POSITISM

適度に適当に。

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PICO - 第0000話 -


ハコニワノベル

 時計が見える。うなぎのような秒針と、せっかちそうな青い分針。それからのんびりしている赤い時針。水の中で太陽の光が揺らめくように、ゆらゆら、ゆらゆらとしている。

「ほら、恵、起きろー朝だぞ、朝」

 遠くで誰かの声がする。その声の聞こえる方へ歩き出した。進んでいるのか進んでいないのか解らなかったけれど、とにかく声のする方へ歩く。次第にあたりは明るさを増していく。呼ぶ声もはっきり聞こえるようになった。思わずその方向へ走り出した。届かない。声の呼ぶ方へ走っても走っても辿り着かない。雲を掴むように手を伸ばした。

「おはよう、めぐちゃん」

「おはよう、恵」

 光の中にいた。光の中でそう言われた。眩しくて何も見えなかったけど、しばらくすると光にも慣れて目を開くことが出来るようになった。
 白い天井、カーテンレール、どこかしら薬のような匂いがする。あとは硬いシーツ、可愛さのかけらもない枕カバー。それから、──の顔。
 そうすることが当たり前のように抱きしめた。

「ちょ!恵、起きたのか?うっそマジで?」

 よく解らないが困惑している。身体を起こす。次第に断片的に記憶が引き戻される。今度は自分が困惑する番になった。

「え?…栄一?ここって…病院?」

「うぉ!すげ!そうだよ正解!」

「!!…わ、私何年間眠り続けたの?」

「は?」

「私、処置してまた植物人間になったんでしょ?だからあれから何年経っちゃった?」

「…本気で言ってるのか?」

「…私、驚かないから。だから正直に言って!」

「はい、藤山さん、どうされました?って藤山さん??」

「あのすいません、隣りの藤山さんが目を覚ましたんですけど…」

 栄一がナースコールでそう伝えると祖父が手術着のままで慌てて入ってきた。

「恵!気が付いたか!どこか痛くないか?気分が悪くないか?」

「おじいちゃん…大丈夫。だけど、私…どれだけ眠っていたの?」

「…ひい、ふう、みい……ちょうど三日だな」

「三日か…沢山寝ちゃったな…って三日!?三日だけ?」

「…ふむ。無理やりとは言え、昏睡状態から回復して十三年も生活をしていたから、身体はすでに回復していたってことだろうな」

「えーっ!?」

「なんだよお前、何年も眠ってたかったのか?」

 栄一にバカにされたように言われながら、私は力が抜けるのを感じた。目覚められないと思っていたのに、あの覚悟はどうしたらいいんだろう。けれど目覚める瞬間に、どこか懐かしいような、何か暖かいものに包まれるような感じがしたのはよく覚えてる。──それから、栄一の顔が傍にあったのも、しっかり、しっかりと覚えている。もちろん、処置の前に栄一が言っていたことだってちゃんと覚えてる。
 思い出すと恥ずかしさで倒れそうになった。枕を抱きかかえながらそっと栄一の方に目をやると、頭の包帯は取れているが相変わらず左の手足は包帯でぐるぐる巻きだ。今、栄一に目を合わせたらきっと心臓が飛び出ちゃうかも知れない。枕に顔をうずめた。
 しばらくするとキリッとした看護士さんが慌てながら、そして怒りながら祖父を連れて行った。どうやら祖父は手術中に抜けて来たらしい。「後は君に任したと言ったじゃないか」とか言いながら祖父は戻っていってしまった。この病院大丈夫だろうか。
 三日間だけ眠りに付いた。あの処置から三日…三日?あれ?なんだろう、大切なことを忘れている気がする…。

   ◇

「明日は何月何日でしょーか?」

「二月二日!」

「正解!では二月二日は何の日でしょーか?」

「二月二日は…、ストレッチパンツの日!」

   ◇

 二月一日に佐々木に捕まって、一週間寝てたでしょ。それから目が覚めた次の日に栄一にアイスをおごって、その次の日は屋上に行った。その次の日の夜に処置をしてもらって、そこから三日寝てる…!!!
 指を折りながら計算した結果だから間違いない。今日は、乙女としては逃してられない乙女チックデーじゃないか!お見舞いに来たカヨリさんに目覚めた報告をそこそこにすると、こっそり「チョコレートを作りたい」とだけ言うと、すぐに準備をしてくれることになった。祖父に無理を言って調理室を借りるとさっそく取り掛かる。
 コンビニで買ってきてもらった板チョコを砕いて湯銭にかけ、なぜかハートの型しか買ってくれなかったカヨリさんのイタズラっぽい笑顔を見ながら、その型にチョコレートを流し込む。冷蔵庫でそれをしっかりと冷やした。ただ湯銭にかけて型に入れて固めただけのラッピングも何もないハート型のチョコレートが出来上がった。
 出来上がったチョコレートを持って私は病室へと駆け上がった。途中で足は上がらなくなるし、階段ってこんなにしんどいものだったかな?病室のある五階へ到着するころには「はぁーはぁー」とみっともなく呼吸が乱れていた。病室へ向かう廊下を歩きながら呼吸を整える。大きく息を吸ってから病室に入った。

「目覚めたばっかりなのにさ、どこ行ってたんだよ?」

「べ、別にどこでもいいでしょ!」

「ふぅーん、まぁ、いいけどさ」

「き、今日は何の日でしょーか?」

「は?」

「今日は何の日かって聞いてるの!」

「二月十四日…あぁ、バレンタインデーか」

「正解!はいこれ!」

 板チョコを湯銭して、ハートの型に流し込んだだけのチョコレートは無事に栄一に渡った。「おう、サンキュー」とだけ言うと、栄一はそれを大切そうにしまいこんだ。

「大学、絶対合格してよ」

「なんで?」

「わ、私の、傍に一生いてもらうんだもん」

「あのな、お前もう検診いらないかもしれな……、そんなに睨むなって…わかった。わかったよ」

「退院したら合格祈願に行かないとね」

「待て、そんなに俺は信用ないのか?」

「あんたのことだからねぇ、大切なところで失敗しそうじゃない?」

「なるほど!確かにそうかも…」

「ちょっと!もっと自信持って、大丈夫!とか言えないわけ?あと、なんで私のあげたチョコを食べないのよ?毒なんか入れてないよ?」

「チョコはお前の前では食べない」

「なんで?」

「それは個人の自由」

「…本当は、いらないんでしょ?そうならそうとハッキリ言ってよ!」

「違うって!」

「じゃぁ、なんで食べてくれないのよっ!」

「……お前の作ってくれたハートが欠けていくとこなんて見せたくねーの」

「ばっ……」

「むむ、これはどうやらまたまたお邪魔なようですぞ、友美」

「ほんとね丸井さん」

「えっ!!?」

 まるりんと友ちゃんから散々追求されて、観念するように栄一とのことを話した。冬も終わりに近付いて、窓から優しい日差しが入り込む。この十三年間が自分で過ごしてきたのか、それとも過ごされていたのかは、はっきりとは解らない。でも、それはもう気にならなくなった。これまでと同じようにこれからを、私自身で過ごしていこうと決めたから。



 体重のおよそ十三分の一。
 血球成分と血漿成分からなり、その比率は 45:55 である。
 血球成分は赤血球96%、白血球3%、血小板1%で構成。
 血漿成分は水分96%、血漿蛋白質4%、微量の脂肪、糖、無機塩類で構成。
 大きな分子を除いた残りのものの組成は、海水に近い。
 
 私のソレは流れなかった。



 真から偽へ。1から0へ。そして私はここにいる。
 すべてはゼロに戻ったけれど、ほんの少し、それこそ一兆分の一ほどかもしれないけれど、私が成長したことは紛れもない真実だ。
 もうすぐそこに桜の季節がやってきている。さて、受験シーズンの開幕だ。





完。




≪第1111話へ

COMMENT

●るどさん

濡場て…そ、そんなシーン書けるわけがない!
もっと書くのが上手くなったらね。(書くのかよ)

>ほんと、話の組み立てがうまいよねぇ。。

素直に受け取ります!ありがとう!
もうね、書き出す時には組み立てられるようになってきました。

読んで頂いてありがとうございました!


●ひなたさん

>(携帯にブックマークしちゃったし。笑)

ありがとうございます!
パソコンから見るよりも
ケータイの方が読み進めやすかったかもしれませんね。
いつでも気軽に読めますし。
いやぁ、便利な時代になりました。(何の話になっているのやら)

ともかく、読んで頂いてありがとうございました!)


●ariesさん

良かった。なんとか予想外に出来て。
やはりある程度の裏切りはしていかないといけないなぁ。
真相を上手く隠せるようになりたいものです。

>あと、→のお知らせ(PC)の最終話が『第1111話』になってますよ。っと。

↑見た瞬間に修正入れました!あざーす!


●まるりーんさん

>最後はとても、暖かい気持ちになりました。

ありがとうございます。
何かしら思って頂けるのは嬉しいなぁ。

読んで頂いてありがとうございました!


●黒さん

>しかし、すごい(笑)
>仕事忙しいはずなのに(笑)

ねー。すごいわー。
仕事とハコニワノベルと
ブログのリニューアルとみく子関連を
同時進行させてるんだもんね。

しのめんって人、マゾなんじゃない?


●あやさん

うふーん。ありがとぉ♪♪

>次回作楽しみにしてます(笑)

って最後の(笑)が気になるわ!


●☆まりモさん

「みく子」とは違うのですが
単純にSFって書いてて面白いなぁと思ったんです。
確かに「SF=書いてて面白い」に気が付いたのは
「みく子」なので間違いではないのです。はい。

読んで頂いて、ありがとーでした。


●kayoriさん

>ハッピーエンド万歳!!

ね、書いてる本人が書いてる最中に
どっちになるのか解らずにドキドキしました。(なぜに)

読んで頂いたのと
【キーワード】と【出演】ありがとうございましたっ!

お疲れ様です!
ステキな話だったあーーー。
なつかしいドキドキを感じました(笑)
ハッピーエンド万歳!!

良かったです!

ハッピイエンドで、ほっとしたというか、ドキドキしたり泣いたり笑ったり。w

コンパクトなノベルでこんなにも引き込まれるとは思っていませんでした。

ちゃんとキーワードも散りばめられていて、唸ってしまいました♪

執筆お疲れ様でした☆

今度は仕事に集中してください♪(違w

なんか、読み終わって感じたんですが、これ、「みく子」の実験施設の流をくんだ人体実験か?と思ってしまいました。w

「みく子外伝忌憚」みたいな感じで♪

またまた次回作楽しみにしていいですか?www

あはーん。面白かったです♪♪
結構毎日ドキドキして読んでましたー。
次回作楽しみにしてます(笑)

最近忙しくって
まともにレスできてなかったけど毎日読んでました!
おつかれさんでした!

しかし、すごい(笑)

仕事忙しいはずなのに(笑)
  • 2008.02.19[火]

きゃ~☆ とうとう終わってしまいました~!
いつも、楽しみにしていて、
どきどきしながら拝見していましたが、
最後はとても、暖かい気持ちになりました。
どきどき感と暖かさが、絶妙なバランスで、
素晴らしいと思います。

終わってしまって、残念ですが、
本当に楽しませてもらいました。
ありがとうございました、お疲れさまでした!

いいっすね。いいっすよ。
2,3年寝てて、秀才栄一君が起しにくるものだと・・・。
こっちの予想は外れてしまった。。。

これから二人の二進数が始まるんですね(笑

あと、→のお知らせ(PC)の最終話が『第1111話』になってますよ。っと。

本当によかった!!
ドキドキハラハラ。
そして最後はほんわか。

毎日とっても楽しませてもらいました。
(携帯にブックマークしちゃったし。笑)

うわー、最後にキーワードきた!!しかも最大の濡れ場!!(マテ

お疲れ様でした
ほんと、話の組み立てがうまいよねぇ。。
毎回続きが楽しみでした★

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