POSITISM

適度に適当に。

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世界の終わりを変えるモノ - 第二十三話 -


ハコニワノベル

 ──神の国、王の間へと続く回廊。


 驚いた。恐る恐る頬をつねってみると痛かった。どうにも現実らしい。しかし、明らかにここは「太陽と月の姫」の中だ。

(たしかこっちが王の間だよね……)

 恐る恐る、王の間へと向かう。中から声が聞こえる。

「まさか、お父様が……」

「あれは、禁術アーグルボゥザですな……。先々代の神王であるオーディンさまが作った秘術。その昔、闇の一族との戦いで使用されたのです。しかし、その術の代償は……」

「代償? その代償はなんなの? ブラム、答えて」

「それは、その……」

 王の間を覗き込むとブラムと呼ばれた立派な顎ヒゲを携えた、聡明そうで小柄な人が見えた。ということはあの橙色の甲冑を着ているのが太陽の姫、ソルだ。その顔はやはりひなちゃんに似ている。

(ひなちゃんもこの世界に来てるんだ!)

 そう考えると急にテンションが上がってきた。一人だけだったらどんなに心細かっただろう。私はなぜか嬉しくなって、とりあえず今の状況を楽しむために考えた。次はタンクルが禁術アーグルボゥザの代償について説明するはず。よし、台詞を頭に思い浮かべながら王の間に飛び込もうとすると、中から声が聞こえた。

「……それは、使用者の命」

「なんですって? それは本当なのタンクル?」

 え?誰かが私の言おうとした台詞を言ってしまった。いや、ちょっと待って。世界の終わりが描かれている物語の後半、そこには4人しか生き残りはいないはず。ブラムとソルは王の間にいて、タンクルの声が聞こえた。本当にタンクルの声は聞こえた?

「……えっと、古い書物にはそう書かれてた」

 もう一度その声が聞こえてから、私は後ずさりをして王の間からそっと離れた。回廊に取り付けられた大きな鏡を覗き込む。そこには漆黒の甲冑と破れている深い紫色の飾り布。腰には禍々しい剣を携えた、どこか闇を引き摺っている青年が映し出されていた。

(シ、シュバルツァなの……私! ?)

 遠くで地鳴りが聞こえる。回廊の窓から確認すると、巨大で黒い狼の姿をした怪物が見えた。

(ガ、ガロムガンドだ……。あ! 私がシュバルツァなら、これを王の間のみんなに伝えないと!)

 回廊を走る。甲冑であまりうまく動けないことに気が付いた。それにこの甲冑やたらと重たい。転びそうになるのを必死に堪えて、私は王の間へと駆け込んだ。

(えっと確か……)

「おい、ガロ……、何かデカいのが、来るぞ!」

 ブラムが水晶に手をかざすと、まるでテレビのように映像が浮かび上がる。そこには天に届くほど巨大で、真っ黒な狼のような怪物がはっきりと映し出された。

「これが、終焉ガロムガント。三賢人の姿が見えないところを見ると、やはり世界は終わりに導かれていくのか……」

「諦めてる場合じぁないわ。過去に闇の一族に打ち勝っているのでしょう? お父様があの怪物を打ち倒せば、世界が終わる前に止められるかもしれない」

「しかし、太陽の姫さま。神王さまは既に意識を失っておられます。ガロムガンドと戦闘になったとしても、まともに戦える状態ではございません。禁術の代償も、もうまもなく訪れるてしまうでしょう。我々に出来ることは、もうなにもございますまい……」

 水晶はガロムガンドに向かっていく神王を映し出す。ガロムガンドの尾の蛇が神王に襲い掛かる。私はそっとソルへ近付いて「ひなちゃん?」と小声を出して聞いてみたけれど、ソルは目だけで「?」を聞き返し、すぐに水晶に向き直った。

(……あれ? ひなちゃんじゃないの?)

 また自分が独りだと感じて怖くなった。
 そのとき、水晶の中で神王の一撃によってガロムガンドが真っ二つにされる様が映し出される。

「なんと、ガロムガンドを切り裂くとは……」

「このままいければ、世界は終わらないかも知れないわね、ブラム」

 その会話が終わるか終わらないかの瞬間に、水晶の中で神王の首が食い千切られ、カオス達が溢れ出てくる。急に冷静になって考えてみると、恐ろしくなってきた。これが現実だとして、このまま物語が進むと世界は終わりを迎えてしまう。物語のラストでブラムは予言を「読み違えた」と言っていた。どこで、何を読み違えたんだろうか。物語を思い出しながら、どうすればこの世界の終わりを防ぐことが出来るのかを必死になって考えた──。

(どうして、この場面からなんだろう。もし私がシュバルツァだとして、物語の最初の頃へ戻してくれたなら、大地のトレントを止めてしまうか、その指示に従わなければ、きっと世界は終わりになんて向かわなかったのに……)

「あれは、闇の住人カオス……。終わりの予言にある『世界は何もなくなる』と『混沌の大地』とは、世界中がカオス達で埋め尽くされてしまうことなのか……」


  暗き淵より新たな太陽が昇る
  世界樹はその種子を撒き
  そこに新たな世界が芽吹く
  そして世界の始まり。


 ブラムが世界が生まれた時の始まりの予言を力なく呟やいた。

「数千年前に始まったとされる世界に、終わりが訪れるとは……」

(このままじゃ、世界は終わってしまう。どうしよう、どうしよう……。どうしたらいいんだろう)

「ブラム。わ、私、前から気になってたんだけど……」

(え? 次ってこんな台詞だったっけ?)

 水晶から声の方へ視線を向けると、灰色のローブを身に纏ったタンクルが見えた。

「タンクル、今はそれどころじゃないわ! 早くどうにかしなければ、世界が終わってしまう!」

「お待ちください太陽の姫さま。どうか、月の姫さまのお話を聞かせて頂けませぬか」

「ブラムがそこまで言うなら構わないわ」

「ありがとうございます。さて、どうなさいましたかな? 月の姫さま」

「あ、あのね……、さっきの! ほら、カオスだっけ? それが出てきたときにブラムが言ってたこと……」

「終わりの予言にございますか?」

「えっと、それじゃなくて……。えーっと、始まりの予言?」


  暗き淵より新たな太陽が昇る
  世界樹はその種子を撒き
  そこに新たな世界が芽吹く
  そして世界の始まり。


 ブラムはもう一度始まりの予言を呟くと「これのことにございましょうか?」と聞いた。

「そう! それ! その予言って変だよね」

「変、にございますか?」

「タンクル! いい加減にしなさい!」

「え、えっと。……お、お姉様、ちょ、ちょっと待って下さい。これまでの予言は、全て未来のことを指し示してますよね? だけど、この始まりの予言は、どうして過去のものなんでしょうか?」

「それは、世界が始まったときの予言なのだから、当たり前じゃない。さぁ、もういいでしょう? カオスを迎え撃つ準備をあなたもするのよ、タンクル」

「……お、お待ちください! 太陽の姫さま!」

「ブラム、どうしたというの?」

「確かに今、月の姫さまがおっしゃったことは、私も『当たり前』だと思っておりました。しかしながら、この世界中に残された予言はすべて、大預言者ミーツヴァ・チリーのものです」

「だから、それがどうしたというの?」

「大預言者ミーツヴァ・チリーが始まりの予言を残したのだとすると、おかしいのです」

「おかしい?」

「はい、大預言者ミーツヴァ・チリー……いや、この世界に生きている者すべては、世界が始まった以降に存在していることになります。つまり、この世界にいる者は『世界の始まり』を予言することが不可能なのでございます!」

「えっと、その、だから……、始まりの予言と呼ばれている予言は、本当は別の予言なんじゃないかなと思ったんです」

「確かに。確かにそうかも知れませぬ。太陽の姫さま! 緊急事態だということは解っております……、しかし! 今しばらく時間を頂けませぬか? 我々は大きな読み違えをしているやもしれませぬ」

 タンクルの方を見ると、少しだけニッと笑った気がした。そしてこの後の展開をゆっくり思い出す。すると怖いシーンが近付いていることに気が付いた。

(確かこのあたりで……、うわぁ、怖いなぁ……)

 私はゆっくりと腰の剣を抜いて構えた。

「貴様、何をしている? そもそも貴様はこの国の者ではない。さっさと逃げろ。……貴様ほどの腕があれば、今ならまだ逃げ切れるかもしれん。さぁ! さっさと行け!」

「……」

「私を無視するのか! なんとか答えたら……」

 突然、窓を破壊しながら翼を持ったカオスが王の間に入り込んできた。その近くにいた無防備なソルにカオスが襲い掛かる。私が駆け出すと、まるで周りの時が止まったかのように素早く動けた。

(すごい! 剣を抜いているときは別人みたい! 甲冑の重さも気にならない!)

 驚いているソルの顔は、やっぱりひなちゃんにそっくりだった。
 カオスの目の前まで移動すると、私は剣を滅茶苦茶に振り下ろした。その剣は羽毛のように軽く感じ、伸びた影にも鋭利な感覚を宿していた。真っ二つになり消え行くカオスを見届けて、私はホッとして剣を収めた。

「な……、なぜカオスが来ると解った? どこにも気配など無かったと言うのに……。くそっ! 私は貴様に助けなど頼んでいない! なぜ、なぜ私を助ける! ? 答えろシュバルツァ!」

 困惑と怒りで大声を出しているソル。そして自分がシュバルツァであることを思い返す。シュバルツァがソルのことをどう思っているかなんて決まってる。だから私がここでシュバルツァに言わせたいのは──。

「そ、それは……あな……き、君のことを、あ、愛しているからだ」




≪第二十二話へ
第二十四話へ≫

COMMENT

何日か読んでないうちに急展開!!
これから3人視点で物語が(妄想)

現実社会にちょいちょいヒントが隠れてる気がしてならないデスヨ。wktk

2つの物語が交差した。

早く明日にならんかなぁ
気になるなあ(笑)
  • 2008.03.26[水]

シュバルツァになってるとはこれまた意外な展開・・。

早くー!
早く続きを読ませてー!!
あぅあぅ。w

大預言者wwwwwww

それより(それより?)
うわー、意外な展開の連続で楽しすぎる!
タンクルはあの人なのかしらね、やっぱりw

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