POSITISM

適度に適当に。

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ある、サクラの季節 - 02:一番目と二番目 -


ハコニワノベル

 高校受験は大変なことだ。十五歳という年齢である程度の人生を左右する決断を迫られる。それが高校受験。特に行きたい高校はなかったけれど、なんとなく小学生の頃から高校はここになるだろうな、と思って見上げていた、ゆるやかな坂道の上にある桜花坂高校を見ていた。その高校へ向かってこの桜並木の坂道を上る日が、いつか来るだろうと思っていた。
 ──72番。
 それはあっけない高校受験の幕切れ。そこそこの勉強しかしていなかったものの、結果は合格だった。周りで合格を知った子達も、特別飛び跳ねたり涙を流したりしていないのは、あっけない合格発表だったからなのか、落ちた人がいるかもしれないという心遣いなのかは、良く解らなかった。
 まだ小さなつぼみばかりの桜並木を下って家へと帰る。

「夏芽?どうだったー?」

「んー?合格だったよ」

「あらそう。それなら今日はお祝いしないと」

「いいよ別にいつも通りでさ」

「そう?でもおめでとう。良かったじゃない」

「うん、ありがとう」

 家に帰って母親に報告すると、ひとまず喜んでくれたらしい。そんな会話を終えてから、二階の自分の部屋へ入る。カバンをするりと肩から外し、疲れたわけでも無いのにベッドに仰向けになった。丸い照明がやけに高い位置に見える。
 ブーブーブー、携帯電話がメールの着信を知らせる。床に置かれたカバンへと手を伸ばし、携帯電話を取り出した。


件名:おはよー
本文:今起きたー。25番はあったー?

件名:おはよ!
本文:相変わらずのねぼすけだな(笑)
   私の番号は見たけど、ちこのは見てないよ?

件名:えぇ!なんで!?
本文:どーして私の分も一緒に見てくれないのよー
   (T-T)

件名:自分で見なさいよ
本文:夕方ぐらいまでは掲示してるだろうから、ち
   ゃんと見に行きなさいよー?受かってたらメ
   ールしなさいよ?
   あ、落ちてたときもちゃんとメールしてよ?
   ちゃんと励ましてあげるから(,^^)/(T-T)

件名:なつめのケチー!
本文:もう一回見に行ってよー!(笑)

件名:いーやーだ
本文:だって落ちてたらそれ言うの気まずいしさ。
   ホラホラ、いつまでもわがまま言ってないで
   さっさと見に行きなさい!
   "ヾ(゚▽゚*)>フレー!!フレー!!<(*゚▽゚)ツ"

件名:相変わらず
本文:なつめはせっかちだよねー。はいはい解りま
   したよーだ。後で見に行きますよー。
   とりあえず、もうちょっと寝るー
   おやすむー


「やれやれ」

 赤木智津子と知り合ったのは、中学二年のときだった。私は物事をはっきりさせるタイプで、しかもさっさと結論を出してしまうので、学校内では話す相手はいたものの、学校を出ると口うるさく言われたくないからなのか、誰も私の周りにはいなかった。
 それも当たり前だと思っていた中学二年の春に、一人の転校生がクラスにやってきた。背の小さいショートカットの良く似合う女の子。彼女は間延びした自己紹介をして、空いていた私の後ろの席に座った。そのときに「よろしくーねー」と言われてから、ずっと私達は一緒にいた気がする。
 智津子と呼ぶのが煩わしくて「ちこって呼んでもいい?」と聞くと「いーいーよー、なつめぇー」とにこやかにちこは笑ってくれた。
 ちこはマイペースでいつも遅刻ギリギリで登校してくるので、いつの間にか毎朝私がちこの家まで行き、引き摺るように登校するようになった。私がどんなに怒っても、ちこは「ごーめーんねー」と謝るだけで、私から離れていくことがなかった。それは下校の時も変わらない。
 中学二年のときからずっと続いていたこの関係を、私は終わらせようと考えていた。このままちこを甘やかすことは、これから先、本人のためにならないと思ったからだ。せめて高校入試の結果ぐらいは自分で見に行って欲しい。と思いながら、本当は25番が書いてあったことにとても喜んだことを告げずにいる。
 私は、この春から始まる高校生活が怖かった。また私の周りには人がいなくなるんじゃないかと不安だった。だから、本当のことを言えば、自分の番号よりも先にちこの番号を確認したし、自分の番号があったことよりも嬉しかった。それは、ちこがいれば自分は一人ぼっちにはならない安心感からだろう。今までのことを思い返してみると、私がちこを助けていたのではなくて、ちこが私を救ってくれていたんだな、と思った。

(本当に25番と72番あったかな…)

 ふいに気になって、昼ごはんを食べ終わってからもう一度家を出た。春を迎える日差しが暖かい。交差点を渡って、大通りへ出る。そこから見える桜並木の坂道をゆっくりと上る。さっきよりもつぼみが大きくなっている気がした。
 近付けば近付くほどに25番と72番が書いてあったのかが不安になって、とうとう駆け出した。思っていたよりもゆるやかな坂道は長く、校門に辿り着くころには少し息が上がっていた。足早に合格発表の掲示板へと向かう。

(25…25…25……良かった…ある)

「わー、あったー、よかったー」

 後ろから間延びした声が聞こえて振り返ると、ちこがそこに立っていた。

「あー、なつめぇー、やっぱり、見に来てくれたー」

 ちこはとてもにこやかな笑顔でそう言って近付いてきた。

「い、いや、ち、違うよ?自分の番号が本当に書いてあったかなー?って不安になったからさ」

「えー、ちゃんとあったよー72番」

「あ、そ、そう?ちこ、あんたはどうだったのよ?」

「あー、見てなかったー」

 そう言って改めて25番を探すちこの祈るような、薄目がちな顔がなんだか可笑しかった。

「ちこー!ありがとー!」

「えー?おめでとーでしょー?」

「まぁ、いいじゃない!またこれからもよろしく!」

「はーい。同じクラスだといいねー」

「んー?」

「だって、そしたら私、遅刻しないで済むでしょー?」

「また起こしに行かないといけないのか…、よし、クラスは別になれ!」

「ひーどーいー」



   ※



「一年三組。青田夏芽」

「はい」

「赤木智津子」

「はーい」



   ※



 あっという間に春休みは終わり、新しい季節はやってきた。私の祈りは届かずに、ちこは私の後ろという特等席に座ることになった。入学式は淡々と進み新入生は退場することになった。体育館を出て廊下を歩く。背中に何かが寄りかかってきた。

「なつめぇーおなか空いたー」

「今日は午前中で終わるんだから、もうちょっとだよ。我慢我慢」

「むーりー」

「じゃぁ、今日帰りにどこか寄って帰ろっか?」

「わーい!おごりだー」

「おごらない!」

 ちこが後ろにいることがとても力強く感じた。私を私のまま受け入れてくれるちこがいるなら、きっと私はどこでも頑張れる気がする。少しだけ胸を張って歩いた。

「どーしたのー?にやにやしちゃってー」

 そう言われてそれを隠すように廊下に張られている生徒会長選挙のポスターに視線を移した。

 山下隆之「いじめのない桜花坂高校に!」
 斉藤博史「明るく元気で、ゴミのない桜花坂!」
 大泉順次郎「今こそ改革のとき!自動販売機を設置します!」
 藤山恵「今しかない高校生活を一生懸命良くします」
 小山太司「給食、もしくは学生食堂が欲しい」

「へぇ、この五人の中から今年の生徒会長が決まるんだ」

「あー話そらしたーなー」

「え?なんのことぉ?」

 笑い合いながら、私達は一年三組の教室へ入った。私は廊下側の一番前に座り、ちこはその後ろへと座った。続々と到着するクラスメイト達。いきなり女子に声をかけまくってる男子がいたり、同い年には見えない子、それから耳に手をあてて独り言を言ってる子もいる。まだ顔も名前も知らないクラスメイト達。

「おなか空いたー」

 その声が私の背中を押してくれる。きっと大丈夫。素敵な一年間になる予感がした。




≪01:桜並木の坂の上へ
03:三角関数へ≫

COMMENT

なんだかワクワクしてきますね!!
今後の展開が楽しみだ♪

ちこちゃんはパソコンからメールを送ってるんだね。

いいなぁ新学期新しいクラス。
編入したい(〒_〒)

わ~!もう始まってる~!!
今回も楽しみにしてます☆

(どこかで見たことがある名前があるのは、
気のせい?)

第1話のほうに遅コメしてしまってすみません。
どうしてもツッコミたい方がいらっしゃいまして。笑

今回のお話は、もしかして1話ごとに主役が変わる方式なのかしら?
楽しみですぅー♪

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