POSITISM

適度に適当に。

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アーケードの向こう側 - 第三話 -


ハコニワノベル

 なんとか耳を開放してもらったものの、まだジンジンと痛みが残っている。初めて足を踏み入れた『フツウのアーケード』は入り口付近よりも奥の方がさらに幅が狭くなっているみたいだ。小さな外灯が間をおいて設置されているだけで、辺りはかなり暗い。

「ね、ねぇ、どっちに逃げたと思う?」

「追いかけない方がよくないか?」

「な、なんでよ!」

「まずさ、今の人影が窃盗団かどうかなんて解らないだろ。それに、仮に窃盗団だとしてさ、深追いしたらこっちが狙われるんじゃないか?少なくとも向こうの方がここの地理は知ってるだろうし、待ち伏せされてたら勝ち目ないぞ」

「嫌!絶対に捕まえてやるんだから!いいよ、ユウキは先に帰りなよ!」

「……あぁ、もう!待てって。一度だけだぞ?右か左、どっちかを見に行って何も無かったら今日は帰る。いいか?」

「う、うん。そ、それでいいよ…」

 そう言いながらナナは俺のシャツを強く引っ張る。どうやら先に歩かないといけないのは俺らしい。右の道も左の道も外灯がなく覗き込んでも暗いだけで、なにがどうなっているのかここからだと解らない。迷路などで迷ったときは左手を壁に付けて、その手を離さないように進めば出口か入り口に辿り着くという、以前読んだ本の内容を思い出した。冷静に考えれば当たり前の知識ではるものの、とっさに出てきたその知識にすがることにした。左手を左側にある店の閉じられたシャッターへ付け、右手でナナの左手を握った。

「いいか、絶対に俺の手を離すなよ?」

「…うん」

 少し強くナナが握り返してきて痛かったけれど、そのまま左手を左側にある建物や、柱などに付けながら左側の道をゆっくりと進む。視界に外灯が入らないので、ほぼ真っ暗なその道を進んでいく。物静かなアーケード内に二人の足音だけが響く。黙って歩いているとどうしても不安になるので口を開いた。

「誰もいないな」

「…」

「なんか言えって。こっちまで怖くなるだろ?」

「…ない、もん」

「ん?」

「怖くないもん…」

「……そうだよな。怖くないよな。うん。俺も怖くないぞ」

 ナナが繋いでいる手を更に強く握った。握ったままで軽くとんとんとその手を振り、落ち着かせる。するとナナは一度手を離すと腕を組んでから手を握ってきた。くっついたナナの身体から心音が伝わってくるような気がする。相変わらず左手は左側にあるなにかに触れたままなのでのろのろと進んでいく。次第に暗闇に目が慣れたのか、うっすらとアーケード内に存在する店などが見えるようになった。

「なぁ、噂の窃盗団は何でこんな場所に現れるんだ?」

「…最初はね、この『フツウのアーケード』に何かすごいお宝が隠されてると思ってたの」

「まぁ、ここにはそんな宝物なんて無いだろうな」

「うん。それでね、考えてたんだけど…ここに何かあるから現れるんじゃなくて、ここから現れてるんじゃないかなって」

「つまり、ここが窃盗団のアジトみたいなものってこと?」

「…う、うん」

「仮にそれが正しかったら、俺たちは今、その窃盗団のアジトへと潜入してしまってるわけだ。何の準備もなく…」

「ち、ちょっと!怖がらせないでよ」

「いや、お前はさ、もうちょっと準備したり、周りの話を聞いてから行動しないといけないと思う」

「べ、別にいつだって大丈夫じゃない!」

「そうか?今回も大丈夫には見えないだろ。ナナはさ、いつも迂闊なんだよ」

「う、うるさいな!大丈夫だったら大丈夫なの!」

 ──突然、後ろでカランカランと空き缶が転がるような音がした。
 二人とも後ろを振り向いてからゆっくりとお互いの顔を見合わせて、まるで打ち合わせでもしたかのように同時に走り出した。ずっと何かに付けていた左手を離し、ナナの手を離さないようにして走る、走る、走る。どれぐらい走ったのか解らないけれど外灯が見え、更にその視界の先に淡い光が見えた。二人でその光へ飛び込んだ。

「はぁはぁ…、ナナ!大丈夫…か?」

「だ、大丈夫…」

 二人とも呼吸がなかなか整わない。近くにあった外灯の下へ移動して二人でしゃがみ込んだ。

「誰かいたのかな?」

「必死で走ってたから解らないや」

「俺もだ」

 そこまで言って二人で顔を見合わせて笑った。どちらともなく繋いだままの手を見て慌てて振りほどいた。

「怖かったな」

「わ、私は別に怖くなかったもん」

「そうかぁ?まぁ、そう言うならそれでいいけどさ」

「あ…」

「どうした?」

「いや、その…、大丈夫じゃないよ」

「何が?」

「だって、ホラ!」

 そう言ってナナが指差した先を見ると、剥げかけのペンキで『南凪町アーケード』と書かれている看板が見えた。

「ん?『フツウのアーケード』がどうかした?」

「違うわよ、バカ!」

「バカって言うやつがバカなんだろ」

「もう!くだらないことはいいの!ほら、あれよ!」

 もう一度見る。そこには『フツウのアーケード』の入り口が見えるだけだ。──入り口?

「なぁ、ナナ。俺たちって後ろに向かって走ったっけ?」

「でしょ?私達、後ろから空き缶か何かの音が聞こえて、奥に向かって走ったじゃない」

「そう、だよな…」

「ずっと奥に向かって走ってたのに…」

「曲がった記憶も無いよな…」

「それなのに出てきたのは最初に入った入り口…」

「おいおい…ほんとかよ。ということは…」

「やっぱり、『不通』なんだ!通り抜けられないのよ、あのアーケード!」

 ナナは興奮して目がキラキラしている。さっきまで怯えてたナナとは別人にすら見える。ナナはその後も「すごい!本当に通り抜けられなかった!」と大声ではしゃいでいた。

「というかさ、あの人影はなんだったんだろうな?」

「窃盗団に間違いないよ」

「いや、決め付けるなよ」

「そうに違いないわ」

「ふーん。あ、でもさ、ここにいたら危なくないか?」

 そう言って二人で目を合わせると「きゃー」とか「わー」と叫び声をあげながら二人で駅まで走った。時刻は午後九時半を少し過ぎている。息も整えないままに電車に乗った。またしても俺が電車賃を出したけど、今はとにかく電車に乗って安全な場所へ逃げたい気持ちでいっぱいで、気にならなかった。
 電車を降り、ナナの家まで歩いた。その最中ずっとナナは興奮していて「噂が噂じゃなくなった瞬間だよ!」とか「私達が最初の証人だからね!」と終始テンションが高かった。ナナの家に到着すると、ナナの家は真っ暗だった。どうやらまだ誰も帰ってきていないらしい。

「送ってくれてありがとう」

「おう。じゃあな」

「ちょっと待ちなさいよ」

「なんだよ」

「今日は、その、ありがと」

「えらく素直だな」

「ユウキって、意外と頼りになるんだね」

「まぁね。だけどそこは自分でも驚いてるよ」

「じゃ、明日もよろしく。じゃあね、おやすみ」

「おーう…って明日?『明日も』ってなんだよ!」

 振り向いたものの、ナナの家の玄関扉は正しく閉まり、鍵をかける音がした。閉まる寸前の扉の隙間から見えたナナの顔は悪戯をしてるときのように少しだけ舌が出ていて、不覚にも可愛いと思ってしまった。




≪第ニ話へ
第四話へ≫

COMMENT

なんでまた入り口??
ねぇ、なんでー?!
空き缶転がしたの誰だー??
うーん…(悩)

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