POSITISM

適度に適当に。

09« 2017.10 »11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アーケードの向こう側 - 第二十話 -


ハコニワノベル

「ナナ!」

「………」

「ナナ?」

「……」

「おい、ナナ!」

「…」

「聞こえるか?おーい!ナナ!」

「………聞こえてるわよ」

「そうか。それならよかった」

「……なにしに来たわけ?こんなとこまで」

「なにしにって、お前を助けに来たんだよ」

「私を助けるため?バカなんじゃないの?」

「そうなんだよ。バカだよな。自分でもそう思う」

「ほんと……バカだよ、あんた」

 ほんのすぐ目の前にいるナナは背中を向けたままで、そこに近付こうと思っても足が一歩も動かなかった。

「なぁ、ナナ。一緒に帰ろう」

「……無理、だよ」

「なんで?」

「私、消えちゃうもん」

「消えてないだろ?」

「でも、もうすぐ消えちゃうもん」

「諦めるなよ」

「これは罰だもん。私が…、自分勝手に力を使った罰だもん。だから私は消えなきゃいけないの」

「お前、バカだろ?」

「そうよ!バカよ!それがなに!?」

「ほら、いいからさっさと帰るぞ」

「……無理だよ。だって私、もう身体もないよ?ほんの少しだけしか自分が残ってないんだよ?」

「でもまだナナだろ?」

「そう、だけど………」

「消されずに残ってるじゃないか。奪われずに残ってるじゃないか。だったら…」

「……?」

「もう一度奪い返せばいいだけだろ?元々お前の身体、お前の意識なんだからさ」

「そんなの…できっこないよ」

「出来るって」

「なんでそんなことが言い切れるのよ!」

 振り返ったナナは、あの六角形の中から出てきたときのように涙を流していた。顔をぐしゃぐしゃにしながら、こちらをしっかり見ている。

「それじゃ、なにか?俺はお前が助からないと思いながらここまで来たと思ってるのか?冗談じゃねーぞ。俺はな、ナナを絶対に助けてやるって決めたから、ここまで来たんだ」

「……だから、無理だよ。…もう、無理だよ」

 そのままペタリと座り込んで、ナナは泣いた。その足元が薄く緑色に輝き始めていた。

「ナナ、一緒に帰ろう」

「無理だよ。もう、私にはどうすることも出来ないよ」

「手、伸ばせるか?」

「え?」

「手、伸ばして。ほら、早く!」

「…で、でも……」

「早く伸ばして!」

「…ぅ、うん」

 ナナは恐る恐る手を伸ばした。同じようにナナに向けて手を伸ばす。届かない。ナナの足は既に膝下まで緑色の光が覆いだしている。徐々にその光はナナを覆っていこうとしている。一度、目を閉じてから大きく深呼吸をして目を開く。右腕に力を込めて叫んだ。

「俺は!ナナのことが好きだ!!」

「はっ?な、ななな、なに言ってるの?…ユウキ?」

「俺は!ナナのことが、好きだっ!」

「いや、ちょ、え?なに?え?えぇ!?」

「くっそ、ナナは目の前なのに…」

「いや、え?おーい、ユウキ?あんたなに言ってるの…?」

「だから、俺は、ナナのことが、大好きなんだよ!」

「………え、えっと、うん…」

「大好きだ!だから一緒に帰ろう!」

「………」

「好きだ!大好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!!」

「…何回も言わなくても、聞こえてるわよ!バカーーー!!!」

「ナナ、好きだ!!」

「うるさいわね!わ、私だって、あんたのことが好きなのよ!!」

 ──浮遊感、そして重力。目の前にはナナ、繋がった右手と右手。

「やっとだな」

「…え!?なに?どうして?な、なんで??」

「これが、俺の力らしいよ」

「いや、でも、その、さっきの…」

「あぁ、あれは………」

「………」

 二人とも俯いていた。どうしても視線を合わせることができない。

「えーっと、お楽しみのところ悪いんだけど、ちょっといいか?」

「カ、カズミ?」

「よし、ちゃんと声は届くみたいだな。あのな、ユウキ。外の世界に繋がるコネクタがどこなのか解ったんだ。『南凪町アーケード』が外の世界とのコネクタだ。そこをお前の力で繋げてくれれば、メルトタウン・システムは終わる。全てが元に戻るんだ」

「全てが元に戻る?」

「このメルトタウンの中は別の世界、別の空間だ。だけど現実の世界との繋がりはある。人が死ぬと現実の世界でもその人は死んでしまう。だからこのシステムを終わらすことが出来れば、ここが元の世界に戻るんだ。何事も無かったかのように。お前たちのような特殊な力は使えなくなるけどな」

「例えば、ナナが消える前にこのシステム?とかを終わらせることが出来たら、ナナは助かったりするのか?」

「助かるな。絶対とは言い切れないが」

「よっし、それならやるっきゃない………ってちょっと待て」

「どうした?」

「外の世界と繋がるだけでシステムが終わったりするのか?」

「そこは安心していいぞ。世界が繋がった瞬間に、外の世界でこのシステムを制御してるマシン全てを、完全に制御不能にするウィルスをお前の体の中に仕込んであるからな」

「なに物騒なものを仕込んでるんだよ!」

「悪い、世界が元に戻ったら、何でも買ってやるからさ。それより、ナナちゃんの方は大丈夫か?」

「あっ!」

 確認するとナナの腰から下は既に緑色の光で輝いている。繋いでいる右手にナナは力を込めた。

「ここから出て、『フツウのアーケード』まで走ってる時間、ないよね……ごめんね、ユウキ。私は一緒に行けないや」

「諦めるな!絶対なんとかしてやる!絶対、なんとか………あ」

「どうした、ユウキ?『μ-key』の抵抗か?」

「いや、違う」

 ナナ覆う光が徐々に上半身を蝕みだした。ナナは隣りで声を出さずに泣いている。繋いでる右手にナナの震えが伝わってきた。その右手を強く握り返す。

「大丈夫。間に合うよ」

「……でも、私…もう」

「ほら、大丈夫だから、泣くなよ」

「でも、でも!」

「あれ、何か解る?」

 今まで真っ白で何も見えなかった空間を指差す。その方向をナナが見た。

「嘘…これって……」

「そう、Y字になってたとこにあった商店だ。で、あっちが…」

 そう言ってもう一つの方向を指差す。そこには剥げかけのペンキで『南凪町アーケード』と書かれた小さな看板が見える。ミユキが消したモノがこの空間にはひしめき合っていた。ナナを引っ張り起こして、繋いだ右手を左手に持ち替える。右手をその小さな看板に向けた。ナナが繋いだ手に力を込めた。強く、強く握り返す。それから全てを込めて叫んだ。

「俺は、アーケードの向こう側に行きたいんだ!」




≪第十九話へ
最終話へ≫

COMMENT

行け!少年!

皆さん、来るの早いな~。(笑)

ナナ、助かって!!

俺は、アーケードの向こう側に行きたいんだ!

鳥肌~~~

FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。