POSITISM

適度に適当に。

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世界の終わりを変えるモノ - 第十五話 -


ハコニワノベル

 本を閉じて、背伸びをする。ひなちゃんはまだ眠ったままだ。
 雨降りの日曜日。昨日は疲れたし、今日一日は家の中でゆっくりしよう。そう思いながら顔を洗うために洗面所へと移動した。
 鏡に映る自分の顔を見ながら、あの本に出てくる太陽の姫はひなちゃんのような顔だと思う。じゃぁ、私は誰なんだろう? と想像を膨らませながら、顔を洗った。洗濯機の上にある棚からタオルを無造作に引っ張り出すと、タオルで何かを引っかけてバサリと床に落とした。
 タオルで顔を拭いてから、もう一度鏡を見る。ひなちゃんが太陽の姫なら、私は月の姫かな。そんなことを漠然と考えてから、床に落としたものを見ると、昨日ひなちゃんを助けてくれた人が着ていたパーカーだった。

「あれ? このパーカーって」

 右斜め上を見ながら考える。どこかで見たことのあるこのパーカーのことを。どこで見たんだろう? 昨日、ひなちゃんとぶらぶら買い物をしていた時? ううん、もっと前だ。確かその前は図書館にいて──。

「あーっ! ! !」

 思わず走って、寝ているひなちゃんを起こす。

「ひなちゃん! 起きて! ねぇ、起きてって!」

「んーー」

「ちょっと! ひなちゃん! 起きてってば!」

「んもー。今日は私、休業日ぃ……」

「寝てる場合なんかじゃないって! 解ったの!」

「何がぁ? ……またあの本の、新しい発見?」

「違う違う! 昨日、ひなちゃんを助けてくれた人!」

「……あぁ、そう。それは、素敵素敵。……私の王子様がね」

「んもー! その人が誰なのか、解ったんだって!」

「……えぇ! ?」

「私、その人知ってるよ。昨日、ちょっとだけ一緒にいた人だと……思う」

 いきなりベッドがか飛び出して、私の両手を掴むひなちゃん。「それで、どこの、誰?」とか興奮気味だ。途切れ途切れになりながら夢中で説明して、時には抱き合いながら「これは運命かもね」と二人で乱舞した。
 日曜日、しかも雨が降っている。彼は図書館に来るだろうか。それでもひなちゃんを助けてくれたことのお礼、それから今、洗濯機の中で洗われ、じきに乾燥されるであろうあのパーカーを返したい。洗濯乾燥機が動いている間に、私達はそれぞれ出かける準備をした。ひなちゃんは昨日よりも気合を入れてメイクをしている。
 洗濯乾燥機が作業の終了を告げると、ホカホカになったパーカーを綺麗に畳んで紙袋に入れた。もし、あの人と会えたら、きっとひなちゃんは、二人きりで話したいことが沢山あるはず。そう思って一人で待てるように「太陽と月の姫」をバッグに入れた。なぜかその瞬間、胸がざわついた気がした。

「ねぇ、その人ってどんな人?」

「んー、寡黙って感じかな。いつも図書館で見かけてるからかもしれないけど……」

「そっか、寡黙かぁ。確かに昨日も何も言わなかったしなぁ」

「そ、そうだね」

 胸がチクチクと痛み出した。ひなちゃんに彼のことを話す度、それを聞いたひなちゃんの表情が少しだけ緩むのを見る度に、その痛みを強く感じる。

「日曜日だし、しかも雨降ってるし、今日は来てないかも知れないよ?」

「うん。だけどさ、もしかしたら来るかも知れないじゃん」

「う、うん。そうだね」

 チクチクと胸に何かが刺さる。降り注ぐ雨が傘にぶつかってパラパラと音を奏でている。人通りも少ない道を、ひなちゃんと並んで図書館へと向かった。

(私、もしかして……嫉妬、してるのかな)

 電車の中で窓の外をボーっと眺めているひなちゃんの横顔を見ながら、そんなことを考えていた。意識しないようにしようと思えば思うほど、私の中のでひなちゃんと彼を会わせたくない気持ちが芽生えてしまう。変なことを考えてしまわないように、私は本を開いた。



   ◇



 ──巨人の国、全てを飲み込む谷。


 その深さは世界中の海水を入れても満たされないとされる、世界に空いた巨大な割れ目。その谷を黙々と織り続ける巨人王とヘイルーズ。永遠に続くかと思われたその谷もついに底が見えた。

「竜王ギンヌガップよ! どこにおる? 出てこんか!」

「何者だ? 我の眠りを妨げるな……」

「我は巨人王ボルソルン! お主が護っておるという封印を解きに来た!」

「貴様らか。我らの封印を解いてしまおうとする愚か者達は……」

「我は世界一強い男になるのだ! さぁ、封印を解け!」

「愚かなり、巨人王。騙されておるとも知らぬとは……」

「騙されているだと?」

「フェフェフェ……。巨人王さま、戯言です。ここはわたくしにお任せ下さい」

「……うむ」

「さぁて、竜の王よ。そのお姿を現してくださりませ」

「くだらぬ。我はすでに姿を見せておるわ!」

 バキバキと谷全体が音を鳴らして揺れた。

(なんと、この谷全体が竜王ギンヌガップの口であったか……)

「火竜スルート、風竜フレスヴェルクの持つ封印は既に解かれてしまった。そのほう、世界の封印グレイプニルを解こうとしておるな……」

「フェフェフェ……。いかにも」

「ならばここでその野望ごと、貴様らを飲み込んでくれよう!」

 谷全体が激しく揺れ、徐々に谷間が、竜王ギンヌガップの顎が閉じられていく。

「ヘイルーズ、何の話だ?」

 ヘイルーズは魔法でふわふわと空中を浮遊しながら巨人王に近付き、杖を振りかざして巨人王の両腕に魔方陣を描きだした。

「巨人王さま、封印は竜王ギンヌガップを打ち倒さねば解けぬようですじゃ。この竜を我らで倒しましょうぞ」

「そういうことか。うむ、解った。しかし、これほどの巨体をどうやって打ち倒す?」

「巨人王さまの力を、魔法の力で増幅させまする……。闘いの英雄ニーベルンゲンの力をもって! 響け、豪腕の唄!」

 描かれた両腕の魔方陣から溢れんばかりの力が巨人王に漲る。その腕が徐々に膨れ始め、閉じていく竜王ギンヌガップの顎を内側から止めた。

「おぉっ! 力が溢れてくる。これならば、竜王と言えども倒せるであろう!」

「わたくしはこの竜の外から魔法で攻撃しますゆえ……」

「ならば我は、このままこの口を引き裂いてくれるわ!」

「フェフェフェ……。それではわたくしは外へ行きます」

「頼んだぞ! ぬぉ! こしゃくな大口めぇ! んぉぉぉおおおおおっ!」

 巨人王が竜王の顎をこじ開けようとしたおかげで、ヘイルーズはふわふわと浮かびながら竜王ギンヌガップの口から抜け出した。完全に抜け出してからヘイルーズは杖を振りかざし、力を込める。すると竜王の口の中にいる巨人王の腕が更に大きく、力強くなる。更に杖に力を込めると、巨人王の腕は更に大きく強くなっていく。

「はっはっはっは! どうだ、竜王ギンヌガップよ! 我の力を前に口を閉ざすことも出来まい!」

 ヘイルーズはその状況を上空でただ見ていた。次第に巨人王の力によって、竜王の口が開かれていくようになるのを見届けると、不気味に笑った。そして杖を掲げ詠唱を唱えて振り下ろす。

「散れ! 破壊の腕!」

 杖が振り下ろされたのと同時に、竜王の口の中で爆発が巻き起こった。一瞬のうちに竜王ギンヌガップは口から身体全体を、上顎側と下顎側に真っ二つに引き裂かれた。竜王ギンヌガップの中で巨人王は両腕を失い、意識を失っている。しばらくすると、竜王ギンヌガップの奥底で蠢きはじめた何かが、まるで与えられた餌のように巨人王を飲み込んでいく。

「世界の終わりが近付いておるわ、フェフェフェ……」

 それを見届けると、ヘイルーズは魔方陣の中に消えて行った──。




≪第十四話へ
第十六話へ≫

COMMENT

ひなちゃんと彼が会ったらどうなるんだろう…。

うわー切ないわー。この気持ち分かるわー。

しのめんさん、こういう切ない恋を表現すんの上手いよね(・∀・)

とうとう本性をあらわしたなっ
この悪者三兄弟めっ(だんご三兄弟風に

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