POSITISM

適度に適当に。

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PICO - 第0011話 -


ハコニワノベル

 どうやら歩いている最中に倒れたらしい。背中越しに栄一が説明してくれた。自転車は風を切って進んでいく。私は栄一の自転車に乗せてもらっている。いいと断ったのに「絶対に乗せる」といつになく真顔で栄一が譲らないので、仕方なく荷台に座った。「なんで荷台なんて付けてるの?」と聞くと「こうして重たいものを乗せるため」なんて言われた。でも悪い気はしない。
 不意に二人乗りなんてしてるところをまるりんや友ちゃんに見られたらどうしようと思ったけれど、すぐにその考えは消えてなくなる。久しぶりに間近で見る幼馴染の背中は思いがけず大きくなっていたからだ。小学生や中学生の頃もこうして二人乗りしたけれど、いつの間にか頼れる奴になっちゃったな。

「血が出てなくて良かったよ。」

「へぇ?」

 乙女チックに思考を奪われてる最中に話しかけられて、返事が上ずってしまった。まったく、ヒーローの変身シーンに割り込むのが礼儀知らずのように、乙女チックの最中も割り込んできたらダメじゃないか。

「だから、膝のケガ。擦りむいてるだろ?」

「あ、ほんとだ…」

 言われてから見た右膝は確かに擦りむいている。出血はない。痛みもない。それよりも両手の痺れが残ってる。そういえば検診の後はいつも両手が痺れてる気がする。今日は特に痺れているように思う。

「とにかく大したケガじゃなくて良かった。それより気分は?気持ち悪かったりしてないか?」

「大丈夫、それより栄一は塾、大丈夫なの?」

「俺のことは気にしなくていいから。えっと次どっち?」

「あ、右、右!」

 その後も私の的確なナビゲートで家に到着した。徒歩で十五分の帰り道が二十分ぐらいかかったけれど。

「とにかく今日は無理すんなよ」

 栄一はそう言うと自転車を走らせて行ってしまった。自転車に乗る前に「病院に行くか?」と聞かれて「絶対に行かない」と言って心配させてしまったことを少しだけ悪かったなと思った。
 ブラウン色のマンションを見上げる。駅まで徒歩十分、スーパー、コンビニも近所にあるし、レンタルショップなんかも割りと近い。高校生が一人暮らしするようなマンションじゃないことは、他の住人を見ていれば解る。オートロックを開いてエレベータに乗り、三階で降りる。シンプルだけどお洒落な緑色のドアに鍵を差し込んで回した。

「あら、お帰りなさい。」

「あ、カヨリさん。ただいま。」

「はい、お帰り。」

 部屋に入るとカヨリさんが料理をしているところだった。どうやら筑前煮を炊いている最中で煮物の良い匂いが部屋の中に広がっていた。部屋を見渡すと洗濯物がきちんと畳んでベッドの上に行儀良く並んでいるし、ごちゃごちゃと散らかっていた部屋が隅々まで綺麗になっている。マガジンラックに昨日占いのページで「恋愛運上昇!」とか書いてあった部分を勢い良く蛍光ペンで塗りつぶしたまま放置していた雑誌が片付けられているのを発見して、見られたかもしれないなと思ったら急に恥ずかしくなった。

「検診はどうだった?」

「うん、いつも通り。ただ、その後道で倒れちゃって…」

「大丈夫なの?」

「ちょうどね、栄一が一緒にいて、ここまで自転車で送ってもらったんだ」

「それは良かったわ。ちゃんとお礼した?」

「あ…お礼言うの忘れちゃった」

「今度ちゃんとお礼しなさいね」

「はーい」

 カヨリさんの作った筑前煮とお味噌汁、それから焼いた銀鮭とほうれん草のおひたしが今日の晩御飯になった。カヨリさんが来てくれる日は二人で食事になるから嬉しい。食事をしながら和服の話や、進路についての相談を少ししたりして、それから一緒に洗い物をするとカヨリさんは帰ってしまった。
 シャワーでいいやと思って入った浴室は綺麗に掃除されて、浴槽にはお湯が張られていた。髪や身体を洗って浴槽に浸かる。料理や掃除洗濯といった家事全般をカヨリさんみたいにこなしたいけど、きっと私には無理だろうな。
 お風呂からあがり、ベッドに腰掛けると携帯電話にメールが来ていた。

 件名:よっ!
 本文:無事か?

 栄一からだった。不意に今日の二人乗りで目の前にあった背中が頭の中に蘇る。別に誰もいないのにそれを消すように「違う違う」と首を横に振って否定した。

 件名:無事!
 本文:栄一は塾大丈夫だった?

 件名:Re:無事!
 本文:ギリギリアウトだった(笑)
    だから授業は全部聞けたからセーフ!

 件名:それアウトなの?セーフなの?
 本文:でも、塾に間に合わなかったのは私の
    せいだから、なにかおごるよ?

 件名:Re:それアウトなの?セーフなの?
 本文:じゃぁ、あれだ。ハーゲンダッツな。

 件名:なんでこの時期にアイスなの?
 本文:別にいいけどさ。もっとお安いアイス
    クリームのほうが良くない?

 件名:Re:なんでこの時期にアイスなの?
 本文:いやいや、恵がおごるなんてめったに
    ないから、普段買えないお高いアイス
    にするよ。

 件名:Re:Re:なんでこの時期にアイスなの?
 本文:分不相応だわ。

 件名:Re:Re:Re:なんでこの時期にアイスな
    の?
 本文:そこまで言えるなら元気そうだな。安
    心した。夜更かしとかせずに早く寝ろ
    よ~。じゃ、おやすみZzz…

 結局お礼も伝えないままにメールは終わってしまった。メールを読み返しているうちに、また栄一の背中を思い出してしまった。誰もいないのにコソコソとマガジンラックから雑誌を取り出し、占いのページを開く。蛍光ペンでマークした「恋愛運上昇!」の横に別の蛍光ペンで「ファイト」とカヨリさんの文字。恥ずかしさのあまり雑誌に顔をうずめた。




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第0100話へ≫

COMMENT

●るどさん

あーさんもハーゲンダッツが好物です。

何気ない優しさがグッときますよね。うん。


●黒さん

そうですそうです。2進です。
最大15話?ふふふ。ふふふ。


●kayoriさん

勝手に出演して頂いてます!
あざーす!


●あやさん

始めちゃってるーん。
完結まで毎日更新の予定です。

携帯の問題、なるほど、半角でアウトなのか。
また調べてみますので、半角なしでよろしくどうぞー。


●まるりーんさん

はい、こんにちわ!(テンション高いな)
2進表記の件、少しでも理解に役立ったのなら幸いです。

「まるりん」ちゃんはそのままズバリです。
ハコニワノベルではキーワードを書き込んだ人を
勝手に出演させたりするのです。はい。

こんばんは。
「2進表記」のこと、よくわかりました!
ありがとうございました。

今思ったのですが、勘違いだったらごめんなさい。
恵ちゃんのお友達の「まるりん」ちゃんて、
もしかして…???
もし、そうでしたら、ありがとうございます~!
(勘違いでしたら、本当にごめんなさい!!)

メールのやりとりが、本当にされているみたいで、
顔がほころびました。

始まってるーん。るるる~ん♪♪♪

携帯の問題は半角入れなければ大丈夫だってわかったのぉー。よかったです。

恥ずかしいけど嬉しい。。。

しのめんさんありがとうございます。

「ファイト」

やっぱ2進だ(笑)

ってことは
最大15話で完結ですかい(笑)
  • 2008.02.06[水]

るどはハーゲンダッツが好物です(誰も聞いてない)

いいな、こーゆーメールのやりとりw
なにげないのが、なお嬉しかったり。。ぐへへ(ぁ

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