POSITISM

適度に適当に。

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ある、サクラの季節 - 10:ミッション開始 -


ハコニワノベル

「ボス、こちらシズ。AD2008、桜花坂ハイスクールに到着しました」

「OK、それでは今回のミッションを説明する」

「ラジャー」

 旧文明時代への任務が決まったときは飛び上がるほど嬉しかった。T.P(タイム・パトロール)のエージェントになってから、ずっと大幅な時間軸を越えての任務を志願し続けていた。そして念願が叶って今回、私に二千年ほど過去に遡る重要な任務を命じられることになった。喜び勇んでタイム・ワープ装置でAD2008という旧文明時代へと足を踏み入れた。
 右耳に装着した時空間通信装置を右手で触れる。その小さな装置から二千年先にある私の時代からの通信が行われる。ミツバッチリ上官は続けた。

「今回のミッションは未来から過去へ渡ったと思わしき者の調査、及び必要があれば処分することだ。簡単なミッションではあるが、君はまだまだ実戦経験が少ない。慢心せず、慎重かつ確実に遂行したまえ」

「ラジャー。ターゲットの情報は?」

「ターゲットの名前は笹川篤志。男。その時代で言うと十八歳。桜花坂ハイスクールに通っている」

「その笹川を調査し、未来を歪ますほど歴史に大きく影響する場合は処分」

「歴史に大きく影響がないと判断し、こちらでその確認が出来れば、その時点でミッションコンプリートだ。どうだ、簡単なミッションだろう?」

「処分だけなら二時間で終わらせますが?」

「ちょ、お前怖いな!なに言っちゃってんの?T.Pエージェントはそういう暗殺部隊じゃないから。あくまで時空間に影響が起きないようにパトロールする機関だから」

「ちっ」

「今、舌打ちした?ねぇ、上官に舌打ちした?」

「いいえ。通信機器にノイズが入ったのでは?」

「まぁ、いいけどさ。とにかく必要なければ処分しちゃダメだからね。それこそ歴史が変わる出来事になってしまうから。そしたら君が罪人として追われることになる」

「ということは、確実にターゲットだと認識せずに処分は出来ないのか…、残念」

「あのさ!それ無差別過ぎるでしょ?絶対ダメだかんね!本当は新人に一年以上のタイム・ワープは認められてないんだから。君が無理やりタイム・ワープしたがるから、難易度の低い任務をやっと見つけて…」

「そろそろ任務開始していいですか?」

「ねぇ!人の話とか聞いてる?とりあえずその時代の人達に、自分が未来から来たことを知られないように。それから君が起こす行動が未来に大きな歪を生み出す可能性があるということを、しっかり認識して節度ある行動をすること」

「あー、はいはい」

「適当に流すな!絶対忘れんなよ!それから、右腕に付けてる腕時計は…」

「あー、コレって麻酔針とか打てる?ねぇ、打てる?」

「打てません。その時代の漫画じゃないかそれ。真実はいつもひとつ!やかましいわ!もう疲れてきたから一回だけしか説明しないからね。その腕時計の横にある二つのボタンを同時に押すと、三回だけ時間を止めることが出来るから。いいか、三回だけだぞ。面白そうだからとかって押したら…」

 ──目の前を舞い散るサクラの花びらが静止した。
 再び腕時計の二つのボタンを押すと静止していた花びらが舞い落ちた。

「すげー、本当に止まったよ」

「もう好きにしていいよ。あぁ、それから任務中はコードネームで呼ぶ。君のコードネームは『タイガー』だ。では、今回の任務成功を祈ってるぞ、タイガー。その時代に君が潜入するための措置は全て整っている。君は桜花坂ハイスクールの一年三組に入学する。その時代での名前は大河志津。今日は入学式だ、遅れないように潜入してくれ。あとくれぐれも自分の素性はバラさないように!」

「はいはーい」

「おい、返事軽いな!そんなので…」

 通信装置から手を離すと、口うるさい上官の声は聞こえなくなった。ここは桜花坂ハイスクールの校庭にある、用具入れらしき倉庫の裏側だ。倉庫から顔を覗かせると正面入り口から、沢山の人が入ってきている。フェンス越しに見える本物のサクラが見事な花を咲かせている。

「あぁ!旧文明時代って最高!本物のサクラも見れるし、あとは本物のたこ焼きと、お好み焼ね。あっと、とりあえず任務はこなさないと」



   ※



「大河志津」

「はい」



   ※



 ごく自然に潜入は完了した。あまりにも華麗な潜入だ。T.Pエージェントの訓練で行った潜入の方が、命をかけるスリルがあって楽しかった。ここの潜入はあくびが出るほどに簡単だ。妙にヒラヒラした制服と呼ばれる服は、どうにも動き辛い。そのまま一年三組に入る者達の名前が呼び続けられている。

(さてと、ターゲットは笹川篤志、十八歳。ということは三年生か)

 ざっと確認した感じで、この桜花坂ハイスクールは一学年に六クラス存在する。その中から『笹川篤志』というターゲットを確実に発見し、処分──の前に調査を行い、必要があれば処分する。それが今回の任務だ。

(処分する必要があるといいなぁ…。私の右腕が唸ってるし。さて、ぼちぼち発見しますかね)



   ※



「中西美知恵」

「はい」

「早川琉々」



   ※



 ──右手の腕時計についている二つのボタンを同時に押した。まるで録画映像の停止状態のように時間は音も無く止まる。

「三年生は一番後ろの集団か…」

 止まった時の中でターゲットの捜索を開始する。まずは三年一組──、いない。三年二組──、いない。三年三組──、いない。三年四組──、いない。三年五組──、いた。

「笹川篤志、よーしターゲット発見。それにしてもこんなヤツが未来から来たのか?どうやって?何のために?まぁ、いいや。これで見ればすぐに解るし。さっさと調査、調査っと」

 メガネ型のT.Pスコープを取り出してターゲットの調査を開始した。T.Pスコープは覗き込んだ対象が、どんな経緯で時空間移動をしたのかを視覚的に見ることが出来る。ただし、時空間移動をしていない場合は何も見えない。覗き込んだスコープに笹川篤志の時空間移動の経緯が映し出された。

「よっしゃ、ビンゴ!あとはこいつが処分対象だといいんだけど…」

 右手に力を込める。処分対象であればこのまま一突きすれば任務完了だ。跡形も無く歴史から消し去れる。T.Pエージェントの養成学校で歴代最強と言われた私の一撃を味わせてあげよう。
 徐々に映し出される映像を確認していく。しかしそこには歴史への影響を最小限に押さえ、それまでの記憶を押し殺してでも、好きな人を救おうとする笹川の強い意志と信念が映し出された。気が付けば涙が頬を伝う。

「なんやねん、お前めっちゃええやつやんか!鈴ちゃん大事にせーよ!はー、適わんわー、こういうの弱いねんから!まったく、あかんで、シズちゃん涙ぼたぼたやわ」

 T.Pスコープの映像を保存し、サッと片付ける。涙を拭いて元の位置に戻る。その途中で同じ一年三組の一人が居眠りしていたので、トントンと額を二度叩いておいた。時間が元に戻ればその衝撃が届くだろう。元の位置に戻り、腕時計のボタンを押す。
 ──何事もなかったかのように、時間が再び動き出した。ただ一人を除いて。



   ※



「………んぁ?…っはい!」



   ※



 居眠りしていた一人もなんとか返事が出来て、順調に入学式は終わった。上官への報告を行うため教室へ行く最中にあったトイレへ入った。個室入り、右手を右耳の通信装置へ伸ばす。

「こちらタイガー、ターゲットを確認し、調査を行いました」

「こちらミツバッチリ。てか早いな!早すぎて逆に不安だわ!」

「今から調査した資料を送ります」

「華麗に無視すんのな」

 T.Pスコープからケーブルを延ばし、通信機器へ接続する。先ほど保存した『笹川篤志』の時空間移動の経緯映像を送信する。隣りの個室に誰かが入ってきたようだ。耳をすませると「私の一人前が富田さんで…」とつぶやいている。これはあまりここに長居しない方が良さそうだ。
 映像の送信が完了したので外に出ようとすると、隣りの個室からではない声が聞こえた。

「一年三組?」

「うん」

「あ、一緒だ。良かったよ、トイレに入ったらさ教室がいまいちどこか解らなくてさ」

 慌てて開きそうになったドアを押さえる。どうやら外に誰かがいるらしい。右耳の通信機器が受信を知らせて震え出した。きっと上官がさっき送信した映像について何かあるのだろう。しかし、今ここで着信を受けるわけにはいかない。

(これは素早くトイレから出てしまった方が良いな)

 意を決して個室から出ると、隣の個室のドアが勢い良く開いた。

「私の名前はー、中西美知恵…」

 今まで受けた戦闘訓練の条件反射で、迫り来る隣りの個室のドアを蹴り返すと、ゴンという鈍い音がトイレに響いた。

(まずい…)

 尚も通信機器の受信は続いている。仕方なく腕時計のボタンを二つ押して時間を止めた。素早くトイレを出て時間を元に戻す。そのまま教室に向かった。
 自分の席を確認すると右から三列目の一番前だった。そこに腰をかけて辺りを確認すると、がやがやと騒がしい。そっと通信機器に触れる。なるべく小さな声で通信を開始する。

「やっと繋がったわー、なに?なんかトラブル?」

「あんたのせいでな」

「な、ちょっとなに小声で脅してくれてんだ、怖い、怖いわタイガー」

「いいから、何?」

「え?あーそうそうさっきの映像ね、問題なし。どうも未来からやってきたのも、七年程度のものみたいだし、本人が物凄く強い意志持ってるし、歴史への影響も考えてる。よって処分の必要なし。ミッションコンプリートだよ」

「そっか、処分できないのか…」

「いちいち残念がらないでよ、ほんと怖いわ」

「それで?ミッションコンプリートを告げるためだけに、ずっと通信しようとしてたわけ?」

「あー、あぁ、えーっとね、その、大事なこと言わなきゃいけなくてさ。それがねー、まさか、こんなことになるだなんて、誰も予測できないことだからさ」

「うだうだ言わずにさっさと要件を言え」

「ちょ、上官に向かって命令すんの?」

「いいから言え」

「あ、はい、すいません…。えっとですね、タイム・ワープがしばらく出来なくなったんです」

「しばらくってどれぐらい?」

「えーっと三年?」

「は?」

「いや、君を二千年前にタイム・ワープさせた直後に、タイム・ワープ装置のエネルギーが切れちゃったんだよ。君が勝手にタイム・ワープ装置を作動させちゃったからなんだけど。百年以内なら一年、千年以内なら二年、それ以上だと三年はチャージにかかると思う」

「ちょ!私はどうすんのよ!」

「あー、でもね。時間を止める腕時計渡してたでしょ?さすがだよね、ナイス上官!」

「この腕時計がどうしたって?」

「一回分の時間を止めるエネルギーを使えば、単独時空間移動が出来ちゃう優れものなんだよ!」

「へ、へぇー、すごいなぁー」

「ほんとほんと、私がその腕時計を君に持たせてた甲斐があったでしょ?さすがだよね、ナイス上官!て、ことだから単独時空間移動ですぐに戻ってきてよ」

「えぇ?…あー、うん、そのー、なんだ。例えば時間を止めるエネルギーが残ってなかったら?」

「そりゃ、時空間移動は出来ないよ。って…え?嘘でしょ?だってさっきの今だよ?」

「あー、嘘だったらいいのになぁ」

「マジでか!……あー、でもいいか。いいんじゃない?うん。いいよ、とってもいい!」

「何が?」

「君そこで女子高生をエンジョイしちゃいなよ!エネルギーが溜まったらすぐに帰ってくればいいんだし。それに私の心配事も減るし!」

「なら、この時代でお前のいる時代を無かったことにしてやろうか」

「怖っ!発想が怖すぎるわ!あのね、そんなことすれば君もいなくなっちゃうの!解る?まぁ、三年なんてきっとあっという間だしさ、エンジョイ!エンジョイ!ついでに自分の身の回りでパトロールして、日々報告さえしてくれればいいから」

「てめー、人事だと思って…」

「えー?なにー?よく聞こえないわー。とにかくさ、一生懸命勉強しておいでー。出来たら乙女らしくー」

「おい、ちょっと待て、もっと他に方法とか…、おい!おーい!」

 それ以降、通信機器はうんともすんとも言わなかった。どうやら私はこのままこの時代で三年間を過ごさなければならないらしい。数人が私のことを見ているような気配がして、なんとか何でもない様子を取り繕った。

(ま、いっか。この時代にはたこ焼きとお好み焼もあるんだし)

 教室の中はがやがやと騒がしい。そこに聞こえてくる走る足音と、手を叩く音。何者かが近付いてきているようだ。




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COMMENT

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2008.04.17[木]
  • -

まさかこんなところでT.Pと遭遇するなんて。

世界はずいぶんと狭くなったもんですね(違)

ワクワク(//▽//)

うはははははwwwwww
的確なキャラ立てですなーwww

ミツバッチリに吹いたとかナイショw

うはwwww

出たよ、漫才コンビが!(違
しかもあの物語に関わってるし、
るどは起こしていただいてるし。。(ナニ

にやけ顔がなかなか戻りません、コマッチャウ

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