| POSITISM | - 前向き親バカおとーさんの素敵な妄想エッセイ集。 - |
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どれだけ君を想えば、それが君に届くだろうか。
曇り空が広がる火曜日。彼女は少しふら付く足取りで出掛けて行った。僕はその背中が見えなくなるまで見続ける。何も変わらない。またいつもの毎日だ。この家に住み始めたころからずっと、変わらない毎日。そこに不満も不安もない。ただ彼女が、彼女の持っているぽっかりと浮かぶ空のような傘が、ずっとこの目に焼きついている。
- 第十二雨 -
「何も変わらない。それでいいんだ」
独り言を零してからベッドへ入る。今日は時折雲間から日が差してくるからだ。
不満はない。不安もない。それなのに手を差し伸べたいほどに、彼女とあの傘のことを考えていた。忘れようと思っても、突然目の前に現れたぽっかり浮かぶ空と、その中で見えたあの笑顔が忘れられなかった。誰も気付かなかった僕に気が付いて、あの傘の中に入れてくれたあの日から、ずっと忘れられなかった。
──起き上がる。家から出てみると雲はどんどん流れていく。雲間から日差しが降り注いできた。全身でそれを浴びる。暖かい。けれどその光に触れている皮膚が次第にボロボロと崩れそうになっていく。自分の弱さに、無力さに泣いた。泣き叫んだ。
「変わらない、変えられない…、だけど変えたい!」
日差しを浴びる身体の節々が悲鳴をあげるように軋み始める。次第にそれは痛みを伴い出した。
「どうして、変わらない?」
「どうして、変えられない?」
「どうして、変えたい…?」
──急に世界は暗くなる。
日差しは再び雲に遮られ、雨が降り始めた。にわか雨。
「変わらないのは何だ?」
「変えられないのは何だ?」
「変えたいのは何だ?」
痛んだ皮膚に雨が降り注ぐ。身体はゆっくりと冷やされていく。霧のような優しい雨が、僕を、人を、紫陽花を、通りを、家を、街を、世界を洗っていく。
一度、深呼吸をするように、大きく息を吸い込んだ。
「変わらないのは…」
「変えられないのは…」
「変えたいのは…」
まるで世界から音が無くなったかのような静寂。そこに響く自分の声。
「僕だ!僕自身だ!!」
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