POSITISM

適度に適当に。

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世界の終わりを変えるモノ - 第二十話 -


ハコニワノベル




   ◇



 ──神の国、城の城壁。


 何千、何万という数のカオスが、生気を求めて押し寄せる。
 ソルが太陽の槍を構えて、力を込める。突き出された槍から一直線に熱を帯びた風が吹きぬけ、カオスが散り消えていく。また、シュバルツァが力を込めると剣の影が伸び、一太刀ごとにその影に触れたカオスを切り裂いた。それでもカオスは一向に減る様子もない。むしろその数は瞬く間に増えてきている。
 タンクルは左手をかざし、右手の中指に取り付けたエメラルドの指輪に力を込めた。

「刻み射れ! 緑の風の矢! クローロン!」

 一直線に緑色の矢が走ると、風の刃が巻き起こり、矢の軌道上にいたカオスが切り刻まれ消えていく。続けて左手をかざし、右手小指に取り付けたサファイアの指輪に力を込めた。

「流し射れ! 青き水の矢! スイーニー!」

 蛇行しながら青色の矢が走ると、たちまち激流が巻き起こり、一瞬にして多くのカオスが飲み込まれて消えていく。しかし、それでも尚、新たなカオスが次々に溢れ出してきていた。


 ──神の国、城の地下室。


 水晶で外の様子を伺うブラムは、奇妙な違和感を覚えていた。

「終わりの予言では、『太陽と月が滅び』、『世界は何もなくなる』とある。しかし、太陽も月も滅びてなどいない」

 ──はっと顔を上げ、ブラムは目を見開いた。

「……もしや! 太陽と月というのは、……姫さまお二人のこと! ?」

 そのことを伝えようと外に出ようとするも、死ぬ気でかけた結界魔法はいつも以上に強力で、既に自分でも外に出ることができなくなっていた。ブラムは涙を流し、床に崩れ落ちた。

「申し訳ございませぬ、太陽の姫さま、月の姫さま。このブラム、一生の不覚にございます! 予言を読み違えておりました……、護るべきはお二人だったのでございましょう。世界の終わりとは、お二人の命が尽きてしまうことによって訪れる予言……。つまり、このままでは、くっ……」

 ブラムは溢れる涙をそのままに、奥歯を噛み締めた──。


 ──神の国、城の城壁。


 徐々に三人はジリジリと後退していた。
 ソルは肩で大きく息をしている。シュバルツァも影の力を使う度に苦悶の表情を浮かべるようになっていた。
 今までは、ただ向かって来るだけだったカオスは、少しずつ徒党を組み、連携しながら押し寄せて来るようになった。また、数だけでなく個体にも違いが現れ、中には巨大なカオスまで現れ始める。それはまるで急速に進化をしていくように、より強力になっていく。押し切られるのも時間の問題になっていた。
 巨大なカオスがソルに襲い掛かかる。その攻撃を防ぐのに精一杯で、ソルは反撃することが出来ないでいた。その巨大な腕がソル目掛けて振り下ろされる。──その瞬間、ソルをシュバルツァが抱きかかえてその攻撃を避けた。

「礼は言わん!」

「あぁ……、言わなくていい」

 今度は二人目掛けて巨大な腕が振り回される。その攻撃を避けながらソルは突き、シュバルツァは切りかかるが、致命的なダメージは与えられなかった。

「轟き射れ! 黄の稲妻の矢! クサントン!」

 二人よりも後ろに下がっていたタンクルが親指と中指の指輪に力を込め、赤と緑を混ぜた黄色の矢が、巨大なカオスへ稲妻となって降り注ぐ。カオスは稲妻によって苦しみ始めた。そこへ、ソルとシュバルツァが同時に攻撃を繰り出し、巨大なカオスはついに消え去った。しかし、次に三人が目にしたのは、今のカオスより更に巨大な三体のカオスの姿だった。
 タンクルはすぐに左手をかざし、右手中指と小指の指輪に力を込める。緑と青が混ざっていく──。

「凍え射れ! 蒼き氷の矢! キュアノエイデス!」

 放たれた矢は、二体の巨大なカオスを氷付けにし、バラバラに砕け散らせた。しかし、その矢の攻撃を避けた一体がソルとシュバルツァに襲い掛かる。
 カオスの攻撃によって吹き飛ばされたソルへ、容赦ない追撃が迫ったが、それをシュバルツァが防いだ。──しかし、その瞬間、防いだカオスの腕から別のカオスが生まれ、その腕がソルの胸を貫いていた。

「……なっ、なんだと」

「ぐぅっ……。す、すまんな、シュバルツァ……、私は貴様に、護られてばか……りだ……」

「おい! しっかりしろ!」

「あり、が……」

「待て! 俺はまだ、君に……」

 ソルは穏やかな表情のまま崩れ去った。その亡骸を貪ろうとカオスが群がる。シュバルツァはソルを抱きしめ、そしてそのままカオスの群れの中へと消えて行った。
 時を同じくして、立ち尽くしていたガロムガンドは空に浮かんでいた太陽を飲み込んだ。
 ──世界は影に覆われる。

(お姉様……)

 視線を巨大なカオスへと向き直し、タンクルは左手をかざす。親指と小指の指輪に力を込めた。赤と青が混ざり合っていく。

「滅び射れ! 紫の死の矢! ポイニークーン!」

 禍々しい矢が巨大なカオスに命中すると、辺りに紫色のガスが広がっていく。次々とカオスが息絶え、消滅していく。しかし、静寂が続いたのはほんの一瞬だった。消滅したカオスよりも、更に数を増やしたカオスは一気にタンクルを飲み込んでいく。最後の力を振り絞り、右腕をカオスの外へ突き出し力を込める。しかし指輪はその役目を終えたかのように、力なく砕け散った。そしてゆっくりとその右腕もカオスの群れに飲み込まれていく。
 ガロムガンドは、上りかけていた月をも飲み込んだ。


 ──神の国、城の地下室。


「太陽であるソル、月であるタンクルが滅びた……。既に世界には何も残ってはいまい。全ての生気を吸われ混沌の大地に成り果てるだろう……。これが、世界の終わり。予言を見誤り、最後まで生き残って、終わる世界を見届けることになるとは……。なんと無残な運命か……」


 すべての生ある者は飲み込まれ
 ありとあらゆる物は無に帰える。
 そこにはただ、混沌の大地が何も語らず残された。


 ブロムはそこまでを書くと、静かに筆を置いた。同時に結界の隙間から、夥しい数のカオスが地下室を埋め尽くしていった。


 直後、太陽と月を失い、秩序を失った天体が次々と世界へ降り注ぐ。


 こうして、世界は終わりを迎えた──。



 Fin.



   ◇



「ちょっと! これってハッピーエンドものじゃなかったの! ?」

 ひなちゃんが電車の中で大声で言った。「ほとんどの神話は、何かしらバッドエンドなんだよ」と小声で言った。ひなちゃんは「私は絶対ハッピーエンドがいい!」と宣言してふくれっ面になった。
 電車は三条町を過ぎ、まもなく下条町に到着するところだった。「太陽と月の姫」をバッグにしまう。そこで、あの人がいたとして、あの人とひなちゃんが二人きりで話をする間、自分に何もすることが無くなったことに気が付いた。すぐに図書館の本でも読めばいいかと思いなおすと、車内アナウンスが下條町に到着することを告げる。まだ降り続く雨の中、期待と不安とほんの少しの嫉妬を持って、私達は図書館へと向かった。




≪第十九話へ
第二十一話へ≫

COMMENT

これ結構衝撃なんだよね。
バッドエンド

あの3人がグングニルとして語り継がれると思ってた(笑)

太陽が月を照らし

闇がなければ月が輝いてる事が解らない

とってもいい物語だな。

その後が気になるけど(笑)
  • 2008.03.25[火]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2008.03.24[月]
  • -

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