| POSITISM | - 前向き親バカおとーさんの素敵な妄想エッセイ集。 - |
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いつまでも引き摺りたくはなかった。だから、前へ。
結局、瑠伊子部長に帰してもらうことが出来ず、月曜日は終電で家に帰る羽目になった。彩は合コンのセッティングに忙しそうにしていたし、瑠伊子部長はどんどんお酒を飲んでしまい「野球帽を後ろ前に被ってる人はスケベだ!」とか騒いでいた。最終的には「ハッキングとクラッキングを混同するなよ!あとストッキングはセクシーアイテムのひとつであります!」とか宣言しながら、第五ボタンまで肌蹴てしまっていた。
- 第十三雨 -
瑠伊子部長をタクシーに詰め込み、彩と一緒に駅まで走る。終電にギリギリで間に合った。
「瑞穂、あんた深く考えすぎ。どうせ全部自分が悪かったとか思ってるでしょ?」
「…うん」
「そんなこと絶対ないよ。瑞穂は少し気にし過ぎなんだから。瑞穂だったらすぐにいい人見付かるって」
「…ありがと」
「あーもう!そうやって瑞穂が落ち込んでると、周りの皆もどんよりした雰囲気になっちゃうからさ、早めに吹っ切っていつもの瑞穂に戻ってよ?」
「うん。頑張る。早く吹っ切るぞー!」
酔った勢いなのか、軽く力こぶを作るような仕草をして、二人で笑った。
「その調子、その調子。で、合コンなんだけどさ、金曜日空いてるかな?」
落ち込んでもすぐに立ち直る彩に少し憧れる。その後もずっと合コンの話しかしない彩と、電車に揺られて最寄り駅に辿り着いた。雨は降っていなかったので、よろよろと歩いて帰る。坂道がいつもの何倍も長く感じる。
紫陽花が多く植えられている場所を上って行く。この季節は本当に綺麗だ。夜露が葉っぱの上できらきら輝いて見える。なぜか嬉しい気持ちになった。ふと、雨の日にいつも外に出ている彼のことが気になった。彼の家に視線を合わせながら横切る、誰もいない。当たり前だ。もう時計は深夜〇時を過ぎている。私は視線を前に戻して、また坂道を上っていく。家に到着するとシャワーを浴び、ベッドの中に深く、深く沈んでいった。
──翌朝。酷い頭痛で目が覚めた。完全に二日酔いだ。それでも今日が火曜日であることは変わらない。重たい身体を引き摺って、少しフラフラしながら会社へ向かった。
「瑞穂、おはよう!」
「お、おはようございます…痛っ」
「なんだ、どうした?二日酔いか?」
「はい、まぁ、その、そうです」
「瑞穂、お酒は飲んでも飲まれるな、だぞ」
瑠伊子部長はと言いながら愉快そうに笑った。その笑い声が頭の中に響いて痛い。昨日一番飲まれてたのは瑠伊子部長のはずなのに。そう思いながら自分の席へ向かう。
「瑞穂、おはよう…」
「彩、おはよう。もしかして彩も?」
「そう、二日酔い。まぁ、あれだけ飲めばね…」
「でも、瑠伊子部長は全然お酒残ってなさそうだったよ」
「流石だなぁ…あー、気持ち悪い…」
「私は頭が痛い」
そのまま頭痛と闘いながら、仕事をこなしていったものの、ランチはどうしても食べれそうになかった。仕方なくオフィスの近くにあるカフェでイタリアの炭酸水を買って飲んだ。
空を見上げると、曇り空の隙間から日差しがあちこちに降り注いでくる。しばらくその空模様を眺めていると、次第に雲行きが変わって雨が降り始めた。霧のようなにわか雨。小走りでオフィスへ戻る。ハンドタオルで雨粒を拭きながら、もうじき梅雨が終わるような予感がした。
「私も、梅雨明けしなくちゃ」
そう決心して、職場へと戻った。
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