POSITISM

適度に適当に。

07« 2017.08 »09
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アーケードの向こう側 - 第六話 -


ハコニワノベル

「ダメだ、死ぬ…」

 何度も身体を揺さぶられて目を覚ますと、窓の外はもう暗くなっていた。見上げるとカズミがフラフラしているのが見えた。

「なんだよ、どうした?」

「なんだよ、じゃない…晩御飯は?」

「いや、寝てたのは昨日お前が…」

「いいから早くー!早く何か作ってよー!じゃないと死んじゃう」

「それぐらいで死ぬわけないだろ」

 時計を見ると午後十一時になっていた。冷蔵庫の中を確認してたまねぎ、ハム、卵で簡単にチャーハンを作って盛り付けると、すぐにカズミが流し込むように食べて「生き返ったー」と言った。洗い物は面倒だったので水に浸けるだけにしてシャワーを浴びて、洗濯物を洗濯機にセットしてからベッドに戻った。しかしさっきまで眠っていたからなのかどうにも眠れず、仕方がないので取り入れるだけで放置していた洗濯物を畳むことにした。

「ん?なんだ、どうしたユウキ?」

「変な時間に目が覚めたから眠くなくなったんだよ」

「添い寝でもしてやろうか?」

「断る」

「なんでだよ、昔は毎日一緒に寝てたじゃないか」

「もう、ガキじゃないの」

「あんたなんかまだガキだよ」

「うるせーよ。あ、あと洗濯物ちゃんと出しとけよ」

「はいはい」

 カズミはそのまま冷蔵庫からりんご酢を取り出して飲み始めた。本人は「健康のため」と言っているが、多分ダイエットだろう。普段不摂生をしているから微妙に気にしていると思う。じゃなければあんなに大量に買い込むはずがない。飲み終わると「ぷはー」とかオヤジくさいことを言った。

「そう言えばさ」

「なんだよ」

「あんた昨日どこ行ってたわけ?」

「あれだけ何度も言わせておいて忘れてるのかよ」

「仕方ないだろ!飲めないお酒でも飲まなきゃやってられなかったんだから!」

「じゃぁ、飲むなよ」

「それはいいから、あんたどこに行ってたの?と言うか一人じゃないよな。誰と行ってたんだ?」

「……いや、べつに」

「女か!」

「!……」

「え、ほんとに女なの?かぁー、あんたも男だもんねぇ」

「いや、女は女だけど、別にそういうんじゃ…」

「ナナちゃんか?」

「!!……」

「図星かよ。まぁ、ナナちゃんは昔からあんたのこと好きだしねぇ」

「それはどうだろう…」

「は?あんた気付いてないわけ?はぁ、まったくいつの時代も男は鈍感だわ」

 そう言ってにやにやしながらカズミは俺の頭をぽんぽんと軽く叩いて部屋に向かう。自分の部屋のドアを閉めながら「ユウキ、変なことはするなよー」と言われた。

「しねーよ!」

 畳んだカズミの洗濯物をドアに投げつけた。するとドアが再び開いてカズミは顔だけを覗かせて「あと、家にはちゃんと帰って来いよ」と少し申し訳なさそうに言った。「解ってる」とだけ返すと、ドア付近に散乱した洗濯物を拾い上げてから「じゃ、おやすみ」と部屋の中に入っていった。残りの洗濯物を畳み終えてから、また自分の部屋のベッドへと戻った。



   ◇



「もしも、もしもだよ?もしも、私とミユキどっちかと付き合わないといけなかったら、あんた…どっちを選ぶ?」

「ほら、私…色眼鏡なしでも、可愛いでしょ?」

「私なら、ナナちゃんと違ってユウキ君のこと大切にするけどなぁ」

「ねぇ、どっちと付き合うの?」

「私?それともナナちゃん?」

『どっち?』

「俺は…俺は……」

「早く選びなさいよ!」

「ユウキ君、どっちを選ぶの?」

『どっち?』

「俺は…えっと……」



   ◇



「どっちとか解らねーよ!」

 それが夢で、今叫んだのが盛大な寝言だと気が付くのにしばらく時間がかかった。時計を見ると午前五時を十分ほど過ぎている。夢の中でナナとミユキちゃんに詰め寄られていた。なんとなく、今日学校に行くとそうなるんじゃないかと思ってしまった。もう一度眠ろうとベッドに潜り込んでみるものの、さっきまで見ていた夢が頭の中で何度も再生されて眠れない。なんだか悶々としてしまうので、起き上がって冷蔵庫の中にあるカズミのりんご酢を一つ取り出して飲んだ。思ったよりも酸っぱくてむせた。
 ──突然、玄関扉が開く。

「わっ!なんだユウキか。驚かすなよ」

「それは…げほげほ、こっちの、げほ、台詞だ」

「ん?あー!私のりんご酢!何勝手に飲んでるんだよ!」

「いいじゃないか、こんだけ大量に買い込んでるんだから」

「いや良くないぞ。人のものを勝手に飲んでしまうなんて」

「お前は俺の買っておいたジュースを勝手に飲んでるじゃないか」

「だって、名前書いてなかったもん」

「いや、これにだって名前書いてないじゃないか」

「書いてあるよー?底見てみ」

 突き出したりんご酢の紙パックを持ち上げて、底を見ると『カズミの♪』と書かれている。なんでこんなとこにだけマメなんだ。こういう部分じゃなくて部屋を片付けるとか、一般的な大人と同じ生活を送るとか、そういうことにエネルギーを使って欲しい。

「どうだ、まいったか」

「そんな自信満々に言うことかよ」

「ま、解ったならそれでいい。次から勝手に飲むなよー」

「はいはい」

「『はい』は一回」

「…はーい」

 カズミは満足げに玄関から入ると、カバンを自分の部屋に投げ入れてゴソゴソと発掘作業をし始める。「あったあった」と言いながら自分の下着を高々と掲げながら部屋から出てきた。その一部始終を力なく見ていると「どうした?一緒に入りたくなったか?」と聞いてきたが、返すのも面倒でため息だけ吐いた。カズミは勝ち誇ったように浴室へと向かっていった。りんご酢の紙パックをゴミ箱に入れて、冷蔵庫の中にあるジュースのペットボトルにでかでかと『ユウキ』とマジックで書いておいた。

「そう言えば今、カズミ外から戻って来たよな…」

 カズミは毎日部屋に引き篭もってると思っていたけれど、もしかすると夜遅くに働きに出ているのかもしれないと思った。今までカズミに言った暴言を思い出していたら動けなくなった。そのまましばらくするとカズミが浴室から出てきた。

「んー?おーいユウキ、どうした?」

「いや、お前さ…、もしかして夜遅くに働いてるのか?」

「なんだ、突然」

「いや、だからさ、夜働いてるのか?って聞いてるんだよ」

「それがどうかしたのか?」

「……わ、わるかったよ」

「何だ?さっきのりんご酢のことか?それなら別にそこまで気にするなよ」

「そうじゃなくて、今まで引き篭もりとか言ってたこと…」

「はぁ?」

「だから、引き篭もりとか言って悪かったって言ってんの!」

「お前なぁ…」

 そこまで言うとカズミは急に俺を抱きしめた。まだ濡れてる髪からシャンプーの香がする。

「ガキが変なこと気にするなよ。親なら働いて当然だろ?これでもお前の保護者なんだぞ」

 泣きそうになるのを我慢して、両腕でカズミを押しのけた。冷蔵庫の中からペットボトルを取り出して突き出す。

「なんだよ、これ?またお前名前でか過ぎだろ」

「これは俺のジュースだけど、お前も飲んでいいからな!」

 そこまで言ってから走って自分のベッドに潜り込んで、きつく目を閉じた。




≪第五話へ
第七話へ≫

COMMENT

始まってるぅー(相変わらず遅いKYな私)
キーワード使われてるぅー!!
そうそう、健康にいいのよw


うちの息子、こんなモテ男にならないかなぁ(妄想)

か、かわいい。。。。。

こーゆー息子ほしー、血つながってなくてもいいー

ユウキ、カワユス~~~(萌

FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。