POSITISM

適度に適当に。

07« 2017.08 »09
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アーケードの向こう側 - 最終話 -


ハコニワノベル

 白から黒、黒から白、反転する色を続く浮遊感のままで超えていく。目を開くと球体が見えた。左手にはナナの右手がしっかりと繋がれている。世界は反転し、また逆転を始める。薄い膜のようなものが全身に絡みついた。

「起きろって言ってるだろ!おい!ユウキ!」

 名前を呼ばれて目を覚ますと、シーツに絡まっていることに気が付いた。視線を上げると両手を腰に当てたカズミが呆れ顔でこちらを見ている。あくびと背伸びをしてそれから口を開いた。

「おはよう」

「はい、おはよう。さ、さっさと起きて、朝ごはんを作ってくれよ。腹減って死んじゃうぞ」

「それぐらいで死ぬわけないだろ」

 起き上がる。キッチンへ移動して簡単な朝食を作った。カズミはそれを美味しそうに食べ終わると、にやにやとこちらを見続けている。

「なんだよ?」

「これ、見てくれ!ジャジャーン!私の新発明だ!」

「はぁ?」

 カズミが差し出したのはどこからどう見ても電動歯ブラシだった。手にとってスイッチを入れると小気味良い振動でブラシが動いた。

「あのな、こんなの薬局とか、下手したら百円ショップにだって売ってるぞ」

「な、本当か?」

「お前さ、もう少し外に出ようぜ」

「くそう、128段階に強弱付けられるようにしたのに!」

「そういう無駄な機能付けるのやめとけよ」

「じゃぁ、こういうのはどうだ?電動歯磨き粉!自動でウニューっと出てくるんだ」

「そういうの、随分昔に本か何かで見たことがあるぞ?それに、電動でやるより手でやった方が絶対早いだろ」

「ちぇ、じゃぁ違うテーマで研究だな」

「いや、それよりもお前さ、ちょっとは普通に働こうとか思わないわけ?」

「よーし、次こそ絶対ノーベル賞だからな!待ってろよ!」

「待ってねぇよ!」

 片づけをして、準備をする。「行ってきます」に「行ってらっしゃい」の声が返ってくる。靴を履き玄関扉を開く。昨日まで降り続いていた雨は上がり、青空に雲が高く見えた。大通りを抜けた公園で駆け寄る足音。

「おーそーい!」

 引っ張られる耳が痛い。しばらくしてから解放される。アジサイが昨日までの雨でキラキラ輝いて見えた。二人で並んでゆっくり歩く。

「何も変わらないね」

「そうだな。別に何も変わってないよな」

「みんな前の世界の記憶、なくなってるしね」

「嘘だったみたいだよな」

「………それは困る」

「なにが?」

「嘘だったら困る」

「なんで?」

「そ、そんなの言えないわよ」

「はぁ?よく解らない奴だよな、相変わらず」

「う、うるさいわね!大きなお世話よ!」

 学校までの道を歩く。出来るだけゆっくり。どちらからも言い出していないけれど、自然に出来た二人のルールだ。学校に行くと二人きりになる時間がなくなるから。

「あのさ、ユウキ」

「なんだよ?」

「私のこと、好き?」

「………ぉぅ」

「ちゃんと言って」

「今、言っただろ!」

「聞こえなかった!もう一回!」

「だー、もう解ったよ、好きだよ!ナナのことが好きだ!聞こえたか?バカ」

「な、なんでバカなんて言うのよ!あのね、言っておきますけど、あんたが私を好きだと思うよりも、私の方があんたを好きなんだからね!」

 そう言った瞬間のナナは、驚くほど早く赤くなって立ち止まった。

「あっはっは…お前、ほんとにバカだろ?」

「………」

「でもさ、そういうとこも嫌いじゃないよ。俺」

「バッ、バッカじゃないの!からかってるんでしょ!もう一緒に学校行ってあげないから!」

 ナナはそのままプイと後ろを向いた。少しだけ笑ってから右手を伸ばす。

「なぁ、手、伸ばせるか?」

「………」

「手、伸ばして。ほら、早く!」

「……」

「早く伸ばして!」

「…仕方ないなぁ」

 俯いたまま振り向いたナナが右手を伸ばす。その手を掴んでそっと引いた。

「もうさ、消える心配はないからさ」

「……うん」

「あんまり不安になるなよ」

「…うん」

「あぁ、そうだ。そう言えばさ、この前の豚丼もそうだけど、電車賃とかなんでいつも俺がナナの分まで払ってるわけ?」

「はぁ?あんたね、デートと言ったら男の子が全部出すもんでしょ!常識よ、常識」

「ちょっと待てよ、今までの全部デートだったのか?」

「そうよ、学校帰りに一緒にどこかに行く。十分デートじゃない」

「………っぷ、ははは」

 少し笑い合ってからナナの右手を左手で握る。そっと握り返してくるのが手に伝わる。
 繋がった世界と世界、思いと想い。そこから学校までを、今までで一番ゆっくりと歩いていく。
 ナナと二人、手を繋いだままで。



完。




≪第二十話へ
感想フォームへ≫

COMMENT

小学生の男女のバカは好きだよって意味ですよね。
いいなぁ。
いいなぁ。

つないだ手は離しちゃいけない。
そう感じました。

よかった~!
最後はやっぱりハッピーエンドじゃないとね♪
今回もやっぱり感動させてもらいました。
ありがとう。
ところでじゅじゅはどうなった?(笑)

今回も素敵なお話でしたね~ありがとう&お疲れ様でした♪

ユウキとナナができるだけゆっくり歩くみたいに
全21話、今度はできるだけゆっくり読み返してきます=*^-^*=

ふっふっふっ
やっぱり「バカ」って言うんだ(ナニ

いあ、ごちそうまさでした!

良かった、良かった、良かった(T▽T)
ユウキとナナが帰って来た・・・

繋いだ手を、二度と離すなよ、少年

しのめんさん、ありがとう

FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。