POSITISM

適度に適当に。

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ある、サクラの季節 - 08:弦楽三重奏 -


ハコニワノベル

 同じ中学の友達が誰一人として受験しなかった桜花坂高校を選んだのは、私が選択できる高校の中で唯一弦楽部があったから。子供の頃からずっとヴァイオリンを弾くことを目標にして生きてきた。というと少し大げさかもしれない。でも、それぐらいに憧れていた。
 コツコツと勉強をしたおかげで、桜花坂高校に合格することが出来たけれど、友達や顔見知りは一人もいない。

「まずは友達作りから!」

 そう意気込んで入学式を迎えた。



   ※



「中西美知恵」

「はい」



   ※



 入学式が終わり教室への移動中、友達を作らないとと意気込んだからなのか、それとも緊張からなのか、私はトイレに入った。

(私の一人前が富田さんで、一人後ろが西川君…)

 トイレの個室の中で出席番号の前後の人の名前を思い返しながら、どんな風に声をかけたらいいのかを考えた。すると声が聞こえる。

「一年三組?」

「うん」

「あ、一緒だ。良かったよ、トイレに入ったらさ教室がいまいちどこか解らなくてさ」

「そうなんだ。じゃぁ、一緒に行こう。私、渡瀬香」

「サンキュー!私は春野ひなた。ひなたって呼んでね。よろしくね、香」

(春野ひなた…渡瀬香…)

 私は個室の中でその名前を思い返そうとすると、目の前にその名前が書いてある。


 『トイレは綺麗に使うこと! 生徒会長:春野日向』


(今、そこに居るのは生徒会長?いやいや、今一年三組って言ってたし…)

 再度名前を思い返してみる。



   ※



「春野ひなた」

「はい!」

 ──。

「渡瀬香」

「はーい」



   ※



(あ、一年三組で呼ばれてた呼ばれてた…これは、チャンスじゃない?……よーし)

 髪の毛を手ぐしで整えて、目をニ、三度大きくぱちりと動かす。とびっきりの笑顔を作りながら、勢い良く個室のドアを開け放った。

「私の名前はー、中西美知恵でっ…」

 ゴンという鈍い音がトイレに響く。それと同時に何かがヒラリと落ちた。勢い良く開けたドアが勢い良く戻ってきて私の後頭部を打ちつけたからだ。「痛ぁ…」と軽くよろめくと、目の前にいた一人はお腹を抱えて大笑いし、もう一人は「だ、大丈夫?」と駆け寄ってきてくれた。

「あ、ありがとう…私も三組なんだ。名前は……」

「中西美知恵でしょ?さっきのはインパクトあったから覚えちゃったよ」

「うふふ。私も覚えちゃった。よろしくね。私は渡瀬香」

「あ、えーっと、その、ミッチーって呼んでね」

「なら、私はひなたって呼んで。春野ひなた、よろしくミッチー」

「うん、よろしく。ひなたに香ちゃん…あ!そうそう、ひなたって生徒会長してるの?」

「はい?」

「いや、これ。ほら、ここに春野日向って…」

 後頭部にドアがぶつかった衝撃で、落ちてしまったポスターを拾い上げながら呟く。

「見せて。あー、違う違う。だって私の名前ひらがなで『ひなた』だし」

「同姓同名だったのかしら?あら、このポスター去年度のものみたいね。ほら、承認印の日付が去年になってる」

「ほんとだー。っていうか入学してきてすぐに生徒会長とかあり得ないよね。冷静に考えると」

「頭打ったからヘンになったのかと思ったよ。まぁ、登場してくるとこなんて十分ヘンだったけどさ」

 大きな笑い声と後頭部に出来た大きなたんこぶの引き換えに、いきなり友達が二人出来たのだからよしとしよう。教室に入り自分の席を確認すると右から三列目、つまり教室のほぼ真ん中で一番後ろだった。後頭部を少しさすりながら席に着く。もっと友達を作ろうと思ったものの、みんなそれぞれに話をしていてなかなか入れなかった。
 目の前に座っている富田さんと思われる女子は、隣りに座ってる男子との会話に夢中。私の左隣に座っている太っている男子は、机に伏せて眠っているような気がした。通路を挟んで右隣の男子は頬杖を付いている。窓際の一番後ろの席でひなたと香ちゃんが話しているのが見えて、私はそこへ移動した。

「中学の顔見知りがいなくて、話す相手がいないからお邪魔してもいい?」

「いいに決まってるじゃん、たんこぶミッチー♪」

「ちょ、そんなあだ名は嫌ー」

「うふふ。でもねミッチーさん、私もひなたさんもさっきのトイレで知り合ったとこなの」

「え、そうなんだ」

「そうそう。だから私達三人は初対面がトイレだったってこと」

「えー、他に顔見知りとかいないの?」

「私は、中学からの友達が二組と四組にいるのと…、あぁ、あの子のことは知ってる」

 香ちゃんが指差した窓側からニ列目の一番前を見ると、なんだか不思議そうな顔をしている女子が見えた。その女子に近くにいた男子が近付いていく。

「あの子、早川さん。私も行ってるんだけど、私の叔母がやってる着物の着付け教室で一緒なの。見てて飽きないの」

「見てて飽きない?」

 もう一度視線をその早川さんに向けると「やった!ばんざっ…」と両手を机で強打して悶絶しだした。香ちゃんが「ほらね」とにこやかに笑って、私とひなたはお腹を抱えて笑った。

「えっと、それじゃぁひなたは知り合いとかいないの?」

「私も他のクラスに友達が固まってるんだよね。ミッチーは?」

「私、友達で桜花坂を受けた人がいないんだ」

「あら、そこまでしてここに通いたかった理由でもあるの?」

「えっとね、私ヴァイオリンが弾きたくてさ」

 教室の前の方を歩いていた、なんだか大人っぽい女子がこちらを見た気がしたけど、気のせいかもしれない。その大人っぽい女子はそのまま窓際の一番前の席に腰を下ろしてしまった。

「それだけ?たったそれだけ理由でこの高校を受験したの?なんかカッコいいな、たんこぶミッチー♪」

「じゃぁ、弦楽部に入るつもり?」

「うん。ってかたんこぶミッチーは辞めようよ」

「あはは」

「はーい、お楽しみのところごめんなさいね」

「え?」

「えーっと、君が春野ひなたちゃん!で、君が渡瀬香ちゃん」

「で、あんたは誰なんだよ?」

「あぁ、僕としたことが申し訳ない。僕は北島。可愛いひなたちゃんと、美しい香ちゃん。僕とお友達から始めませんか?」

「あら、お上手ね」

「あー、私さ、あんたみたいなのパス」

「えーっと、ねぇねぇ、北島君」

「ん?」

「私は?」

「は?」

「いや、だから私は?」

「なにが?」

「私には友達からーって言わないの?」

「えーっと、君、誰?」

「私が紹介してあげよう、たんこぶミッチーだ♪」

「ちょ!ひなた!」

「えっとそれじゃ、ひなたちゃんに香ちゃん、これからよろしくー」

「うふふ、よろしくね」

「あー!逃げられた!ひなたがヘンな紹介するから…」

「ミッチー、もしかして今のやつみたいなのがタイプなわけ?」

「いや、そういうわけじゃないけど、私も言われてみたいなぁって…」

「あと、香もあんなのがタイプなの?」

「あら。私は嬉しいけど?まぁ、お友達ならいいかなって」

「はー、私は無理だ。あぁ言うチャラチャラしてるのは嫌い」

 その後も楽しく会話を続けていると、桜花坂高校のしおりを見てた香ちゃんが「あぁ、やっぱり」と言った。

「どうしたのー?」

「ほら、コレ見て。去年の生徒会長が『春野日向』って人みたい」

「おー、ほんとだ。む、むむむ…。でも私の方が美人だな」

「言い切るんだ…」

「でも、女子なのに生徒会長しちゃうなんて、すごいわ」

「よーし、なら私も生徒会長でも目指そう!」

「え、そんな簡単に決めていいの?ほら、生徒会長とか学級委員ってなにかと面倒そうじゃない?」

「んー、私は割と好きだけどな。責任あるポジション。なんて言うの、こう…人の上に立つ快感?」

「ひなたさんは女王様にでもなりたいのかしらね?生徒会長の前に学級委員でお手並み拝見かしら?」

「あー、それいいね!それでちゃんと学級委員できたら、ひなたが生徒会長に立候補したとき、応援演説してあげるよ!」

「よーし、約束な。応援演説はトイレの個室から出てくるとこからで!」

「まだ言うー!もー!」

「あら?今年の生徒会長に立候補した人の中にも女子が一人いるみたい。藤山恵さんだって。応援演説は有栖川栄一…すごい名前ね」

「もー、香ちゃんはさっきからマイペース過ぎるよー!ひなたがいじわる言うのー、助けてー」

「あらあら、だめよ?」

「香ちゃんってさ、お母さんみたいだ」

「ほんとほんと、ママー!」

 不安に思っていた友達もあっという間に出来ていた。私は弦楽部にこの二人を誘ってみようと思う。にぎやかで少し騒がしい、そんな高校生活が始まろうとしていた。




≪07:ドジふんじゃったへ
09:ギターヒーローへ≫

COMMENT

さすが!さすがだよミッチーー( ̄▽ ̄人)

この物語に欠かせないキャラ設定で
うらやましいわぁ(ニヤニヤ)

ついに出てきたー♪と思ったら、
いきなりたんこぶ作って、男子にはスルーされてる・・。
どんだけ空回りwww

いろんな所で繋がってて、読むの楽しいです♪


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