POSITISM

適度に適当に。

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アーケードの向こう側 - 第十九話 -


ハコニワノベル

「………ちょっと待ってくれ、もしかしてこの化け物がナナだって言うのか?」

「……そうだ」

「いやいやいや…、この化け物は元々ミユキだったじゃないかよ」

「ナナちゃんの力は、自分の別人格を具現化する力。その力で生み出されたのがミユキちゃんだ」

「どういうことなんだよ…」

「ナナちゃんが生み出したミユキという人格は、ナナちゃん自身がそうなりたいと思いながら、どうしてもなれない人格なんだよ」

(ミユキは…ナナから生まれた……???)

「だけど、ミユキという人格は完全に自立してしまった。そこにシゲミチが『μ-key』の力をインストールしたんだろうな。ナナちゃんはコントロールできなくなったミユキという人格を自分に戻そうとして、そこを逆に『μ-key』に取り込まれてるんだよ。『μ-key』の第一段階は意識の暴走、第二段階は身体制御、第三段階は……人格の上書き、つまり完全に乗っ取られる。『μ-key』は、ナナちゃんになろうとしてる」

「………」

「第三段階に入る前にナナちゃんが目覚めていれば、状況は変わっていたはずだった」

「……」

「思っていたのよりも何倍も早く、『μ-key』は第三段階に入ったんだ。おそらく…シゲミチだ……くそっ…あのバカ親父……ぐっ…」

「…」

 化け物の腕から血が滴り落ちていく。その度にカズミは押し殺すように呻いていた。

「………なんとかならないのか?」

「多分、どうにも出来ない…」

「……」

「だけど、この世界を終わらせれば、これ以上の惨劇は起こらない。この世界と外の世界を繋ぐコネクタの位置を今サーチ中だ。もうじきその位置が解る。そしたらユウキ、この世界と外の世界を繋いで、この世界を終わらせてくれ…」

「………なぁ、こいつの中に、まだナナはいるかもしれないんだよな?」

「ユウキ?……何する気だ!?」

 化け物の上で立ち上がる。真っ直ぐにその化け物を見た。下からジュジュさんの笑い声。

「少年…、行ってきな」

「ジュジュさん、ありがとう。カズミ、ごめんな。俺、やっぱりナナを助けたい」

「待て!ユウキ!待ちなさい!『μ-key』の中に入るな!」

 右手を化け物へ向ける。

「無茶だ!既に第三段階は始まってる!お前まで取り込まれたら……や、やめて!ユウキ!ユウキ!!ユウキーっ!!」

「俺は、ナナのことがぁっ!!………     !!!」

 一瞬の浮遊感、そして重力。辺りを見渡すと、まるであの六角形の中のように真っ暗闇の中にいた。その暗闇の奥から足音が聞こえる。足音が徐々に近付いてくるのが解った。

「あらあら、お客さんが来るなんて初めてのことだわ」

「ミユキ…」

「私のことを化け物と呼んだときから『ミユキちゃん』じゃなくなったのね。もっと別のタイミングでアナタに呼び捨てにされたかったな」

「ナナは、どこにいる?」

「ほんと呆れるくらいにナナ、ナナ、ナナ!………だけどね?もうすぐ私がナナになってあげるんだから、それも嬉しいわ」

 足音が止まると突然目の前が明るくなった。さっきまでの真っ暗闇から何も無い白い空間に変わった。その中にナナが立っているのが見える。

「ユウキ、助けて」

「………」

「早く、早く助けてよ、ユウキ!」

「……」

「なんで?どうして?どうして私を助けてくれないの?」

「…ミユキだろ」

「……ちぇ、気付いてたのか。残念」

 見た目は完全にナナにしか見えない。そのままぎこちない笑顔を見せながらナナにしか見えないミユキは話を続けた。

「ナナはね、ずっとアナタに素直になりたがってたわ。あなたに素直になりたい一心で私を生み出したの。だから私はアナタにだけ素直になれるの」

「ナナから生み出されたはずなのに、ナナを飲み込むのか?」

「だってあの子、私がアナタに近付きだしたからって消そうとしたのよ?自分勝手に生み出して、自分勝手に消し去る。そんな存在の私ってナニ?なんなの?だから力を欲してた。そしたらお父様が力を授けてくれたの。まぁ、その力じゃあの子を消せなかったから、私があの子になることにしたのよ。素敵でしょ?あはは」

「なにが目的なんだよ、お前」

「そんなの決まってるわ、アナタを手に入れることよ」

「俺を手に入れてどうするんだよ」

「この世界を自分の思い通りにするわ。そして私は外の世界へ出るの。実体を持たない私が実際の世界へ出られるチャンスなのよ。そのために必要なアナタも後から飲み込む予定だったけど、あなたから飛び込んできてくれて手間が省けたわ。アナタもバカよね、さっさと世界を繋いでしまえばよかったのに」

「ナナとはさ、約束してることが二つあるんだよ」

「は?約束?」

「一つは、ナナをお嫁にもらうこと」

「ふふふ、くだらない約束ね」

「もう一つは、ナナと豚丼を食べる約束」

「ふざけてるのかしら?そんな約束のために、アナタはわざわざ危険をおかしてまで、あの子を助けに来たっていうの?」

「そうだよ」

「馬鹿馬鹿しい!そんな些細な約束を守るために命をかけるだなんて、頭おかしいんじゃない?」

「命がかかってるんだよな、これが」

「は?」

「ナナとの約束守らないとさ、俺の命がないんだよ。ナナに首を絞められるからな」

「………だからなに?二人とも助かるつもりでいるわけ?この状況で?もうあの子本人の人格もほとんどなくなっているのに?もう、誰も助からないことがどうして解らないの!?」

「ほとんどなくなってたとしても、全部はなくなっていないんだろ?それだけで助けられるかも知れないって思うには十分だ」

「なぜ諦めない?アナタもあの子も!なぜワタシノモノニならナイ!ワタシガ、コンナニホシガッテルノニ!ドウシテワタシニハ、テニイレラレナイ?ナンデ!?ナンデ!!?ナンデ!!!?」

「相手のことを思いやれない奴に、相手の心が奪えるわけないだろ」

「ユルセナイ!ケシテヤル!コロシテヤル!ミンナコロシテヤル!」

 目の前のナナの身体が大きく波打つと、ミユキがそうであったように右腕、続いて左腕が巨大化していく。あっという間に人の姿ではなくなった。真っ白な空間に浮かぶような真っ黒な化け物。しばらく不安定な変化を続けてから、こちらに向かってくる。

「ギュィィィィィァァァァァァァァァォォォーーーーーッ!」

 人の出す声ではない叫びを発しながら、ものすごい勢いで化け物は突撃して来た。目を閉じて両手を開く。
 ──下腹部に激痛。化け物の腕が身体に突き刺さる。続いて右肩、左足、そして心臓。

「キエロ!キエロ!!キエロ!!!キエロォォォォォォォォオオォッ!!!」

「ナナ…、一緒に帰ろう」

 朦朧とする意識の中で、真っ黒な化け物をそっと抱きしめた。

「ナナ…、ミユキもナナの、一部なんだろ?怖がるなよ、俺が全部受け止めてやるから」

「キエロ!キエロ!!キエロ!!!キエロ!!!」

「俺さ、ナナのことが好きなんだよ」

「キエロ!キエロ!!キィエェロォォ……」

「ナナ、好きだ。俺はナナが好きだ」

「………!?………ヤメロ、ヤメロ!ヤメロ!!ヤメローーッ!!!」

「なぁ、ナナ。一緒に手、繋いで帰ろう」

 一瞬の浮遊感、それから重力。再び真っ暗な空間。その中心に背中を向けたナナが見えた。




≪第十八話へ
第二十話へ≫

COMMENT

ユウキはU-keyだけど勇気でもあるんだよ
がんばれ、ユウキ!
ナナちゃんを取り戻せー!

人にはいろんな側面があるものね。。

それを人に受け入れてもらうためには
自分が受け入れなきゃだめよねぇ。。


がんばれ、ユウキ、ナナ!!

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