POSITISM

適度に適当に。

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コネクテッド・シグナル 第五話


ハコニワノベル

 ――一年三ヶ月前。

 なんとか忙しかった仕事もこなし、一般的な生活を送れるようになった。季節は春。いつの間にか冬は過ぎて、毎朝見かける真新しいスーツに身を包んだ新人をよく見かけるようになった。うちの会社にも新人が入り、初めて自分の下に配属されることになった。「仕事は右も左も解らないけどやる気はあります」そんな自己紹介を受けた。なんとなく忘れていた初心を思い出したりした。
 新人の教育もあってか、今までのように自分の都合だけで仕事を片付けるわけにも行かず、カナエと会えるのはほとんど週末になっていた。カナエは「それでも忙しかったときよりマシだよ」と微妙なニュアンスで笑ってくれた。カナエに寂しい思いはさせたくない。いっそのこと一緒に住むかどうかを時々考えるようになった。
 ――日曜日。

「タカアキ、どうしたの?なんか元気ないね」

「え?あぁ、ちょっと考え事してた」

「せっかくお花見に来てるんだからさ、お花も見ようよ」

「うん。そうだよね」

 大きな公園にある桜並木を二人で並んで歩く。少しだけ遅くなってしまった花見で、あちこちからはらはらと花びらが舞い散っている。

「本当は聞かないほうがいいと思うんだけど、聞いてもいい?」

「ん、なにを?」

「考え事ってなに?」

「あぁ……」

「あ、言いたくない事だったらごめん、忘れてね」

「いや、カナエと一緒に住んだら、カナエに寂しい思いをさせなくてすむかなって。最近そう思ってるんだ」

「え……」

「仕事もどんどん任されるようになったし、僕の下に新人もつくようになったから、益々会えない日が多くなりそうだからさ……」

「……」

「どうした?カナエ?」

 急に立ち止まったカナエの方を振り返ると、カナエは少し泣いていた。

「あ、え?ごめん、なんか悪い事言っちゃった?」

「ううん、違う……私、タカアキが別れようって言うかと思っちゃってて……」

 普段そういう弱い部分を見せないカナエが、肩を震わせて泣いていた。それだけ僕が彼女を不安にさせていたのだろう。そう思うと自分が情けなく感じる。カナエが泣き止んでから、また一緒に歩く。普段は自分からしないけれど、自分から手を繋いだ。

「カナエ、一緒に住もうか」

「うん」

「どこに住みたい?」

「沖縄!」

「それはちょっと無理かな」

「あはは、ごめん、欲望のまま言っちゃった」

 来年の春には一緒に住もう。本気と冗談を織り交ぜながら交わされた約束。




≪第四話へ
第六話へ≫

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