POSITISM

適度に適当に。

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アーケードの向こう側 - 第十八話 -


ハコニワノベル

   ◆



「何泣いてるのよ、ユウキ」

「別に泣いてない」

「ほら、行くよ!」

「どこに行くの?」

「ぞうさん組の部屋」

「ダメだって、今はみんなで工作してるんだから」

「だから行くんじゃない。私達だけこっそり行くの」

「何しに行くの?」

「何しにって…ぼ、冒険よ」

「何も考えてないでしょ?」

「か、考えてるわよ!ほら、さっさと行くわよ」

 工作をしている部屋を抜け出して、隣りの部屋へ移動する。確かにちょっとだけワクワクしてきた。みんなと違うことをする。それだけなのに、自分が特別なんじゃないかと思えた。隣りの部屋ではみんな絵を描いていた。ナナはそこに滑り込むように入ると、他の子に混じりながら絵を描き出した。僕もそれに合わせるように絵を描く。他の子達が僕らを指差して「あー」とか言い出すと、すぐに先生が近付いて来た。そのまま先生に注意され、なぜか全部僕が悪いことになった。ナナは少し泣いていたけど、先生の注意から解放されると僕に向かって少しだけ舌を出して笑った。



   ◆



「おい、ユウキ?大丈夫か?」

 耳元でカズミの声が聞こえる。何度も名前を呼ばれていることにやっと気が付いた。周りを確認するとどうにも薄暗い。徐々に記憶が蘇ってくる。ここは『フツウのアーケード』の中だ。むなしく行き場を無くした腕の中を見る。ナナはいなくなっていた。

「ユウキ?大丈夫なのか?」

「……ナナが、消えた」

「そうか…」

「俺は、ナナを助けてやれなかったよ」

「………」

 ナナを抱きしめていた腕の力が抜けてぶらりとぶら下がる。ナナが消えた。ただそれだけだった。気が付いたら涙が出ている。悲しいのか空しいのか良く解らない。一つ言えるのは自分が何も出来なかった悔しさだけが残っていた。泣き声がもう誰もいなくなったアーケード内に響く。

「そう言えば、そっちは大丈夫なのか?」

「………一応、まだ生きてるな」

「あのさ…俺もまだ、何か手伝えるかな?」

「………あぁ」

「そっか。今からそっちに戻るよ」

「頼む」

 涙を拭いた。どちらにせよこの世界はおかしい。終わらせることが出来るなら終わらせよう。ナナのことを考えないように、断ち切るように走り出した。商店街は静まり返っている。ジュジュさんのヒールの音や、あの化け物が暴れてる音が聞こえなかった。商店街には人気がまったくない。そう言えば、ミユキと『フツウのアーケード』で出会ってから、カズミとジュジュさん以外に人を見ていないことに気が付いた。まるで商店街が『フツウのアーケード』のような雰囲気になっている。嫌な予感がした。息を止め、奥歯を噛み締めて走る、走る、走る。

「少年。無事か?」

 商店街の入り口付近でジュジュさんにそう言われたものの、何も答えられなかった。ジュジュさんは左肩から背中にかけて、あの化け物から伸びた腕のようなケーブルのようなものが貫通していたからだ。笑顔を見せてはいるものの、既に顔には血の気がなくなっている。カズミは「おかえり」と言ったが、化け物の左腕にがっしりと握り締められている。化け物の腕からカズミのものと思われる血が滴り落ちていた。
 化け物はそのままピクリとも動いていなかった。

「複製が、始まった…」

 化け物の左腕の中からカズミが言った。

「第三段階…、もう止められないかも知れない……」

 カズミが話すたびに、化け物の腕から血が滴り落ちる。

「辞めろ!カズミ、もうしゃべるな!」

 化け物の腕によじ登って手を広げさせようとしてみるが、ビクともしない。カズミはそのまま話を続けた。

「いいか、ユウキ。落ち着いて聞けよ?……ナナちゃんはまだ消えていない」

「えっ?」



   ◆



「ユウキ、さっきはごめんね」

「べつに、いいよ。いつものことだし」

「やさしいね」

「そうかな…」

「そうだよ。なんで私が誘ったとか言わないの?」

「自分で決めたことだから」

「え?どういう意味?」

「ナナが誘ったとしても、それに着いて行くことを決めたのは僕ってこと」

「ふーん」

「なに?」

「………かっこいい、なぁって」

「……ぇ?」

「ほら、これあげる」

 ナナがそういって一枚の紙をくれた。

「ねぇ、ユウキ。いつか大きくなったら、私をお嫁さんにしてよね」

「……ぇぇっ?」

「んもー、そこは男らしく『任せとけ』とか言うとこでしょ!」

「ま、任せとけ!」

「やった!絶対だよ?ほら、約束!」

「う、うん」

 ナナから貰った紙には男の子と女の子が手を繋いで楽しそうに歩いている絵が描いてあった。



   ◆



「まだ、ナナは、消えてない?」

「まだ消えてないよ」

「ど、どこにいるんだよ!?」

「目の前にいる」

「目の前?」

 目の前にいるのはカズミとジュジュさん、それから動かない化け物だけだった。目を時折うつろにさせながら、カズミが大きく息をついてから言った。

「ナナちゃんの本当の名前は『NAT Nature Alpha』複製する意識の波」




≪第十七話へ
第十九話へ≫

COMMENT

ナナちゃんは、まだ消えてないんですね?!
そうなんですねっ?!

えええええ、どゆこと?? 悩

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