POSITISM

適度に適当に。

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晴色パラソル - 第九雨 -


ハコニワノベル

 丸い月のその下で。

 満月が彼女を照らしていた。僕はそれをただずっと見ているだけで、彼女はしばらくその月を見上げてから、雨は上がっていたのにあのぽっかりと浮かぶ空、のような傘を差して帰っていった。

 - 第九雨 -

 僕は生まれつき日差しに弱い。家の外に出られるのは夜か、曇りか雨が降っているときだけ。曇りの日でも雲が薄くて日差しが届く日は、ほとんど外に出ることができない。だから雨が好きだ。雨の日に家の前にある通りを行き交う人の傘を眺めるのが好きだった。実はそれ以上に、晴れている日に憧れている。あの日差しの中を自由に歩けたらどんなに幸せだろうか。
 子供のころ、雨の中外で遊んでいたらいつの間にか家から遠く離れた場所まで出ていて、迷子になったことがある。そのまま雨が上がって日差しを浴びて、危うく死んでしまうところだったことがある。それ以来、僕はなるべく家から離れないようになった。
 僕は、あのぽっかり浮かぶ空のような傘を持っている彼女に恋をしているのだろうか。それとも、日差しに憧れるように、あの傘に憧れているのだろうか。満月を見上げてはしゃぐ彼女の姿を見てから、ずっと彼女のことを頭の中に思い返してしまう自分がいる。

「僕は、彼女をどうすることも出来ない。晴れるとどこにも行けない僕じゃ、無理だ」

 彼女が見上げていたのと同じ満月を見上げながら、自分の不甲斐なさに泣きそうになる。あんなに近付くことが出来るのに、あんなに君を見ているのに、こんなに君を想っているのに。



「どうして、僕には何もできないのだろう」



「どうして、こんな身体に生まれたのだろう」



「どうして、あの太陽の下に出ることが出来ないのだろう」



 ──そして思考は実現しないことを妄想し始める。



「もし、僕がこんな身体でなかったなら」



「もし、僕が太陽の下に出られたら」



「もし、僕が」



「もし」



「もし?」



 虚しくなって、空を見上げた。丸い月が暗い夜空にぽっかりと浮かんでいた。紫陽花の葉に溜まった雨粒が綺麗に輝く。それはとても儚い輝きに見えた。
 翌日の日曜日、天気は晴れ。僕は外に出ることができない。普段であれば買い物などに出掛ける彼女を見かけていたけれど、この日僕は、彼女の姿を一度も見ることがなかった。




≪第八雨へ
第十雨へ≫

COMMENT

表現がほんとうまいなー。
  • 2008.06.12[木]

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