POSITISM

適度に適当に。

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PICO - 第0001話 -


ハコニワノベル

 体重のおよそ十三分の一。
 血球成分と血漿成分からなり、その比率は 45:55 である。
 血球成分は赤血球96%、白血球3%、血小板1%で構成。
 血漿成分は水分96%、血漿蛋白質4%、微量の脂肪、糖、無機塩類で構成。
 大きな分子を除いた残りのものの組成は、海水に近い。
 
 私のソレは流れない。



 「やっとお昼だー」そう言いながら丸井幸子は机の上に弁当箱を置いた。ずいぶんおなかが空いているらしく、どことなく不機嫌に見えた。

「まるりん、そんなにおなか空いてるの?」

「そうなのよ!ねぇ、恵、私ガリガリになっちゃってない?」

「丸井さん、ガリガリになんてなってないから」

 そう言いながら静かにお弁当を持って近付いてきたのは山口友美、通称友ちゃんだ。二人とも私の親友でもある。その後三人でお弁当を広げると、まるりんが「仕返しだ!」とか言いながら、友ちゃんのお弁当からおかずを勝手に食べたりと、いつもの通り賑やかなお昼になった。
 高校生活も春を迎えれば三年になり、永遠に来ないで欲しかった受験というシーズンが到来してしまう。誰も何も言ってはいないけれど、どこかしら残りわずかな高校二年生を満喫しようとしている気がする。

「藤山さん?藤山さーん?話聞いてる?」

「友美、気をつけな!恵は鈍感だからさぁ、きっと聞こえてないよ。その証拠にホラ!」

「ちょっと、丸井さん!そんなことしちゃダメよ!」

 クスクスと笑い声が聞こえた気がして、ぼーっとしていた頭を切り替えると、視界が微妙に歪んでる。目の前にまるりんの顔があって驚いたけど、どうやら両手で頬を掴まれて引っ張られているらしい。

「ひょっと、まるぃん、やめへ、やめへ!」

「ホラ、鈍感だろー?いっつもこうなんだから」

「…んもー、ほっぺた取れそうになったじゃない」

「恵なら取れても気が付かないかもー」

「丸井さん、あんまり調子に乗っちゃダメよ?」

「そうだそうだ!いいぞ、友ちゃん。もっと言って言って!」

 物心が付いた頃から私は鈍感だった。叩かれたり、押されたりしてもすぐには気が付かない。感覚が麻痺してるんじゃないかと友達によく言われたりする。ぼーっとすることも多くて、体育の授業前にグランドを二週する決まりなのだけど、気が付いたら五週も六週もしてしまったことがある。

「それでね、藤山さん。ブラポンの新曲聴いた?」

「聴いた聴いた!いろんな意味で感動しちゃったよ私」

「確かに、あのサビは常軌を逸脱してるよね」

 ブラポンとはメジャーデビューしたのが奇跡だとさえ言われるバンドグループで、正式名をBLACK-PON☆PONという。先日リリースされたばかりの新曲「恋しくて人肌」のサビは、ボーカルの「ラァァァアウ"リィイァァアア"ア゛」という魂の叫びのようないろんな意味で感動してしまうような曲だった。
 友ちゃんと私はこのブラポンが好きなのだけど、まるりんはまったく興味がないらしく、「私にはスピッツさえいてくれたらそれでいいのだ」と言いながらお弁当のおにぎりにかじり付いている。おにぎりを味わいながらまるりんが口を開く。

「あ、そうだ恵。今日一緒に帰らない?久しぶりに部活休みなんだ」

「まるりん、ごめん。今日はさ、プシャに行く日なんだよね」

「えーつまんないなー、せっかく一緒に帰れると思ったのに」

「丸井さん、無茶を言ったらダメでしょ?藤山さんだって大変なんだから」

「ううん、友ちゃん気にしないで!私だって本当は面倒なんだよ。だけどさ、その、やっぱり生活させてもらってる身だし、私のこと心配してくれてるからだと思うし…」

「だけどさー、そんなに毎週病院に行かなきゃいけないの?恵、こんなに元気じゃん。事故にあったのも、ずいぶん前の…」

「丸井さん」

 そう言いながら少しだけ鋭くなった友ちゃんの声に、まるりんはバツの悪そうな顔をしてから「恵、ごめん!」と両手を合わせて謝ってきた。

「気にしなくていいよ。私も自分で思ってることだから。」

「藤山さん…けど…」

「んもー、友ちゃんは優しいなぁ。まるりんにも見習って欲しいよ」

「待って待って!この半分は優しさで出来てると噂の私が優しくないとでも?」

「じゃぁ、丸井さんの残り半分は何で出来てるの?」

「え…?うーん、そうだなぁ…厳しさ?」

「ちょっとまるりん!それじゃプラマイゼロだよ!(笑)」

 その後も賑やかな会話が続き、予鈴が鳴ると二人は自分の席へと戻っていった。押し迫っているらしい受験の実感もないままに午後の授業が始まり、そして終わる。それぞれがそれぞれの目的地に向かって帰りだす。まるりんと友ちゃんに「じゃぁね」と軽く言って学校を出る。私の目的地は病院だ。
 私は小さいときに交通事故にあっている。その事故で両親は他界し、残された私は祖父に育てられた。祖父、藤山登は藤山国立病院の院長をしていて、私が事故にあって運ばれたのも祖父の病院だった。そのときの私は意識不明の重症で、植物状態だったらしい。そのこともあってか祖父は私に毎週検診をするようにうるさく言ってくる。心配してのことなので、めんどくさくても私は何も言えないでいる。
 祖父に育てられたと言っても祖父は多忙でほとんど家におらず、実際には祖父の家でお手伝い、今時の言葉で言うのならメイド、もしくは家政婦をしていたカヨリさんに育ててもらった。和服の良く似合う素敵な女性で、子供心ながらも色っぽいなと思っていた。私の第二のお母さんだと思っている。
 中学を卒業すると同時に、祖父は私に一人暮らしをさせた。理由を聞いても「社会勉強だ」の一点張りだったけれど、正直大変だった。こんなにも家事が大変なのかと身にしみて感じた。週に二回、カヨリさんがこっそり来てくれなかったら、きっと私は生きていけない。
 病院が視界に入るようになると、私は少し憂鬱になる。別に祖父は嫌いじゃないし、病院という場所も嫌っているわけじゃない。藤山国立病院、通称プシャ国立病院。いや、これは幼い頃の私が「藤山」を上手く発音出来ずに「プシャ、プシャ」と言っていたことに由来するのだけれど、この通称とその由来を知っているのは私の他にまるりんと友ちゃん。それから実際に「プシャ、プシャ」言っていたのを聞いていたカヨリさんだけだ。
 病院が近付く。それに伴って憂鬱さは増してくる。その原因は私の検診をずっと担当している佐々木という副院長が嫌いなのだ。あの人は生理的に受け付けない。だから憂鬱になるのだ。
 しかし、検診をすっぽかすと祖父に叱られる。一人暮らしと言えど家賃、光熱費、水道代に携帯電話の料金まで祖父に払ってもらっている身としては、憂鬱だからという理由で困らせたり、心配させることは出来ない。そんなことを考えていると病院の入り口に到着していた。毎週来ているのでなんの新鮮さもないけれど、藤山国立病院の自動ドアはスムーズに開いた。




第0010話へ≫

COMMENT

●まるりーんさん

ありがとうございます。
勝手に出演して頂いております(笑)


●志津さん

始めちゃった…。(えー)


●黒さん

あ、ブラポンのボーカルの人だ。コンニチワー!(笑)
もう既に大変なのです。助けて!(自分でやってるくせに)

でも頑張ります!


●るどさん

良い意味でやりがいのあるキーワードなのです。
頑張ってまとめられるように書いていきます。

和服美人はサイコーです。(何宣言だ)

今回は特にキーワードが多いし、
個性豊かなものが集まりましたなw

和服の女性も出ていろいろ楽しみです でへへ(ヨダレ

さっそく登場ありがとうございます!

今回はキーワードが多い分難しいそうですが

がんばってっ(黄色い声で
  • 2008.02.04[月]

始まってる~~(=^^=)

きゃ~!
最初から、どきっとするような始まりで、驚きました。
キーワードもたくさん使われていて、
続きがとっても楽しみです!!

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