POSITISM

適度に適当に。

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PICO - 第1011話 -


ハコニワノベル

 勢い良く殴られた佐々木は床に倒れたまま動かない。栄一は心電図のような装置を外すと「痛かったらごめん!」と言いながら私に突き刺さっていたチューブを全て引き抜いた。

「あ…ありが…とう」

 安堵の気持ちで涙が溢れてくる。さっきまでもずいぶん泣いていたけれど。勢い余って栄一に抱きついた。怖かった、佐々木をどうにかして欲しかった、いろんなものが栄一によって救われた気がした。だけど栄一は私にそっぽを向き、両手で肩を押して私を引き離した。

「えっとだな、その、なんだ、うーん…」

 そう言いながら栄一は辺りをきょろきょろしている。どうしたんだろう?そのうち診察台に近付くと「これだな」と言いながら、中央に穴が開いているシーツを外して私に向かって投げると、後ろを向いた。

「その格好は…まずいだろ…」

「へ?……………!!!!!」

 自分が全裸だったことを忘れていた。慌ててシーツに包まる。言いようのない恥ずかしさに部屋の空気が重たくなった気がする。

「もう、大丈夫…」

 そう言うと、栄一はゆっくりとこちらに振り返った。

「栄一、なんで…なんでここに…?」

「話は後、今はここから逃げよう」

「逃がさないけどなぁ…ひっひっひ!」

「!!」

 倒れていたはずの佐々木が起き上がってこちらに近付いてくる。「恵、逃げろ!」と叫びながら栄一は落ちていた棒、私と診察台を貫いたあのヤリのような棒を手に取り、佐々木の肩口に殴りかかった。
 佐々木の身体が歪んで沈む。肩の骨が外れるような、いや、折れるような鈍い音が聞こえた。

「…それが何だというのかねぇ?」

 佐々木は折れたであろう右手で栄一を掴むと壁に投げつけた。それは人間の力じゃないことは明らかで、栄一は数メートルほど吹っ飛ばされ、壁との衝突時に「ぐっ」とだけもらすとピクリとも動かなくなっている。

「逃げないでいるなんて、賢いじゃないか、恵君」

 佐々木が近寄ってくる。圧倒的な力の前に足がすくんで逃げようにも逃げられない。

「言ったはずだね、既に人ではないのだよ。【我々は】とね。私も中に入れているのだよ。まぁ、私の中に入っているのは【O-SPY】という名前で、人の限界を超えた力を出すための物理的なドラッグに近いものだけどね。こいつは外から自由に遠隔操作が出来る代物でしてね、今は私の中に入れてますが、いずれは他人の中に入れて私の意のままに動く人形として働いてもらうつもりですよ。まぁ、私に従わない愚図は体内から処分も…ひっひっひ」

 いつの間にか佐々木越しに見えるモニターは赤色になっていた。また部屋の中が静かになっていく。佐々木の右腕は床に垂れるほどになり、それを引き摺りながら近付いてくる。

「さぁ、私の【P-ライジン】を返したまえ」

「……」

「さぁ!診察台に戻るんだ」

「嫌っ!」

「大人しく言うことを聞いておいたほうが…君のためだと思うがね?」

「…どういう意味?」

「そこで動かなくなってる彼にも、私の研究を手伝ってもらうとしよう」

「………やめて」

「だったらどうすべきかな恵君?」

 下唇を噛み締めた。そのまま診察台へとゆっくり進む。このまま言いなりになったとしたって、きっと私も栄一も助からない。だけど、この状況で私が出来ることなんてなかった。せめて栄一だけでも助かって欲しい。

「下手なことは考えない方が身のためですよ、恵君」

 見透かされてるように言われた。もうどうしようないの?諦めるしかないの?目を閉じて診察台に乗る。「誰か!助けて!」と何度となく心の中で叫んだ。

「…わっかりやす…いコードだな」

「なにぃ…?」

 例のチューブを準備していた佐々木がモニターの方へ振り返った。私も同時にモニターの方へ視線を移す。そこには左腕が動かないのか、起用に片手だけでキーボードを操作している栄一がいた。

「貴様ぁっ!勝手に触ってタダで済むと思うなよっ!人体実験のモルモットにしてやるっ!!」

 ものすごい勢いで飛び掛る佐々木。避けようとも、防ごうともせずに栄一は片手でキーボードを押していく。「カタ、カタ、カタカタ、カタ」とキーボードが鳴る。佐々木の垂れ下がった右腕が栄一に向かって伸びていく。モニターは赤から黒に変わり緑色の文字列が素早く流れると、やがて青色に変わった。

「ぐぅっ…」

 栄一の押し殺した声が響く。栄一の左腕に佐々木の伸ばした腕の指先が刺さっている。薄暗くて気付かなかったが、扉から入り込む光に照らされた床には鮮血が飛び散っている。

「栄一っ!」

 駆け寄ろうとすると、佐々木がピクリとも動かないままで声を荒げた。

「何をした?貴様っ…何をしたっ!?」

「…真から偽へ。今の…あんたらしいだろ?」

「な…に…ぃ?」

 佐々木の声が途切れ途切れになっている。栄一の腕に突き刺さっていた指はずるりと抜け落ち、腕は床に垂れ下がった。佐々木の表情から今まで常にあった余裕が消えていく。

「ま…ま…まさ…か…」

「何って言ったかな…あんたに入ってるとかなんとか言ってた…遠隔操作がどうのこうのいうやつ。これ…そいつのソースコード…だろ?」

 佐々木は栄一の向こうにあるモニターを薄目になりながら見ている。私はどうすることも出来ないまま、栄一と佐々木のやり取りを見ているだけだ。

「ご丁寧に…正常異常の判断処理って書いてあった…その処理をあべこべに…しただけさ、1を0に…TRUEをFALSEに…ね」

「なん…てこと…を…許さ…ん!許…さんぞ…お…ぉ……お?…ぐぅぁ…あがっ…」

 佐々木は痙攣し始め、床を転げまわって悶絶しはじめた。

「ひぃっ!痛い!…痛いっ!!……痛い!痛いよぅ…痛い…やめ……やめっ…た、たす…たすけっ…………んぎぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 突然立ち上がり髪の毛を掻き毟ると佐々木の身体が跡形もなく粉々になった。着ていた薬品くさい白衣だけがばさりと床に落ちた。それと同時に突然視界が真っ暗になった。




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COMMENT

●あやさん

なぜ2進なのかは…ふふふ。
楽しんでもらえるように頑張ります!


●まるりーんさん

栄一、すごいよね。
かっこいいなぁこいつ。
やっと終盤に入りますので
しばらくお楽しみ下さいませね。

栄一くんすごいです~! かっこいい!!
こんなヒーローが、私の近くにもいて欲しい~♪
手に汗握りながら、続きをお待ちしています。

あ、だから今回は2進なんだぁ―。納得。
続きが楽しみです♪

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