POSITISM

適度に適当に。

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コネクテッド・シグナル 第二話


ハコニワノベル

 ――三年三ヶ月前。

 二年ほど働いていた会社が突然倒産した。倒産する半年前から社長が三人入れ替わったのだから、相当ギリギリな運営をしていたのだろう。まだ就職難という認識が残っている時代に、とりあえず内定を貰えた会社だった。ボーナスもなければ基本給も低い。ただ、内定を貰ったから入社しただけだった。
 その会社が倒産し職を失った僕は、とりあえず内定が出なくてもいいからと自分のやりたい職種で就職活動を始めた。その一社目の面接のとき、僕は山木香苗という女性に出会った。いや、面接のときに受付にいた彼女の名前を、僕が勝手に覚えているだけの出会いだった。
 運よくその会社で内定が出て、僕は社会人を続けられることになった。嬉しかった。でも実はそれ以上に彼女にまた会えることが嬉しかった。実際に仕事が始まると、新しい会社での事務処理で解らない部分は、すべて彼女が教えてくれた。日々、なにかしら会話をするようになって週末に食事に誘うようになっていった。
 自分でも驚くほどに彼女に惹かれていった。

「山木さんはさ…」

「なんですか?」

「いや、その…彼氏とかいる?」

「えー?全然いないですよ。むしろ欲しいぐらいです」

「じゃぁ、ちゃんと言わないとな」

「なにをですか?」

「山木さん、好きです。僕とお付き合いしてください」

「……はい」

「ほんと?やった!」

「……近藤さんがそんなに喜ぶなんて意外です」

「え?だって好きな人と付き合えるんだよ?嬉しいに決まってるじゃない」

「顔、真っ赤にしながら無理して言わなくていいですよ」

「そういう山木さんこそ、顔真っ赤」

 それからしばらくは、お互いに苗字で呼び合う変な恋人関係になっていた。その呼び方が自然に名前に変わった頃、カナエは恥ずかしいからと会社を辞めて、別の仕事に就いた。

「なんで辞めちゃうかな」

「だって、ついタカアキって呼びそうになるんだもん」

「あー、それはあるね。僕もカナエって呼びかけてたし」

「嘘、実際呼んでたでしょ」

「嘘?ほんとに?気付かなかった」

「だから私、事務員の間でバレバレだったんだから!」

「あちゃー、それはごめん」

「ううん、バレバレになったのも私が口を滑らせたからっていうのもあるし…」

「やっぱりそういうのって、根掘り葉掘り聞かれるの?」

「もう、根も葉もない。って感じかな」

 彼女が恥ずかしそうに笑う顔が好きだ。季節はセミの抜け殻を見かける初夏になろうとしていた。




≪第一話へ
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