POSITISM

適度に適当に。

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世界の終わりを変えるモノ - 第十八話 -


ハコニワノベル

 電車が揺れたので顔を上げると、まだ二条町を出たところで、隣りを見るとひなちゃんも本を覗き込んできていた。

「うわー、なんか怖いね。この世の終わりみたい」

「うん、そうだね。この本大好きなんだけど、最後の方を読むと複雑な気持ちになるよ……」

「そうなんだ、ねぇねぇ、早く次のページに進もうよ」

「あ、うん」



   ◇



 ガロムガンドは退屈していた。数千年という長きに渡って世界の裏側に縛られていたが、恨みや憎しみという感情は持ち合わせていない。ただ解き放たれた自分が何をすべきなのかが解らずにいた。しかし、導かれるように、強い生命力を感じる方向へと進んでいく。その足跡とも言うべき闇の跡から、生死不明の者達が次々と現れてくる。


 ──神の国、王の間。


 戦艦スヴァルトの爆風をタンクルが魔法で防ぎ、なんとか城は城としての形を残した。しかし、魔法で防ぐことができたのは城壁までで、緑豊かで雄大だった大地は爆撃によって見る影もなく、無残な姿を晒している。
 城壁の外にいた兵はすべて爆風に飲まれてしまった。城の中にいた兵もトレントの生み出したゴーレム達によって命を奪われ、まともに動ける者はソル、タンクル、シュバルツァ、ブラムの四人だけになっていた。

「まさか、お父様が……」

「あれは、禁術アーグルボゥザですな……」

 力なく崩れ落ちているソルにブラムは説明を続ける。

「先々代の神王であるオーディンさまが作った秘術。その昔、闇の一族との戦いで使用されたのです。しかし、その術の代償は……」

「代償? その代償はなんなの? ブラム、答えて」

「それは、その……」

「……代償とは、使用者の命」

「なんですって? それは本当なのタンクル?」

「……うん、古い書物にはそう書かれてた」

(なんということだ……。月の姫さまは既に、ルーン文字まで解読なさったと言うのか)

「おい、何かデカいのが来るぞ!」

 ずっと表を伺っていたシュバルツァの声を聞き、ブラムが水晶でその姿を映し出すと、天に届くほど巨大で、真っ黒な狼のような怪物が映し出された。

「これが、終焉ガロムガント。三賢人の姿が見えないところを見ると、やはり世界は終わりに導かれていくのか……」

「諦めてる場合じぁないわ。過去に闇の一族に打ち勝っているのでしょう? お父様があの怪物を打ち倒せば、世界が終わる前に止められるかもしれない」

「しかし、太陽の姫さま。神王さまは既に意識を失っておられます。ガロムガンドと戦闘になったとしても、まともに戦える状態ではございません。禁術の代償も、もうまもなく訪れるてしまうでしょう。我々に出来ることは、もうなにもございますまい……」


 ──神の国、大いなる大地。


 目標を失った神王ギュオの視界に、ドス黒い怪物が映り込んだ。意識はすでにないというのに、神王は薄く笑いながら怪物の方へと進んだ。
 ガロムガンドの尾の蛇達が神王を見つけると素早く襲い掛かる。一匹が左足に喰らい付き、一匹は右腕、もう一匹は腹を突き破る。神王はそれでも一直線にガロムガンドへ向かっていく。
 ガロムガンドの目の前まで進むと、神王は右腕に喰らい付いた蛇を斧イーミルで切断した。この世のものとは思えない叫び声をあげながら、蛇はのた打ち回る。そしてそのまま斧イーミルを振りかざし、ガロムガンドへ振り下ろした。
 ──斧イーミルは音もなく、ガロムガンドの身体を真っ二つに切り裂いた。ガロムガンドの左半身が轟々と音を立てて崩れ落ちていく。


 ──神の国、王の間。


「なんと、ガロムガンドを切り裂くとは……」

「このままいければ、世界は終わらないかも知れないわね、ブラム」

 誰もがほんの一瞬だけ希望を感じかけていた。しかし次の瞬間、水晶に映し出されたのは、崩れ落ちたガロムガンドの左半身が、神王の首を食い千切る様だった。その場にいた全員が言葉を失う。
 二つに分かれたガロムガンドは再び一つに再生し、切り落とされた蛇の切り口から、生死不明の者達が溢れ出てくる。森も、大地も、海もその生死不明の者達によって徐々に埋め尽くされた。生気という生気を吸い取られ、混沌の大地に変わっていく。そして、世界でたった一つ城の形を残しているこの神の城へ、その者達は押し寄せ始めた。

「あれは、闇の住人カオス……。終わりの予言にある『世界は何もなくなる』と『混沌の大地』とは、世界中がカオス達で埋め尽くされてしまうことなのか……」


  暗き淵より新たな太陽が昇る
  世界樹はその種子を撒き
  そこに新たな世界が芽吹く
  そして世界の始まり。


 ブラムは世界が生まれた時の始まりの予言を力なく呟やく──。

「数千年前に始まったとされる世界に、終わりが訪れるとは……」

「ブラム。まだ、まだ諦めてはいけないわ。あのカオスをすべてを打ち倒せば、まだ世界は終わらない。終わらせはしない」

 ソルは立ち上がると、槍を手にする。シュバルツァも剣を手にした。

「なぜ、貴様も戦おうとする? 貴様は元々この国の者ではない。さっさと逃げろ。……貴様ほどの腕があれば、今ならまだ逃げ切れるかもしれん。さぁ! さっさと行け!」

「断る」

「なんだと?」

「何度も言わせるな。断る」

「なぜだ! 私は貴様にそこまでして助けられる覚えなどない!」

「……」

「なんとか言ったらどうだ!」

「……俺は、いや、なんでもない」

 シュバルツァは何かを言いかけたまま、敵を迎え撃つべく城壁へ向かった。そのやり取りの後でタンクルは意を決し、自分の部屋から三つの指輪を取り出して右手の親指、中指、小指へ装着すると、城壁へと向かおうとした。

「つ、月の姫さま! お待ち下さい! 失礼ながら、あなた様ではどうすることも……」

 タンクルを制止しようとしたブラムをソルが止めた。

「ブラム、あなたは大きな勘違いをしているわ。今、世界に残されている者の中で、一番強いのはあの子よ」

「まさか、そんな……」

「確かに、あの子は戦いには向いていない。けれど、あの子があの弓で本気を出したら、きっと私や、あのシュバルツァでも勝てはしないわ……」

「弓と申されても、月の姫さまは何も手にしておられませんぞ!」

「いいえ、あの子は確かに持っているわ。ヴァルキューレを……」

 その時、空から鳥のように翼を持ったカオスが、腐敗臭を撒き散らしながら王の間へと入り込んだ。ソルが槍を構えるより早く、タンクルは左手をカオスへ向け、右手の親指に取り付けたルビーの指輪に力を込めた。

「燃え射れ! 紅き炎の矢! エリュトロン!」

 タンクルの詠唱に合わせて、右手の親指から紅い矢がカオスへ一直線に放たれると、カオスは一瞬で燃え散った。「ブラム……、ごめんなさい」と頭を下げて言うと、タンクルは城壁へと向かっていった。

「ブラム、ここも危ないわ。あなただけでも地下へ避難して!」

「し、しかし、姫様たちを戦わせておいて、私だけ避難するわけには」

「ブラム、あなたはその水晶で私達が世界を救うところを見ておいて欲しいの。そして、どうやって世界は救われたかを書物に残してくれないかしら。これは、あなたにしか出来ない」

「……か、かしこまりました。その大役、このブラムが勤めさせて頂きます!」

 ソルはその返事ににこやかに笑って答えると、自らも城壁へと向かった。

「おぉ、神よ。世界を救いし者達に祝福を」

 ブラムは強く祈りをささげてから城の地下室へ移動し、内側から結界魔法を施した。手にした水晶には迫り来るカオスの群れと、それに対峙する三人の姿が映し出されている。



   ◇




≪第十七話へ
第十九話へ≫

COMMENT

ガロムガンドだった...

そうですよね。
太陽は刃物
月は弓矢。
ヴァルキュリアの力があれば百発百中(ぉ)

いよいよ最終決戦

勇敢なる3人の若者はどーなるのか!

明日を待て!
  • 2008.03.21[金]

いよいよですねっっ

すっかり物語にひきこまれてるよぅw
カオスたちの場面、もののけ姫のデイダラボッチを思い出しました

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