POSITISM

適度に適当に。

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ある、サクラの季節 - 04:数学的ナンパ術 -


ハコニワノベル

「物凄い発見をしたんだよ!今から武藤の家に行くから!」

「え?今から?もう二十二時だし、明日入学式だよ?」

「ばか!この世紀の大発見を試さずに高校生になんてなれるかよ!」

 勢いよく電話を切った相手は、中学のときに同級生だった北島弘之。どうして北島が僕と一緒にいるのかわからない。中学の卒業式が終わってすぐに髪の毛を茶髪にして、ちょっと理解しがたい髪形になった彼は、春休み中ほぼ毎日を深夜徘徊して過ごしたらしい。理由は彼女が欲しいからだとか。
 中学の頃に特別仲が良かったわけじゃない。たまたま同じ高校の入学試験で一緒になって少し話しただけだった。僕は数学が得意だったから、入試当日に「どこが出そう?」とか聞いてきた北島が受かるはずないと思ってた。それなのにちゃっかり合格している。一生懸命勉強した人がかわいそうに思えた。

「おーい、入るぞー」

 明日が高校の入学式だと言うのに、夜遅くに勝手に玄関から入り込んで、僕の部屋に現れた北島はやっぱり茶髪で、ちょっと理解し難い髪形をしたままだった。なぜかスーツを着ている。きっと簡単に帰ることはないだろうと感じたので、仕方なしに話を聞くことにした。

「で、世紀の大発見って?」

「そうそうそう、それなんだけどさ。武藤って数学得意だろ?ちょっと教えて欲しいんだよ」

「なにを?」

「なーに、確率の問題だよ。えーっとなにがいいかな…んーコインにしよう」

「確率の問題ねぇ…」

「まぁ、聞けって。コインを投げて裏表が出る確率ってあるじゃん」

「まぁ、あるにはあるよ?」

「それのさ、裏が出る確率って何パーセント?」

「え?50パーセントだよ」

「うんうんうん。じゃぁ、その後またコインの裏が出る確率は?」

「連続で裏っていう意味なら25パーセント」

「またその次も裏の確率は?」

「12.5パーセント」

「その次も裏なら?」

「6.25パーセント」

「その次も裏!」

「3.125パーセント」

「さらに裏!」

「1.563パーセント」

「よし、もう一声!」

「0.781パーセントだよ。それが何?」

「ほらみろ、やっぱりそうだ。七回連続すると1パーセントを切る」

「んー、まぁそうだね。それがどう発見なの?」

「ナンパをさ、七回連続でやれば全部失敗っていうのはあり得ないんじゃね?ほら来た、俺天才かもしれないわ」

「あのさ、コインは偶然性を含まないから確率として計算できるだけでさ、その発想は…」

「こうなったら行くしかないだろ!」

「ちょ、引っ張らないで!ってどこ行くの?」

「ナンパに決まってるじゃん」

 確率の話なんてしてくるから、実は北島は頭がいいのかと思ったけど違った。いや、思った以上に頭が悪いのかもしれない。自転車の後ろに無理やり乗せられて、意気揚々とペダルを漕ぐ北島に「なんで今日行くの?」と聞いたら「明日にはこの髪、黒に戻すから」というどうでもいい理由で、僕は入学式の前日、二十二時半にナンパをする北島を見て、その確率を判定する人という、世界中にたった一人しかいないであろう役割を全うすることになった。

「どこでナンパするの?」

「やっぱ駅前でしょ」

 どこからそんな自信が溢れてくるのか、北島はぐいぐいとペダルを漕ぐ。通りかかった駅前の商店街の片隅でストリートミュージシャンがギターを鳴らしていた。しばらく走ると駅の方へと進む自転車が急に止まった。

「あ、あぶなっ!どうしたの?」

「いや、めっちゃ綺麗な人がいる…」

 北島の身体から首を伸ばして前を見ると、薄手の白いカーディガンを羽織った淡いピンクのドレスを着た、いかにも大人のお店のお姉さんが見えた。

「ナンパするの?」

「いや、しない。俺、素人しか興味ないから」

 そう言ってまた自転車のペダルを漕ぎ始める。すれ違う大人のお店のお姉さんは、何かを探しているように見えた。
 駅前に到着して、自転車を適当に止めると「さぁて、七番勝負といきますか!」と北島が意気込んで辺りを歩く人達を観察しはじめた。春休み最期の日だからだろうか、同じ年代だと思われる人影があちこちに見えている。

「じゃぁ、武藤は本当に七番勝負しないんだな?」

「うん、いいよ」

「知らないぜ?俺だけ彼女できちゃってもさ」

「あー、はいはい」

「よっし、それじゃちょっと、いおなずんしてくるわ」

 そう言って北島は歩き出していった。ちなみに北島が言う「いおなずん」とは『いい女をズンと落とす』って意味らしい。北島らしいバカバカしさだ。それよりもバカバカしいのは、そんなありえない可能性の判定をしなきゃならない僕だ。まったく明日の入学式に響いたらどうするんだ。

「こんばんはー、ねぇ、今一人?」

「違うよー彼氏待ち」

「あーあー、あぁ、そうなんだ。そっかそっか、じゃぁねー」

 今ので50パーセントとか思ってるんだろう。こちらに向かって人差し指を高々とあげてアピールしている。二回目、三回目と回数が増えるごとに、こちらへのアピールする指の本数が増えていく。四回目、五回目、そして六回目。右手は人差し指だけ、左手でパーを作って両手をあげた北島が哀れに見えた。そして運命の七回目。
 すぐに断られて終わるだろうと思っていたのに、なかなかどうして楽しそうに話を続けている。まさか、確率が関係しているわけじゃないのに、なぜだ。しばらく話を続けてから北島が照れくさそうに戻ってきた。

「もしかして成功したの?」

「いや、近所に住んでる2コ上の先輩。やっぱり武藤の言う通り、なんだっけ?なんとか性が関係してるみたい」

「いや、それだけじゃないと思うけどね」

「オッケー、オッケー。それじゃ、明日に期待しようぜ」

「明日?」

「そう、入学式だろ?同じクラスに好みの子がいるかもしれないし!」

「それなら僕とは違うクラスになって欲しいよ」



   ※



「北島弘之」

「ぁ、はい」

 ──。

「武藤有紀」

「は…は、はひぃ!」



   ※



 北島が起立した後もきょろきょろと同じクラスの女子を物色していたのが気になって、返事のタイミングがまったく合わなかった。周りが笑いを堪えてるのがひしひしと伝わって、穴があったら入りたくなった。担任であろう教師も笑いを堪えている。それもこれも全部北島のせいだ。
 笑われそうになったこと以外は無事に入学式も終わり、なんの罰ゲームなのか北島と同じクラスへと向かう。教室に到着すると、無理やり黒色に戻した髪の北島が近寄ってきた。

「うちのクラスさ、他のクラスより女子のレベル高くね?」

「まだ顔なんてほとんど見てないから解らないよ」

「いや、マジでレベル高いんだって。特に…」

 教卓の上に置いてあった座席表を見ながら、北島がクラス内を見回した。

「門脇 瑠伊、春野ひなた、渡瀬 香…か。この三人レベル高けぇよ!やっべ、俺ラッキーだわ」

「その観察眼をもっと別のことに使えば、もう少し世界も平和になると思うよ」

「俺、ちょっと行ってくる!いおなずんだぜー!」

 そう言うと北島は廊下側の前から五番目の自分の席に座ると、目の前に座っている背の高いスラリとした女子に声をかけた。

「ちょっとごめんよ、君さ、彼氏とかいる?」

「へ?私?」

 他の男子二人と話している最中に割ってはいるあの空気の読めなさと、度胸は心底すごいと思う。なんどか会話をしてから、今度は窓側の一番後ろの席にいる女子三人組の輪に突撃していった。名前をすぐに覚えるところを見ると、実際に頭は良いのかもしれない。使い方には疑問が残るけれど。
 せっかく真新しい環境で何もかもがスタートすると言うのに、しばらくは北島に取り付かれるのかと思うと、少し嫌になった。だけど、北島のナンパが何回目で成功するのか、実は少しだけ興味があったりする。その確率を元に僕も挑戦しようだなんてことは、ほんのこれっぽっちしか思っていない。




≪03:三角関数へ
05:姉妹×姉妹へ≫

COMMENT

うはは♪

こんな処で確立の話を見るとは思いませんでした。w

なんとなく、しのめんさんの実体験から来るのかしら?と思ってみたり。ww

昨日まさにうちの次女(高2)が確立の問題で困ってました。
もちろん、アタシが教えられるわけがなくw、今日のテストはどうなった事やら。爆汗


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