POSITISM

適度に適当に。

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コネクテッド・シグナル 第十一話


ハコニワノベル

「ちょっと待ってよ。そもそも何も言わずにどこに行ってるの?」

「ごめん。だけど、僕はもう君とは付き合っていけない」

「そんなの意味が解らないよ」

「ごめん」

「謝らないでよ……私が悪いみたいじゃない」

「……」

 そこで会話は終わってしまった。ただ、タカアキが冗談を言っている顔ではなかったから、何が悪かったのだろう。そればかりを考えてしまって――いや、そう考えでもしないと私は耐えられなかっただろう。手紙を胸に抱いて泣く。立ち去る彼に聞こえませんように。聞こえませんように。



 ――一年前。

 深夜、電話が鳴っている。浅い眠りから戻って着信画面を確認する。タカアキだ。

「ん……タカアキ?」

「あ、ごめん。寝てた?」

 交わす他愛もない会話が心地よかった。だけど彼の声は疲れている。ちゃんとご飯を食べてるだろうか、ちゃんと睡眠が取れてるだろうか。あまり私がわがままを言ってはいけない。ただでさえ少ない彼の休みを、私が奪ってはいけない。会話の返答に少しだけ気をつける。

「それじゃ、夜遅くにごめん。また休みの日にね」

「うん。ちゃんとご飯食べて、しっかり寝てね」

「ありがとう。それじゃ、おやすみ」

「おやすみ」

「……好きだよ、カナエ」

「私も、タカアキのことが好き」

「うん……それじゃ」

「うん」

「おやすみ」

「おやすみ……ってなかなか切れないね」

「じゃぁ、せーので切ろう」

 彼からの提案。きっと切るに切れなくなってるんだろう。

「いいよ。せーの」

 私は切らなかった。携帯電話から切断音が響く。しばらくしてからやっと終話ボタンを押せた。次に電話で話せるのはいつになるんだろう。次に会えるのはいつになるんだろう。そう考えたら少しだけ涙が出た。だけど彼はきっと私との約束を護ろうとしている。来年の春になったら一緒に暮らすこと。冗談半分だったその約束を、きっと彼は本気で願っている。私は幸せ者だなと感じた。
 十二月になったころ、その間も数度しか会えなかった彼から長期の連休を取得したと連絡が入った。翌日私は彼の休みの日程に合わせて休みを取った。職場で何度も何度も頭を下げたけれど、苦にならなかった。

「お休みどうするの?」

「んー、前半は旅行に行きたい」

「旅行いいね。どこ行く?海外逃亡?」

「いや、えっとね、長崎に行かない?」

「長崎?」

 彼はいつも自分の行きたいところや、やりたいことを言わない人だから驚いた。少しだけ考えるフリをしてから私は彼の主張を受け入れた。あまり話したくはないのだろうけれど、きっと長崎は彼のゆかりの地だろう。だけど知らない素振りを続けておかなくちゃ。
 彼から一度だけ聞いたことがある。彼は生まれた頃に祖父母が亡くなり、社会人になるまでに父親、母親共に病気で亡くしている。詳しくは聞いていないけれど祖父母も病死だったのだろう。親族も家族もいないということが、私にはあまり実感できない状況だった。ただ、それを話した彼の顔があまりにも悲しそうで、私はこの話題を彼が自分からするまでは絶対にしないと心に誓った。




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