POSITISM

適度に適当に。

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アーケードの向こう側 - 第七話 -


ハコニワノベル

「ぎゃー!」

 叫び声で目が覚めた。時刻は午前七時五分前。どうやらカズミが叫んでいるみたいだ。慌てて叫び声の聞こえるキッチンへと急いだ。自分の部屋を出ると家全体が焦げ臭い。キッチンへ目を向けると黒い煙を出しているフライパンを持ったカズミが叫び声をあげていた。

「なにやってんだよ」

「あ、え?ユウキ、おはよう。もうそんな時間か?」

「もうすぐ七時だ。そうじゃなくて、なにやってんだよ」

「いや、目玉焼きを作ろうと思ったら、とても黒目な目玉焼きに…」

「油は?火力を最大にしてないか?最期は蒸し焼きにするんだぞ?」

「何?宇宙語をしゃべるなよ!それよりも助けて!」

 コンロの火を消し、フライパンを奪い取って流しで水を入れる。換気扇を付けて窓を開けた。

「朝から何の実験だよ」

「いや、ほらユウキと朝ごはん一緒に食べようかなぁと思って」

「お前料理出来たっけ?」

「ご覧の通りの実力です」

「俺は幼い頃にどうやって育てられたんだろう…」

「お店で売ってるものはとても素晴らしいんだなと言うことに、今日気が付きました」

「まぁ、いいよ。俺作るからさ、目玉焼きでいいか?」

「ハム入れて。あと半熟にしてね」

「注文だけは立派だよな」

 トーストを焼いて、ハムエッグを出した。久しぶりに二人で朝食を食べる。

「それにしてもユウキは、いつの間にか料理も洗濯も出来るようになったよな」

「一応、学校の家庭科でも習うぞ」

「そうだっけ?」

「まぁ、得意な男子はほとんどいないけどな」

「じゃぁ、あんたモテモテでしょう?」

「あのな、小学生でモテるために必要なのは基本的に運動能力だ」

「なに悟ったみたいなこと言ってるのよ」

「それが現実だ」

「まぁ、そういうものかも知れないけどね。中学になると勉強出来るかどうかも問われるし、高校になればセンスも問われるよな」

「それ、何年前の記憶?」

「バーカ、そんな昔じゃないよ……って、あれ?もう十年以上も前になるのか……」

「もうすぐ三十だもんな」

「まだ二十八だ」

 おでこを小突かれて朝食は終わった。今使った食器と昨日残していた洗い物、それから焦げたフライパンも一緒に洗ってしまう。着替えを手早く済ませるとゴミをまとめて玄関に置く。眠そうなカズミに「行ってきます」を言ってから家を出た。
 ゴミを出していると掃除のおばさんに「偉いわねぇ、お母さんは何もしてくれないの?」などと聞かれた。「母は僕のために毎日頑張ってくれてるので、僕に出来ることは僕がやるんです」と笑顔で言っておいた。ちょっと良い子を演出し過ぎたかもしれない。いつもはもっと早く出掛けるものの、今日はいろいろとすることが増えたので遅刻しないように急いで学校へと向かった。

「あれ?ユウキ、おはよう」

「おはよう、ナナ」

「あんた今日はちょっと遅いじゃない」

「ちょっと朝やることが多くてさ。というかお前も遅いだろ」

「私はちょっとだけ寝坊したの。ちょっとだけね」

「と言うことは遅刻ギリギリになってるのか」

「正直に言うと、走らないと間に合わないタイミングね」

「走るか」

「あ、待ちなさいよ」

 二人で学校までの道を走る、走る、走る。集合住宅街を抜け、大通りを抜けて公園の脇を通り抜ける。アジサイがいくつか花を開いていた。角を曲がると学校が見える。しかし正面入り口は見えている部分の反対側だ。朝は裏側の入り口は鍵がかけられている。ぐるりと正面入り口まで回りこむと時間にして五分はロスしてしまう。

「ユウキ!フェンスの脇!」

「解ってる!」

 走りながら意思の疎通をした。
 裏口に近い校庭のフェンスの一角は、隣りが民家であることもあり、完全には遮断されていない。ここから校庭に入って突っ切ればまだ間に合うはずだ。二人でフェンス脇をすり抜けた。少し高いその場所から校庭へと飛び降りる。続いてナナが飛び降りたが、着地でバランスを崩しそうになった。とっさにナナの腕を掴んで支えて、また二人で走り出した。ナナはその途中で「サンキュー」とだけ言った。
 ──教室に駆け込むとまだ野口先生は来ていなかった。

「間に合った…」

「おいおーい、夫婦で仲良く遅刻かよ」

「うるせーぞタイキ!遅刻してないし、それに夫婦なのは俺じゃなくてお前だ!」

 最近彼女が出来たと言いふらしているタイキの軽口に噛み付きながら、俺もナナも自分の席に座った。そのすぐあとに野口先生が教室に入ってきた。

「はい、おはよう。出席取るぞー。安達…雨宮…あ、雨宮、お前校庭突っ切ったな?あそこのショートカットはしちゃいかんだろ。あと美崎も突っ切らないようにな。はい続きいくぞ、石川…内田…」

 あっさりと校庭を突っ切っていたことがバレていた。タイキが「おいおーい」とか言い出したけれど無視をした。

「連絡事項は、柳が今日は体調不良でお休み。後は特になし。じゃ、今日も元気よく学んで、元気よく遊ぶように。以上」

 そう言えばとミユキちゃんの席を確認してみると確かにいなかった。ナナも同じように振り返ってミユキちゃんの席を見ていた。そのまま朝礼が終わると、ナナが駆け寄って来た。

「珍しいね、ミユキが休むなんて」

「そうだな」

「昨日のがまずかったかなぁ…」

「昨日?あ、あの後何かしてたのか?」

「えー?あんたが逃げちゃってどうしようもないから、二人でミユキの家に行ったの。ずっと話し込んじゃって、その後一緒にご飯食べて、一緒にお風呂に入ったのよ」

「はぁ…、ミユキちゃんの家族にはなんて言われたんだよ」

「いや、なんか昨日は遅くまで帰ってこない日だったみたいでさ」

「それで、なにがまずかったんだよ?」

「いやぁその、ね、お風呂でさ、ミユキがのぼせちゃってさ。私、のぼせたときってシャワーで水を浴びるようにしてるから、こう、のぼせてるミユキに水をね…」

「確実にそれが原因だな」

「やっぱりそうかな…?」

「再確認しなくてもそうだろ」

「……そ、そもそもね、あんたが昨日逃げなかったらこんなことにならなかったのよ!」

「なんでそこで俺のせいになるんだよ」

「うるさいうるさい!とにかくあんたが悪いんだから、今日はミユキの家にお見舞いに行くわよ!」

「ちょっと待てよ、なんで俺の方が悪くて、お前が付き添いみたいなポジションなんだよ。逆だろ、逆」

「と、とにかく放課後にミユキの家に行くからね!今日は絶対に逃げたらダメだから!」

 そこまで言うとこちらの反論も聞かずに、ナナは自分の席に戻っていった。あからさまな逆切れだ。今日の授業はなんだかその濡れ衣を着せられているような言いようのない気分のまま過ぎて、気が付けばあっという間に放課後になった。

「さぁ、行くわよ!」

「なんでそんなテンション高いんだよお前は」

「う、うるさいわね、私は謝るのが苦手なの!」

「あぁ、そういうことね」

「なによ」

「いや、別にいいよ。だけど謝るのはお前自身でちゃんと謝るんだぞ」

「…わ、解ってるわよ。偉そうに」

 二人でミユキちゃんの家に行くと誰もいないのか、本人は寝ているのか応答が無かった。しばらく家の前で待ってみたものの、どうにもならなかったのでミユキちゃんの家から離れた。

「ミユキ、なんでいないんだろう?」

「寝てるか、病院に行ってるとかじゃないか?」

「そうなのかな…」

「まぁ、あまり心配するなよ。明日には元気になって出てくるって」

「……そう、だよね!うん」

「じゃぁ、帰りますか」

「私、緊張してたからお腹すいちゃったよ」

「いや、まだ緊張しとけよ。せめて謝るまではさ」

「え?それは明日ちゃんと緊張するよ」

「なんだよそれ」

「よし、とにかくお腹すいたからさ、何か食べようよ」

「何かってなんだよ」

「うーん、あ、そうだ。豚丼!豚丼がいい!」

「はぁ?豚丼ってあの豚丼屋の?」

「うん!」

「なんでまたあんなの食べたいんだよ」

「だって食べたことないんだもん」

「でも、この辺に豚丼屋なんてないだろ」

「私、知ってるよ」

「へぇ、どこにあるんだ?」

「南町商店街」

 そう言ったナナの目は、明らかに獲物を狙う目になっていた。どうやら拒否権はないらしく、引き摺られるように移動するその足取りは、駅へと向かっていた。




≪第六話へ
第八話へ≫

COMMENT

わ~豚丼出た~!
ありがとうございます~!!

私もお腹が空いてきました…
みんなと一緒に南町商店街に行きたいです(笑)
次回も楽しみにしています♪

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