POSITISM

適度に適当に。

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PICO - 第0110話 -


ハコニワノベル

「俺、待ってようか?」

「いや、いいよ。私大丈夫だから」

「そっか、じゃぁ帰るな」

「あ!そうだ、この前…と、今日も送ってくれてありがとう!助かったよ!」

 私のお礼に少しだけ恥ずかしそうに片手をあげて答えると栄一は自転車に乗った。

「そうそう、明日は本当にストレッチパンツの日だからな!忘れるなよー」

 何を伝えたいのかさっぱりだったけれど、栄一はそう言い残して帰っていった。少しだけ久しぶりに藤山国立病院のスムーズに開く自動ドアを通った。
 受付を済ませ、三階の第三処置室へ向かう。さぁ、さっさと検診をしてもらって帰ろう。ノックをするといつも通りの「入りたまえ」が聞こえた。

「失礼します」

「やぁ、恵君。ちょっとだけ久しぶりですね」

「はぁ、どうも」

 佐々木は薬品くさい白衣を着て感情の無い笑顔で出迎えた。いつもいる看護士が今日はいない。テスト最終日だったので今が昼過ぎだからだろうか。
 佐々木に促されて着替えると、例の心電図のような機械を取り付けられる。なぜか両手の中指にいつも付けていたクリップは付けられなかった。

「身体が重たかったりしませんか?」

「あぁ、少し重たいというか動きが鈍い感じがします」

「そうですよねぇ、三日も取り込んでいなければ…」

「取り込むって何をですか?」

「あぁ、こちらの話ですのでお気になさらずに」

 いつもは淡々と進む検診なのに、今日はチェックする項目が多いのか、なかなか進まない。佐々木は機械を操作したり、モニターの数値とにらめっこしたりしながら、時々嬉しそうに気味の悪い笑顔になっていた。身体が重たいこともあって少し不安になった。

「あの…、どこか悪いんでしょうか?」

「そろそろ頃合でしょうかね」

 質問と回答が噛み合っていないままで、佐々木は注射器を持って近付いてくる。今までの検診で注射なんてなかったのに。怖くなって「ちょっと待ってください」と言ったものの、佐々木は含み笑いをしながら近付いてくる。「やめて!」そう叫んで立ち上がろうとすると、腰が抜けたようにぺたりと座り込んでしまった。

「ち、力が入らない・・・」

「検診を三日伸ばして欲しいと連絡があったのでね、前回の検診時に少なめにしか取り込んでませんから、そろそろ動けなくなりますよ」

「な、何の話です…か…?」

 身体が重い。動かせない。取り込む?少なめ?頃合?意味の解らない疑問が頭の中をぐるぐる回っている。佐々木は逃げられなくなってしまった私をしばらく下品に見下してから、注射器を私の腕に差し込んだ。抵抗したくても身体が動かない。次第に視界が歪む。意識が少しずつ遠のいていく。

「まさか、あいつの娘で成功するなんて、皮肉な運命…とでも言うんですかね。ひっひっひ」

 床に頬を付けているのだろうか。目の前に佐々木の両足が見えた。ゆっくりと眠るように意識が遠ざかっていった。

   ◇

「こらこら、めぐちゃん。待ちなさい」

「ねぇ、早く行こうよパパ!」

「めぐちゃん、早く行きたいのは解るけど、ちゃんと靴下をはきなさい」

「あー!たいへーん!ママー!めぐちゃん、くつしたはいてないよー!」

「あらあら、めぐちゃんったら。ほら、こっちにいらっしゃい」

「はーい」

 ぱたぱたと走り回る小さな足音が家の中に響いている。女の子は母親に靴下をはかせてもらい、父親はそれを優しく見守っている。「まっしろなイルカさんがいるんだよねー?パパ」と無邪気な声。「あぁ、いるよ」と答えながら父親が立ち上がる。

「待ってまってー!めぐちゃんも行くからー!」

「慌てなくてもパパは勝手に行っちゃいませんよ」

 女の子は買ってもらったばかりの白地に小さなピンクの花模様が付いているスニーカーをはき、待ちきれないように玄関を飛び出して行く。
 父親の運転する車に乗り込むと、一層女の子は声を大きくしてはしゃいでいる。

「まっしろイルカさん、めぐちゃんのこと待ってるんだー」

「ふふふ、めぐちゃんったら二週間もずっと楽しみにしてたものね」

「パパがなかなか休めなくてごめんな」

「ちがうよ!パパがお休みの日にいっしょに行くからいいんだよ!」

「そうね。めぐちゃんの言うとおりね」

 父親は少しだけ涙目になっている。女の子は「早く会いたいなぁ」とか「まっしろじゃつまらないだろうから、めぐちゃんが色をぬってあげるの」と期待に胸を膨らませている。
 遠くに高速道路のインターが近付いてくる。女の子は高速道路が気に入らないらしい。「だって、ずっとずーっとおなじ景色ばっかり!」解りやすいほど頬を膨らませると、女の子は自分の小さなカバンの中から絵本を取り出して読み始めた。

「あら、この子ったら絵本を持ってきてるなんて」

 母親の笑い声、頬を膨らませながら絵本を読む女の子の声を後ろに聞いていた父親が前方を確認すると…突然、顔が険しくなった。

「あ、危ないっ!」

 急ブレーキのキィという音、父親の鳴らすクラクション、ガクンと揺れる車体、強く父親に突き飛ばされたかと思うと、上から母親が覆いかぶさったかどうかの瞬間…
 衝突音。

 なにかに包まれている。女の子がそっと目を開けると路上で横になっていた。隙間から見えたのはグシャグシャになった車からのぞく父親の左腕、バラバラになった絵本、そこらじゅうに撒き散らされたガラスの破片、遠くに転がるスニーカー。そして、頭から血を流しながら自分を抱きしめている母親。
 そのまま女の子は眠るように目を閉じた。

   ◇

「…寒い」

「おや?やっとお目覚めですか?恵君」




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COMMENT

●ひなたさん

ファンタジーじゃないんです。はい。

>もう一気に最後まで読ませてください!!

そう言って頂けると嬉しいです。
でも、1つずつでお楽しみ頂ければと。
要するにじらしプレイです(何のだ)


●るどさん

第01回の時とは別に
自分の中で実験だとか、目標があるのですよ。
今回はもう見えているので
続きはじっくりとお楽しみ下さいませ。


●まごすけさん

ヤバいですよね。
何がヤバいって職場の向かいの席に座ってる人が
佐○木さんですからね。(マジか!)

何かサスペンスな展開ですね。うわーヤバいっすねー。

なんかサスペンスぽい><

続きが気になるぅぅぅぅ

ドキドキする!!!
ファンタジーかと思ってたけど違うんだね。

もう一気に最後まで読ませてください!!

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