POSITISM

適度に適当に。

07« 2017.08 »09
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

世界の終わりを変えるモノ - 第十一話 -


ハコニワノベル

 消したい思い出だった。いや、とても大切な思い出でもある。だけど僕は由香里を思い出すと、目の前から由香里が消えてしまったことを思い出してしまうのが辛くて、その辛さから逃れたい一心に忘れよう、考えないようにしようと思っていた。
 ──あれから五年。
 僕は大学で何をするわけでもなく、単位も取得せぬまま日々を過ごした。日払いのバイトを二、三ほど掛け持ちしながら生活費と学費を稼ぎ、大学には行かずに図書館での読書ばかりしている。大学を卒業してしまうと、由香里と過ごした大学時代が過ぎ去ってしまうように感じていた。つまり、結局のところ忘れることも出来ずに、ただ日々を過ごしていたに過ぎない。由香里を失い、声を失い、人との接点を極力避けた。そうやって自分の心に鍵をかけて、いろんなものを見て見ない振りを続けていた。
 今日はやけに由香里のことを思い出してしまう。今、ほんのすぐ目の前で転がっている居酒屋のツッカケと、由香里があのとき履いていたミュールがタブって見えた。あのとき、僕は車の先にある現実を見るのが怖くて、ずっと動けずにいた。もし、すぐに駆けつけたら、由香里は最後になにか言えたのかもしれない。
 ──背筋が凍るような思いがした。
 またこのまま現実から逃げたら、二度と現実を受け入れられないような気がした。きっとそれは、由香里が悲しむことだ。今まで、現実から逃げるための言い訳に由香里を使っていたんだろう。僕はずっと負のフィードバックを繰り返していただけだ。そんな自分に嫌気がさす。
 僕は首を軽く振ってから、今までの自分を振り切るようにフードを深く被った。そして目の前にある、今までずっと目を背けてきた現実と対峙するために、覚悟を決めて一歩前に出た。

(おい、辞めろ! ……ってあれ? どこかで見たような……)

「おい、お前誰だよ?」

「おいおい、邪魔すんなよ? 解ってるよな?」

(とにかくだ、その子を放せ)

「な、なにシカトしてんだよっ! 殺すぞ?」

 声に苛立ちが混ざり始める。手前の男があからさまに敵意をむき出しにして近付いてきた。

(お前ら自分のしてることが、どういうことなのか解ってるのか?)

 声の出ていない言葉が聞こえるわけも無く、男が殴りかかろうとしてくる。この男、酔っているのだろうか、ふらふらしていて動きがそんなに早くない。避けると男はバランスを崩して倒れそうになった。

「調子こいてんじゃねーぞ!」

 再び殴りかかってきた男の攻撃を避けようとすると、男もふらつくのか、こちらが避けた方にふら付いてきた。ふいに近付かれてことに慌てて、それを避けようと手を伸ばすと、手のひらが男の腹部に強く突き刺さった。

「ぐぅ……」

 息苦しそうに男がしゃがみこんでしまった。

(あ! おーい……大丈夫?)

「おいおい、なにしてくれてんだよ、テメー?」

 女の子を羽交い絞めにしていた男が掴みかかろうとしてきたので、それを緊急回避しようと後ろに避けようとした。だけど日頃の運動不足がたたったのか足が付いてこず、片足を残したまま半歩ほど後ろに下がる格好になった。しかし、その残っていた片足に掴みかかろうとした男が躓き、腹部を圧迫されて苦しんでいる男ともみくちゃになって派手にコケた。

(あの、大丈夫? 別に手を出すつもりはまったく……)

「えーっと、これは、その、ほんの冗談だって……なぁ?」

(は?)

「そうそう、ジョークだよ、ジョーク」

 わけのわからない言い訳をしてから、二人組みはどこかへ逃げて行った。

「……あの、ありがとうございます」

 後ろから声が聞こえた。振り返ると女の子の服がボロボロになっている。片手でシャツを引っ張って隠そうとしているけれど、立ち上がったら丸見えになってしまいそうだ。近くまで行ってしゃがみ込む。着ていた薄手のパーカーを脱いで羽織るように重ねた。

(これだと少し寒いかもしれないけど……)

「あ、ありがとうございます」

 一瞬、女の子が怯えた表情をして、それから妙に緊張感を解いたような気がした。きっと怖かったんだろう。片手を差し出して女の子を引き起こす。しかしそこで気が付いた。自分がパーカーの下に遠山の金さんをモチーフにした桜吹雪の、何と言うか人にはあまり見られたくないTシャツしか着ていないことを。なんとかして早くここから帰りたくなった。すぐに軽く手を上げて帰ろうとした。

「あ、あの!」

(うわぁ、まだ何かあるの? 早く帰りたいんだけどなぁ……)

 そう思いながら振り返った。

「お礼、ちゃんとさせてください」

(お礼? トレイ……トイレ、タッタラタッタラタッタラタンタンタン♪オレ! ……いや違う違う)

 薄暗くて良く見えないだろうけど、軽く首を振って、さっきと同じように軽く手を上げた。今度は何を言われても振り向かずに帰ろう。桜吹雪をむなしく背中で散らしながら、なんとか路地を抜けた。
 もう店に入れるような格好ではなかったので、そのまま家まで走って帰った。走ったのでよけいにお腹が空いて、部屋にそのまま放置していた黒い鶏肉をガジリとかみ締めた。それは驚くほど苦く感じた。
 部屋はまだ焦げ臭くて、窓を少しだけ開ると、三日月が夜空に浮かんでいるのが見えた。久しぶりに走ったからなのか、そのまま意識が遠くなった──。



   ◆



「人はいつか死ぬやんか」

(そりゃ死ぬよね)

「例えば好きな人を残して自分が死んでしまうとするやんか」

(どうしたの? 今日はやけにセンチメンタルだね?)

「まぁ、ええやん。そういう日があっても。でな、好きな人を残して自分が死んでしまったらさ、朋章は残された人にどうして欲しい?」

(うーん、どうだろう。考えたことないなぁ)

「あたしはな、死んでしまったあたしのこと、忘れないでいてほしい」

(へぇ)

「けどな、あたしのこと忘れられへんのは、まぁ、当然やけど。それを引き摺ってほしくはないんよ」

(引き摺る?)

「要するに新しい恋が出来へんとか、落ち込み過ぎて普段の生活もままならなくなってまうのは、嫌やねん」

(んー、忘れずにいて、なおかつポジティブに生きて欲しいってこと?)

「そりゃ、他の女と付き合われるのはしゃくやけど、その人の一生が幸せに過ごせるなら、やっぱりそっちのほうがええやん」

(……んー)

「どうしたん?」

(久しぶり、いや、初めて……かな? 由香里って乙女なんだなって思った)

「アホ、どこからどう見ても、あたしこそが乙女オブ乙女やんか」




≪第十話へ
第十二話へ≫

COMMENT

意外なとこで(笑)

今回はキーワード消化だなぁ(笑)

事実は真実と異なるか(笑)
  • 2008.03.14[金]

お♪
ここでキーワードが使われるとは。w

つうか、今日は読んでて、思わず爆笑してしまいました!www

昨日のシリアスなカッコイイ展開から、ほんとはこんなんだったのよ~みたいな展開で、面白い!

この後の展開もどうなるでしょう?
楽しみです♪
しのめんさんファイト☆

く、クール!・・・?
酔っ払いが勝手に一人相撲して負けてたのねww

あぁ、でも由香里の気持ちよくわかるなぁ。。
「忘れてほしくないけど引き摺ってほしくない」

キーワード来たwww
ここで出るとは思わなかったわー。

FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。