POSITISM

適度に適当に。

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アーケードの向こう側 - 第九話 -


ハコニワノベル

 右側の道をしばらく進むと、目の前に小さな鳥居が見えた。以前は朱色だったと思われるその鳥居は所々が剥げて赤よりも茶色に近い色になっている。その鳥居に『南凪神社』と、かろうじて書かれているのが見えた。鳥居を潜り抜けると自分の部屋より少し広いスペースに小さな神殿と賽銭箱が置いてあるだけの、本当に小さな神社だった。その奥にコケの生えた池があり、赤い鯉が一匹だけ穏やかに泳いでいるのが見えた。
 神社を出て今まで通ってきた道を逆から見ると遠くにさっきナナと分かれたY字の分岐点が見える。さらに視線を右側に向けると斜めにアーケードが続いている。その方向にまた歩き出す。
 今までよりも更に薄暗く、どこか埃っぽい臭いがしている。どこの店も営業をしなくなってから随分経っているようだ。そのまま歩いているとまた左側に向かって斜めにアーケードが続いている。更に進むとまた左斜めに折れ曲がった。その次もまた左斜めに折れ曲がった地点で理解した。このアーケードは不通なんじゃなくて、もともと通り抜けるように出来てはいない。最初のY字地点からほぼ円に近い六角形のアーケードになっているようだ。一昨日は空き缶のような音に驚いて夢中で走ったから、気が付かずに入り口に戻ってきてしまったのだろう。最初のY字地点に戻ってきた。──戻ってきた?

「ナナー?どこだー?おーい、ナナー?」

 他に道なんて無かった。ナナがあのまま左の道を進んでいたのなら間違いなくどこかで鉢合わせたはずだ。それなのに最初に分かれたY字地点に戻ってきてもナナの姿は見えなかった。怖くなって途中で引き返したのかもしれない。後で右側の道を追いかけて来てたのかもしれない。いろんなことを考えながらアーケードを右回り、左回りを数回繰り返してみたものの、ナナの姿は見えない。声すら聞こえない。先に出てるかもしれないと思って『フツウのアーケード』から出てみたものの、そこにナナの姿はなかった。三十分、一時間、二時間。時間だけが過ぎていく。一度『南町商店街』の駅と反対側へ行き、豚丼屋を覗いて見たがナナは見付からなかった。いよいよ暗くなってしまったので、先に帰ったんだろうと思うことにして、家に帰った。
 ──翌日学校に行っても、ナナの姿は無かった。

「ユウキ君、おはよう」

「あ、ミユキちゃん。おはよう」

「どうしたの?」

「いや、ナナが来てないなぁと思って」

「ナナ?あぁ、ナナちゃんか。そう言えば来てないね」

「そういえば、ミユキちゃん風邪大丈夫?」

「うん、昨日一日寝てたからもうすっかり」

「そっか、やっぱり寝てたんだ。昨日お見舞いに行ったんだけど誰もいないみたいでさ、寝てるか病院なんじゃないかなって、ナナと話してたんだ」

「えぇ、それは残念だなぁ。ユウキ君が来てくれたんだったら起きてれば良かったかも」

「いやいや、しっかり寝て治してもらわないと。でも、治ったみたいで安心した」

「うん、ありがとう」

 特にナナが休むといった連絡はないままにその日の学校は始まった。ナナがいないので、ほとんどの時間をミユキちゃんと過ごしていた気がする。昼休みに少し考え事をしたくて、体育館横の昼寝場所へ移動した。

「やっぱり来たね」

「わっ、ミユキちゃんか。驚いた」

「うふふ。ごめんね」

「いや、こっちこそ驚いたりしてごめん。ちょっと考え事してたんだ」

「考え事?」

「うん。俺ね、昨日ナナと一緒にいたんだ。で『フツウのアーケード』にもう一度行ったんだけど、そこでナナとはぐれちゃってさ。そしたら今日あいつ来てないでしょ?もしかして家にも戻ってないのかなぁって」

「それは心配だね。だけど大丈夫なんじゃないかな?」

「え?」

「ナナちゃん、きっと大丈夫だと思うよ」

「そうなのかな…」

「だからあまり悩まないで。そうだ、膝枕してあげようか?」

「……ごめん、今はそういう気分じゃないんだ」

「そう…」

「………」

 しばらく沈黙が続いてしまう。無言のままになってしばらくすると、ミユキちゃんが切り出した。

「もしも、もしもだよ?」

「え?」

「もしも、私とナナちゃんどっちかと付き合わないといけなかったら、ユウキ君…どっちを選ぶ?」
「え、またその質問?」

「真面目に答えてくれないかな…、私、ユウキ君のこと…好きだよ」

「いや、え?なんで…、えっ、あの…」

 何か言おうとしても頭の中がぐらぐらして言葉が出てこない。無言で上目遣いのミユキちゃんと目が合ったまま離せなくなる。なぜかその気迫に押されて後退りをしてしまった。どれぐらいそのままだったのか解らないけれど予鈴が鳴った。逃げるように「じゅ、授業行かないと」とその場から足早に立ち去った。それから、ミユキちゃんと二人きりになるとすぐにその質問をされてしまうので、どこかよそよそしい雰囲気になってしまい、どうにも居心地が悪かった。その次の日も、翌週の月曜日になっても。
 ナナはずっと学校に来なかった。

「知ってる?ナナちゃん行方不明なんだって」

「違うよ、鬱病になって引き篭もってるんだよ」

「えー?私は誘拐されたって聞いたけど?」

「あれだろ、夜逃げだろ」

 いつしか教室ではあの日以来学校に来ていないナナに対する噂で持ちきりになった。野口先生からの説明も特になく、噂はどんどん尾ひれがついていく。始めはその噂にすぐ噛み付いていたものの、ナナ本人が来なくなった理由を知っているわけではないのでどうにもならなくなっていた。毎日ナナの家に行ってみても誰もいないし、毎日ナナの家に電話をかけても誰も出なかった。『フツウのアーケード』に行ってみてもナナはそこにいなかった。ナナだけが突然消えてしまったように感じた。
 その翌日の火曜日、学校に行くとある異変が起きていた。

「ユウキ君、おはよう」

「おはよう」

「どうしたの元気ないね?」

「ん、いやナナを探してたんだけどさ」

「ナナ?ナナって誰のこと?」

「え?なに言ってるの?ナナだよ。最近学校に来てないけどさ」

「その子、うちの学校の子?」

「いやいや、うちのクラスメイトでしょ?」

「やだ、何言ってるのよユウキ君。うちのクラスにナナなんて子いないじゃない」

「……え?」

 教室では昨日まで飛び交っていたナナの噂話がまったく飛び交わなくなっていた。それどころか、クラスメイトに話を聞いても誰もナナを覚えていない。まるで元々いなかったようなことになっている。クラス全体でふざけているのかと思ったら、野口先生までがナナを覚えていなかった。出席簿を確認しても『美崎ナナ』という名前はどこにも書いていない。

「ねぇ、ユウキ君。私、告白の返事…そろそろ聞きたいんだけど」

「おいおーい、朝っぱらから熱いねぇ」

「……ごめん」

 それだけ言ってから走り出した。校庭を突っ切り、フェンス脇を通り抜けて公園を越える、大通りを抜けて集合住宅街、一軒家の住宅街の一角にあるナナの家へ走る、走る、走る。
 毎日来ても誰もいない家、毎日電話しても誰も出ない家、その家の前で呼吸を整える。恐る恐る玄関扉に手を伸ばそうとすると、突然ガチャンと音を立てて扉が中から開いた。

「ナナ!」

 叫びながら、その扉を強く開いた。一週間ぐらい前、ここに送り届けたときに閉まりかけた扉の隙間から見えたナナの顔を思い出した。ゆっくりと玄関が見えてくる。そしてこの扉を開いた人物も。

「ユウキ…、なんでお前がここに?」

「な、なんで?なんでカズミがここにいるんだよ!」




≪第八話へ
第十話へ≫

COMMENT

うん、あたしもミユキちゃんがなんか怖い
学校の廊下とかでいきなり後ろから名前呼ばれてさ
振り向いたらミユキちゃんなんだけど
にやっと笑ったら口が耳までデーって裂けそう

あっ

夜一人でトイレ行けなくなりそう

ミユキよ

何故ナナが大丈夫と言い切れる?
  • 2008.05.15[木]

神隠し!?

すげー気になる><
ミユキちゃんが意外に強引で、ちょっとこわい。。

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