POSITISM

適度に適当に。

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FARFALLA - 21 -


ハコニワノベル

「まぁ、着いて来いよぉ」

 ビランチャさんはそう言うとスタスタと歩き始めた。風は更に強さを増していて歩き辛い。

「んー、お年寄りに前を譲る精神は嫌いじゃないが、そんなに後ろを歩かれると話がし辛い。もう少し近付けよぉ」
「あ、いや、すいません。す、すぐ行きます」

 ビランチャさんの歩く速度に合わせようと必死に歩いた。いや軽く走っているのに近い。

「お前さんのロケット、ツギハギだらけだな」
「2年かけて部品を集めて、コツコツ作りましたから」
「ヒヒヒ、ロックだねぇ」
「ロック? ロックって、ジミヘンとかのことですよね?」
「お前さん、ウチュージンのくせに渋いこと知っとるね」
「僕にロケットの作り方を教えてくれた、カプリコルさんが教えてくれたんです」
「そいつ、いい趣味してるよぉ」

 ニタリと嬉しそうに笑いながら、ビランチャさんは歩いていく。湿った風は強くなり、海は今まで見てきた中で一番波が激しい。ずっと海岸沿いをついて歩いていくと、今まで岩続きだったのに急に砂地になった。これが余計に歩きにくい。自分のペースで歩こうとすると置いていかれそうになるので、走りながら進んでいく。ここら辺りまでは来た事が無かった。砂地の続く先に迫り出した岩場があり、そこを迂回すると驚いた。見上げるほどの鉄塔に、オイルの臭いが充満している。「こっちだよぉ」と言いながらビランチャさんが招き入れてくれたのは、岩場に空いた穴の中だった。ビニールシートを潜り抜けて中に進んでいく。オイルの臭いが更に強くなった。そこら中にロケットと思わしきパーツが散乱している。

「これって、ロケットの部品ですか?」
「そうよ」
「大きいなぁ、フィオーレで見かけるロケットより何倍も大きい」
「お前さん、チキューの外からやって来たんじゃろ?」
「そうですけど……」
「多分、お前さんのロケットは宇宙空間で発射されとるな」
「そうですね、フィオーレの外からカタパルトで発射しましたから」
「やはりそうか。しかしな、あのロケットを直したところで、チキューからは出られんぞ」
「そうなんですか?」
「チキューの重力を振り切るためには、強力な推進力を維持し続けなければならんわけよ。つまり秒速11.2キロメートルで飛ぶ必要があるわけよ」
「びょ、秒速11.2キロ……」

 僕の乗ってきたロケットはそんな速度で飛ぶ事が出来るだろうか。そもそもどうやってそんな速度が出せるのだろうか。話を聞きながら頭の中でフィオーレが遠のいていくような気がした。

「その強力な推進力を生み出すために必要な燃料を搭載するとなると、少なくともこれぐらいの大きさにはなるわなぁ」
「はぁ……、凄いなぁ。この大きさで飛ぶんだ。でも、これだけ大きくなると推進力の維持が難しくないですか?」
「燃料を使い切った部分から切り離して、重量を軽くしながら第二、第三ロケットを噴射させて推進力を維持していくのよ」
「なるほど切り離して……、良く考えられてるなぁ」

 その後もチキューのロケット技術について話し込んだ。突然、外からザーッという音が響いた。ビニールシートを捲ってみると水が空から落ちてきている。

「降り出したねぇ」
「これが、アメですか?」
「久しぶりに降ったが、こりゃしばらく止まんぞ」
「これが、アメがフルってことなのか」

 ビランチャさんは「やれやれ」と言いながら腰を下ろすと、古びたカップにコーヒーを注いで飲みだした。

「あの、それで、なんで僕とロケットを?」
「んー、そりゃお前さんが飛ぼうとしとるからよ。今チキューに住んでるやつでよぉ、チキューの外へ飛び出そうなんて考えてるやつはいないわけよ」
「何か物理的に問題があるんですか? 燃料が無いとか、部品が足りないからとか……」
「あぁ? そんなもん、ロックンロールが足りないだけよ」

 カップをテーブルに置き、「ヒヒヒ」と笑いながらビランチャさんは続けて言った。

「でもよぉ、お前さんのその軟弱な身体じゃよ、ロケット作るのも、乗るのも無理だわな」
「え、そうなんですか?」
「お前さん、明日から今日通ってきた砂浜を十往復ランニングしろよぉ」
「十往復、ですか。わ、解りました」
「それが終わったら、ワシの朝飯作れ。そしたらロケット作って、昼時に昼飯作れ。そっからまたロケット作ってよぉ、日が暮れたら晩飯作れ。それが終わったら筋トレして、ほんで寝る毎日よぉ」
「え、なんかそれ、おかしくないですか?」
「いいから、やれよぉ!」
「は、いや、え、えっと……」
「返事はちゃんとしろぉ」
「は、はい」




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