POSITISM

適度に適当に。

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アーケードの向こう側 - 第ニ話 -


ハコニワノベル

 時刻は六時四十五分。このまま走り続ければなんとか七時には駅に着けるはず。少しでも遅れたら、ナナに何をされるか解らない。奥歯を噛み締めて走る、走る、走る。

「お、来た来た。時間ギリギリね。まぁ、私も来たところだし許してあげよう」

「それは、はぁはぁ、ありがたいよ。ほんとに」

「さ、行こうか」

 やっと駅前に着いたと思ったら、すぐにナナは移動を始めた。どうやら電車で南町まで行くらしい。なぜかナナの分まで切符を買わされて、南町へと向かう。

「あのさ、聞きたかったんだけど、南町の商店街に行ってどうするわけ?」

「まず張り込みよね。それから窃盗団が現れたら、捕まえて警察に突き出すのよ」

「現れなかったら?」

「えっ?……え、えーっと」

「現れないことは考えてなかったわけね」

「だ、大丈夫よ。きっと現れるはずだから」

「はいはい。とりあえず遅くなりすぎないように帰るからな」

「ダメ。現れるまで帰らない!」

「あのな、俺はいいけどお前は親に心配かけんなよ」

「大丈夫だって、今日はパパもママも遅くなるって言ってたし」

「だからって無理しても仕方ないだろ」

「え…ユウキ、もしかして…心配してくれてるの?」

(どちらかと言うと、無茶するお前に振り回される俺を心配してるけどな)

「ユウキ…、あんた私のこと……好きなんでしょ?」

「……なんでそうなるんだ」

「照れなくていいよ?ほら、私…色眼鏡なしでも、うん。可愛いし」

 窓に映りこんだ自分の姿を何度も確認しながら、ナナはうっとりとした表情で自分を可愛いと何度も言っていた。その自己泥酔が最高潮になったのとほぼ同時に、電車は南町へと到着した。改札を出て商店街へと向かう。仕事帰りのまばらな人並みに紛れて歩くと、すぐに商店街が見えてきた。商店街の入り口には『南町商店街』とでかでかと書いてある。商店街を覗き込むと午後七時半を過ぎているからなのか、開いている店はまばらで、ほとんどの店はシャッターが下りている。
 この商店街を三分の二ほど進んだ先に、路地裏のような『南凪町アーケード』という小さな別の商店街がある。ここが例の噂の『通り抜けられない商店街』だ。学校の七不思議みたいな噂話と同じで、あまりにも人通りが少ないことを除けばいたって『普通』の商店街であるので、いつしか『不通』と呼ばれるようになり、いつの間にか『通り抜けられない商店街』という噂に発展していったもので、信憑性はまったくといってない。本当に通り抜けられないのかどうかを確かめようとするやつがいないので、この噂話は人気がない。唯一人を除いて。

「私、前々から確かめてみたかったんだよね」

「それなら明るいときに行けよ。なんでわざわざ夜に行くんだ」

「ユウキは怖がりだなぁ。夜だからいいんじゃない。それに、今日はそっちじゃなくて窃盗団逮捕だよ」

「逮捕ねぇ…まずはさ。その窃盗団の噂の真偽を確認することだろ?」

「まぁ、いいじゃない。あ、あそこのパン屋まだあいてるから寄ろう」

 ズルズル引き摺られるようにパン屋に入り、あんぱんと紙パックの牛乳をそれぞれ二つ買った。もちろん支払いはこちらだ。なんでも張り込みには絶対必要なものらしい。二人であんぱんをかじりながら商店街を進んでいく。次第に人気がなくなっていた。

「流石にこんな時間にここを通る人もほとんどいないな」

「…う、うん」

 急に腕を組まれた。心なしかナナが震えているような気がする。

「なんだよ、怖がってるのか?」

「ち、違うよ。ちょっとドキドキしてるだけだって」

「そういうの怖がってるって言うんじゃないの?」

「あ、『フツウのアーケード』見えた」

 ナナが指差す方を見ると小さな看板と、ほんの数メートルの幅の横道が続いている。近付いて覗き込んでみると確かに小さな商店街のようになっている。看板には『南凪町アーケード』と剥げかけのペンキで書かれているし、足元は所々が崩れてはいるものの、丁寧にレンガが敷き詰められている。噂にされるだけはあってまったく人気はない。もちろん金目の物なんてあるとも思えない。こんな場所に窃盗団なんて出るわけがない。

「で、いつまで腕組んでたらいいの?」

「ちょっ!あんた何勝手に私と腕組んでるのよ!」

 勢い良く頭を叩かれながら「そっちから組んで来ただろ」と思ったものの、どちらにせよめんどくさそうなので黙った。「よし、張り込み開始よ」とナナが宣言し、俺たちは『フツウのアーケード』の入り口が見える位置で、格好だけは柱に隠れるようにして張り込みを開始した。
 時間が過ぎるほどに人通りはなくなっていく。気が付けば辺りに誰も見当たらなくなった。商店街の店もすべてシャッターが下りて、頼りない外灯だけが光り続けていた。ナナは紙パックの牛乳をちまちま飲みながら『フツウのアーケード』を凝視している。今なら蟻の進入ですら発見してしまいそうだ。腕時計を確認すると午後九時になったところだった。

「現れないな」

「きっと用心深いのよ」

「ほんと、ナナはポジティブだよな」

「しっ!しゃべってると見付かっちゃうでしょ!」

「なら大きい声だすなよ」

 ナナはそれ以上何も言わずにじっと入り口を凝視し続けている。元々乗り気じゃなかったのもあり、既にこの張り込む行為に飽きたので、壁に寄りかかってズボンのポケットからガムを取り出して口に入れた。ナナはしゃがんで柱から顔だけ出していた。薄手の白いパーカーに、張り込みをするつもりがあるのかないのか解らない目立つ蛍光イエローのTシャツ。ローライズのデニムにごつめのベルトを巻いて、スニーカーを履いている。しゃがんでいるので背中が少し飛び出ていた。その姿を後ろから見て、不意にナナが女の子なんだと意識してしまった。
 幼稚園の頃にナナと毎日遊んでいたからなのか、あまりナナを女の子として見た事が無かった。活発で男勝りなナナに振り回されるばかりだったからかもしれない。でも今日のナナは腕を組んできたり、少し怯えていたりと女の子らしい素振りをしていた。小さい頃はいじめられて良く泣かされていたのが不思議なほど、ナナはナナらしさを残したままで、女の子になっているみたいだ。

「ちょっと!隠れて!」

 急に腕を引っ張られてナナと密着してしゃがむ格好になった。変なことを考えていたからなのか、妙に意識してしまう。「ほら、あれ見て…」とナナが言うものの、どうしてもナナの方をまともに見る事が出来なかった。──その瞬間。

「痛っ!」

 思い切り耳を引っ張られていた。それこそ千切れるほどの力でグイグイと引っ張られ、ナナが指し示す方向に無理やり顔を向けさせられた。視線の先は『フツウのアーケード』がある。ただ、さっきと違うのはそのアーケードの中に人影が見えている。

「え?嘘だろ…」

「ほら、本当だったでしょ?」

「いや、違うだろ」

「逃げたら窃盗団の一員に間違いないわ…ってほら逃げた!」

 人影はこちらに気が付いた素振りを見せてから一目散にアーケードの中へと消えていく。「待ちなさい!」と叫びながらナナが走り出した。左手はまだ俺の耳を掴んだままで、ナナが加速すたびに激痛が走る。アーケードの奥へどんどん突き進むと小さな商店らしい店を境にアーケードがY字で左右二手に分かれている場所に突き当たった。

「どっちかな?」

「とりあえず、耳、離してくれないか?」




≪第一話へ
第三話へ≫

COMMENT

きゃ~!もう始まってる~!!
今回は男の子が主人公なんですね☆
かわいい女の子に囲まれて羨ましい~
『フツウのアーケード』どんなアーケードなのか気になります…
今回もどんなお話になるのか楽しみです♪

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