POSITISM

適度に適当に。

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世界の終わりを変えるモノ - 第十四話 -


ハコニワノベル

 目が覚めると、ひなちゃんはまだベッドで寝たままだった。よほど疲れているのだろう。そっとカーテンを開いて、窓の外を確認すると雨が降っていた。開いたままになっている本を軽く眺めた。この物語は大好きだけれど、ここから先を読むときはいつも複雑な気持ちになる。──視線の先の物語は世界の終わりを描いていく。



   ◇



 ──炎の国、グルガン火山。


「貴様、たった一人で我輩と戦うというのか?」

「そのつもりだ」

「ふはははは! なんという愚かな男よ。各国の国王が戦いにくるのならばいざ知らず、貴様のような非力な男が我輩に一人で挑んで来るとは、なんという身の程知らずか」

「俺はお前とくだらない会話をしに来たんじゃない」

「ふはは! まぁ、そんなに死に急ぐ必要はあるまい。どうせすぐに決着は付く。名を聞いておこうか、愚かな男よ。我輩は火竜スルート!」

「俺の名は、影のシュバルツァ。覚えなくていい。すぐに覚える意味などなくなるからな」

「竜族の牙と爪は、貴様らの作るどんな武器より鋭く、鱗はどんな鎧よりも強い。翼はどんなものより速く、そして我輩の炎は世界をも焼き尽くすぞ! さぁ、愚かな男シュバルツァよ。貴様の血をもって、愚かな行為の罪を償うがいい!」

 火竜スルートは高く舞い上がり、恐ろしいまでのスピードでシュバルツァに襲い掛かる。シュバルツァはその突進による牙、爪、時折吐き出される火炎を避け続けるだけで、反撃することが出来ずにいた。

「どうした、シュバルツァ。あれだけの大口を叩いておいてこの程度か? ならば、すぐに楽にしてやろう。影すら残らぬほどに焼き尽くしてくれる!」

 火竜スルートは燃え滾る溶岩の中に飛び込むと、竜鱗を更に赤々と輝かせて舞い戻る。空中で力を溜め込んで、今までの数倍の速さで、全身に灼熱の溶岩を纏いながら一直線にシュバルツァに襲い掛かる。

「ぐっ……」

 ──重たい衝突音。それから大量の土煙。それから熱。巨大な溶岩の塊となった火竜スルートが地面を溶かし、抉りながら大岩に衝突して止まった。

「んー? 跡形も無く消し飛んだか? ふはははは!」

 火竜スルートの唸り声にも似た笑い声が、静けさを取り戻したグルガン火山の山頂に木霊する。

「竜族も、あんがいトロいんだな」

「なっ! ? ……ぐぁ! !」

 振り向こうとした火竜スルートの片翼が、おもちゃのようにちぎり取られ無造作に落ちた。シュバルツァは火竜スルートの背中に乗っていた。

「貴様、影の……シュバルツァと名乗ったな。貴様が、終わりの予言を呼び起こす、影か……」

「もう一度言う。俺はお前とくだらない会話をしに来たんじゃない」

 何のためらいもなく、シュバルツァは剣を振りかざす。その瞳に迷いや躊躇いは一切映り込んでいなかった。

「……これもまた宿命か。良かろう。火竜スルートの首、くれてやる。貴様が、世界の終わりで苦しみ死ぬのを、先に逝って見物させてもらうぞ」

 刀身が振り下ろされたとき、グルガン火山が小さく噴火してから、急激にその温度を失っていった。その火山口の奥底で何かが蠢きはじめようとしていた。

「神の国への進軍が始まるな。……太陽の姫」

 シュバルツァは自分の腕をしばらく眺めてから前を見据えて力を込める。一瞬のうちに足元の影が身体を多い尽くし、漆黒の獣に姿を変えた。そして風のような速さで駆け出していた。


 ──氷の国、雪山ドゥムラ。


「何用だ、神の国の王」

「我祖父が封印したという、秘術を受け取りに来た」

「オーディンの孫にしては、強欲で意地汚い。ここに秘術など封印されておらぬ」

「隠すとためにならんぞ? ワシにはその秘術を受け取る権利がある」

「ここに無いものを受け取る権利だと? はははっ! 片腹痛いわ」

 風竜フレスヴェルクが舞い上がり、その翼を羽ばたかせると、雪山の冷たい空気が吹雪となって神王を襲った。

「我の翼はこの世界の隅々まで届く風。氷付けになりたくなければ、すぐに引き返すがよい」

「秘術を持って打ち倒さねばならぬ一族がいる。その一族はこの世界に影を落とすであろう」

「終わりの予言だな。それを私利私欲で曲げようとしているか……。我にはそなた達こそ、世界に落ちる影に見えるがな」

 更に風竜フレスヴェルクが翼を動かすと、神王の身体が凍り付き始めた。

(これでは凍ってしまうな。ヨルドに貰った薬を飲むしかあるまい……)

 まるでルビーのような色をした液体を飲み干すと、すぐに寒さを感じなくなった。神王は一歩ずつ、風竜フレスヴェルクへ近付いていく。その度に、身体は大量の熱を放射する。汗をかき、身体に吹き付ける吹雪との温度差で、蒸気のような湯気が身体全体から噴出する。またそれに伴って、一歩近付くごとに神王は意識が朦朧としていった。

「聞き分けの悪い、愚かな神の王よ! ここに秘術など封印されておらぬ! 下がれ! それ以上近付くならば、我はそなたを敵と認識する。凍らせて、バラバラに刻み付けることになるであろう」

 その言葉は、既に神王に届いていなかった。


 ──神の国、王の間。


「フォフォフォ……。やっと飲んだか。強制的に秘術を引き起こすヘスペリデスの酒を。そこに封印されておるのは秘術とは別のもの。……さぁ、世界に影を落としてもらうぞ、神王ギュオ!」

 ヨルドは杖を強く振りかざし、空中に魔方陣を描いていく。

「これぞ、先々代の神王オーディンが作りし秘術。神王ギュオよ、無敵の超人となれ、アーグルボゥザ!」

 赤い光が一直線に雪山ドゥムラへと伸びていった。


 ──妖精の国、妖精王の城。


「妖精王さま、戦艦スヴァルトの準備整いました!」

「よし、出陣だ。神王のいないうちに神の国を制圧してくれる!」

「妖精王さま! トレントさまが先ほどからどこにも見当たりません!」

「ふむ。トレントは放っておけ。どのみち戦争ではさほど役に立たぬわ」

「はっ!」

「世界を制するは、この妖精王ベルルよ!」

 黒き蒸気をあげ、戦艦スヴァルトが空に浮かぶ。その主砲が神の国へ照準を合わせる。

「まずは、主砲の威力、思い知らせてくれよう。主砲、放てぇっ!」

 主砲から放たれた弾は、神の国の領土に落ちると一瞬でその周辺を炎で包み込んでいく。

「素晴らしい……。これこそ我力! 一気に神の国へ入り、城を落とすのだ!」

 戦艦スヴァルトが神の城へと進路を取り進みだした。


 ──氷の国、雪山ドゥムラ。


「グォォォォッ……」

 赤い光が一直線に神王ギュオに届くと、心臓が脈打つように、神王の身体が赤く点滅しはじめ、その度に神王は低く唸り声をあげた。風竜フレスヴェルクは戦闘態勢を取っている。

「そなた、既に秘術アーグルボゥザを? ……いや、これは無理やり発動させられておるのか……。なるほど、あの三賢人達め。世界を手にしようなどと考えたか!」

 神王は点滅を繰り返すごとに身体が大きくなっていく。既に瞳は焦点を失い、意識は定かではない。ただ、脈々と殺意のみが溢れ出し、身体は巨大になっていく。

「先々代の神王オーディンが、闇の一族による世界崩壊を救うために作った秘術アーグルボゥザ。その使用者は意識を失い、目に映る全てのものを滅するまで破壊を続け、最後は自身を死に至らしめる禁術。神王ギュオよ! 悪いがそなたが世界に影を落とす前に、我がその命喰らい尽くしてくれよう!」

 神王ギュオの身体はすでに風竜フレスヴェルクに匹敵する大きさになろうとしていた。風竜フレスヴェルクは空に舞い上がると、口から絶対零度の吹雪を吐き出した。神王がその吹雪を左腕で防ぐと、一瞬のうちに左腕が氷付けになった。

「既に意識はあるまい。せめてその雄雄しき姿のまま、氷の中で死するがよい……」

 風竜フレスヴェルクが更に勢いを強めて吹雪を吐き出す。神王ギュオの左腕から全身に向けて、徐々に凍っている箇所が増えていく。

「グォォォォッ! !」

 氷付けになっていた左腕を引き千切り、神王ギュオはその巨体からは想像できない速さで、身体とおなじく巨大化した斧イーミルを振り下ろしていた。直後、吹き付けていた吹雪がピタリとおさまっている。

「我盟友オーディンよ、そなたの孫を世界の影に、してしまうこ……とを、許、せ……」

 風竜フレスヴェルクはそう言い残し、その瞳から生気が失われていく。ズルリと音を立てて、その首が落ちた。
 それと同時に爆撃音が遠く、神の国の方角から聞こえる。爆撃音の方を見据えると「グォォ」と低く唸ってから、神王ギュオはその爆撃音に向かって一直線に進みだした。
 静まり返り、吹雪の無くなった雪山ドゥムラの地中深くで、何かが蠢きはじめようとしていた。




≪第十三話へ
第十五話へ≫

COMMENT

チェックメイト!
  • 2008.03.17[月]

いろんな思惑が明るみに!!

待て!次号!(違

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