POSITISM

適度に適当に。

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ある、サクラの季節 - 11:一年三組、しのめん先生! -


ハコニワノベル

「はい!はい!はい!はい!はい!はい!」

 勢いよく教室のドアを開ける。

「よっしゃー!みんな座れー!自分の席に着けよー!」

 教室中から視線を一気に集める。なんて快感なんだろうか。ボルテージがどんどん上がっていく。

「よっし、自分の席解るか?席着いたかー?はい、よーし!えー、この一年三組の担任をすることになりました、はい、みんなちょっと黒板に注目な」

『志野山 麺真』

「はーい、先生の名前は志野山麺真です。これで、しのやま、めんしんと読みます。
  よくね、メンマなんて読む人がいるけどー、…若干傷つくからやめてね?
  君達と同じで、今年この桜花坂高等学校に赴任してきました。二十七歳のナイスガイです。
  あ、担当は数学ね」


 若干、一年三組全員が引いている。当然だ、いきなり現れた人をいきなり信頼できるわけがない。若い子はデリケートなのだから。ここはひとつ自己紹介をしておこう。


「実家は農家でブランド米作ってます。『みっこまい』って知ってる?
  まぁいいや、そんなお米を作ってます。先生ね、農家を継ごうと、こう思ってた。
  でも、先生のお父さんに断られました。なんで?って聞いたら
  『お前には無理』って言われました。あれは悲しかったなぁ。
  それから必死に勉強して、今君たちの前に立たせてもらってます。
  初めて担任を持つ新米ですが、どうぞよろしく」


 何人かの生徒が笑っている。よしよし。


「はい!というわけで、志野山麺真、略してしのめん先生が、君達の担任です。
  じゃぁ、ちょっと呼んでみようか?せーの……、おーい恥ずかしがっちゃダメだよ。
  いっぺん呼んでみ?ほら、いくぞ?せーの…」

「し、しのめん先生」

「あー、来ちゃった。今、君達の熱い思いが、先生の胸にズバンと来ました。
  よーし、それじゃぁ、さっさとやることやって、明日からの素敵な高校生活を
  エンジョイしましょうか」


 徐々にクラス内の雰囲気が一つになってきている、ような気がした。


「よーし、じゃ、今日やらなきゃいけないことを黒板に書いていきまーす。
  はい、まず皆さんの机の中に封筒が入ってます。その封筒の中身の説明をします。
  次に、明日の予定、持ってくるものなどの連絡をします。
  ほんでその次に、皆さんに自己紹介をしてもらいます。
  そして最期に、学級委員と副委員を決めます。そしたら帰ります。いいですか?」


 クラス全体を見回す。遅れているような生徒がいないことを確認して、先へ進む。


「よし、じゃぁ、まず机の中の封筒を出して下さい。その中に、桜花坂高校で
  生き抜いていくために、必要なことと、不必要なことが書いてあります。
  この、冊子になってるしおりについては、帰ってからでも軽く目を通しておいて下さい。
  で、A3サイズの、はいこれね、この大きいプリントは保護者の方に記入してもらって、
  明日。いいですか?明日、必ず持ってきてください。
  これ、まず重要だから忘れないように」


 『A3サイズのプリント→保護者の方に記入してもらう→明日提出』と黒板に黄色で板書してから、クラス全体がそのプリントに目を通したことを確認する。チョークを置き、手を二度三度払ってから続ける。


「次にこのB5サイズのプリント…あ、これはいいや。
  これは生徒会長選挙についての連絡が書いてあります。
  要約すると、候補者の演説を聴いて投票するという、
  ベーシックな生徒会長選挙があるよ。という内容です。ちなみに今週の金曜日にあります。
  はい、えーっと、こっちのA4サイズのプリントに、一年間の行事予定が書いてあります。
  サッっと目を通しておいてください。ちなみに先生の誕生日は九月です。メモしてもいいぞ」


 全員が追いついてきていることを確認すると、一人遅れているのが解った。すかさずフォローに入る。


「はい、えーっと、早川さん?大丈夫?」

「だ、大丈夫です!た、たぶん」

「もし、解らなかったら言って下さいね」

「あ、はい…」


 少し待つと、早川さんも追いついた。一呼吸置いてから続ける。


「はーい、それからこっちのプリント、あー、この赤色のやつね。
  ここに、この桜花坂高校の主な施設の場所案内が書いてあります。
  トイレや購買、それから避難経路まで書いてあるので一通り覚えておいて下さい。
  見ても解らない場合は実際に歩いて見てください。先生もまだ覚えきれてません。
  さっきもこの教室に来るのに随分迷いました。
  よーし、これでひとつめおしまい。お次は、なんだっけ?あぁ、明日の予定連絡ね。
  明日の予定は…あー、これはちゃんとメモしておいて下さいね」


 全員が筆記用具とメモ帳を取り出すのを確認する。


「明日は午前中にレクリエーション、まぁ簡単に桜花坂高校での生活についてを
  学年主任の先生とかから基本的に面白く無く説明されると思います。
  そしてお弁当を食べてから、午後は部活動の紹介があって、
  最後に、教科書の配布があります。
  なので、明日持ってくるものはー、筆記用具、それからメモ帳、お弁当の三点セット。
  それから、さっき説明した、このA3サイズのプリント、
  もちろん保護者の方に記入してもらったもの。以上4つを忘れないように。
  教科書は手で持てるように梱包されてるらしいので、大きなカバンなどは不要です」


 全員が必死にメモしている。重要な部分を簡単に黒板に板書しておく。しばらくして、全員の顔が上がり始めたので、続ける。


「はいはいはい、よーし、それじゃ一年間一緒に過ごす仲間をもっともっと知るために、
  自己紹介いってみようかー。何を言えばいいのか解らない!なんて言って
  時間だけがだらだら過ぎるのはもったいないから、うーん、そうだな…
  名前と【趣味】それから【特技】、あと【夢】、を大いに紹介して下さい。
  何か一言あればついでにどうぞ。テンポ良くいこうか」


 がやがやと教室が騒がしくなる。この生徒達が何を言ってくるんだろうという期待が膨らんだ。


「よし、まずは先生な。
  志野山麺真です!
  趣味はボウリング。
  特技はカラオケ。
  夢は自分が担任をした生徒全員が幸せになること!
  みんなで楽しい一年三組にしていこうぜ!
  はい、先生の顔覚えとけよー。
  みんなも、クラスの仲間の顔と名前を覚えちゃうように。
  先生も一生懸命みんなのこと覚えるからなー。
  それから、自己紹介が終わったら拍手。はい、拍手!」


 パチパチパチとまばらな拍手が巻き起こった。


「よっしゃー、それじゃ、出席番号順でいってみよう!どうぞ!」

「あ、青田夏芽です。
  趣味はライヴに行くことと、野球観戦。それから献血にも行きます。
  特技は携帯で長文が打てます。よく電話の方が早いよって言われます。
  夢は…えーっと、んー、寝て見るものです」

「はい、オッケー。趣味で献血というのがすごい。
  ちなみに先生はAB型です。ほとんどの人にB型と言われます。
  はい、みんな、青田さんに拍手!それじゃぁ次の人」

「赤木智津子ですー。
  趣味はー、ひなたぼっこ。
  特技は、んーと、お昼寝。
  夢は時間を操れるようになりたいです。ずっと二度寝とかできるからー」

「よーし、春は眠たくなる季節だけど、遅刻とかしない程度にしっかり寝て
  学校では居眠りしないように気をつけよう。よーし、次」


 ──自己紹介は進んでいく。


「磯貝 茂です。
  趣味は娘を抱っこすることで
  特技は娘を泣かしたり、泣かれること。
  夢は娘から「なんじゃワレ!」って顔をされないことです。
  ちなみに、まだ娘はいません。
  後ろに座ってる門脇瑠伊と結婚して可愛い娘を授かる予定です」

「今のプロポーズじゃない?オッケー、そのプロポーズを受けて次!」

「はい、門脇 瑠伊です。
  えっと、まずプロポーズですが、ごめんなさい」

「えー!なんでー?」

「茂、まぁ黙ってて」

 ごほんと一度咳払いをしてから、門脇瑠伊は続けた。

「趣味はサッカーとブログです。
  特技は勉強しているふりをすることです。
  夢は、そうだなぁ…保険金3億円の受取人になることです」

「サスペンスな夢だなぁ。あと磯貝君、断られちゃって残念。
  保険金かけられないように気をつけて!
  それから先生の授業中はきちんと授業受けようね。はい!次」

「はいどうも、北島弘之です。
  趣味は深夜徘徊して素敵な女性に出会うことです。
  特技はいい女をズンと落とせるナンパです。
  夢は、そうだな…、夢オチってことで」

「えーっと、素敵な女性がいたら先生にも紹介してください。よっし次」


 スピーディに自己紹介が進んでいく。最近の若者の傾向なのか、ほぼ全員の夢があまり希望に満ち溢れていないように感じた。


「瀬川透です。
  趣味は音楽鑑賞。
  特技はベースギター。
  夢は孫に囲まれて死ぬこと」

「淡々としてるなぁ、今度先生にもギター聴かせてくれな?
  ちなみに先生の得意な楽器はカスタネットです。よし、次」

「大河志津です。
  趣味は読書、音楽鑑賞、映画鑑賞。もう乙女の王道やね。
  特技はマジボケ。今日もな、お家に帰れんくなったわ…、いやほんまに。
  夢は年収一千万!」

「家なき子みたいになってるけど大丈夫?
  困ったことがあったら先生に相談するんだよ?お金はないけど。はーい、次」


 ──自己紹介は続く。ここにいる三十二人全員を一気に覚えるように、集中して聞いていく。


「中西美知恵です。
  趣味はブログ、それからスロット…じゃなくてタロット。
  特技は肩の関節を自由に鳴らせます。ほら!(パキィ)
  夢は笑顔で死ぬことです」

「今一瞬スロットって言わなかった?気のせい?まぁ、いいか。はい、次どうぞー」


 自己紹介を半分の人数がやり終わると、徐々にリラックスムードになっていく。自己紹介を終えたものはホッとした表情になり、順番が近付いている者は少し顔が強張っている。


「野田君、君は食べることがとても好きそうだなー。早弁とかするなよー。はい、次」

「早川琉々です。
  趣味は和装で、毎週着付け教室に通ってます。あとはオンラインゲームを少々。
  特技はマシンガントークと、妄想。
  夢は猫と愛する人とおだやかに人生をまっとうすることです」

「早川さん、今日の入学式中に寝てなかった?え?目を閉じてただけ?まぁ、いいか。
  えーっとね、なんかさぁ、みんな人生の終わりについての夢多くない?十代でしょ?
  もっとこう若さ溢れる夢、語っちゃってもいいんだぞ?よーし、次いってみよう」

「春野ひなたです。
  趣味は飲む。寝る。しゃべる。
  特技は電話番号とか数字の暗記です。
  夢は専業主婦」

「はい来たね、数字の暗記。先生ね、数学担当だからね。
  これは先生に対するナイスアピールですよ。先生も数字の暗記が得意です。
  自分の預金通帳の残高とか絶対に忘れません。三十円です。
  あと飲むについては過大解釈してカルピスにしておきます。はい次」

「馬子大介です。
  趣味はボクシング、ランニング、ビリヤードです。
  特技は整体、足ツボ、それから車の…自転車の運転。
  夢は自分の治療所を構えて、カリスマ施術者として活動すること。
  それから、さっき中西さんが肩の間接を鳴らしていたのが心配なので
  あとでちょっと診せて頂きたいです」

「おっと、いきなりこのクラスに整骨院が出来そうで、先生嬉しい。
  ちなみに車の免許は十八歳になってからね。よし、次」

「真崎拓郎です。
  趣味は猫をもふもふすること。
  特技は寝ること。
  夢はちゃんと猫を飼えるようになることです」

「並々ならぬ猫への愛が伝わってくる自己紹介!
  ちなみに先生は爬虫類が大好きです。カエルとか最高。よっしゃ次の人どうぞ」

「丸井鈴音です。
  趣味はお話を書いてブログにしてます。あとはお菓子作り。
  特技は妄想するのと、物忘れの早さ。
  夢はまっとうな妻と母になることです」

「はい。お菓子作りの得意な奥さんを先生も探しています。それじゃぁ、次の人」


 まだ自己紹介をしていない生徒も残りわずかになってきた。テンポよく自己紹介を進めているのか、全員あまりダレていない。間を空けないようにすればダレることも少ないようだ。こっそりメモ書きをしておく。
 ──自己紹介は最期の列に入った。


「みなみで…じゃないや、南野奈津です。
  趣味はシロツメ草でティアラをつくること。
  特技は薄暗い中でもヴァイオリンの弓がひけることです。
  夢はタンポポの綿毛につかまって虹のむこうまで飛んでいくことです」

「おー、ヴァイオリン弾けるなんてすごいなぁ。
  あと夢はあれだ、束縛している何かからの解放を望んでる気がするよね。
  はーい、その次の方どうぞ」

「武藤有紀です。
  趣味は長旅。
  特技は物理と数学です。
  夢は建築家になること」

「はい来たね、特技数字。先生ね、数学担当だからね。
  これは先生に対するナイスアピールですよ。お手並み拝見していくのでよろしく。
  よーし、次」

「山口ともこです。
  趣味はネット徘徊です。
  特技はいつでもうっかりすること。
  夢はやっぱりマイホーム!」

「先生もマイホームが欲しいです。暖かい家庭に憧れてます。
  預金残高三十円じゃ、銀行もローンを組んでくれません。
  残り三名になりました、どんどん行こうか」


 自己紹介は淡々とリズミカルに進んだ。腕時計を確認してから、手にしたレジュメに目を通す。


(予測タイムよりも五分近く早い。このクラス、ノリが良さそうだ。授業のリズムもこの感じで進めるといいかもしれない)


 ──そして自己紹介は残り一人。


「はい、それでは三十二人の大トリ、いってみよう!」

「渡瀬香です。
  趣味はマンガと本を読むこと。小物作りも少々。
  早川さんと同じ着付け教室に通っていて、和装が趣味です。あとは音楽を聞くこと。
  特技はどこでも寝れることかしら。
  夢は、愛し愛されて生きていきたいです」

「多趣味で素晴らしいなぁ。あと和装が若干流行ってるのかな?
  先生も和装に興味が出てきました。機会があったら教えてください。
  よーし、これで全員終わったなー。
  同じクラスのメンバーを早く覚えて、楽しい高校生活にしていこう。
  はーい、それじゃぁ、この一年三組をまとめていく学級委員と副委員を決めますか」


 教室の中は今までと違うざわめきに変わった。こちらからの視線を避けていくのが良く解る。
 自分が学生の頃、授業の問題をあてられるときや、こうした委員などを決めたりするときに、先生の視線をそれとなく逸らしていたのを思い出した。今こうして教壇の上から見渡すと、そのそれとなくが明らかに故意に避けているのが解るし、学生の頃は気付いていないだろうと思っていたようなことも、実際は丸見えになることに気が付いた。それがなぜか微笑ましく思える。

「さぁて、決めるぞー」




≪10:ミッション開始へ
最終話:夢をかなえる方程式へ≫

COMMENT

おおっ、武藤=muuだったのか。
気付かんかった。
  • 2008.04.17[木]
  • muu

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