POSITISM

適度に適当に。

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世界の終わりを変えるモノ - 第三話 -


ハコニワノベル

 階段を下りて改札を出る。切符をどこにしまったのか解らなくなって、ほんのちょっと焦った。一人でバタバタしてたら、あの男の人を見失ってしまった。きっと行き先は図書館だと思うけれど、なぜか少しだけ残念な気分になった。
 駅に隣接された図書館までは徒歩で五分とかからない。ゆっくりと図書館に向かって歩いていると道端でタンポポを見つけた。ほんの少ししかない地面に根を張って立派に花を咲かせてる。なんとなくその姿がひなちゃんとタブって見えた気がした。
 図書館に到着すると、バッグから借りていた本三冊を取り出して返却する。本の背表紙に付いているバーコードを係りの人に確認してもらって返却処理は終了。ずいぶんと軽くなったバッグを持って、さっきの男の人をなんとなく探してみた。

(あ、いた……)

 図書館と隣りのビルとの間に大きな木が植えてあり、その木が良く見える窓際の指定席。いつものように物静かに本を読んでいる。いつもは遠くからチラっと見たことがある程度だったけれど、いつになく大胆な気分になっていた私は、彼の向かい側の席に腰を下ろした。座ってからあまりに近い距離だという事実に気付いて、すぐに「太陽と月の姫」を開いて視線を本の中へと落とした。



   ◇



 風の音。木々のざわめく音。暖かい何かで包み込まれているようだ。うっすらと瞳を開くと小さく黄色い花が風にゆられている。ゆっくりと起き上がった。

「これは……?」

 自分の身体を中心に薄い緑色に輝く光がドーム状に広がっている。ソルはその光が腕輪から発せられていることに気が付いた。良く周りを確認すると、黒煙も霧もなく視界が開けた小高い丘のような場所にいることに気がついた。そしてそこから見下ろした先に、夥しい数の自軍の兵の亡骸と、紫色に漂うガスをその瞳に映した。

 ──毒ガス。

 圧倒的武力を持つ神の国の軍をワザと進行させ、霧で視界を防ぎ、毒ガスで一網打尽にされたのだ。幸いタンクルが出陣前にくれた腕輪の力で私は一命を取り留めた。いや、あのシュバルツァと名乗った男に、毒ガスの影響が少ない場所まで運ばれたから生きているのかもしれない。なんたる侮辱。敵の剣士に命を救われるとは。

「はっ、お父様!」

 失態を悔いている場合ではない。これだけの数がやられては、本陣にも何かしら影響が出ているはず。ソルはまだ毒ガスが漂っている森を駆けた。「無事戻ったら、タンクルに礼を言わなければならないな」ソルは自身を包む緑色の光に守られながらそう誓った。



   ◇



 視線を本から机の先へと延ばす。あの男の人はまだ本を読んでいる。こんなに近くで見たことが無かったから解らなかったけれど、少し年上だろうか。窓の外ではサァサァと風が木の葉を鳴らしている。
 一度席を立ち、アイスランド語の辞書を取りに移動した。「太陽と月の姫」の大まかなストーリーは既に翻訳して読んではいるけれど、まだまだ細かい部分が訳しきれていない。もしかすると、私が知っている物語の結末とは違うのかも知れない。そう思うと楽しくて、ついつい何度も何度も読み返してしまっている。
 辞書を手にして戻ってくると、事件が発生していた。いや、これは大事件だ。向かいの席に座っているあの男の人が「太陽と月の姫」を読んでいるのだ。あの本には私が何年もかけて訳したメモが沢山張り付けられている。本を読まれていることより、そのメモを読まれているのが無性に恥ずかしくなった。

「えっと、あの……」

 勇気を振り絞って声をかけると、男の人は顔を上げた。初めてまともに顔を見た。優しそうで、どこか物悲しそうにも見えた。彼は片手でゴメンとポーズを取ると、ポケットからメモ帳を取り出して

『その本、面白そうだね』

 と書いて見せてきた。「面白いですよ」と小声で返すと、彼は微笑んでくれた。ここは図書館だからあまり会話は出来ないけれど、なんでわざわざメモに書いたんだろう? と純粋に疑問に思いながらもなんとか本を返してもらい、持ってきた辞書を開く。しばらくすると、彼は立ち上がって貸し出し処理を済ませると、私に手を振って帰っていってしまった。

「あ……、さようなら」

 つられて私も手を振っていた。彼が見えなくなってから急にそれが恥ずかしくなって、私は席を変えた。なぜだろう身体が熱い。
 十五時まで、まだ少し時間がある。別の席に座り、辞書と本を開いてまた読み進めた。



   ◇



「神王! 我軍の前線部隊は壊滅状態です!」

「誘い込んで毒ガスとは、妖精王め、こしゃくな手を……」

「更に本陣にも、敵の部隊が攻撃を仕掛けてきております!」

「このまま、手ぶらで帰れるわけなかろう! 返り討ちにせよ!」

「そ、それが」

「どうした?」

「妖精軍の剣士に、誰も太刀打ち出来ません!」

「圧倒的な武力を誇る我軍の兵が太刀打ち出来ぬだと……?」

「その剣士が中央突破でここに近付いています!」

「くだらぬ! 我軍に対し、たった一人で向かってくるとは、とんだ命知らず! ……よかろう、ワシ自らその剣士を粉砕し、士気を高めてくれる! その剣士に手を出すなと兵に伝えよ! 神王がその剣士を粉砕して見せるとな!」

「し、しかし……」

「お前はワシが負けると思っているのか?」

「い、いえ……、決してそのようなことは」

「ならば兵に伝えてまいれ!」

「は、ははっ!」

 伝令が兵に向かって走り出そうとした瞬間だった。突如現れた漆黒の獣が、神王の目の前にいる兵を軽々と吹き飛ばした。漆黒の獣は神王の前で立ち止まると、ゆっくりと人の姿になった。

「あんたが神王ギュオか?」

「いかにも、ワシが神王ギュオだ。貴様、何者だ? 見たところ妖精族でもなさそうだが……」

「そんなことはどうでもいい。悪いがその首頂く」

「なるほど、兵が言っていた剣士とは貴様か……。ふん、貴様のような小僧にやるほど、ワシの首は安くないわ!」

 神王の持つ巨大な斧が、縦横無尽に振り下ろされる。その度に地面は割れ、竜巻のような風が沸き起こる。神王はこの世界で最大の武力を誇っていた。だが、剣士にはかすりもしない。斧が剣士に届くかどうかの瞬間に剣士は姿を消し、こちらに一太刀を浴びせてくる。神王は乱れる呼吸を整えながら、両手で斧を構え、持てる限りの力を振り絞り、真上から剣士に向かって振り下ろした。

 ──ガキン!

 鈍い音と共に、神王の斧は吹き飛ばされた。重たい金属音を奏でながら、神王の斧イーミルは地面に突き刺さった。

「ばかな、ワシの攻撃を弾き返す……だと?」

「終わりだ、神王ギュオ」

 剣士は剣を構え、神王へと切りかかった。その刀身が神王に届く間際、赤い閃光が剣士の剣と神王の間を遮った。

「おぉ、ソル。無事だったか……」

「はい、お父様。しかし今は無事を喜んでいる暇はございません。……シュバルツァ! 我と勝負だ!」

「……なに? シュバルツァだと?」

「太陽の姫、そこをどいてくれ」

「我との勝負から逃げるのか? 貴様それでも剣士か?」

「まて、ソル。ここは一旦引くぞ」

「お、お父様? なぜです! 世界を救う闘いから逃げられるのですか?」

「これは王の命令だ」

「くっ……」

「神王ギュオ、あんたこの状況から逃げられると思っているのか?」

「ふん。小僧、貴様がどれだけ強かろうと、貴様の知らぬ力もあるのだ」

「なんの話だ? 俺には関係ない。その首、貰おう」

「時空の使者オーンの力をもって、開け亜空の門!」

 神王がそう唱えると神王とソルの足元に魔方陣が描かれ、二人は淡い光に包まれた。シュバルツァが切りかかると、神王もソルも、先ほどまで周りを囲んでいた神の国の兵が、すべて目の前から消えていた。

「空間移動……、これが魔法か」

 シュバルツァは剣を納めると、森の中へと消えて行った。




≪第二話へ
第四話へ≫

COMMENT

続きがめっちゃ気になる!!!!!

物語と現実のリンクが面白いっすね。これからが楽しみです!

現実世界と、物語の世界…
どちらのこれからの展開も、
楽しみで、どきどきしています♪

強敵!(ぉ

RPGっぽい!

おもしろい!
  • 2008.03.06[木]

おもしろーーーーーーーーーーーーい!

現代の話もどうなるのか気になるけど
(寡黙な青年とか!とか!!)
本の中身もおもしろくて気になるっっ
神話ってゆうか、ファンタジーとゆうか。。。

続きが楽しみです★

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