POSITISM

適度に適当に。

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世界の終わりを変えるモノ - 第五話 -


ハコニワノベル

(すっぱっ! ……え、なにこれ酸っぱすぎじゃないか?)

 どうにも紅茶というと甘いものだと思っていたけれど、この「カルカデ」という紅茶は酸味が強い。ミルクが入っていると思っていた小さなカップを覗き込むと、どうやら蜂蜜が入っているようだ。これでなんとか全部飲みきろう。
 この「Alfheim」という店は、そこら中でカチャ、カチャとカップとソーサーの音が鳴っているものの、とても静かだ。図書館と似た雰囲気がある。──そう気付いてから、借りてきたばかりの二冊の本のうち、品定めが終わっていない方を取り出して読み進めた。
 しばらく読んでみたものの、今日図書館であの子が読んでいた本の内容ばかりが気になった。せめてタイトルだけでも見ておけば良かったな。深い紫色の辞典のような本。また図書館に行けば会えるかな。そんなことを考えながら、ほとんど流し読みで手にした本を読み終えた。

「お先に失礼します。お疲れ様でした」

 店の奥からそんな声が聞こえた。声の聞こえた方を見るとさっきのウェイトレスだった。時計を見るともうすぐ十五時になろうとしている。もしかしたら、今から図書館に行けばまだあの子がいるかもしれない。ふとそう思うと残りの「カルカデ」を飲み干して、会計を済ませた。
 「Alfheim」に入る前はまだ明るかったけれど、今は空が青みを増して少し暗くなろうとしている。まだ少しだけ冬を引き摺っているような、そんな空だ。空を見上げ終えてから、図書館までの道を進む。あの子がまだいるかな? と思うと知らずと早足になった。

「あっれー? 君、一人? ちょっと俺らと遊びにいこうよ」

「お断り!」

「ダッセー、お前断られてやんの!」

「うるせーよ。どうせ一人だろ? 俺らと遊ぼうって」

「却下!」

「なんだよ、もしかして、恥ずかしがってんの?」

「あれだ、ツンデレだ! ツンデレ!」

「あんた達と遊んでる暇はないの、じゃあね」

 前を見ると、さっきのウェイトレスが頭の悪そうな男二人にナンパされていた。断っているのに何度もしつこく絡まれている。

「いいかげんにして!」

「なにキレてんの? 逆ギレ?」

「いいかげんにしてあげるよ? だから遊びに行こ~」

「私今、時間がないの。解った?」

「じゃぁ、予定キャンセルしちゃお! そしたら時間でき……っあ! !」

 男の手首を決めて背中へ回す。ふざけた表情だった男の顔が急に青ざめていく。もう一人の男もそれを見てふざけるのを辞めていた。

「ちょ、マジ、マジごめん。もうしません、もうしません、許してください!」

 涙目になった男を解放すると、ウェイトレスは「二度と私の目の前に現れるな!」と言いながら走って行った。ウェイトレスって強いんだな。

「痛ってぇなぁ、くそっ!」

「うわ、ダッセー」

「うるせーって。今度会ったらただじゃおかねーからな、あの女!」

 そんなことを言いながら頭の悪そうな男達は歩き去って行った。
 物語の主人公を気取るなら、今の場面は颯爽と助けに入らないといけない。やっぱり主人公は無理だよな。と考えながら、図書館へと再び歩みだした。



   ◇



 王の間へ駆け込んで、息を整えながら玉座の肘掛に拵えられた水晶に手をかざした。水晶はその手に反応するように球体の中に妖精の国を映し出した。

「そんな、ヒドイ……」

 タンクルは目を逸らした。森に充満する紫色のガス、そしてそれによって呻き、叫びながら絶命していく兵達。堪えきれず、手で水晶を撫でると、水晶は森の外を映し出した。

「良かった。お父様はご無事だわ」

 しばらくすると、神王に向かって一直線に屈強な兵を蹴散らして、物凄い勢いで近付く黒い何かが映り込んだ。そしてその黒い何かはあっという間に神王の前に到達する。

「……獣?」

 ──そこまで映すと、水晶はまた場面を変えた。

「お姉様! 良かった……」

 角度が悪く、映ってはいないけれど、何者かと対峙しているらしい。神王が詠唱をしている。どうやら戦線離脱するようだった。

「そんな! 兵を残してお二人だけで離脱を? このままでは兵の皆が……」

 水晶から手を離し、王の間の中央へ移動する。両手を開き、右の手のひらは上へ、左の手のひらは下へ向けて、呼吸を整え意識を集中させる。──タンクルの両の手のひらにルーン文字が浮かび上がる。

「時空の女神ナトゥ・メティコの力をもって!」

 ──詠唱をし、両手を強く合わせる。白銀の光が両手に集まった。

「翔けろ、超空の翼!」

 左手を右手に添えて、王の間の中央の床に振り下ろす。巨大な魔方陣が現れると城全体が波打つように大きく一度だけ歪んで消えた。はぁはぁと大きく息を吐きながら、タンクルはその場に倒れ込んだ。心配して追いかけてきたブラムが、倒れているタンクルに気が付き、そのままどこかへタンクルを運んで行った。

「遠距離空間移動じゃと? あの娘、とんでもない魔力を持っておるな。それにしても、妖精どももやっかいな奴を味方につけおったわい。いや、これはもしかすると、トレントの……。フォフォフォ、そうに違いない」

 ヨルドは自分の書斎から水晶で一部始終を見終えると、静かに笑った。

「神王さまがご帰還されたぞ!」

 廊下から叫ばれた声を聞き、ヨルドは王の間へと移動した。

「これはこれは、神王さま。ご無事でなにより」

「ふん、負けたのではない、引いたのだ」

「ヨルド! 貴様、お父様を侮辱しに現れたのか!」

「フォフォフォ、太陽の姫さまどうなさいました? イライラされとるようじゃが?」

 瞬間、ソルの脳裏にシュバルツァの顔が浮かび、悔しさと恥ずかしさでどうにかなりそうになった。

「き、貴様っ!」

「もうよい。ソルよ、此度の闘い良くぞ生き延びた。今は身体を休めよ」

「……はっ」

 神王に膝を付き、頭を下げてからソルは王の間から出た。出る間際にヨルドを強くにらみ付けた。ヨルドは深く帽子を被りなおすと「おぉ、おそろしや」と冗談めかして呟いた。

「それにしても神王さま、大した空間移動でございました」

「ん? 何のことを言っておる?」

「生存していた兵全てを同時に移動させるとは……、流石は神族の王でございます」

「ふむ……」

(なにが、「ふむ」じゃ、この能無しめ、あのまま殺されておったら、ワシらの計画が水の泡になるところだったわ)




≪第四話へ
第六話へ≫

COMMENT

るどがかわりに胃痛を請け負いますっ

さぁ、作者殿っ、今のうちにっっ!!



(すっかり感化されております)

面白くなってきやがった!
作者の胃はどーなるのか
次回を待て!
  • 2008.03.08[土]

カルカデはハイビスカスティーのことでしょうか。
酸味があって変わったお味なのれす。
たまぁに飲みますの。

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