POSITISM

適度に適当に。

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アーケードの向こう側 - 第十六話 -


ハコニワノベル

 南町商店街に出て、とにかく走る。後ろからは既に見た目も化け物になったミユキが追いかけてこようとしているのが見えた。商店街に人通りはなく、とにかく駅の方向へ走った。

「いいか、ユウキ。お前の力は『繋ぐ』ことだ。お前が本気で思えばなんでも『繋ぐ』ことが出来るんだ。だから、あのミユキちゃんって子を、頑張って倒せ」

「無茶言うな!あんなのと戦えるわけないだろ!」

「だったら、とにかく逃げよう」

「どこまで逃げるんだよ!逃げたら助かるのか?」

「商店街さえ抜ければ大丈夫だ」

「どんな理屈だよ!」

 走りながら口喧嘩になった。それでもとにかく逃げないと命がない。チラッと後ろを見ると更に右腕だけが巨大化したミユキが追いかけてきている。このままのスピードで逃げたとしても、すぐに追いつかれてしまうだろう。明らかに向こうの方が早い。後ろを見るのを辞めてカズミと二人でとにかく走る、走る、走る。
 ──もうすぐ商店街を抜ける。

「よぉ、少年」

 商店街の入り口にある『花屋ATASHI』の中から、全身ピッチピチの赤い皮のような服に身を包んだジュジュさんが出てきた。服を着ているものの、まるで裸のようにも見えた。でも今は目を逸らしてる暇はない。

「そんなに慌ててどうした?」

「いや、あの…危ないので、逃げてください!」

「危ない?」

 そう言いながらジュジュさんは商店街の方を伺い見る。「ふーん」と一言吐き出してから、またこちらを見る。その顔に緊張はまったく感じられない。

「で、何が欲しい?」

「いや、だから危ないから逃げてくださいよ!」

「そんなこと言うな、少年。私が欲しくなったんだろ?」

「だから、そうじゃなくて…」

 後ろを振り向くと、ミユキがかなり近くまで迫ってきていた。その形相はアニメや漫画で見る化け物となんら変わりがない。身体はミユキのまま、右腕だけが二メートル、いや三メートルぐらいだろうか?とにかく人間の姿をしていない。

「ジュジュさん。遊んでないでお願いしますよ」

「解ってるよ。カズミはもっと遊び心を持った方がいいぞ」

 カズミといきなり会話したかと思うと、ジュジュさんはミユキの前に進んでいく。

「あ、危ないって!」

「大丈夫だ、少年。その代わり、私に惚れるなよ?」

 そうやってにこやかに笑うとジュジュさんはミユキに向かって走り出した。ヒールの足音が商店街に響く。

「どぉーけぇぇぇーーーっ!」

 数十メートル先でミユキが右腕をなぎ払ったのに、その風圧を感じた。ジュジュさんはその腕をヒラリと飛び越える。続けてミユキの腕がジュジュさんめがけて突き出される。それをまるでダンスを踊るように回転しつつスルリと避けながら、ジュジュさんの蹴りがミユキに突き刺さる。ミユキはそのまま少しだけ吹き飛んだ。

「あれ?本気で入れたんだけどなぁ」

 ジュジュさんはどこか不満げに呟いて頭をかいた。

「カズミ…、あの人は何者?」

「ん?ジュジュさんか?あの人は私達の仲間だよ。一応科学者だ」

「まったくもって科学者には見えないな」

「まぁ、筋力を飛躍的に上昇させるスーツの研究をしてるんだけどな」

(今までであの人が着てたのは、ほとんど服になってなかったけどな…)

「さて、ジュジュさんに時間を稼いでもらってる間に、お前はナナちゃんを助けに行って来い」

「ちょ、ちょっと待て。今逃げてきた道を、あの戦ってる横を通り抜けて戻るのか?」

「ウダウダ言うな。それにあまり時間がない」

「なんで時間がないんだよ?」

「ジュジュさんは強い。だけどな、あのミユキって子はもうすぐ第二段階に入る。そうなったらジュジュさんじゃ抑えられなくなる」

「…それなら、あの化け物をなんとかしてからナナを助けに行けばいいんじゃないか?」

「………それもダメだ」

「なんでだよ?」

「………進入不可能なエリアにずっといると、システム側がそのエリア内にいる者を強制的に排除するようになってる。多分、ナナちゃんに残された時間も少ない」

「つくづくとんでもない世界だな」

「私もそう思う。だからこそ終わりにしなきゃいけない。沢山の人の命を使った実験なんて馬鹿げてる。……すまんなユウキ。お前にとんでもないもの背負わせてしまって」

「いやいやいや、俺さ、まったく実感ないんだよね。俺って何なの?」

「お前の力は『繋ぐ』ことだ。お前が本気で思えばなんでも『繋ぐ』ことが出来る力だ。そして、お前の力がこのメルトタウン・システムと外の世界を繋ぐ唯一の鍵なんだ。だから、お前が勝手に行動することを怒っていたし、自由をかなり束縛していたんだ。すまない。私の目的のために、お前にはずっと辛い思いを…」

「なんだよそれ」

「…」

「結局俺はお前の道具なのかよ。ふざけるなよ、なんでこんな世界で生かされるんだよ俺は、俺達は!お前の親父だかなんだか知らないけどさ、イカレてるだろ!」

「……」

「しかもなんで俺なんだよ!お前がやれよ!お前自身が特別な力を付けてこのシステムとかを終わらせろよ!なんで俺なんだよ!?」

「………すまん」

「なにがすまんだ!せめて嘘でもいいから否定しろよ!俺は道具なのかよ!!」

 突然、目の前にジュジュさんが吹っ飛ばされてきた。

「あのな、少年。細かいことを気にするな。男ならどんと構えろ」

「……いや、気にするでしょ」

 よく見ると、ジュジュさんの服はあちこちがボロボロに千切れていて、身体中に怪我をしているのが解った。そのまま視線をジュジュさんからミユキの方へと持ち上げると、右腕だけでなく、左腕も化け物のように変わりつつあるミユキが見えた。どうやらその変異のせいで今は動けないようになっているみたいだ。

「少年。バラの花束でも買っていくか?」

「……なにを言って…」

「好きな人を迎えに行くんだろ?だったらバラの花束だ」

「いや、だから、その…」

「あのな、少年。子供のあんたが世界がどうとか考えなくていいんだよ。少年には少年のやりたいこと、達成したいことがあるだろ?そのことだけ考えて、そのことだけに全力を出せばいいんだよ」

 そこまで言うとジュジュさんは立ち上がった。こちらに背中を向けたまま話を続ける。

「カズミはな、本当は自分に『U-key』の力を持たせようとしたんだよ。だけど鍵の力は子供にしか持たせられないんだ。大人だと自分の都合でその力を使ってしまうからな。だからカズミは少年に『U-key』の力を持たせてこの世界に送り込んだんだよ。だけどな、普通ならそれをシステムの外から見守るだろ?このシステムに入ってしまうと自分の命も危険にさらされるわけだし。でもカズミはそのまま自分もこの世界に入ったんだぞ。何のためか解るか?」

「自分の目的を達成するためだろ…」

「心配だからだよ」

「は?」

「少年のことが心配だったからだよ」

「なんで?赤の他人の子供にその変な力を取り付けたんだろ?何が心配なんだよ?」

「少年。君は正真正銘カズミの息子だよ」

「はぁ?」

「親が子を心配して何が悪い。下手をすれば命すら失うかもしれないのに。それこそ赤の他人の命を危険に晒せるわけないだろう?だから自分の息子にその力を託したんだ」

「…じゃ、なんで赤の他人だなんて言ってたんだよ」

「この実験を終わらせる計画のためだ。この実験を終わらせるために、もしかしたら誰かの犠牲が必要になるかもしれない。その犠牲がカズミ本人になったとき、君が躊躇しなくてもいいようにするためだ」

「……意味、解らねーよ」

「……ジュジュさん、しゃべり過ぎ」

「あ?悪い悪い。私はそもそも、そういうやり方が気に入らないだけさ」

 ジュジュさんはその場で二度飛び跳ねてから首だけこちらに向ける。

「少年、とにかく自分がやりたいこと、達成したいことをやれよ!他のことを気にするな!」

 と言ったかと思うと、既に両足も変形しつつあるミユキへと向かっていった。自分がしたいこと?やるべきこと?そんなの意味が解らない。カズミが実の母親?考えることがあり過ぎて、何も解らない。ただ、その渦巻く思考の奥底にナナの姿があった。

「……助けてやらないと、明日は命がないな」

 自分でも馬鹿げてるなと感じて笑えてきた。カズミはずっと俯いている。ジュジュさんは目の前で化け物と戦っている。誰もが誰も、自分の中で戦っている気がした。

「行ってきます。………お母さん」

 カズミが顔を上げたのが解ったけれど、なんだか恥ずかしくなるばかりなので走り出した。それと同時にジュジュさんがミユキを商店街の脇へと吹き飛ばしてくれる。何も考えずにとにかく走る。さっきまで逃げてきた道を戻っていく。背中から「ユウキ、家にはちゃんと帰って来いよ!」とカズミの声が聞こえた。

「解ってる!」

 背中を向けたまま大声で叫んだ。




≪第十五話へ
第十七話へ≫

COMMENT

た、戦う花の子ルンルン!
もしくは、愛の戦士・キュア・ハンケツ!ですか

なんか壮大なエンディングが待ってる感じですねー
どきどきです・・・
それにしても気持ち悪いやつだ、ミユキ(ΦωΦ)
大人しめのうふふ女に碌な奴ぁ居ないって言う、いい例ですわ

うわー うわー 勝手に涙腺崩壊寸前ー
頑張ってくれっ!

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