
 だから、僕のことなんて忘れてください。
 
 ありがとうと愛してる。
 それから、さよなら。
 
 タカアキ



   ◇



 私はその手紙をそっと胸に押し当てて、真っ直ぐ前を見つめる。我慢しきれずに一筋の涙が零れ落ちた。今すぐに彼を追いかければ追いつくことが出来る。ここで追いかけなかったら二度と、本当にもう二度と彼に会うことは出来ない。だけど、追いかけてしまったら彼はきっと凄く悲しみを抱えたまま眠りについてしまうのだろう。彼のことが解るから、彼の考えていることが解るからこそ、私は振り向けずにただ涙を流した。


 タタンタタンタタン。トトントトントトン。


 背中側から電車が線路を奏でる音が聴こえた。私はその場にへたり込んで泣いた。声はあげず、ただただ涙を流して泣いた。






 手紙を胸に抱いて泣く。






 立ち去る彼に聞こえませんように。






 聞こえませんように。




≪第十四話へ
最終話へ≫

COMMENT

嘘は突き通せば真実になる。

彼女は彼に、何も知らない私でいることで、真実をあげれたのかな。。。
  • 2008.07.21[月]

・・・・・・・・・・ばかやろ・・・・・・・。

お互いを想うがゆえ、とはわかっていても
それでも泣けてしまう。。

ばかぁ(T^T)

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