POSITISM

適度に適当に。

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PICO - 第1100話 -


ハコニワノベル

 白い天井、カーテンレール、どこかしら薬のような匂いがする。あとは硬いシーツ、可愛さのかけらもない枕カバー。それから…カヨリさんがお花を花瓶に入れているのが見える。

「カヨリ…さん?」

「!………恵ちゃん…」

 急に抱きしめられて驚いた。和服がシワにならないかと心配になった。あまり覚えてはいないけれど、ママに抱きしめられた感覚がした。

「あのね…私、どうなったの?」

「地下にある使われていない第四処置室で、恵ちゃんと栄一君が見付かって、二人とも意識はないし、栄一君が酷い怪我してたしで、大騒ぎになったわよ。あぁそうだ。ちょっと登さんに、恵ちゃんが目覚めたって連絡してくるわね。あなた一週間も起きなかったんだから」

 そう言うとカヨリさんは私を腕から解放して、カーテンの向こう側へ行ってしまった。どうやらここは病室のようだ。カーテンの隙間から見える窓を見てみると雪が降っているらしく、窓に降り付いた雪が綺麗な結晶を描いている。

「あ!栄一!栄一は大丈夫かな?酷い怪我だったし…もしかして、死んじゃったりしてないよね?」

 急に思い出して大きな独り言になった。あの時、栄一が助けに来てくれなかったら、きっと私は今こうしてここにいないと思う。本当にヒーローだった。白馬の王子様を夢見るのもありだけど、私はピンチになったら助けに現れるヒーローもありだな。

「おい、人を勝手に殺すんじゃない」

 驚いて振り向いた。しかしカーテンしか見えない。まさか今の空耳だったのかな?と、しばらく静かにカーテンの先を意識してみたけれど何も起こらない。やっぱり空耳だったのか。

「おいおい、無視するなよ」

 今度は完璧に聞こえた。いる。栄一がそこにいる。自分の寝ていたベッドを囲むカーテンをゆっくりと全開にしていく。勝手に個室だと思い込んでいた部屋は二人部屋だった。隣りにもベッドとカーテンがある。隣りのカーテンを恐る恐る開けていく。

「よっ、お疲れ」

 相変わらずの調子で栄一がベッドで横になっていた。ただ、頭と左の手足は包帯でぐるぐる巻きだ。

「なんで栄一と二人部屋なわけ?乙女のプライバシーは?」

「仕方ないだろー、病室空いてなかったんだから…って、それよりもさぁ、大丈夫?とかそういう心配はないわけ?」

「し、心配したわよ!…だけど、私の方がもっと心配かけちゃったかなぁ…って」

「はっはっは。あのじいさんが、めちゃくちゃ心配してたぞー。あとカヨリさんも」

「……あ、え…っと、うん……?」

「……そんな顔で見つめるな。……俺も、心配したよ」

「むむ、これはどうやらお邪魔なようですぞ、友美」

「そうみたいね丸井さん」

「えっ!!?」

 病室の入り口に顔だけ覗き込んでいるまるりんと友ちゃんがいた。「べ、別にそんな、なんでも、ないし…ねぇ?」と栄一に言ってみるも、栄一は「知ーらない。ちょっとトイレー」と言いながら器用に右足だけで移動していく。「ホップ!ステップ!またホップ!」とかリズミカルに言いながら。どうやら元気そうだ。
 まるりんと友ちゃんから散々茶化されると、二人は長居しても悪いという理由で帰って行った。帰り際まるりんに「後はお若い方にお任せしますわ。おほほ」とか言い残された。きっと学校でも栄一とのこと言われるに違いない。深いため息をついた。

「恵!気が付いたか!どこか痛くないか?気分が悪くないか?」

 慌しく病室のドアが開かれ、大きい身体でいつも何にも動じなさそうだった祖父が妙にオロオロしながら入ってきた。その姿を見てなんとなしに気が抜けた。

「おじいちゃん…あ、藤山先生」

「いや、今はおじいちゃんでいい。それよりもどこか不調はないか?」

「うーん…ないと思う。あ、でも一つだけ…」

「ん、なんだ言ってみなさい」

「おなか空いちゃった」

「そうか、うん、そうだな。よし、今すぐに、カヨリに準備させる」

「え?病院のごはんでいいよ。カヨリさんに悪いし」

「ダメだ!病院のご飯は…院長が言うのもなんだが、美味しいとは言えない」

「いや…まぁ、そうだけどさ」

 その後、私とおじいちゃんとカヨリさんと、ついでに栄一も一緒になって、カヨリさんの手料理を沢山食べた。一週間寝たきりだったからか、いつもよりも沢山食べてしまった。食べ終わると栄一は「リハビリの時間なんで、行きます」とおじいちゃんとカヨリさんに声をかけて例の「ホップ!ステップ!またホップ!」を言いながら病室を出て行った。カヨリさんも料理の後片付けで病室を出て行く。おじいちゃんと二人になると、おじいちゃんが話しかけてきた。

「どこか痛かったり、不調になったらすぐに言えよ?」

「…うん」

「身体のこと以外で何か困ってることとかないか?」

「んー、特にないけどさ。なんで栄一と一緒の部屋なの?これでもレディなんですけど?」

「なんでって、発見されてからベッドに寝かせるまで恵が栄一君の腕を離そうとしなかったからじゃないか」

「え!?」

「ワシもな、恵を男と同じ病室になんて入れたくはなかった、けど恵がどんなに離そうとしてもな…」

「えと、うん、ごめん。もういいや、その話やめよう」

 顔から火が出るとは多分今の私のことを言うんだと思う。どこに視線を向けて良いのか解らないままあたふたしてしまう。

「それよりも…恵、すまん」

「え?何?何が?何を謝ってるの?」

「その、あれだ、お前の身体の中…」

「……そっか、おじいちゃんは知ってるんだね」

「どうしても、恵を失いたくなかった。どんな可能性でもしがみ付きたかった。それが間違いだったのかもしれん。本当にすまない」

「ううん。…いいよ、私を心配してくれたからでしょ?」

「それは…そうだが……」

「だったら…いいよ。許す!」

 窓の外に目をやるといつの間にか雪は降り止み、雲間から日が射している。佐々木に切られた場所と貫かれた場所を探すようにそっと撫でると、チクリと胸が締め付けられるような思いがした。




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COMMENT

●るどさん

よし、前回より解りやすくなったかな。


●ともさん

どうぞ、最後までお楽しみ下さいませ。


●ariesさん

だから3段とも右足なんです。はい。

こういう風に使うのかぁ(ホップステップ ホップ)
3段跳びはホップとステップが同じ足なんですよ。
まるで病人。

佐々木は死んじゃったのかな?
そうすると、恵ちゃんの身体はどうなの?平気なの?

続きが気になります~!!

そうかぁ、おじーちゃんは知ってたんか
それで検診いやがると厳しかったわけやね、ウンウン(一人で納得中)

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