POSITISM

適度に適当に。

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世界の終わりを変えるモノ - 最終話 -


ハコニワノベル

 ──神の国、城の地下室。


  太陽と月が滅び
  暗き淵より新たな太陽が昇る
  世界は何もなくなる
  世界樹はその種子を撒き
  混沌の大地
  そこに新たな世界が芽吹く
  世界の終わり
  そして世界の始まり。


「『始まりの予言』は『終わりの予言』の各詩に続くもの。つまり、世界が一度終わり、新たな世界として再生することを予言している。『終わりと再生の予言』……解けましたぞ姫さま。私の使命もここまで……」

 ブラムはその言葉を最後に、カオスに飲み込まれていった。


 ──世界の中心、混沌の大地。


 太陽は失われ、月は満ち欠けを繰り返すようになった。
 まるで大きな蛇が光を遮るように。

 絶命したガロムガンドの腹から、小さな太陽が空へと昇る。
 世界樹はその光を集め、その種子を世界に撒く。
 葉に溜まった雫が雨のように降り注ぐと、やがてそれは川へと姿を変えた。

 新たな太陽の光によって、カオス達は消え去り
 混沌の大地に草木が芽生えていく。



 世界樹の下で、男は目を覚ました。胸に残った傷跡を手で確認してから、何かを思い出したかのように辺りを探る。そして男は駆け出した。



 大いなる大地で、女は目を覚ました。自分の橙の甲冑に小さな太陽の光が反射して、眩しくて目を細める。その視線の先から黒い獣に見える風が、こちらに近付いてくるのが見えた。



 新たな大地に聳える世界樹が、その葉を一枚落とす。その一片に文字が描かれている。






  新たな世界に残されし
  二人は始祖であり神になる。
  新たな世界を護り
  新たな世界を導くであろう。


  『始まりの予言』ミーツヴァ・チリー






 Fin.



   ◇



 目を覚ますとみんなの木、ユグドラシルの側にあるベンチだった。辺りはすっかり暗くなっている。

「朋章さん! 大丈夫ですかっ! ? わ、私……心配で、心配で。あと、その、……勝手なことして、ごめんなさい!」

 急に抱きつかれた。景子ちゃんは泣いて抱きついたままで何度も謝っている。

「おいおい、二人して居眠りしてたくせに、起きたかと思ったらケイはずっと本読んでるし、朋章さんが起きたと思ったらこれか……、なに寝ぼけてんの? おーいケイ、しっかりしろよー」

 日向ちゃんは「まいったなぁ、すいませんね……」とまんざらでもない苦笑いを浮かべている。



   ◆



「どうせ朋章は鈍感やから、まだ自分の気持ちも解ってへんねやろ? でも今度は恥ずかしがらんと、ちゃんと自分の口で言うねんで? 自分の気持ちは自分で伝えなあかんよ?」



   ◆



 本の世界で由香里に言われたことを思い出した。
 ずっとあの本のことが気になっているんだと思い込んでいた。だけど実際は違う。誰かを好きになることを怖がっていただけだ。それを本が気になるんだ、物語が気になるんだと思い込むようにしていただけだ。僕はゆっくり大きく深呼吸をする。きちんと声を出すことを意識して、何度も深呼吸をする。それから視線を景子ちゃんから離さないようにして、口を開いた。

「景子ちゃん。僕は、君が……」

 立っている日向ちゃんは「おいおい、朋章さんまでおかしくなっちゃったよ……」とあきれた声を出してから、「あ、あれ? 朋章さん! こ、声? 声出てるんじゃ……」と慌てていた。景子ちゃんはじっと僕を見詰め返すばかりだった。






  届くかな? 君まで。
  僕の心から、君の心まで。
  僕の唇から、君の耳まで。






 ──数十分前。みんなの木、ユグドラシル。


 目を覚ますと、ベンチの上だった。「やっと起きたよー、本読みながらいきなり二人とも寝るからびっくりしたんだぞー」とひなちゃんが言っている。辺りはすっかり暗くなって、月まで昇っていた。何を読んでいたんだっけ? 本? ──本! !
 飛び起きて本を開く。そこにはシュバルツァが犠牲になって、ソルとタンクルがグングニルを手にし、ガロムガンドを打ち倒す様が描かれている。その途中でソルは蛇に飲み込まれてしまうけれど、タンクルは持てる魔力を全て振り絞って、グングニルをガロムガンドの心臓に突き刺して倒している。

(良かった、物語は無事に終わるみたい……)

 ひなちゃんはベンチの後ろで「鮮やかに無視されてるし」と自傷気味につぶやいた。



   ◇



 新たな世界に残されし
 二人は始祖であり神になる。
 新たな世界を護り
 新たな世界を導くであろう。
 
 
 『始まりの予言』ミーツヴァ・チリー






 Fin.



   ◇



 あの世界が終わることなく救われたことは、とても嬉しいことだけれど、新たな世界に残されたのはソルとシュバルツァだけだ。タンクルは、いや朋章さんはどうなるのだろう。隣りで寝ている朋章さんが、このまま戻ってこないんじゃないかと不安になった。そう思って本を閉じようとすると、最後のページだと思っていたページの後ろに、まだページがあることに気が付いた。
 ──そっとそのページを捲る。



   ◇



 この物語を最初に正しく読み終えた者に祝福を与えん。
 汝の願いを一つだけ叶えて進ぜよう。
 さぁ、汝の願いを唱えたまえ!



   ◇



 その文字はまるで頭の中に直接語りかけてくるようだった。一度だけ、朋章さんを見てから空を見上げた。もう随分と丸くなった月が真上に輝いている。
 私の願いは決まっている。これ以外に考えられなかった。



(好きな人の声が聞きたい!)



 そう心に願うと、最終ページに文字が浮かび上がる。



   ◇



 汝に幸多からんことを。
           人間王ミズ・ガルズ



   ◇



 そっと本を閉じると、朋章さんがゆっくりと目を覚ました。驚いた私は勢い余って抱きついた。

「朋章さん! 大丈夫ですかっ! ? わ、私……心配で、心配で。あと、その、……勝手なことして、ごめんなさい!」

「おいおい、二人して居眠りしてたくせに、起きたかと思ったらケイはずっと本読んでるし、朋章さんが起きたと思ったらこれか……、なに寝ぼけてんの? おーいケイ、しっかりしろよー。まいったなぁ、すいませんね……」

 朋章さんはゆっくり現状を把握するように辺りを見回した。それから目を閉じて深呼吸をしている。私は絶対に聞き逃さないように、じっと朋章さんを見つめた。

「景子ちゃん。僕は、君が……」

「おいおい、朋章さんまでおかしくなっちゃったよ……。あ、あれ? 朋章さん! こ、声? 声出てるんじゃ……」

 急に朋章さんは立ち上がると、空まで──、そらに浮かぶ月まで届くような声で叫んだ。

「景子ちゃん! 僕は君が好きです!」






  届いたよ、私の耳まで。
  あなたの心から、私の心まで。
  あなたの唇から、私の耳まで。






 それは世界の終わりを変えるモノ。

 秒速343メートルのスピードで
 過去のトラウマを貫いて、月に刺さったグングニル。



「私も、朋章さんが大好きです」



 完。




≪第二十六話へ

COMMENT

きゃ~終わっちゃいました~(涙)
クライマックスに近づくにつれて、
色々な視点から、どんどん謎が明らかになってきて、
息を飲んで拝見していました。

毎回、色々なジャンルのお話を書かれる、
しのめんさんの引き出しの多さと深さには、
本当に頭が下がる思いです。
お疲れさまでした!!

るどさんと同じく鳥肌がとまりません。
また何度も読み返したくなる物語です。

しのめんさん、お疲れ様でしたー!!

お疲れした!!

いやー最後の4話ほど一気読みしてしまった!!

2つの話がうまくまとまってるねぇ~

すげーなー(笑)

27話

感動してる間に次のハコニワはじまるんだぜっ
  • 2008.03.30[日]

お疲れ様でした!

本当に毎回楽しく読ませていただきました。

最後の何話かは続きが待ち遠しくてたまりませんでしたよ!


本当にありがとう。

すごい
途中からずっと鳥肌たってました

全27話、長かったし大変やったでしょ?
これだけ複雑な、二つの世界や
視点の違いをかきわけてて
ほんとすごいよ!!

本当に本当にお疲れ様でした

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