POSITISM

適度に適当に。

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五月と言えば


エッセイ

 年明けた!暖かくなってきた!とか思ってたら五月。
 ゴールデンウィークにあーさんの誕生日。とかそんなお話。


ゴールデンウィークとか


まず先日は有給を一日消化して四連休しました。


金:仕事終わりに会社のボウリング
土:なんだかまったり
日:フットサル(サッカー)で左足の裏の皮がべろんちょ(500円玉ぐらいの大きさ)
月:動物園へ行く
火:あーさんとちぃさんとおとーさんだけで半日過ごす



そんな前半でした。
後半の四連休は実家から父がやってきたり
行けるか解らないけれど大型家具屋さんに行きたいなと。



あーさん四歳ですってよ。


まぁ、5/9なんですけど。あ、5/9なんですけどね。(二回言いました)
あーさんが無事に四歳になるんです。

既に日中は可愛らしい布のパンツで過ごしてたり
ほぼトイレも行けるようになりました。

言葉もハッキリしてきたし
なんだかとてもお姉さんになりました。
幼稚園はお父さんがイス取りゲームに負けたので来年からですが
今まで週一回通っていた幼児教室と
来年入ろうと思っている幼稚園に一年間週一回通うことになってます。

益々、成長していくんだろうなと思ってます。


まぁ、相変わらずなところも残っております。
例えば…



あーさん
(ものすごく怒った顔をしている)
しのめん
あーさん、どうしたの?
あーさん
怒ってるの!
しのめん
何に?
あーさん
お空に!
しのめん
どうして?
あーさん
地球を壊せって言うから!




よし、地球の平和は任せたぞ!ってアホか!


そんな重要任務をこなしてたのかい、マイ、ラァゥヴゥリィァィィィィーーー!あーさん。
だけどね、お家の中で天井を睨んでもダメなんじゃないかなって
おとーさん少しだけ思うんだ。



そんなわけで、もしも地球が壊されたら
あーさんが怒らなかったからです。(ウソです)
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テーマ:日々のできごと
ジャンル:ライフ

第05回ハコニワノベルのキーワード募集!


ハコニワノベル

 宇宙を作り上げることはできないけれど、
 部品があればロケットだって作れる気がする。
 だからそれを確かめてみようと思うんだ。

 

という目標と目的があり、早いもので第05回になりました。
またみなさんの【キーワード】という部品を下さいませ。



ハコニワノベルとは?(概略)


この記事のコメントに
物語の【キーワード】を、読者である皆さんに書いてもらい
その【キーワード】を元にしのめんが物語を綴るという仕組みです。

例)
 第04回のキーワード募集記事(コメントが【キーワード】です。)

 出来上がった物語


 【キーワード】を書き込んで頂く場合に注意点は以下。


※注意事項
・【キーワード】をコメントで書き込んでください。
 (あらすじのようなものはスルーします。)
・お一人様につき、【キーワード】の投稿は1つまで。
・コメントしてくれた方を無断で物語中に登場させる恐れがあります。
 (それは困る!って方はコメントにでも書いておいてください。)
・何かしらの展開は無いとは思いますが
 出来上がった物語の権利はすべてしのめんにあります。
・書き込まれた【キーワード】をしのめんが曲解して扱う場合があります。
実在する人物、団体名はお控え下さい。



 ※重要!【キーワード】の募集締め切りは 2008/05/03 12:00 まで。
 2008/05/03 12:00で募集を締め切りました。




気軽な【キーワード】投稿をお待ちしております!

アーケードの向こう側 - 表紙 -


ハコニワノベル



■ もくじ ■

第一話
第二話
第三話
第四話
第五話
第六話
第七話
第八話
第九話
第十話
第十一話
第十二話
第十三話
第十四話
第十五話
第十六話
第十七話
第十八話
第十九話
第二十話
最終話



■ 感想フォームはこちら ■


■ ハコニワノベルとは? ■


■ 頂いたキーワード ■

・メルト(來弥(aries)さん)
・三角関係(RUTYさん)
・ホコ天(黒さん)
・赤い鯉(なつめさん)
・馬(志津さん)
・鬱(るどさん)
・ヒエログリフ(☆まりモさん)
・煉瓦(ちこさん)
・柏餅(千砂さん)
・ストレリチア(タイキ≒蓮火さん)
・オーダーメイド(ともさん)
・素数(NANAさん)
・みぃみぃ(ミッチーさん)
・電動歯ブラシ(じゅじゅさん)
・りんご酢(あやさん)
・豚丼(まるりーんさん)
・ストライプジャケット(まごすけさん)
・洗濯(春野ひなたさん)


※この物語はフィクションです。
実在する人物、団体、その他とは一切関係ありません。

アーケードの向こう側 - 第一話 -


ハコニワノベル

 一緒に住んでいる保護者代わりがちょっとうるさいだけで、別に特別目立つような不自由はない。俺が住んでいる場所は遊凪市。人口、三万四千五百八十三人。生活に必要な施設、及び学校や働く場所など、全国でも平均的らしい。他の街で暮らしたことがないので実感は出来ない。平均的だというのも情報だけで知っているだけだ。

「なんでダメなんだよ!アレもダメ、コレもダメ!俺に自由はないのかよ」

「ないな。お前に自由なんてもったいない」

「あのさ、確かに俺はあんたに世話になってるけどさ、掃除、洗濯、その他家事全般を全部俺がやって、あんたは昼過ぎまでぐーたら寝てるし、夜中まで部屋に引き篭もってるだけだろ?」

「引き篭もってるんじゃない。研究だ」

「いや、部屋の中で何してるとか関係なくてさ、引き篭もってるじゃないか」

「はいはい、コーヒー淹れて」

「スルーして、しかもコーヒー淹れさせるのかよ」

「コーヒー、早くな」

「解りましたよーだ!」

 ぶつくさ言いながらヤカンを火にかける。まだ少し濡れているマグカップを準備した。「せっかく洗い終わったのに」と呟きながらコーヒーを淹れる。

「あぁ、それから、私を呼ぶときはちゃんと名前で呼ぶように言っているだろ?」

「それならカズミだって、俺を名前で呼んでないだろ」

「そうだっけ?悪い悪い。ま、コーヒー頼んだぞ、ユウキ」

「はいはい。砂糖は?」

「四つー」

 俺はこの女と二人暮しをしている。雨宮カズミ。一応、女。俺の両親はいないし、カズミとは赤の他人だけど、カズミは俺をこの家に住まわせてくれている。記憶が曖昧なぐらい小さな頃から一緒に住んでいるが、気が付けば家事全般を押し付けられるようになり、いつの間にか家事が俺の仕事になった。カズミは家事全般をほとんどせず、毎日部屋に篭りっきりで『研究』をしているらしい。本人の話では世界にも一目置かれている偉大な科学者らしいが、夜中の騒音や日中の異臭などで、世界どころか近所から目を付けられているだけだ。

「ほらよ、コーヒー」

「あい、さんきゅー」

「あのさ、この部屋もうちょっと片付けた方が良くないか?」

「え?片付いてるだろ?」

「これでかよ」

 カズミの部屋の中は大量の資料、機械、何かの部品、薬品等であり得ないぐらいに散らかっている。この部屋に毎日何時間も篭りっきりで何をしてるのかは詳しくは知らない。しかもどうやら働いてはいないらしい。その割りにお金を持っているのが怪しいが、聞いてもまともに答えてはくれないだろう。
 コーヒーを飲みながら、その資料の山を崩して「あっれ?」とか言いながらカズミは何かを探しながら聞いてきた。

「それで、なんでまた夜に出掛けたいなんて言い出したのさ?」

「は?」

 部屋の中をひっくり返しながらカズミが聞いてきた。相変わらず目の前で資料の山が崩れ、ただのゴミとしか見えない機械などがあちこちへ転がる。「あ、あった。あった」と言いながら何かを取り出して部屋からカズミが出てきた。

「まさか、言えないような理由なの?」

「いや、その…うーん。って!ちょ、なに脱いでるんだよ!」

「んー?シャワーだよ。シャワー」

「いや、そうじゃなくて…」

「やっと下着を発掘できたしな。シャワーを浴びるぞ」

「いや、どうぞご自由に」

「なにー?もしかして恥ずかしいの?見たいか?見たいなら見たいって言えよ?ほーら」

「バーカ!お前みたいなおばさんの裸なんか見たく…」

 そこまで言うと殴られていた。綺麗な右ストレートで視界が歪む。しかし目のやり場に困るのでそのまま背中を向ける。

「と、とにかく俺だって夜に遊びに行きたいんだよ!」

「ふーん、色気づきやがったか。でも却下」

 それだけ言うとカズミはシャワーを浴びに浴室へと入った。カズミの部屋からガラクタとしか思えないものが沢山雪崩を起こして溢れ出ていた。ため息を一つ出してからそのガラクタを片付ける。突然浴室から声が聞こえる。

「ユウキ!一緒に入るか?昔みたいに」

「ばっ!あのな、俺はもう十一歳だぞ?そんな歳じゃねー!」

「昔はいつも一緒に入ったじゃないか」

「うるせー。一人で入ってろ!」

 片付けるのが馬鹿馬鹿しくなって、リビングに飛び出したガラクタを適当にカズミの部屋に押し入れて、強めにドアを閉めてから自分の部屋に戻った。いつも学校に持って行っているカバンが目に入る。今日学校で聞いた噂話を思い出した。



   ◆



「ユウキ、通り抜けられない商店街の話知ってる?」

「え?南町の商店街の中にある『フツウのアーケード』のこと?」

「そうそう。あそこにさ、ここんとこ泥棒が出るんだって」

「ナナは本当に噂が好きだよな」

「いや、それがただの泥棒じゃないんだって」

「泥棒に種類なんてあるのかよ?」

「どうやらさ、窃盗団みたいなんだよ」

「窃盗団ねぇ」

「私もその話、聞いたことあるよ」

「ほら!ミユキだって言ってるでしょ。これは益々本当なんじゃないかな!」

「本当でもなんでもいいけどさ、まさか確かめに行きたいとか言うんじゃ…」

「さすがユウキ!話が早い!じゃ、今夜七時に駅前に集合ね!」

「勝手に決めるな。俺は行けないぞ」

「あっれー?あんたまだカズミさんに怒られるのが怖いんだ」

「そんなんじゃねーよ」

「ナナちゃん、私も辞めておいた方がいいと思うよ」

「私はもう行くって決めたもん。あぁ、かよわい女の子が夜に一人で出歩いたら危険よねぇ」

「いや、ナナなら大丈夫。みんな安心して送り出せるぞ」

「ユウキ…?」

「ちょ、首絞める…な……」

「ユウキ君も、ナナちゃんも気をつけてね」

「ミユキちゃん…こいつの…腕を、は、離し……て」

「うふふ。二人とも仲良しだよね」

「……た、たすけ」



   ◆



 思い出したら冷や汗が出た。意識を失う寸前までナナに首を絞められていたからだ。ナナとは幼稚園からの幼馴染で、思い立ったら何も考えずにすぐ行動を起すので、周りがいつも巻き添えになってしまう。おてんばと言えば聞こえはいいが、あれはただの傍若無人だ。ミユキちゃんは小学校に上がってからの友達で、ナナとはまるっきり正反対の女の子らしい女の子だ。消極的であまり前に出るタイプではないけれど、頭がよく、いつも落ち着いている。
 三年生のころからずっとクラスが一緒なのもあり、よく三人で遊ぶことが増えた。周りの男子連中からは「早くどっちを取るかを決めろ」など言われるが正直な話、恋愛感情を二人に持ったことはまだない。

「ナナに呼び出されてるんだよなぁ…」

 独り言をこぼしてから、首を絞められたことを思い出して冷や汗が出る。

「行かないと明日は命がないな」

 浴室からはシャワーの音が聞こえている。カズミに頼んでも許してもらえるはずがない。行くなら今だ。




第二話へ≫

アーケードの向こう側 - 第ニ話 -


ハコニワノベル

 時刻は六時四十五分。このまま走り続ければなんとか七時には駅に着けるはず。少しでも遅れたら、ナナに何をされるか解らない。奥歯を噛み締めて走る、走る、走る。

「お、来た来た。時間ギリギリね。まぁ、私も来たところだし許してあげよう」

「それは、はぁはぁ、ありがたいよ。ほんとに」

「さ、行こうか」

 やっと駅前に着いたと思ったら、すぐにナナは移動を始めた。どうやら電車で南町まで行くらしい。なぜかナナの分まで切符を買わされて、南町へと向かう。

「あのさ、聞きたかったんだけど、南町の商店街に行ってどうするわけ?」

「まず張り込みよね。それから窃盗団が現れたら、捕まえて警察に突き出すのよ」

「現れなかったら?」

「えっ?……え、えーっと」

「現れないことは考えてなかったわけね」

「だ、大丈夫よ。きっと現れるはずだから」

「はいはい。とりあえず遅くなりすぎないように帰るからな」

「ダメ。現れるまで帰らない!」

「あのな、俺はいいけどお前は親に心配かけんなよ」

「大丈夫だって、今日はパパもママも遅くなるって言ってたし」

「だからって無理しても仕方ないだろ」

「え…ユウキ、もしかして…心配してくれてるの?」

(どちらかと言うと、無茶するお前に振り回される俺を心配してるけどな)

「ユウキ…、あんた私のこと……好きなんでしょ?」

「……なんでそうなるんだ」

「照れなくていいよ?ほら、私…色眼鏡なしでも、うん。可愛いし」

 窓に映りこんだ自分の姿を何度も確認しながら、ナナはうっとりとした表情で自分を可愛いと何度も言っていた。その自己泥酔が最高潮になったのとほぼ同時に、電車は南町へと到着した。改札を出て商店街へと向かう。仕事帰りのまばらな人並みに紛れて歩くと、すぐに商店街が見えてきた。商店街の入り口には『南町商店街』とでかでかと書いてある。商店街を覗き込むと午後七時半を過ぎているからなのか、開いている店はまばらで、ほとんどの店はシャッターが下りている。
 この商店街を三分の二ほど進んだ先に、路地裏のような『南凪町アーケード』という小さな別の商店街がある。ここが例の噂の『通り抜けられない商店街』だ。学校の七不思議みたいな噂話と同じで、あまりにも人通りが少ないことを除けばいたって『普通』の商店街であるので、いつしか『不通』と呼ばれるようになり、いつの間にか『通り抜けられない商店街』という噂に発展していったもので、信憑性はまったくといってない。本当に通り抜けられないのかどうかを確かめようとするやつがいないので、この噂話は人気がない。唯一人を除いて。

「私、前々から確かめてみたかったんだよね」

「それなら明るいときに行けよ。なんでわざわざ夜に行くんだ」

「ユウキは怖がりだなぁ。夜だからいいんじゃない。それに、今日はそっちじゃなくて窃盗団逮捕だよ」

「逮捕ねぇ…まずはさ。その窃盗団の噂の真偽を確認することだろ?」

「まぁ、いいじゃない。あ、あそこのパン屋まだあいてるから寄ろう」

 ズルズル引き摺られるようにパン屋に入り、あんぱんと紙パックの牛乳をそれぞれ二つ買った。もちろん支払いはこちらだ。なんでも張り込みには絶対必要なものらしい。二人であんぱんをかじりながら商店街を進んでいく。次第に人気がなくなっていた。

「流石にこんな時間にここを通る人もほとんどいないな」

「…う、うん」

 急に腕を組まれた。心なしかナナが震えているような気がする。

「なんだよ、怖がってるのか?」

「ち、違うよ。ちょっとドキドキしてるだけだって」

「そういうの怖がってるって言うんじゃないの?」

「あ、『フツウのアーケード』見えた」

 ナナが指差す方を見ると小さな看板と、ほんの数メートルの幅の横道が続いている。近付いて覗き込んでみると確かに小さな商店街のようになっている。看板には『南凪町アーケード』と剥げかけのペンキで書かれているし、足元は所々が崩れてはいるものの、丁寧にレンガが敷き詰められている。噂にされるだけはあってまったく人気はない。もちろん金目の物なんてあるとも思えない。こんな場所に窃盗団なんて出るわけがない。

「で、いつまで腕組んでたらいいの?」

「ちょっ!あんた何勝手に私と腕組んでるのよ!」

 勢い良く頭を叩かれながら「そっちから組んで来ただろ」と思ったものの、どちらにせよめんどくさそうなので黙った。「よし、張り込み開始よ」とナナが宣言し、俺たちは『フツウのアーケード』の入り口が見える位置で、格好だけは柱に隠れるようにして張り込みを開始した。
 時間が過ぎるほどに人通りはなくなっていく。気が付けば辺りに誰も見当たらなくなった。商店街の店もすべてシャッターが下りて、頼りない外灯だけが光り続けていた。ナナは紙パックの牛乳をちまちま飲みながら『フツウのアーケード』を凝視している。今なら蟻の進入ですら発見してしまいそうだ。腕時計を確認すると午後九時になったところだった。

「現れないな」

「きっと用心深いのよ」

「ほんと、ナナはポジティブだよな」

「しっ!しゃべってると見付かっちゃうでしょ!」

「なら大きい声だすなよ」

 ナナはそれ以上何も言わずにじっと入り口を凝視し続けている。元々乗り気じゃなかったのもあり、既にこの張り込む行為に飽きたので、壁に寄りかかってズボンのポケットからガムを取り出して口に入れた。ナナはしゃがんで柱から顔だけ出していた。薄手の白いパーカーに、張り込みをするつもりがあるのかないのか解らない目立つ蛍光イエローのTシャツ。ローライズのデニムにごつめのベルトを巻いて、スニーカーを履いている。しゃがんでいるので背中が少し飛び出ていた。その姿を後ろから見て、不意にナナが女の子なんだと意識してしまった。
 幼稚園の頃にナナと毎日遊んでいたからなのか、あまりナナを女の子として見た事が無かった。活発で男勝りなナナに振り回されるばかりだったからかもしれない。でも今日のナナは腕を組んできたり、少し怯えていたりと女の子らしい素振りをしていた。小さい頃はいじめられて良く泣かされていたのが不思議なほど、ナナはナナらしさを残したままで、女の子になっているみたいだ。

「ちょっと!隠れて!」

 急に腕を引っ張られてナナと密着してしゃがむ格好になった。変なことを考えていたからなのか、妙に意識してしまう。「ほら、あれ見て…」とナナが言うものの、どうしてもナナの方をまともに見る事が出来なかった。──その瞬間。

「痛っ!」

 思い切り耳を引っ張られていた。それこそ千切れるほどの力でグイグイと引っ張られ、ナナが指し示す方向に無理やり顔を向けさせられた。視線の先は『フツウのアーケード』がある。ただ、さっきと違うのはそのアーケードの中に人影が見えている。

「え?嘘だろ…」

「ほら、本当だったでしょ?」

「いや、違うだろ」

「逃げたら窃盗団の一員に間違いないわ…ってほら逃げた!」

 人影はこちらに気が付いた素振りを見せてから一目散にアーケードの中へと消えていく。「待ちなさい!」と叫びながらナナが走り出した。左手はまだ俺の耳を掴んだままで、ナナが加速すたびに激痛が走る。アーケードの奥へどんどん突き進むと小さな商店らしい店を境にアーケードがY字で左右二手に分かれている場所に突き当たった。

「どっちかな?」

「とりあえず、耳、離してくれないか?」




≪第一話へ
第三話へ≫

アーケードの向こう側 - 第三話 -


ハコニワノベル

 なんとか耳を開放してもらったものの、まだジンジンと痛みが残っている。初めて足を踏み入れた『フツウのアーケード』は入り口付近よりも奥の方がさらに幅が狭くなっているみたいだ。小さな外灯が間をおいて設置されているだけで、辺りはかなり暗い。

「ね、ねぇ、どっちに逃げたと思う?」

「追いかけない方がよくないか?」

「な、なんでよ!」

「まずさ、今の人影が窃盗団かどうかなんて解らないだろ。それに、仮に窃盗団だとしてさ、深追いしたらこっちが狙われるんじゃないか?少なくとも向こうの方がここの地理は知ってるだろうし、待ち伏せされてたら勝ち目ないぞ」

「嫌!絶対に捕まえてやるんだから!いいよ、ユウキは先に帰りなよ!」

「……あぁ、もう!待てって。一度だけだぞ?右か左、どっちかを見に行って何も無かったら今日は帰る。いいか?」

「う、うん。そ、それでいいよ…」

 そう言いながらナナは俺のシャツを強く引っ張る。どうやら先に歩かないといけないのは俺らしい。右の道も左の道も外灯がなく覗き込んでも暗いだけで、なにがどうなっているのかここからだと解らない。迷路などで迷ったときは左手を壁に付けて、その手を離さないように進めば出口か入り口に辿り着くという、以前読んだ本の内容を思い出した。冷静に考えれば当たり前の知識ではるものの、とっさに出てきたその知識にすがることにした。左手を左側にある店の閉じられたシャッターへ付け、右手でナナの左手を握った。

「いいか、絶対に俺の手を離すなよ?」

「…うん」

 少し強くナナが握り返してきて痛かったけれど、そのまま左手を左側にある建物や、柱などに付けながら左側の道をゆっくりと進む。視界に外灯が入らないので、ほぼ真っ暗なその道を進んでいく。物静かなアーケード内に二人の足音だけが響く。黙って歩いているとどうしても不安になるので口を開いた。

「誰もいないな」

「…」

「なんか言えって。こっちまで怖くなるだろ?」

「…ない、もん」

「ん?」

「怖くないもん…」

「……そうだよな。怖くないよな。うん。俺も怖くないぞ」

 ナナが繋いでいる手を更に強く握った。握ったままで軽くとんとんとその手を振り、落ち着かせる。するとナナは一度手を離すと腕を組んでから手を握ってきた。くっついたナナの身体から心音が伝わってくるような気がする。相変わらず左手は左側にあるなにかに触れたままなのでのろのろと進んでいく。次第に暗闇に目が慣れたのか、うっすらとアーケード内に存在する店などが見えるようになった。

「なぁ、噂の窃盗団は何でこんな場所に現れるんだ?」

「…最初はね、この『フツウのアーケード』に何かすごいお宝が隠されてると思ってたの」

「まぁ、ここにはそんな宝物なんて無いだろうな」

「うん。それでね、考えてたんだけど…ここに何かあるから現れるんじゃなくて、ここから現れてるんじゃないかなって」

「つまり、ここが窃盗団のアジトみたいなものってこと?」

「…う、うん」

「仮にそれが正しかったら、俺たちは今、その窃盗団のアジトへと潜入してしまってるわけだ。何の準備もなく…」

「ち、ちょっと!怖がらせないでよ」

「いや、お前はさ、もうちょっと準備したり、周りの話を聞いてから行動しないといけないと思う」

「べ、別にいつだって大丈夫じゃない!」

「そうか?今回も大丈夫には見えないだろ。ナナはさ、いつも迂闊なんだよ」

「う、うるさいな!大丈夫だったら大丈夫なの!」

 ──突然、後ろでカランカランと空き缶が転がるような音がした。
 二人とも後ろを振り向いてからゆっくりとお互いの顔を見合わせて、まるで打ち合わせでもしたかのように同時に走り出した。ずっと何かに付けていた左手を離し、ナナの手を離さないようにして走る、走る、走る。どれぐらい走ったのか解らないけれど外灯が見え、更にその視界の先に淡い光が見えた。二人でその光へ飛び込んだ。

「はぁはぁ…、ナナ!大丈夫…か?」

「だ、大丈夫…」

 二人とも呼吸がなかなか整わない。近くにあった外灯の下へ移動して二人でしゃがみ込んだ。

「誰かいたのかな?」

「必死で走ってたから解らないや」

「俺もだ」

 そこまで言って二人で顔を見合わせて笑った。どちらともなく繋いだままの手を見て慌てて振りほどいた。

「怖かったな」

「わ、私は別に怖くなかったもん」

「そうかぁ?まぁ、そう言うならそれでいいけどさ」

「あ…」

「どうした?」

「いや、その…、大丈夫じゃないよ」

「何が?」

「だって、ホラ!」

 そう言ってナナが指差した先を見ると、剥げかけのペンキで『南凪町アーケード』と書かれている看板が見えた。

「ん?『フツウのアーケード』がどうかした?」

「違うわよ、バカ!」

「バカって言うやつがバカなんだろ」

「もう!くだらないことはいいの!ほら、あれよ!」

 もう一度見る。そこには『フツウのアーケード』の入り口が見えるだけだ。──入り口?

「なぁ、ナナ。俺たちって後ろに向かって走ったっけ?」

「でしょ?私達、後ろから空き缶か何かの音が聞こえて、奥に向かって走ったじゃない」

「そう、だよな…」

「ずっと奥に向かって走ってたのに…」

「曲がった記憶も無いよな…」

「それなのに出てきたのは最初に入った入り口…」

「おいおい…ほんとかよ。ということは…」

「やっぱり、『不通』なんだ!通り抜けられないのよ、あのアーケード!」

 ナナは興奮して目がキラキラしている。さっきまで怯えてたナナとは別人にすら見える。ナナはその後も「すごい!本当に通り抜けられなかった!」と大声ではしゃいでいた。

「というかさ、あの人影はなんだったんだろうな?」

「窃盗団に間違いないよ」

「いや、決め付けるなよ」

「そうに違いないわ」

「ふーん。あ、でもさ、ここにいたら危なくないか?」

 そう言って二人で目を合わせると「きゃー」とか「わー」と叫び声をあげながら二人で駅まで走った。時刻は午後九時半を少し過ぎている。息も整えないままに電車に乗った。またしても俺が電車賃を出したけど、今はとにかく電車に乗って安全な場所へ逃げたい気持ちでいっぱいで、気にならなかった。
 電車を降り、ナナの家まで歩いた。その最中ずっとナナは興奮していて「噂が噂じゃなくなった瞬間だよ!」とか「私達が最初の証人だからね!」と終始テンションが高かった。ナナの家に到着すると、ナナの家は真っ暗だった。どうやらまだ誰も帰ってきていないらしい。

「送ってくれてありがとう」

「おう。じゃあな」

「ちょっと待ちなさいよ」

「なんだよ」

「今日は、その、ありがと」

「えらく素直だな」

「ユウキって、意外と頼りになるんだね」

「まぁね。だけどそこは自分でも驚いてるよ」

「じゃ、明日もよろしく。じゃあね、おやすみ」

「おーう…って明日?『明日も』ってなんだよ!」

 振り向いたものの、ナナの家の玄関扉は正しく閉まり、鍵をかける音がした。閉まる寸前の扉の隙間から見えたナナの顔は悪戯をしてるときのように少しだけ舌が出ていて、不覚にも可愛いと思ってしまった。




≪第ニ話へ
第四話へ≫

アーケードの向こう側 - 第四話 -


ハコニワノベル

「おはっよー、ユウキ。昨日はよく眠れた?」

「朝からうるせーよ。昨日、あれから夜明けまで説教だったんだぞ」

「うわー、それは災難」

「お前な…」

 ナナを家に送り届けてから家に戻ると、家の電気は付いていた。中に入ると仁王立ちのカズミが待ち構えていて、俺は玄関から靴を脱ぐことも出来ないまま説教を受けた。二時間ほどで一度解放され、風呂に入る許可が下りたとこまでは良かったのだが、風呂から上がるとビールで完全に酔っ払ったカズミに正座をしろと言われ、空が明るくなるまで説教が続いた。最初はただ怒られていただけなので、特に何も感じなかったものの、途中からカズミが泣き出したのでバツが悪かった。

「あのね、あんたと私は家族でもなんでもないの。周りの家族とは違うっていう目で見られるんだよ?」

(いや、お前が既に周りの大人と違いすぎるだろ…)

「私、ダメな大人だけど…これでもあんたの保護者のつもりなんだから…、急にいなくなったり…それで、……それ、で、ケガとかあんたに何かあったら…わ、私……。ユウキのバカー!」

(な、なんで泣くんだよ…)

 そんなやりとりがあり、後半はずっと俺がカズミをなだめているだけだった。頭を撫でていないと泣き喚くので、カズミが完全に眠りに落ちるまでずっとカズミの頭を撫で続けた。だから今日はほとんど寝ていない。

「それでさ、今日なんだけど」

「ちょっと待て、今日の夜は無理だぞ。絶対に無理。俺は眠りたいんだ」

「お二人さん、おはよう」

「あ、ミユキおはよう。ちょっと聞いてよ、昨日すごかったんだから!」

「そうなんだ。あれ?ユウキ君すごく眠そうね?」

「あぁ、こいつのせい」

「あらあら、ナナちゃんのせいで寝不足なの?うふふ」

「ミユキ!なんかそれエッチいよ」

「あら?違うの?」

「もう、どうでもいいや…とりあえず眠い」

「それよりもミユキ!昨日すごかったんだよ。『フツウのアーケード』でね……」

 テンション高いままでナナはミユキちゃんに説明を続けていた。「へぇ」とか「すごいね」というミユキちゃんの反応で、更にテンションが上がったナナが休憩時間ごとに近くで話をするので、休憩時間に少し眠る作戦は失敗に終わった。それは給食の時間になっても変わらない。

「それでさ、追いかけたんだけど誰もいなかったんだ。だけどね、ここからが一番すごいんだけどね…」

「うんうん」

「後ろから誰かに追いかけられちゃってさ、必死に走って逃げたんだよ!アーケードの奥に向かって。そしたらさ、アーケードから出ちゃったの」

(空き缶の音が聞こえただけで、誰にも追いかけられてないと思う…)

「アーケードの奥へ走っていったのにさ、気が付いたら入り口から出てたんだよ!やっぱりあそこは『フツウのアーケード』なんだよ。すごくない?」

「すごいねぇ」

 ゆるくミユキちゃんが驚いて、給食を食べてる間中その話で盛り上がった。もちろん盛り上がってるのはナナだけで、俺は給食を手早く食べ終わってから男友達からのサッカーの誘いを断って、体育館の横にある人気が無くて風が心地良い秘密の昼寝ポイントへ移動した。体育館とプールの間にあるこの昼寝ポイントは、ほとんど誰もやってこない場所で、どうしても眠たいときは昼休みをここで寝て過ごしている。腰を下ろすと体育館の壁がひんやりと冷たかった。昨日ほとんと寝ていないのと、休憩時間に眠れなかったのが響いたのか、すぐに眠りに落ちた。
 ──どれぐらい眠ったのか、いつ眠ったのかも解らないまま目を覚ますと、プールの壁沿いに咲いているタンポポが見えた。数本は綿毛になっている。座って眠ったはずなのに、自分が横になっていることに気が付くまで、少し時間がかかった。

「あれ?」

「あ…おはよう、ユウキ君」

 見上げると至近距離にミユキちゃんの顔が見えた。驚き過ぎて身体が硬直してしまう。どうやら膝枕されていたみたいだ。

「な、なんで?」

「えーっと、ユウキ君が一人でここに向かって歩いているのが見えてね。追いかけてきたらユウキ君眠っちゃってて、横に座ってたら寄りかかられて、気が付いたら膝枕になってたよ」

「え!ご、ごめん…」

「いいよー、私もゆったりさせてもらったし。それにユウキ君の寝顔見ちゃったしね」

「うあ…、それはそれで恥ずかしい」

 起き上がろうとすると「まだ予鈴、鳴ってないよ?」と言いながらミユキちゃんに頭を押さえつけられた。なんだかどんどん恥ずかしくなってくる。見上げるとミユキちゃんはにこにこと微笑んでいた。

(ミユキちゃんは、ナナと比べるとすごく大人っぽいんだよな。ナナは全然ないけど、ミユキちゃんの胸は…)

「こーら。どこ見てるんですか?」

「え!いや!その!べつに…えっと、ごめん」

「謝らなくていいよー。ユウキ君は正直だなぁ」

 恥ずかしさに耐えられなくなって起き上がろうとすると、またしてもミユキちゃんに頭を押さえつけられた。

「昨日、全然眠れてないんでしょ?予鈴鳴るまで横になりなよ」

「いや、でもさ。その、悪いよ。重たいし」

「大丈夫だから。ほら、力抜いて」

「…ありがとう」

 これがナナだったら軽く罵り合ってすぐになんとかなるものの、ミユキちゃんにはどうも敵わない。マイペースでおっとりしてるように見えて、気が付くとミユキちゃんのペースに乗せられていることが多い気がする。

「この場所、とっても気持ちがいいね」

「誰も来ないし、秘密の昼寝場所なんだ」

「私が知っちゃったから秘密じゃなくなったね」

「ミユキちゃんならいいよ。ナナみたいに言いふらしたり邪魔しに来たりしないから」

「うふふ。ナナちゃんならありえるね」

 ──しばらくそんな他愛のない会話を続けていると予鈴が鳴った。

「あらら、残念。予鈴鳴っちゃったか」

 やっと起き上がることが出来て伸びをしながら、「え?残念?」となんとなく聞いた。

「やれやれ。ユウキ君に限ったことじゃないとは思うけど、ほんと男の子は鈍いなぁ」

「へ?何が?」

「ううん、なんでもないよ。はい、気にしない気にしない。授業に遅れちゃうよ?」

「次、移動教室だっけ?ちょっと急がないとね」

「……ねぇ、ユウキ君。たまに、私もここに来ていい?」

「ここに?いいよ。俺だけの場所じゃなくなったし」

「そっか、二人だけの秘密の場所だね」

「うん…、まぁ、そういうことかな」

「うふふ。そっかそっか。ありがとう。じゃ、行こうか」

 ミユキちゃんはなぜか嬉しそうに笑って歩き出した。それにつられるように午後の授業へと向かった。




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アーケードの向こう側 - 第五話 -


ハコニワノベル

 今日の五時間目は理科。理科実験室でアルコールランプを使った水上置換の実験をした。昼休みに少し眠れたのでなんとか眠くならずに実験をこなしたものの、六時間目は社会。担任である野口先生は教師になる前に世界中を旅したことが自慢で、社会で海外の話になると決まっていつも自分の体験談を語ってくれる。それはとても面白くためになる話も多いのだが、あまりに熱く語りすぎて自分の世界に入ってしまうため、生徒が理解できない話になり、それはとても寝心地の良いメロディを奏でてしまう。今の状況でそのメロディを聴いたらきっと眠ってしまうだろう。

「ちょっと、あんた昼休みどこ行ってたのよ?私ずっと探してたんだからね」

「ちょっとね」

「うふふ。そう、ちょっとねぇ?」

「なによ、ミユキまで意味深なこと言っちゃってさ」

「別になんでもないよ」

「うふふ」

 膝枕を思い出して恥ずかしくなってしまった。ミユキちゃんはそれを見てにこにこ笑ってるし、俺とミユキちゃんの間で顔を交互に見ながら、ナナは「怪しいなぁ」と言い続けた。

「それで、何か用だった?」

「あぁ、そうだよ!とっても大切な用件だったんだ」

 この時点で嫌な予感がした。昨日の夜ナナが言った『明日もよろしく』という言葉を思い出したからだ。ナナの目が獲物を狙う目になった。

「ユウキ、今日の放課後空いてる?」

「いや、今日は…ちょっと」

「なによ?あんたに予定なんてあるわけないじゃない」

(う…、確かに予定なんてなにもない)

「それともなぁに?私との予定は嫌なの?」

「え、えっと…いや、その」

「ユウキ君は今日、私の家に来る予定だよ」

 突然ミユキちゃんがそう言った。ナナがミユキちゃんの方をするどく見ながら「え?」と叫ぶように言った。「ね?ユウキ君」とミユキちゃんが続けると、今度は俺の方にナナは顔を向けてきた。

「また、何の用があるわけ?」

「いや、それはその…えーっと」

「もしかして二人で私を騙そうとしてなぁい?」

「あら、そんなつもりは全然ないのに」

「どうなの?ユウキ…、正直に言わないと解ってるわよね?」

「その笑顔辞めてくれ、怖いから」

「怪しい!怪しい!だったら私も今日ミユキの家に行ってもいい?」

「それは全然構わないけど?」

「じゃ、放課後三人で帰ろうね」

 ナナはそう言うと満足そうに笑った。別に人の心は読めないけれど今のナナから「逃がさない」という心の声が何度も聞こえる気がした。
 教室に到着し、しばらくすると野口先生がやって来て今日最期の授業が始まった。

「そう言えば先生は昔、エジプトに旅をしたことがあります」

 開始五分で野口先生は自分の世界に入っていった。「スフィンクスは絞め殺すの意味」だとか「壁画などに描かれているヒエログリフが…」といった内容までは覚えているものの、気が付いたら肩を揺すられていることに気が付いた。

「雨宮?おーい、雨宮。どうした、大丈夫か?」

「……え?」

「授業中に居眠りしたらダメだぞ?」

「あ!…はい、すいません」

「中学生とか高校生なら居眠りする気持ちも解るけどな、あっはっは」

 高らかに笑いながら背中を少しだけ強く叩かれて授業は再開した。遠くの席に座っているナナと目が合い口パクで「バーカ」と言っているのが解った。「お前のせいだろ」と思ったものの、今それを口に出したらクラス中から大きな誤解を受けそうなので辞めた。
 野口先生に起こされたことに驚いたからなのか、ほんの少しだけでも眠れたからなのか解らないけれど、その後は特に問題もなく授業を受け、ホームルームも無事に終わった。帰る準備をしているとナナがやって来て、そのすぐ後にミユキちゃんもやって来た。三人でミユキちゃんの家の方へ歩く。

「それじゃ、行きましょうか」

「おー!ってかユウキ、ほんとにミユキと用事あったのか?」

「え?そ、そりゃあるに決まってるだろ」

「ほんとかなぁ?」

「ナナちゃん、私がユウキ君を誘ったの」

「そうなんだ。ミユキ、気をつけなよ。こいつ一応男だから」

「ちょ、お前な」

「そうね。気を付けないとね。うふふ」

「ミユキちゃんまで…」

「もしも、もしもだよ?もしも、私とミユキどっちかと付き合わないといけなかったら、あんた…どっちを選ぶ?」

「はぁ?なんだよいきなり」

「あら?私は興味あるなぁ」

「さ、どっち?」

「え?…ちょ、二人とも目が怖いんですけど」

『どっち?』

「ハモらないでよ…」

「んもー、ハッキリしないヤツだな。パッと決めろよ、男らしくない」

「そうだそうだ。ハッキリしろー」

「いや、えっとね、いやぁ、なんでだろうな…なんとなくどっちを選んでも嫌な予感がするんだよね」

「うだうだ言ってないで決めろよ」

「ナナちゃん?それとも私?」

 二人とも目が本気だ。なぜこんなことになっているのか解らないが、なんとなく怒られているような気になった。どうにも居心地が悪くなって走り出した。

「俺、選べないわ!」

「ちょ、待ちなさいよ!逃げるなー!」

「…うふふ」

 全速力で走って逃げた。別に今日は用事なんてなかったし、ナナの用事に付き合えば必ず『フツウのアーケード』に行くことになっただろう。いつもなら追いかけてくるナナも、ミユキちゃんがいるからなのかその場から動かなかった。走りながらナナの質問をぼんやり考えてすぐに辞めた。

(そもそも、付き合うってどういうことなんだよ…)

 睡眠不足と走って帰ってきたことで、家に着いたらそのままベッドで眠りに落ちた。




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アーケードの向こう側 - 第六話 -


ハコニワノベル

「ダメだ、死ぬ…」

 何度も身体を揺さぶられて目を覚ますと、窓の外はもう暗くなっていた。見上げるとカズミがフラフラしているのが見えた。

「なんだよ、どうした?」

「なんだよ、じゃない…晩御飯は?」

「いや、寝てたのは昨日お前が…」

「いいから早くー!早く何か作ってよー!じゃないと死んじゃう」

「それぐらいで死ぬわけないだろ」

 時計を見ると午後十一時になっていた。冷蔵庫の中を確認してたまねぎ、ハム、卵で簡単にチャーハンを作って盛り付けると、すぐにカズミが流し込むように食べて「生き返ったー」と言った。洗い物は面倒だったので水に浸けるだけにしてシャワーを浴びて、洗濯物を洗濯機にセットしてからベッドに戻った。しかしさっきまで眠っていたからなのかどうにも眠れず、仕方がないので取り入れるだけで放置していた洗濯物を畳むことにした。

「ん?なんだ、どうしたユウキ?」

「変な時間に目が覚めたから眠くなくなったんだよ」

「添い寝でもしてやろうか?」

「断る」

「なんでだよ、昔は毎日一緒に寝てたじゃないか」

「もう、ガキじゃないの」

「あんたなんかまだガキだよ」

「うるせーよ。あ、あと洗濯物ちゃんと出しとけよ」

「はいはい」

 カズミはそのまま冷蔵庫からりんご酢を取り出して飲み始めた。本人は「健康のため」と言っているが、多分ダイエットだろう。普段不摂生をしているから微妙に気にしていると思う。じゃなければあんなに大量に買い込むはずがない。飲み終わると「ぷはー」とかオヤジくさいことを言った。

「そう言えばさ」

「なんだよ」

「あんた昨日どこ行ってたわけ?」

「あれだけ何度も言わせておいて忘れてるのかよ」

「仕方ないだろ!飲めないお酒でも飲まなきゃやってられなかったんだから!」

「じゃぁ、飲むなよ」

「それはいいから、あんたどこに行ってたの?と言うか一人じゃないよな。誰と行ってたんだ?」

「……いや、べつに」

「女か!」

「!……」

「え、ほんとに女なの?かぁー、あんたも男だもんねぇ」

「いや、女は女だけど、別にそういうんじゃ…」

「ナナちゃんか?」

「!!……」

「図星かよ。まぁ、ナナちゃんは昔からあんたのこと好きだしねぇ」

「それはどうだろう…」

「は?あんた気付いてないわけ?はぁ、まったくいつの時代も男は鈍感だわ」

 そう言ってにやにやしながらカズミは俺の頭をぽんぽんと軽く叩いて部屋に向かう。自分の部屋のドアを閉めながら「ユウキ、変なことはするなよー」と言われた。

「しねーよ!」

 畳んだカズミの洗濯物をドアに投げつけた。するとドアが再び開いてカズミは顔だけを覗かせて「あと、家にはちゃんと帰って来いよ」と少し申し訳なさそうに言った。「解ってる」とだけ返すと、ドア付近に散乱した洗濯物を拾い上げてから「じゃ、おやすみ」と部屋の中に入っていった。残りの洗濯物を畳み終えてから、また自分の部屋のベッドへと戻った。



   ◇



「もしも、もしもだよ?もしも、私とミユキどっちかと付き合わないといけなかったら、あんた…どっちを選ぶ?」

「ほら、私…色眼鏡なしでも、可愛いでしょ?」

「私なら、ナナちゃんと違ってユウキ君のこと大切にするけどなぁ」

「ねぇ、どっちと付き合うの?」

「私?それともナナちゃん?」

『どっち?』

「俺は…俺は……」

「早く選びなさいよ!」

「ユウキ君、どっちを選ぶの?」

『どっち?』

「俺は…えっと……」



   ◇



「どっちとか解らねーよ!」

 それが夢で、今叫んだのが盛大な寝言だと気が付くのにしばらく時間がかかった。時計を見ると午前五時を十分ほど過ぎている。夢の中でナナとミユキちゃんに詰め寄られていた。なんとなく、今日学校に行くとそうなるんじゃないかと思ってしまった。もう一度眠ろうとベッドに潜り込んでみるものの、さっきまで見ていた夢が頭の中で何度も再生されて眠れない。なんだか悶々としてしまうので、起き上がって冷蔵庫の中にあるカズミのりんご酢を一つ取り出して飲んだ。思ったよりも酸っぱくてむせた。
 ──突然、玄関扉が開く。

「わっ!なんだユウキか。驚かすなよ」

「それは…げほげほ、こっちの、げほ、台詞だ」

「ん?あー!私のりんご酢!何勝手に飲んでるんだよ!」

「いいじゃないか、こんだけ大量に買い込んでるんだから」

「いや良くないぞ。人のものを勝手に飲んでしまうなんて」

「お前は俺の買っておいたジュースを勝手に飲んでるじゃないか」

「だって、名前書いてなかったもん」

「いや、これにだって名前書いてないじゃないか」

「書いてあるよー?底見てみ」

 突き出したりんご酢の紙パックを持ち上げて、底を見ると『カズミの♪』と書かれている。なんでこんなとこにだけマメなんだ。こういう部分じゃなくて部屋を片付けるとか、一般的な大人と同じ生活を送るとか、そういうことにエネルギーを使って欲しい。

「どうだ、まいったか」

「そんな自信満々に言うことかよ」

「ま、解ったならそれでいい。次から勝手に飲むなよー」

「はいはい」

「『はい』は一回」

「…はーい」

 カズミは満足げに玄関から入ると、カバンを自分の部屋に投げ入れてゴソゴソと発掘作業をし始める。「あったあった」と言いながら自分の下着を高々と掲げながら部屋から出てきた。その一部始終を力なく見ていると「どうした?一緒に入りたくなったか?」と聞いてきたが、返すのも面倒でため息だけ吐いた。カズミは勝ち誇ったように浴室へと向かっていった。りんご酢の紙パックをゴミ箱に入れて、冷蔵庫の中にあるジュースのペットボトルにでかでかと『ユウキ』とマジックで書いておいた。

「そう言えば今、カズミ外から戻って来たよな…」

 カズミは毎日部屋に引き篭もってると思っていたけれど、もしかすると夜遅くに働きに出ているのかもしれないと思った。今までカズミに言った暴言を思い出していたら動けなくなった。そのまましばらくするとカズミが浴室から出てきた。

「んー?おーいユウキ、どうした?」

「いや、お前さ…、もしかして夜遅くに働いてるのか?」

「なんだ、突然」

「いや、だからさ、夜働いてるのか?って聞いてるんだよ」

「それがどうかしたのか?」

「……わ、わるかったよ」

「何だ?さっきのりんご酢のことか?それなら別にそこまで気にするなよ」

「そうじゃなくて、今まで引き篭もりとか言ってたこと…」

「はぁ?」

「だから、引き篭もりとか言って悪かったって言ってんの!」

「お前なぁ…」

 そこまで言うとカズミは急に俺を抱きしめた。まだ濡れてる髪からシャンプーの香がする。

「ガキが変なこと気にするなよ。親なら働いて当然だろ?これでもお前の保護者なんだぞ」

 泣きそうになるのを我慢して、両腕でカズミを押しのけた。冷蔵庫の中からペットボトルを取り出して突き出す。

「なんだよ、これ?またお前名前でか過ぎだろ」

「これは俺のジュースだけど、お前も飲んでいいからな!」

 そこまで言ってから走って自分のベッドに潜り込んで、きつく目を閉じた。




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第七話へ≫

アーケードの向こう側 - 第七話 -


ハコニワノベル

「ぎゃー!」

 叫び声で目が覚めた。時刻は午前七時五分前。どうやらカズミが叫んでいるみたいだ。慌てて叫び声の聞こえるキッチンへと急いだ。自分の部屋を出ると家全体が焦げ臭い。キッチンへ目を向けると黒い煙を出しているフライパンを持ったカズミが叫び声をあげていた。

「なにやってんだよ」

「あ、え?ユウキ、おはよう。もうそんな時間か?」

「もうすぐ七時だ。そうじゃなくて、なにやってんだよ」

「いや、目玉焼きを作ろうと思ったら、とても黒目な目玉焼きに…」

「油は?火力を最大にしてないか?最期は蒸し焼きにするんだぞ?」

「何?宇宙語をしゃべるなよ!それよりも助けて!」

 コンロの火を消し、フライパンを奪い取って流しで水を入れる。換気扇を付けて窓を開けた。

「朝から何の実験だよ」

「いや、ほらユウキと朝ごはん一緒に食べようかなぁと思って」

「お前料理出来たっけ?」

「ご覧の通りの実力です」

「俺は幼い頃にどうやって育てられたんだろう…」

「お店で売ってるものはとても素晴らしいんだなと言うことに、今日気が付きました」

「まぁ、いいよ。俺作るからさ、目玉焼きでいいか?」

「ハム入れて。あと半熟にしてね」

「注文だけは立派だよな」

 トーストを焼いて、ハムエッグを出した。久しぶりに二人で朝食を食べる。

「それにしてもユウキは、いつの間にか料理も洗濯も出来るようになったよな」

「一応、学校の家庭科でも習うぞ」

「そうだっけ?」

「まぁ、得意な男子はほとんどいないけどな」

「じゃぁ、あんたモテモテでしょう?」

「あのな、小学生でモテるために必要なのは基本的に運動能力だ」

「なに悟ったみたいなこと言ってるのよ」

「それが現実だ」

「まぁ、そういうものかも知れないけどね。中学になると勉強出来るかどうかも問われるし、高校になればセンスも問われるよな」

「それ、何年前の記憶?」

「バーカ、そんな昔じゃないよ……って、あれ?もう十年以上も前になるのか……」

「もうすぐ三十だもんな」

「まだ二十八だ」

 おでこを小突かれて朝食は終わった。今使った食器と昨日残していた洗い物、それから焦げたフライパンも一緒に洗ってしまう。着替えを手早く済ませるとゴミをまとめて玄関に置く。眠そうなカズミに「行ってきます」を言ってから家を出た。
 ゴミを出していると掃除のおばさんに「偉いわねぇ、お母さんは何もしてくれないの?」などと聞かれた。「母は僕のために毎日頑張ってくれてるので、僕に出来ることは僕がやるんです」と笑顔で言っておいた。ちょっと良い子を演出し過ぎたかもしれない。いつもはもっと早く出掛けるものの、今日はいろいろとすることが増えたので遅刻しないように急いで学校へと向かった。

「あれ?ユウキ、おはよう」

「おはよう、ナナ」

「あんた今日はちょっと遅いじゃない」

「ちょっと朝やることが多くてさ。というかお前も遅いだろ」

「私はちょっとだけ寝坊したの。ちょっとだけね」

「と言うことは遅刻ギリギリになってるのか」

「正直に言うと、走らないと間に合わないタイミングね」

「走るか」

「あ、待ちなさいよ」

 二人で学校までの道を走る、走る、走る。集合住宅街を抜け、大通りを抜けて公園の脇を通り抜ける。アジサイがいくつか花を開いていた。角を曲がると学校が見える。しかし正面入り口は見えている部分の反対側だ。朝は裏側の入り口は鍵がかけられている。ぐるりと正面入り口まで回りこむと時間にして五分はロスしてしまう。

「ユウキ!フェンスの脇!」

「解ってる!」

 走りながら意思の疎通をした。
 裏口に近い校庭のフェンスの一角は、隣りが民家であることもあり、完全には遮断されていない。ここから校庭に入って突っ切ればまだ間に合うはずだ。二人でフェンス脇をすり抜けた。少し高いその場所から校庭へと飛び降りる。続いてナナが飛び降りたが、着地でバランスを崩しそうになった。とっさにナナの腕を掴んで支えて、また二人で走り出した。ナナはその途中で「サンキュー」とだけ言った。
 ──教室に駆け込むとまだ野口先生は来ていなかった。

「間に合った…」

「おいおーい、夫婦で仲良く遅刻かよ」

「うるせーぞタイキ!遅刻してないし、それに夫婦なのは俺じゃなくてお前だ!」

 最近彼女が出来たと言いふらしているタイキの軽口に噛み付きながら、俺もナナも自分の席に座った。そのすぐあとに野口先生が教室に入ってきた。

「はい、おはよう。出席取るぞー。安達…雨宮…あ、雨宮、お前校庭突っ切ったな?あそこのショートカットはしちゃいかんだろ。あと美崎も突っ切らないようにな。はい続きいくぞ、石川…内田…」

 あっさりと校庭を突っ切っていたことがバレていた。タイキが「おいおーい」とか言い出したけれど無視をした。

「連絡事項は、柳が今日は体調不良でお休み。後は特になし。じゃ、今日も元気よく学んで、元気よく遊ぶように。以上」

 そう言えばとミユキちゃんの席を確認してみると確かにいなかった。ナナも同じように振り返ってミユキちゃんの席を見ていた。そのまま朝礼が終わると、ナナが駆け寄って来た。

「珍しいね、ミユキが休むなんて」

「そうだな」

「昨日のがまずかったかなぁ…」

「昨日?あ、あの後何かしてたのか?」

「えー?あんたが逃げちゃってどうしようもないから、二人でミユキの家に行ったの。ずっと話し込んじゃって、その後一緒にご飯食べて、一緒にお風呂に入ったのよ」

「はぁ…、ミユキちゃんの家族にはなんて言われたんだよ」

「いや、なんか昨日は遅くまで帰ってこない日だったみたいでさ」

「それで、なにがまずかったんだよ?」

「いやぁその、ね、お風呂でさ、ミユキがのぼせちゃってさ。私、のぼせたときってシャワーで水を浴びるようにしてるから、こう、のぼせてるミユキに水をね…」

「確実にそれが原因だな」

「やっぱりそうかな…?」

「再確認しなくてもそうだろ」

「……そ、そもそもね、あんたが昨日逃げなかったらこんなことにならなかったのよ!」

「なんでそこで俺のせいになるんだよ」

「うるさいうるさい!とにかくあんたが悪いんだから、今日はミユキの家にお見舞いに行くわよ!」

「ちょっと待てよ、なんで俺の方が悪くて、お前が付き添いみたいなポジションなんだよ。逆だろ、逆」

「と、とにかく放課後にミユキの家に行くからね!今日は絶対に逃げたらダメだから!」

 そこまで言うとこちらの反論も聞かずに、ナナは自分の席に戻っていった。あからさまな逆切れだ。今日の授業はなんだかその濡れ衣を着せられているような言いようのない気分のまま過ぎて、気が付けばあっという間に放課後になった。

「さぁ、行くわよ!」

「なんでそんなテンション高いんだよお前は」

「う、うるさいわね、私は謝るのが苦手なの!」

「あぁ、そういうことね」

「なによ」

「いや、別にいいよ。だけど謝るのはお前自身でちゃんと謝るんだぞ」

「…わ、解ってるわよ。偉そうに」

 二人でミユキちゃんの家に行くと誰もいないのか、本人は寝ているのか応答が無かった。しばらく家の前で待ってみたものの、どうにもならなかったのでミユキちゃんの家から離れた。

「ミユキ、なんでいないんだろう?」

「寝てるか、病院に行ってるとかじゃないか?」

「そうなのかな…」

「まぁ、あまり心配するなよ。明日には元気になって出てくるって」

「……そう、だよね!うん」

「じゃぁ、帰りますか」

「私、緊張してたからお腹すいちゃったよ」

「いや、まだ緊張しとけよ。せめて謝るまではさ」

「え?それは明日ちゃんと緊張するよ」

「なんだよそれ」

「よし、とにかくお腹すいたからさ、何か食べようよ」

「何かってなんだよ」

「うーん、あ、そうだ。豚丼!豚丼がいい!」

「はぁ?豚丼ってあの豚丼屋の?」

「うん!」

「なんでまたあんなの食べたいんだよ」

「だって食べたことないんだもん」

「でも、この辺に豚丼屋なんてないだろ」

「私、知ってるよ」

「へぇ、どこにあるんだ?」

「南町商店街」

 そう言ったナナの目は、明らかに獲物を狙う目になっていた。どうやら拒否権はないらしく、引き摺られるように移動するその足取りは、駅へと向かっていた。




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アーケードの向こう側 - 第八話 -


ハコニワノベル

 電車は何も言わずに南町の駅へと到着した。また電車賃を俺が払わされたこと以外は特に何事もなかった。商店街へと向かうとまだ夕方なので買い物をする人や中学生、高校生の姿も見える。『南町商店街』と書かれた入り口から商店街を覗き込むと、まだほとんどの店が営業していた。

「ユウキ、ちょっと待ってて」

「なんだよ」

「女の子にそんなの全部言わせないの」

 そう言いながらナナは駅前のコンビニへ入っていった。しばらく目で追いかけていると、どうやらトイレらしい。商店街の入り口にあるポールに軽く腰掛けたときだった。

「おい少年」

「え?」

「そうだ、君だぞ少年」

 振り向くと商店街の入り口に一番近い場所に、なぜか全体が黒い店の中から声が聞こえる。見上げるとそこには『花屋ATASHI』と書かれている。その店の中から全身黒い服に黒いエプロン、それからとても目立つ赤い口紅を付けた女の人が出てきた。店もこの人もまったく花屋には見えない。確かに店の前に花が置かれているけれど、店が黒くて何とも言えない雰囲気が漂っている。なんと言えばいいのか解らないけれど、大人のお店のようだ。

「あの…なんでしょう?」

「母の日?それとも、デート?」

「え?」

「ほら、うちって花屋じゃない。だから花を買っていきなさい」

「いや、別にいらないです」

「なら、これいる?」

 そう言いながら黒尽くめの女の人はぐるぐる巻きにされた葉っぱを無造作に取り出した。

「それ、何ですか?」

「ん?しょうぶ」

「しょうぶってこどもの日にお風呂に入れるやつですよね?」

「そうそう、売れ残ってるんだよ。だから、ほら、買いな」

「いや、買いませんよ」

「今なら柏餅も付けてやるぞ、少年」

「いや、こどもの日は随分前だし、その柏餅も大丈夫じゃないでしょ?」

「頭いいな、少年」

 そう言うと黒尽くめの女の人は「はっはっは」と愉快そうに笑った。

「私の名前はジュジュって言うんだ。覚えときなよ、少年」

「はぁ…」

「今度会ったら絶対何か買わせてやるからな」

「いや、結構です」

「ま、覚悟しとくんだね」

 そう言うとジュジュさんはくるりと背中を見せて店の中に戻っていった。その背中を見た瞬間に衝撃が走った。黒いエプロンを付けている正面からは解らなかったものの、背中は首から腰、いやほぼお尻まで開いている服で、紐で編み上げてあるだけだった。見てはいけないものを見た気分がして首を無理やり捻るように動かして視線を逸らした。

「なにやってんのよ?」

「え、いやべつに」

「ほら、さっさと行くわよ」

 戻ってきたナナに連れられて商店街の中へと進んでいく。

「そう言えばさ、動物園の噂知ってる?」

「動物園?それにしてもほんとに噂好きだよな、ナナは」

「何でも被せてくるパンダがいるらしいのよ」

「なんだよその何でも被せるってのは」

「いや、よくは知らないんだけどさ、飼い主も驚くほどの被せ上手らしいよ」

「よく知らないのかよ」

「だからさ、今度確かめに行かない?動物園」

「はぁ?それよりさ、豚丼屋はどこにあるんだよ」

「うー…、この商店街を抜けたとこにあるわよバカ!」

「なんでバカ呼ばわりされないといけないんだよ」

「あんたがバカだからよ」

「意味が解らねーよ」

 目の前に『フツウのアーケード』が見えた。なんとなく不安になってナナに聞いてみる。

「もちろん、豚丼を食べたらすぐに帰るんだよな?」

「もちろん」

「そうか、それなら良かった」

「だから食べる前にちょっと寄り道」

「ちょ、お前な!」

 いつの間にか組まれていた腕を引っ張られて『南凪町アーケード』と書かれた看板の前に辿り着いてしまった。

「今日はまだ明るいし、人通りも多いから安全でしょ」

「そういう問題かよ」

「ちょっと通り抜けてみるだけよ。『フツウのアーケード』なのかを再確認したら、豚丼食べて帰るの」

「……解ったよ。どうせ言っても聞かないんだろ?一回だけだからな」

「それじゃ、出発!」

 そう言いながらもナナの腕は力が入り、恐る恐る歩いている。『フツウのアーケード』の中はこの前よりも明るとはいえ、南町商店街と比べるとかなり薄暗かった。開いている店もなければ人通りもまったくない。このアーケードは随分昔にアーケードとしての役目を終えているのかもしれない。
 しばらく歩くとあの場所に辿り着いた。小さな商店らしい店を境にアーケードがY字で左右二手に分かれている。一昨日は左側の道を進んで、奥へ奥へと走ったら入り口に戻っていた。

「どっちに行く?」

「私、左に進むから、あんた右側に進みなさいよ」

「なんで別々に進むんだよ?」

「そしたらこのアーケードの秘密がもっと良く解る気がしない?」

「まぁ、いいけどさ。お前一人で大丈夫なのか?」

「あ、あんたこそ怖がってんじゃないの?」

「…いや、ナナがそう言うならいいけどさ。でも、何かあったら大声で俺を呼べよ?」

「あんたも何かあったら大声で『ナナ様助けて下さい!』って言いなさいよ」

「絶対に言いたくないな、それ」

「じゃ、突き当たるか通り抜けるか、入り口に戻されるかしたら、さっきの看板のところで待ち合わせね」

「はいはい」

「『はい』は一回」

 誰かと同じようにそう言うと、ナナは軽く手を振ってから左の道を進んでいった。俺は右の道を進んでいく。薄暗いアーケードには相変わらず人通りも人気もなく、ただ薄気味悪かった。




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アーケードの向こう側 - 第九話 -


ハコニワノベル

 右側の道をしばらく進むと、目の前に小さな鳥居が見えた。以前は朱色だったと思われるその鳥居は所々が剥げて赤よりも茶色に近い色になっている。その鳥居に『南凪神社』と、かろうじて書かれているのが見えた。鳥居を潜り抜けると自分の部屋より少し広いスペースに小さな神殿と賽銭箱が置いてあるだけの、本当に小さな神社だった。その奥にコケの生えた池があり、赤い鯉が一匹だけ穏やかに泳いでいるのが見えた。
 神社を出て今まで通ってきた道を逆から見ると遠くにさっきナナと分かれたY字の分岐点が見える。さらに視線を右側に向けると斜めにアーケードが続いている。その方向にまた歩き出す。
 今までよりも更に薄暗く、どこか埃っぽい臭いがしている。どこの店も営業をしなくなってから随分経っているようだ。そのまま歩いているとまた左側に向かって斜めにアーケードが続いている。更に進むとまた左斜めに折れ曲がった。その次もまた左斜めに折れ曲がった地点で理解した。このアーケードは不通なんじゃなくて、もともと通り抜けるように出来てはいない。最初のY字地点からほぼ円に近い六角形のアーケードになっているようだ。一昨日は空き缶のような音に驚いて夢中で走ったから、気が付かずに入り口に戻ってきてしまったのだろう。最初のY字地点に戻ってきた。──戻ってきた?

「ナナー?どこだー?おーい、ナナー?」

 他に道なんて無かった。ナナがあのまま左の道を進んでいたのなら間違いなくどこかで鉢合わせたはずだ。それなのに最初に分かれたY字地点に戻ってきてもナナの姿は見えなかった。怖くなって途中で引き返したのかもしれない。後で右側の道を追いかけて来てたのかもしれない。いろんなことを考えながらアーケードを右回り、左回りを数回繰り返してみたものの、ナナの姿は見えない。声すら聞こえない。先に出てるかもしれないと思って『フツウのアーケード』から出てみたものの、そこにナナの姿はなかった。三十分、一時間、二時間。時間だけが過ぎていく。一度『南町商店街』の駅と反対側へ行き、豚丼屋を覗いて見たがナナは見付からなかった。いよいよ暗くなってしまったので、先に帰ったんだろうと思うことにして、家に帰った。
 ──翌日学校に行っても、ナナの姿は無かった。

「ユウキ君、おはよう」

「あ、ミユキちゃん。おはよう」

「どうしたの?」

「いや、ナナが来てないなぁと思って」

「ナナ?あぁ、ナナちゃんか。そう言えば来てないね」

「そういえば、ミユキちゃん風邪大丈夫?」

「うん、昨日一日寝てたからもうすっかり」

「そっか、やっぱり寝てたんだ。昨日お見舞いに行ったんだけど誰もいないみたいでさ、寝てるか病院なんじゃないかなって、ナナと話してたんだ」

「えぇ、それは残念だなぁ。ユウキ君が来てくれたんだったら起きてれば良かったかも」

「いやいや、しっかり寝て治してもらわないと。でも、治ったみたいで安心した」

「うん、ありがとう」

 特にナナが休むといった連絡はないままにその日の学校は始まった。ナナがいないので、ほとんどの時間をミユキちゃんと過ごしていた気がする。昼休みに少し考え事をしたくて、体育館横の昼寝場所へ移動した。

「やっぱり来たね」

「わっ、ミユキちゃんか。驚いた」

「うふふ。ごめんね」

「いや、こっちこそ驚いたりしてごめん。ちょっと考え事してたんだ」

「考え事?」

「うん。俺ね、昨日ナナと一緒にいたんだ。で『フツウのアーケード』にもう一度行ったんだけど、そこでナナとはぐれちゃってさ。そしたら今日あいつ来てないでしょ?もしかして家にも戻ってないのかなぁって」

「それは心配だね。だけど大丈夫なんじゃないかな?」

「え?」

「ナナちゃん、きっと大丈夫だと思うよ」

「そうなのかな…」

「だからあまり悩まないで。そうだ、膝枕してあげようか?」

「……ごめん、今はそういう気分じゃないんだ」

「そう…」

「………」

 しばらく沈黙が続いてしまう。無言のままになってしばらくすると、ミユキちゃんが切り出した。

「もしも、もしもだよ?」

「え?」

「もしも、私とナナちゃんどっちかと付き合わないといけなかったら、ユウキ君…どっちを選ぶ?」
「え、またその質問?」

「真面目に答えてくれないかな…、私、ユウキ君のこと…好きだよ」

「いや、え?なんで…、えっ、あの…」

 何か言おうとしても頭の中がぐらぐらして言葉が出てこない。無言で上目遣いのミユキちゃんと目が合ったまま離せなくなる。なぜかその気迫に押されて後退りをしてしまった。どれぐらいそのままだったのか解らないけれど予鈴が鳴った。逃げるように「じゅ、授業行かないと」とその場から足早に立ち去った。それから、ミユキちゃんと二人きりになるとすぐにその質問をされてしまうので、どこかよそよそしい雰囲気になってしまい、どうにも居心地が悪かった。その次の日も、翌週の月曜日になっても。
 ナナはずっと学校に来なかった。

「知ってる?ナナちゃん行方不明なんだって」

「違うよ、鬱病になって引き篭もってるんだよ」

「えー?私は誘拐されたって聞いたけど?」

「あれだろ、夜逃げだろ」

 いつしか教室ではあの日以来学校に来ていないナナに対する噂で持ちきりになった。野口先生からの説明も特になく、噂はどんどん尾ひれがついていく。始めはその噂にすぐ噛み付いていたものの、ナナ本人が来なくなった理由を知っているわけではないのでどうにもならなくなっていた。毎日ナナの家に行ってみても誰もいないし、毎日ナナの家に電話をかけても誰も出なかった。『フツウのアーケード』に行ってみてもナナはそこにいなかった。ナナだけが突然消えてしまったように感じた。
 その翌日の火曜日、学校に行くとある異変が起きていた。

「ユウキ君、おはよう」

「おはよう」

「どうしたの元気ないね?」

「ん、いやナナを探してたんだけどさ」

「ナナ?ナナって誰のこと?」

「え?なに言ってるの?ナナだよ。最近学校に来てないけどさ」

「その子、うちの学校の子?」

「いやいや、うちのクラスメイトでしょ?」

「やだ、何言ってるのよユウキ君。うちのクラスにナナなんて子いないじゃない」

「……え?」

 教室では昨日まで飛び交っていたナナの噂話がまったく飛び交わなくなっていた。それどころか、クラスメイトに話を聞いても誰もナナを覚えていない。まるで元々いなかったようなことになっている。クラス全体でふざけているのかと思ったら、野口先生までがナナを覚えていなかった。出席簿を確認しても『美崎ナナ』という名前はどこにも書いていない。

「ねぇ、ユウキ君。私、告白の返事…そろそろ聞きたいんだけど」

「おいおーい、朝っぱらから熱いねぇ」

「……ごめん」

 それだけ言ってから走り出した。校庭を突っ切り、フェンス脇を通り抜けて公園を越える、大通りを抜けて集合住宅街、一軒家の住宅街の一角にあるナナの家へ走る、走る、走る。
 毎日来ても誰もいない家、毎日電話しても誰も出ない家、その家の前で呼吸を整える。恐る恐る玄関扉に手を伸ばそうとすると、突然ガチャンと音を立てて扉が中から開いた。

「ナナ!」

 叫びながら、その扉を強く開いた。一週間ぐらい前、ここに送り届けたときに閉まりかけた扉の隙間から見えたナナの顔を思い出した。ゆっくりと玄関が見えてくる。そしてこの扉を開いた人物も。

「ユウキ…、なんでお前がここに?」

「な、なんで?なんでカズミがここにいるんだよ!」




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アーケードの向こう側 - 第十話 -


ハコニワノベル

「お前、学校はどうしたんだ?」

「それどころじゃない」

「何がそれどころじゃないだ、お前は小学生だろ?ちゃんと学校に戻れ」

「いや、なんでお前がナナの家から出てくるんだよ!」

「……そ、それはだな、うーん。大人の事情だ」

「ふざけるな!お前、何してたんだよ!?」

「あぁ、もう、大きい声出すな。………こうなったら、仕方ないよなぁ」

「なんの話だよ」

「ユウキさ、窃盗団の噂話とか知ってるか?」

「窃盗団?なんでこんなときに噂話なんてしなきゃいけないんだよ」

「知ってるのか?知らないのか?」

「南町商店街にある『フツウのアーケード』に出るって噂のだろ」

「よーし知ってるな。でもなぁ、うーん、どういう順番で話せばいいんだろうな…」

「なにもったいぶってんだよ!」

「あのな、驚かずに聞くんだぞ。私はその窃盗団と呼ばれている人達の一人だ」

「……は?」

 突然過ぎて意味が解らない。窃盗団は噂話で、ナナはその窃盗団を捕まえようとしていた。その噂の窃盗団の一人がカズミ?と言うことは窃盗団というのは噂話ではないことになる。

「ちょっと待てよ、意味が解らない」

「そうだよなぁ、いきなり言われて解るわけないよな」

「というか、なんでお前がナナの家の中から出てくるんだよ!」

「だから窃盗団って呼ばれるんだけどな。まぁ、実際は窃盗なんてしてないけど」

「じゃ、何してたんだよ!」

「確認だよ」

「確認?」

「そ、ナナちゃん消えたろ?その確認だ」

「なんでナナが消えたことをお前が知ってるんだよ!」

「発信機だ」

「は、発信機?」

 益々話が見えなくなって混乱してきた。カズミは何を言っているんだろうか。力が抜けて壁にもたれ掛かった。呼吸はまだ乱れている。

「いつも私が部屋の中でやってるのは監視なんだよ。悪いとは思ってるけど、お前にもナナちゃんにも発信機を取り付けさせてもらってた」

「何のために?」

「んー、話が長くなるから、ちょっと入れ」

 そう言ってカズミに促されるまま、ナナの家にあるソファに座らされた。「何か飲むか?」と聞かれたが首を横に振る。カズミはナナの家の冷蔵庫からオレンジジュースを勝手に出してコップに注いで持って来た。コップをテーブルに置きながら対面のソファに座る。

「遊凪市って知ってるか?」

「ここのことだろ」

「じゃぁ、他の市で知ってる場所あるか?都道府県でもいい」

「授業で習ったり、テレビでなら見たことあるけど?」

「実際に行ったことあるか?」

「…ない。というかお前、どこにも連れて行ってくれないじゃないか」

「連れて行ってないんじゃない。連れて行けないんだよ」

「いつも家の中にいる屁理屈じゃないのかよ、それ」

「このことを知っている人間は少ない。私の仮説だけどな、遊凪市から外へ出ることが出来なくなっているんだよ」

「はぁ?なに言ってるんだよ、それはないって。だってナナとかよく長期休みに北海道だの沖縄だの、それから海外にだって行ってるんだぞ?」

「それが書き加えられた記憶だったら?」

「いや、もう、さっきから意味が解らねーよ」

「遊凪市の人口知ってるか?」

「それなら授業で習ったから知ってるよ。三万四千五百八十三人だろ。暗記してたんだ」

「十年前は何人か知ってるか?」

「いや、それは知らない」

「三万四千五百八十三人だ」

「…え?」

「ついでに、二十年前も三万四千五百八十三人。三十年前も三万四千五百八十三人だ」

「いやいや、それ変だろ。事故とか寿命で亡くなった人とかいるし」

「そうだな。それに新しく生まれてきた人もいる。それでも三万四千五百八十三人という人数はずっと変わっていない」

「…そ、それって、なにか関係あるのか?」

「ある日、たまたま人口を調べてたらずっと人口が変わっていないことに気が付いた。それで、手当たり次第にいろんな人に発信機を取り付けたんだよ」

「手当たり次第ってどれぐらいだよ」

「今ならざっと三万人」

「ほぼ全員じゃねーか」

「苦労したんだぞ、発信機の開発から取り付けまで。開発資金は美崎さんに出してもらってたし、取り付けるために美崎さんと集めたスタッフで勝手に家に忍び込んで取り付けたり、そりゃもう大変だったんだ」

「ナナの両親を巻き込んでるのかよ。というか話がとんでもない方向に行き過ぎで、何をどう理解したらいいのか解らん」

「まぁ、私の苦労話はいいや。でな、ある人が海外旅行に行くことになったんだよ。で、旅行に出発してからずっとその人の発信機を監視してたんだ。そしたら、その人が遊凪市から出ると、少し離れた場所でずっと発信機の反応が止まってるんだよ。旅行から帰ってくる日になると、また動き出して遊凪市に戻ってきてる。一人や二人じゃない。全員がそうなんだ」

「でも、旅行には行ってるんだろ?」

「身体は動いてないのに、記憶はあるんだよ。旅行中に起こったことなんかの。もちろんお土産なんかもちゃんと持ってるから、普通に考えれば旅行に行ったことを疑うことなんてできない」

「たまたま発信機が外れたんじゃないの?」

「発信機はな、体内に取り付けてあるんだよ。だから、遊凪市から出た瞬間にそれを取り出して、戻る前にそれを取り付けるなんて無理なんだ」

「人の身体に勝手にそんなの取り付けるなよ」

「ピコマシンっていう、ナノマシンよりも小さいロボットみたいなのを注射器で注入してるだけだ。とある国立病院の副院長が開発してたものを改良して作ったんだ。私のオリジナルなんだぞ」

 自慢げに話をするカズミがコップのオレンジジュースを一口飲んだ。コップの水滴がテーブルの上にポタリと落ちた。




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アーケードの向こう側 - 第十一話 -


ハコニワノベル

「遊凪市から出られないのと同じように、遊凪市の中で誰も入れないエリアがある」

 オレンジジュースの入ったコップをテーブルに置きながら、カズミは話を続けた。

「それが『南凪町アーケード』だ」

「それって『フツウのアーケード』じゃないかよ。あそこなら入ったぞ」

「正確に言うと、あのアーケードは六角形になっていて、その内側が入れないエリアだ。そこを調べるために私達は最近あの付近で調査をしていたんだ。それが次第に窃盗団の噂になってしまったんだよ」

「カズミ達は何者なんだよ…」

「科学者だ。これでも世界に一目置かれるほどなんだぞ。私は」

「いや、その話は何度も聞いたことがあるけどさ…、ってそれ本当の話だったのか?」

「なんだよユウキ、嘘だと思ってたのか?」

「いや、本当だと思えないだろ…」

「とにかくだ、私達はこの遊凪市の秘密を解明するため、夜に活動してるんだよ」

「なんか、ちょっと前に働いてるお前に感動したのがバカらしくなった…。それより、ナナはどこにいるんだよ!」

「この遊凪市で消えると、もともと存在自体がなくなったことになるんだよ。知ってる人達の記憶もその消えた人の部分だけ綺麗に消されてる」

「今日、学校のやつら全員ナナのことを知らなかった。……でも、なんで俺は覚えてるんだ?それにカズミも覚えてるじゃないか」

「それは、その、あれだ…、えーっとだな…」

「ここまで来てもったいぶるなよ」

「いや、なんて言うのかな、言い辛いんだよ」

「何が言い辛いんだよ」

「あ!要するに特別なんだ。特別。ユウキと私は特別なんだよ」

「…カズミ、俺の身体に何かしてるんだろ?」

「し、してないよ!してない。うん。してない、してない」

「話しているときはその人の目を見るって、学校で習ったぞ」

「う…、と、とにかくだな、今はナナちゃんだろ?」

「それはそうだけど…」

「あのな、あまり時間が無いから手短に話すけど、この遊凪市から姿を消した人っていうのは少なくないんだよ。別に事故にあったわけでも、連れ去られたわけでもない。ただ姿を消してしまうんだ。それこそ、今回のナナちゃんみたいに」

「……あのさ、その発信機だっけ?ナナに付けてたやつの反応はどうなるってるの?」

「そこなんだよ。今まで消えた人の発信機は、その人が消えるときに一緒に消えてたんだ。だけどな、ナナちゃんの発信機は反応が残ってる」

「それどこ!?」

「え?……いやぁ、それがさぁ…、『南凪町アーケード』の六角形の中なんだよ。あそこ、誰も入れないようになってるはずのに」

「解った!ありがとう!」

 ソファから飛び降りる。ナナは消えてなんていない。まだあの『フツウのアーケード』の中にいるんだ。

「ユウキ!ちょっと待て!お前は子供だろ、これ以上関わっちゃいけない。おい!聞いてるのか?待て!まだ大事なこと話してないんだぞ」

「悪い!あとでちゃんと聞くから!」

 カズミが制止したのを振り切ってナナの家を飛び出した。とにかく駅に向かって走る、走る、走る。
 駅で切符を買うときに、うっかり二枚買いそうになった。ナナがいつも電車賃を出させるからだ。乱れた呼吸のまま電車に乗った。自分の呼吸音と心臓の音がやたらとうるさく感じる。電車が南町に到着しても心臓の音はうるさいままだった。
 改札を抜けて商店街の入り口まで移動する。相変わらず『南町商店街』とでかでかと書かれているのを見上げた。

「やぁ少年」

「え?」

「また会ったな、少年」

 『花屋ATASHI』の中から声が聞こえる。しばらくすると店の中からストライプのジャケットを羽織ったジュジュさんが出てきた。その姿が完全に見えた瞬間に、思い切り首を捻って視線を逸らした。羽織ったジャケットの下は、首からへその下までが割れているような服で、この前と違って紐すらなかった。まったくもってこの人が何をしたいのか解らない。

「ん?どうした少年」

「いや、その、なんて言うか、格好が…」

「あぁ、このジャケットか?いいだろ。オーダーメイドなんだぞ」

「いや、そこじゃないけど…」

「さ、少年。バラの花束なんてどうだい?」

「何がですか?」

「好きな人でも迎えに行くんだろ?だったらバラの花束だ」

「いや、いらないです」

「じゃぁ、カーネーションだな」

「それ、母の日の売れ残りでしょ?」

「ほんとあたまいいな、少年」

「今日は、ちょっと急いでるので…」

「じゃぁ、これなんてどうだ?」

「な、なんですか?そのでかい鉢植えは」

「ん?極楽鳥花」

「ご、ごくらく?」

「ストレリチアとも言うな」

「いや、まったくもっていらないです」

「花言葉は…万能。私みたいだな。どうだ?欲しくなっただろ」

「いや、いりません」

「じゃぁ、私が欲しくなったか」

「いや、いりません」

「手強いな、少年」

「じゃぁ、俺もう行くんで」

「少年、また来いよ」

「別にジュジュさんに会いに来たわけじゃないです」

「あっはっは。待ってるからな」

 そう言って笑いながらジュジュさんは店の中に入っていった。その背中はジャケットが羽織られているので見えないもののスカートからは、足の付け根から見えるほどのスリットが入っていて、さっきとは逆方向に首を捻って視線を逸らした。




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第十二話へ≫

アーケードの向こう側 - 第十二話 -


ハコニワノベル

 時刻は正午前。商店街の人通りは今まで見た中で一番多い。『南凪町アーケード』へ向かって進んでいく。外に出られない市にある、中に入れない場所。ナナがいなくなってから、『南凪町アーケード』を図書室の本や、設置されてるパソコンのインターネットで調べてみたものの、どこにもそのアーケードの情報なかった。アーケードの中にあった『南凪神社』でさえ、どこにも情報がない。人気もない、薄気味悪いアーケードそのものが、なんだか異質に感じた。しばらく歩くと『南凪町アーケード』と書かれた看板の前に辿り着いた。
 覗き込んで見ると、いつもと変わらず人の気配は無かった。大きく息を吸い込んでからアーケードを進んでいく。Y字の分岐点から左の道へ進む。何も変わりはないままY字地点に戻ってきた。今度は右側の道から進んでいく。しばらく進むと『南凪神社』の鳥居が見えた。神社の中に入ると、この前と何も変わらないまま小さな神殿と賽銭箱だけがぽつんと置いてあった。
 財布から十円玉と取り出して賽銭箱に入れた。両手を合わせてただナナの無事を祈った。

「やっぱり来ちゃったか」

 突然後ろから声が聞こえて振り返る。鳥居の後ろに人影があった。なぜか初めてこのアーケードに入った日に見た人影のように見えた。恐る恐る、その人影に近付く。

「誰だよ、お前」

「さぁ、誰でしょう?」

「ナナをどこにやった」

「知らなーい」

「この六角形の中にナナがいるのは解ってるんだぞ!」

「……だから、なに?」

「お前がナナをそこに連れて行ったんだろ」

「それは、どうかしら」

「ナナを返せ!」

「………ナナ、ナナ、ナナ」

「?」

「さっきからナナばっかり。バカみたい」

 そこまで言うと人影は鳥居の後ろから出てきた。その人影が薄暗いアーケードの僅かな光で照らされる。

「なんで…、なんで、ミユキちゃんが…ここにいるんだよ」

「さぁ、なんでかしらね」

「ミユキちゃんが、ナナを連れて行ったの?」

「……そうよ。それがどうかした?」

「なんで!友達じゃないか!」

「友達?…あはは。私、ナナと友達だったなんて一度も思ったことないよ?」

「じゃぁ、なんでいつも一緒にいたんだよ!」

「…ほんと、男の子は鈍いなぁ。私が一緒にいたいのは、ユウキ君だけ」

「またその話になるのかよ…」

「でも、私がアナタと一緒にいたいっていう気持ちは、誰にも負けてないよ?もちろん、ナナにだって負けてない」

「なんでそこまで………」

「それはね、アナタが私の白馬の王子さまだからよ」

 ミユキちゃんは微笑みながらゆっくりと、でも確実に近付いて来た。優しい微笑のはずなのに、その顔を見ていると背中に冷や汗がどんどん出てくる。なぜかそこから動くことさえ出来なくなってしまった。一歩、また一歩とミユキちゃんが近付いてくる。そしてそのまま抱きしめられた。ミユキちゃんはそのまま続ける。

「覚えてる?私とアナタが最初にクラスが同じになったときのこと」

「さ、三年生のとき、でしょ?」

「そう。私ね、二年生までいじめられてたの。知らないでしょ?」

「うん…、初耳」

「もちろん、三年生のときのクラスに、前のクラスの子もいたわ。だから私、またいじめられるんだろうって思ってた。そしたらね、アナタが現れた」

 ミユキちゃんの髪の毛からシャンプーの香りがする。優しい香りとは裏腹に、話を続けるミユキちゃんの腕はがっしりと、俺を掴んで離してくれそうになかった。自分の心臓の音がどんどん早くなっていく気がした。

「前のクラスで私をいじめていた子が、私のふでばこをワザと落としたときに、アナタは散らばったえんぴつを拾い集めてくれた。『ごめんなさい』と言った私に『こういうときはありがとうでしょ?』って笑ってくれた。私を受け入れてくれたの。あのときから、私はずっとアナタのことが好きだった」

「いや、それは当然のことをしてるだけで…」

「なのに、私がこんなにアナタのことを大切に思っているのに、あなたは私の近くにいてくれるのに、絶対に私に振り向いてくれなかった。アナタの隣にはいつもナナがいたから」

「ち、ちょっと待って、もしかしてそれだけでナナを連れて行ったのか?」

「ほら、今もそう。こんなに私が近くにいるのに、アナタの心の中にはナナ、ナナ、ナナ!私のことなんて、これっぽっちも考えていない」

「いや、それはさ、なんと言うか、ちょっと違うと思う」

「だから私、ずっとナナを消してやろうと思ってたの」

「……消す?」

「それなのに、いつもアナタがナナの側にいるから、消せなかった。ナナがこのアーケードに来ると言ったとき、チャンスだと思ったわ。人気のいない場所じゃないと消すのも大変だからね」

「消すってなんなんだよ…」

「ナナはアナタと一緒にやって来た。だから私は一旦隠れたの。それなのに、ナナはアナタと腕を組んで歩いて来たじゃない。悔しかった。私のアナタを独り占めしようとした。だから脅かして二人を別々にしようと思ったの、空き缶の音でね。まぁ、それも失敗しちゃったんだけどね」

 抱きしめている腕の力が強くなった気がした。密着しているはずのミユキちゃんの身体はまるでそこにいないように暖かさが感じられなかった。




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第十三話へ≫

アーケードの向こう側 - 第十三話 -


ハコニワノベル

「一回目は失敗に終わったわ。だけどその次の日、嬉しいこともあったの。アナタと二人っきりの昼休み。あぁ、ついに私の所へ来てくれたんだ。って思った」

「………」

「それなのに、またナナがアナタを放課後に連れて行こうとした。アナタが困ってるってこと、ナナは全然解ってなかったでしょ?だから、私の家に来ることにしてあげたの。まぁ、それも途中でアナタが逃げてしまって残念だったけど。だけど、ナナと二人きりになれたわ」

「……でも、次の日ナナはいたじゃないか」

「私と二人きりになってるときにナナが消えたら、アナタは私を疑うでしょ?そんなの嫌よ。だからあの日、私は嘘の噂話をナナにしてあげたの」

「嘘の噂話?」

「そう『フツウのアーケード』で左右別々の道を進んで、また出会えた男女は結ばれるってね」

 ミユキちゃんはそこまで言うと抱きしめるのを辞めて、可笑しそうに笑った。その笑顔がどうしても冷たいものに見える。人気のないアーケードにミユキちゃんの笑い声だけが響く。

「全然興味なさそうに聞いてたのに、その次の日にアナタを連れてやって来たのよ、あの子。私は学校を休んでたし、何よりアナタが証人になるんだから、こんなチャンス無いと思ったわ。案の定、あの子はアナタと別々の道に進んだの、バカな女よね。遠慮なくその時に消してあげたわ」

「……消すってなんだよっ!こ、殺した…のか?」

「あはは!殺す?何言ってるの?………もしかして、知らないの?」

「なにをだよ!」

「私の力のこと」

「知らねーよ!いいから、とにかくナナを返せ!」

「知らないからって、私にそんなこと言っていいのかしらね?」

 ミユキちゃんはもったいぶるようにこちらを伺いながら、ゆっくりと鳥居を出て行く。「どういう意味だよ」と叫びながら、ミユキちゃんを追いかける。薄暗いアーケードを楽しそうに笑いながら歩くミユキちゃんを走って追いかける。走っているのに全然追いつかない。ぐるりと回ってY字地点で、ミユキちゃんを見失った。

「私はね、ユウキ君。この世界の女王さまなの」

「はぁ?女王さま?」

「そうよ。だからなんでも私の思い通りになるの」

「なに訳のわからないことを言ってるんだよ!」

「私が要らないと決めたものは、この世界から消えてなくなるの」

 いきなり目の前にあったY字部分の商店が消えた。音もなく、跡形も無い。元々そこには何も無かったかのように消えた。商店街から差し込んでいた光が消えたので振り向くと、『フツウのアーケード』の入り口が消えた。

「なんだよ、これ」

「うふふ。モノだけじゃないわ。人だって簡単に消せるの。記憶や想いだって消せちゃう。ナナは、『まだ』私の隣にいるわ」

「どういう意味だよ」

「あら?まだ解らない?『まだ』存在してるってこと。だけどね、私がちょっと力を使えば、『すぐ』に存在が消えてなくなるの。もうこの世界に存在しなくなるってこと」

「なっ、やめろ!」

「いいわよ。でもね、ナナを元に戻す代わりに条件があるわ」

「なんだよ、その条件って」

「簡単なことよ?アナタが私のモノになるってだけ」

「二度とナナ…、ううん、ナナだけじゃなくて他の女のことなんて考えない。いつも私のことだけを考えてくれるだけでいいの」

「………」

 それまで、どこにいるのか解らなかったミユキちゃんが、いきなり真後ろから抱きしめてきた。

「そうしてくれるなら、ナナを元に戻してあげる」

「……なんだよ、それ」

「あら?不服?悪い話じゃないでしょ?それに私がいればこの世界をアナタの思うがままに変えられるじゃない。嫌なやつがいたなら消してあげる。嫌なことがあったならその記憶を消してあげる。アナタが私のモノになるだけで、アナタはこの世界を自由自在に操れるのよ?」

「………」

「それに、ナナが消えたら悲しいんでしょ?」

「…何者なんだよ、お前」

 ミユキちゃんの腕を振り解いて突き飛ばす。ミユキちゃんはただ微笑んでいるだけだった。とにかく逃げようと走り出したものの、入り口を失った『フツウのアーケード』の中ではぐるぐると回る以外に道が無い。それに走っているのに、ミユキちゃんは常に走った先で微笑んでいた。走る方向を変えても、どんなに急いで走っても。神社に駆け込んで、神殿の裏側に隠れようとした。しかし、そこにはすでにミユキちゃんがいた。驚いて立ちすくんでしまった。心臓の音だけがうるさかった。

「そろそろ、諦めが付いたかしら?」

「はぁはぁ………、お前、本当に…何者なんだよ」

「だから言ったでしょ?私はこの世界の女王さま。誰も私に逆らえないの」

「そんなの、知らねーよ。……なんで、そんな力があるんだよ」

「んふふ。私に興味が出てきたのかしら?」

 少し嬉しそうに笑ってから、ミユキちゃんは池の水の上を歩き出した。波紋が広がって収まる。池の中心部分で振り返ると、にっこりと微笑んでからこう言った。

「私の本当の名前は『μ-key(ミューキー)』世界を閉じる鍵」




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アーケードの向こう側 - 第十四話 -


ハコニワノベル

「この世界、遊凪市はメルトタウンと呼ばれる一つのシステムなの」

 ミユキがしゃべる度に、池には波紋が広がって収まる。その姿は客観的に見れば、池の女神さまがそこにいるように見えたが、自分の目にはどうにもドス黒い何か、出会ってはいけないもののようにしか映らなかった。

「人口、三万四千五百八十三人。それがこの世界の人の数。その数はずっと変わらない。誰かが死ねば、新しく別の人を入れる。誰かが生まれたら、別の誰かを消す。そうやって人の数を常に三万四千五百八十三人にしてるの」

「……なんでそんなことしてるんだよ」

「アナタは『生まれ変わり』って知ってる?前世、現世、来世なんて言われたりするわ。Reincarnation、つまり輪廻」

「……」

「この世界はね、強制的に生まれ変わりを発生させて、輪廻を自在にコントロールするための実験システムなの。輪廻を自在にコントロールすることが出来たなら、人はだれも苦しむことなく生き続けられるわ。死ぬという概念がなくなるのだから。ここは、この世とあの世が溶け込んだ町、メルトタウン・システム」

 波紋が広がって収まる。頭の中でカズミの話を思い出していた。



「遊凪市から外へ出ることが出来なくなっているんだよ」



「二十年前も三万四千五百八十三人。三十年前も三万四千五百八十三人だ」



「遊凪市から出られないのと同じように、遊凪市の中で誰も入れないエリアがある」



 そして、今ミユキが言った意味不明な話。



「私の本当の名前は『μ-key(ミューキー)』世界を閉じる鍵」



「輪廻」



「この世とあの世が溶け込んだ町、メルトタウン・システム」



 どうやらカズミが言っていたことは本当の話みたいだ。そして、今目の前で池の上に立っているのは、この何かおかしな世界を牛耳る女王さま。その女王さまにナナを人質に取られている。そんな話を誰かにしたとして、信じてもらえるだろうか?頭の中が混乱してくる。

「私は、このメルトタウンを外の世界から閉じるための鍵。この世界を不安定にしないように、不要なものは排除することが出来る。だから、この世界のモノはすべて私の意志で存在しているに過ぎないのよ」

 酷くニタリと笑ったその顔は、すでに幼い少女の顔ではなくなっていた。餌を前にした、だらしの無い犬のように顔を歪めながら笑っている。

「所詮私は、このメルトタウンを世界から閉じるためだけの存在。でもね、私にだって出来ることがあるの。私、最初はこの世界を作った人達を恨んでいたわ。だけど今は感謝してるぐらい。だって、こんなに素晴らしい力を私にくれたんですもの」

 急に池の水がなくなった。池の底で赤い鯉がパクパクと口を開いている。ミユキは水面があった高さに浮かんだままだった。

「…気持ち、悪い」

「何が?私が?あははははははは!私とアナタで、何が違うと言うの?」

「全然違うだろ!俺はお前みたいな化け物じゃねーよ!」

「化け物?うふふふふふふふ。そうね、私達は化け物だわ」

「おい、俺を一緒にするなよ」

「あら、一緒よ」

「一緒じゃない」

「一緒なのに」

「いや、一緒じゃないだろ」

「アナタ、本当に何も知らないのね」

「何がだよ!?そんなことより、さっさとナナを返せ!」

「私と、アナタは同じよ」

「どう考えても同じじゃないだろ!」

「ううん。同じだわ。だって私達は作られたヒトなんだもの」

「お前と俺を一緒にするなよ、俺は普通の人間だ!」

 ミユキは笑いながら池のあった場所からこちらに向かって一直線に歩いてきた。

「近付くな!化け物!早くナナを返せ!」

 急にミユキの顔から笑顔が消えた。その場に立ち止まって俯いている。

「……なんで?なんでまだナナなの?」

「いいから、ナナを返せ!」

「どうして?どうして私じゃないの?」

「今はナナが心配なんだよ!」

「なんで!?なんで私のことを考えてくれないの!?」

「そんな押し付けられたことなんか、考えられるかよ!」

「私達は一緒じゃない。同じ作られたヒト同士じゃない」

「だから、俺は普通の人間だ!お前と一緒にするな!」

 ミユキは急に顔を上げると、キッとこちらを睨みつけてきた。かと思うと一瞬で目の前に移動して、その細い腕からは想像付かない力で首を絞められていた。

「私達は、一緒よ。アナタも私も同じ作られたヒト!」

「ぐっ、や、め…」

「アナタの本当の名前は『U-key(ユーキー)』世界を繋ぐ鍵」




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第十五話へ≫

アーケードの向こう側 - 第十五話 -


ハコニワノベル

(今、この女はなんと言った?俺も作られたヒト?『U-key』世界を繋ぐ鍵?)

 急に首を絞めていた腕を離されて、その場に倒れこんだ。上手く呼吸が出来ない。それを見下すように見つめながら、目の前の女は続けた。

「私とアナタは一緒なの。この世界を制御するために作られたヒト。『μ-key』と『U-key』なのよ。だから、私とアナタは同じなの。雨宮博士に作られたヒトなのよ」

「…あ、雨宮…博士?」

「そうよ。このメルトタウン・システムを作り上げ人」

「そ、それって…もしかして……カズ…」

「なるほどな。そういうことだったのか」

 いきなり別の声が聞こえた。その声の方を見ると変なゴーグルを装着したカズミがそこにいた。

「あらあら、ユウキ君の保護者代わりの方じゃないですか。まったく、入り口は消してたのに…どうやって入られたのかしら?それに、最近コソコソと嗅ぎまわってくれましたよね。ほんと、はた迷惑な方ですね」

「それはどうも。おい、ユウキ。お前大丈夫か?」

「そ、それなりに……」

「そうか。なら行くぞ」

「嫌だ!ここにナナが捕まってるんだろ!」

「だから、ナナちゃんを助けに行くぞって言ってるんだよ」

「あらあら、私が何もせずに行かすとでも思ってるのかしら?それに、あなたには今すぐ消えてもらいますけどね!」

 ミユキが右手をカズミに向けた。まるで、空気に波紋が広がるようにその波はカズミへと向かっていく。

「に、逃げろ!カズミ!!」

「私に逆らったら、こうなるのよ!あはは!あはははははははっ!」

 波がカズミを捕らえて収まっていく。そしてカズミの周囲が強く輝いた。

「カ、カズミー!」

「あははは!ユウキ君を助けに来たのに、簡単に消されちゃって、何しに来たのあの人?…あはっ、あははははは!」

「やれやれ。シゲミチのコーディングは荒すぎるんだよな」

 輝きの中からカズミの声が聞こえる。そしてその輝きからカズミがゆっくりと出てきた。

「なんでよ!?なんで消えないのよ!?」

「あ、これか?今、あんたが使った消去プログラムのメソッドの一部を書き換えただけだよ」

「そ、そんなこと、出来るわけがない!だって、メルトタウンの中からメルトタウンを制御するなんて不可能だもの!」

「一応、設計上はそうなってるみたいだな」

「あなた、何者なのよ!」

「この世界、メルトタウンを作った雨宮シゲミチの娘だよ」

「お、お父様の娘?」

 そこまで聞くと、ミユキはしりもちをつくように、その場にペタンと座り込んだ。

「実の娘だぞ。『雨宮博士』ってあんたが言ってくれて、やっと自分の記憶を遮断してる最期のロック解除に成功したよ。やっと全部思い出せたな。自分のことも、ユウキのことも」

「…俺のこと?」

「まぁ、さっきミユキちゃん…だっけ?が言ってたことは半分は本当の話だな。ミユキちゃんはシゲミチに作られたヒトだ。でも、ユウキ、あんたは私が作ったんだよ」

「俺がお前に?」

「そうだ。シゲミチのくだらない実験を止めようと思ってな、メルトタウン・システムにハッキングしたんだよ。まぁ、セキュリティを抜けるときにちょっと失敗して、この世界に閉じ込められちゃったけど」

「ちょっと待てよ、じゃぁ、俺は化け物なのか?」

「はぁ?そんなわけないだろ。あのな、この世界は作られた別の世界。別の空間なんだよ。だからここに存在しているモノ全ては、ただのデータに過ぎない。ゲームの中と思えば解りやすいか?」

「ゲームの中?」

「そう。だから、ゲームの中でしか使えない力なんだよ、ミユキちゃんの消す力もそうだな」

「ちょっと待ちなさいよ!じゃぁ、ナナを消せないのもあなたが…」

「あぁ、そうそう。美崎さんに言われててさ、ナナちゃんはいろんなことにすぐ首を突っ込むから、消されたりしないようにしてやってくれって。だから、消去プログラムを実行できないようにしたんだよ」

「くそっ!…あの女をとっとと消せたら、もっと簡単に『U-key』を手に入れて、この世界も外の世界も私の思い通りになったのに……」

「最初はまったくシステムのことなんて知らない状態から始まったからな。ここまで思い出しながら、あんたに消されないようにコツコツとやってくるのは大変だったんだぞ」

「お前さ、本当に何者なんだよ…」

「だから言ってるだろ、世界にも一目置かれている偉大な科学者……の娘だって」

「ちょっと待て、最期のは今初めて聞いた」

「まぁ、いいさ。ほら、さっさとナナちゃん助けに行くぞ。そしたら、このシステムも終了させるんだ。シゲミチのくだらない実験を終わらせよう」

「………待ちなさいよ」

 力なく座り込んでいたミユキが立ち上がる。

「許さない。絶対に許さない。私の世界をめちゃくちゃにするなんて、絶対に許さない!」

 ミユキの右腕が気色悪くうごめくと、どんどん大きくなっていく。右腕だけでミユキの背丈よりも大きくなっている。

「まずい!ユウキ!逃げるぞ!」

 腕を捕まれて走り出した。ミユキは既に意識を失っているのか、人間らしい言葉はなく雄たけびをあげながら追いかけてくる。その腕でなぎ払われた商店が玩具のように吹き飛ばされていく。

「なんで逃げるんだ?さっきのプログラムがどうとかすれば、なんとかなるんじゃないのか?」

「あのな、データに対する攻撃はいくらでも無効化できるんだ。だけど直接攻撃されたらそれは防ぎようがない。この世界での怪我や死は、そのまま現実での怪我と死に値する!」

「なんちゅー世界だよ!」

「な?だからくだらない実験だって言ったんだ」

 アーケードの入り口があった方へ走ってみるものの、そこにあったはずの入り口はミユキに消されてしまっている。

「ど、どうするんだよ!」

「データとして消されてるだけだ。データになら強いぞ、私は」

 カズミがゴーグルに右手を添える。
 ほんの数十センチ視線の先に、パソコンのディスプレイのようなものが浮かび上がる。そこにカズミが直接手を触れると文字列が浮かび上がる。



   ◇



melt.getOpen().setKey("U-key");
submit;



   ◇



 カズミが最期に弾くようにディスプレイに触れると、目の前が一瞬歪み、消えていたはずの入り口が再び目の前に現れた。




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第十六話へ≫

アーケードの向こう側 - 第十六話 -


ハコニワノベル

 南町商店街に出て、とにかく走る。後ろからは既に見た目も化け物になったミユキが追いかけてこようとしているのが見えた。商店街に人通りはなく、とにかく駅の方向へ走った。

「いいか、ユウキ。お前の力は『繋ぐ』ことだ。お前が本気で思えばなんでも『繋ぐ』ことが出来るんだ。だから、あのミユキちゃんって子を、頑張って倒せ」

「無茶言うな!あんなのと戦えるわけないだろ!」

「だったら、とにかく逃げよう」

「どこまで逃げるんだよ!逃げたら助かるのか?」

「商店街さえ抜ければ大丈夫だ」

「どんな理屈だよ!」

 走りながら口喧嘩になった。それでもとにかく逃げないと命がない。チラッと後ろを見ると更に右腕だけが巨大化したミユキが追いかけてきている。このままのスピードで逃げたとしても、すぐに追いつかれてしまうだろう。明らかに向こうの方が早い。後ろを見るのを辞めてカズミと二人でとにかく走る、走る、走る。
 ──もうすぐ商店街を抜ける。

「よぉ、少年」

 商店街の入り口にある『花屋ATASHI』の中から、全身ピッチピチの赤い皮のような服に身を包んだジュジュさんが出てきた。服を着ているものの、まるで裸のようにも見えた。でも今は目を逸らしてる暇はない。

「そんなに慌ててどうした?」

「いや、あの…危ないので、逃げてください!」

「危ない?」

 そう言いながらジュジュさんは商店街の方を伺い見る。「ふーん」と一言吐き出してから、またこちらを見る。その顔に緊張はまったく感じられない。

「で、何が欲しい?」

「いや、だから危ないから逃げてくださいよ!」

「そんなこと言うな、少年。私が欲しくなったんだろ?」

「だから、そうじゃなくて…」

 後ろを振り向くと、ミユキがかなり近くまで迫ってきていた。その形相はアニメや漫画で見る化け物となんら変わりがない。身体はミユキのまま、右腕だけが二メートル、いや三メートルぐらいだろうか?とにかく人間の姿をしていない。

「ジュジュさん。遊んでないでお願いしますよ」

「解ってるよ。カズミはもっと遊び心を持った方がいいぞ」

 カズミといきなり会話したかと思うと、ジュジュさんはミユキの前に進んでいく。

「あ、危ないって!」

「大丈夫だ、少年。その代わり、私に惚れるなよ?」

 そうやってにこやかに笑うとジュジュさんはミユキに向かって走り出した。ヒールの足音が商店街に響く。

「どぉーけぇぇぇーーーっ!」

 数十メートル先でミユキが右腕をなぎ払ったのに、その風圧を感じた。ジュジュさんはその腕をヒラリと飛び越える。続けてミユキの腕がジュジュさんめがけて突き出される。それをまるでダンスを踊るように回転しつつスルリと避けながら、ジュジュさんの蹴りがミユキに突き刺さる。ミユキはそのまま少しだけ吹き飛んだ。

「あれ?本気で入れたんだけどなぁ」

 ジュジュさんはどこか不満げに呟いて頭をかいた。

「カズミ…、あの人は何者?」

「ん?ジュジュさんか?あの人は私達の仲間だよ。一応科学者だ」

「まったくもって科学者には見えないな」

「まぁ、筋力を飛躍的に上昇させるスーツの研究をしてるんだけどな」

(今までであの人が着てたのは、ほとんど服になってなかったけどな…)

「さて、ジュジュさんに時間を稼いでもらってる間に、お前はナナちゃんを助けに行って来い」

「ちょ、ちょっと待て。今逃げてきた道を、あの戦ってる横を通り抜けて戻るのか?」

「ウダウダ言うな。それにあまり時間がない」

「なんで時間がないんだよ?」

「ジュジュさんは強い。だけどな、あのミユキって子はもうすぐ第二段階に入る。そうなったらジュジュさんじゃ抑えられなくなる」

「…それなら、あの化け物をなんとかしてからナナを助けに行けばいいんじゃないか?」

「………それもダメだ」

「なんでだよ?」

「………進入不可能なエリアにずっといると、システム側がそのエリア内にいる者を強制的に排除するようになってる。多分、ナナちゃんに残された時間も少ない」

「つくづくとんでもない世界だな」

「私もそう思う。だからこそ終わりにしなきゃいけない。沢山の人の命を使った実験なんて馬鹿げてる。……すまんなユウキ。お前にとんでもないもの背負わせてしまって」

「いやいやいや、俺さ、まったく実感ないんだよね。俺って何なの?」

「お前の力は『繋ぐ』ことだ。お前が本気で思えばなんでも『繋ぐ』ことが出来る力だ。そして、お前の力がこのメルトタウン・システムと外の世界を繋ぐ唯一の鍵なんだ。だから、お前が勝手に行動することを怒っていたし、自由をかなり束縛していたんだ。すまない。私の目的のために、お前にはずっと辛い思いを…」

「なんだよそれ」

「…」

「結局俺はお前の道具なのかよ。ふざけるなよ、なんでこんな世界で生かされるんだよ俺は、俺達は!お前の親父だかなんだか知らないけどさ、イカレてるだろ!」

「……」

「しかもなんで俺なんだよ!お前がやれよ!お前自身が特別な力を付けてこのシステムとかを終わらせろよ!なんで俺なんだよ!?」

「………すまん」

「なにがすまんだ!せめて嘘でもいいから否定しろよ!俺は道具なのかよ!!」

 突然、目の前にジュジュさんが吹っ飛ばされてきた。

「あのな、少年。細かいことを気にするな。男ならどんと構えろ」

「……いや、気にするでしょ」

 よく見ると、ジュジュさんの服はあちこちがボロボロに千切れていて、身体中に怪我をしているのが解った。そのまま視線をジュジュさんからミユキの方へと持ち上げると、右腕だけでなく、左腕も化け物のように変わりつつあるミユキが見えた。どうやらその変異のせいで今は動けないようになっているみたいだ。

「少年。バラの花束でも買っていくか?」

「……なにを言って…」

「好きな人を迎えに行くんだろ?だったらバラの花束だ」

「いや、だから、その…」

「あのな、少年。子供のあんたが世界がどうとか考えなくていいんだよ。少年には少年のやりたいこと、達成したいことがあるだろ?そのことだけ考えて、そのことだけに全力を出せばいいんだよ」

 そこまで言うとジュジュさんは立ち上がった。こちらに背中を向けたまま話を続ける。

「カズミはな、本当は自分に『U-key』の力を持たせようとしたんだよ。だけど鍵の力は子供にしか持たせられないんだ。大人だと自分の都合でその力を使ってしまうからな。だからカズミは少年に『U-key』の力を持たせてこの世界に送り込んだんだよ。だけどな、普通ならそれをシステムの外から見守るだろ?このシステムに入ってしまうと自分の命も危険にさらされるわけだし。でもカズミはそのまま自分もこの世界に入ったんだぞ。何のためか解るか?」

「自分の目的を達成するためだろ…」

「心配だからだよ」

「は?」

「少年のことが心配だったからだよ」

「なんで?赤の他人の子供にその変な力を取り付けたんだろ?何が心配なんだよ?」

「少年。君は正真正銘カズミの息子だよ」

「はぁ?」

「親が子を心配して何が悪い。下手をすれば命すら失うかもしれないのに。それこそ赤の他人の命を危険に晒せるわけないだろう?だから自分の息子にその力を託したんだ」

「…じゃ、なんで赤の他人だなんて言ってたんだよ」

「この実験を終わらせる計画のためだ。この実験を終わらせるために、もしかしたら誰かの犠牲が必要になるかもしれない。その犠牲がカズミ本人になったとき、君が躊躇しなくてもいいようにするためだ」

「……意味、解らねーよ」

「……ジュジュさん、しゃべり過ぎ」

「あ?悪い悪い。私はそもそも、そういうやり方が気に入らないだけさ」

 ジュジュさんはその場で二度飛び跳ねてから首だけこちらに向ける。

「少年、とにかく自分がやりたいこと、達成したいことをやれよ!他のことを気にするな!」

 と言ったかと思うと、既に両足も変形しつつあるミユキへと向かっていった。自分がしたいこと?やるべきこと?そんなの意味が解らない。カズミが実の母親?考えることがあり過ぎて、何も解らない。ただ、その渦巻く思考の奥底にナナの姿があった。

「……助けてやらないと、明日は命がないな」

 自分でも馬鹿げてるなと感じて笑えてきた。カズミはずっと俯いている。ジュジュさんは目の前で化け物と戦っている。誰もが誰も、自分の中で戦っている気がした。

「行ってきます。………お母さん」

 カズミが顔を上げたのが解ったけれど、なんだか恥ずかしくなるばかりなので走り出した。それと同時にジュジュさんがミユキを商店街の脇へと吹き飛ばしてくれる。何も考えずにとにかく走る。さっきまで逃げてきた道を戻っていく。背中から「ユウキ、家にはちゃんと帰って来いよ!」とカズミの声が聞こえた。

「解ってる!」

 背中を向けたまま大声で叫んだ。




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アーケードの向こう側 - 第十七話 -


ハコニワノベル

 走る、走る、走る。自分の思うままに。いつだって自由はそこにあった。だから走る、走る、走る。視線の先にミユキが吹き飛ばしたであろう『南凪町アーケード』と書かれた看板が転がっているのが見える。カズミが元に戻した入り口はそのまま残っていた。一度覗き込んでから中へ入る。

「ナナー?おーい、ナナ?元気かー?」

 返事はない。Y字の分岐点にあった商店はミユキに消されたままになっていた。元々商店があった場所へ進んでみても、六角形の中に入れそうな場所は見付からなかった。

「もしかして、店の上に登らないといけないのか?」

「ユウキ、聞こえるかー?」

 いきなりカズミの声が聞こえて慌てた。しかし周りを確認しても誰もいない。

「なんだ空耳か」

「空耳じゃないぞ」

「わー!」

「そんなに驚くな。お前の体内にあるピコマシンで通信をしてるだけだ」

「いや、驚くだろ」

「お前の『繋ぐ』力はな、とにかく強く思うことが大切なんだ。遮断しているものに手を向けて、その先にある繋がりたいモノを強く思うんだ。それが出来れば力は使える。例えそれが入れなくなってるエリアでもだ」

 右手をアーケードの六角形へ向けて目を閉じる。その中にいるだろうナナのことを考えた。しかし何も起こらない。もう一度強く思ってみても何も起こらなかった。

「おい、何も起きないじゃないか」

「そりゃ、あれだな。思いが足りないんだよ。もっと強く!なんだったらその思いを叫ぶんだ!」

「………」

 もう一度、右手を六角形へ向けて目を閉じる。一度大きく息を吸い込んでから叫んだ。

「ナナ!俺だ!ユウキだ!迎えに、来たぞーっ!」

 一瞬、身体が浮いたような感覚がしたと思ったら、すぐに重力を感じてその場に倒れた。目を開けると真っ暗でどこにも明かりがない場所だった。

「ここが、六角形の中?」

「…そう……みたい…だぞ……」

「カズミ、なんか途切れ途切れにしか聞こえない」

「こっ…ちも……途切れ……れに聞こ…え……」

「何か明かりに出来るものを持ってたら良かったな」

「…………で…」

「おい、カズミ?カズミ??」

 それ以上カズミの声は聞こえなくなった。

「さっさとナナを連れて帰った方が良さそうだな」

 とりあえず手探りで六角形の壁に辿り着いた。そこから左手を付けて歩き出す。何も見えない。何も聞こえない。自分がどっちに向かっているのかすら解らない。壁に付けた左手だけが、自分の位置を把握する手段だった。壁が折れ曲がっている部分を六回通り過ぎた。ナナは見つけられなかった。きっと六角形の中心付近にいるんだろう。七回目の折れ曲がっている部分で立ち止まる。これで丁度一週。大きく息を吸い込んでから、左手を離して中心の方へ歩き出した。
 少し暗闇に目が慣れてきたのか、前に伸ばした自分の腕ぐらいなら見えるようになった。それでも何も見えないことには変わらない。それでも歩いていく。このまま真っ直ぐに歩いていけば、例えナナを見つけられなくても壁にはいつか辿り着く。途中で迷っていろんな方向へ進むと壁にすら辿り着けなくなってしまう。今どれぐらい自分が進んできてるのか解らない。戻りたくなる衝動を抑えながら歩く、歩く、歩く。しばらく進むと壁に辿り着いた。もう一度別の方向へ歩く、歩く、歩く。壁。もう一度、もう一度と何度も暗闇の中を歩いた。
 何度目か、もうナナに会えないんじゃないかと思い始めたときだった。足元に薄く緑色の光が浮かんでいるのを発見した。暗闇の中でどうして今まで見つけられなかったのだろうと不思議なほど、その光は柔らかく輝いていた。その場所に立ち止まると、ほんの少し先に見覚えのある後姿があった。

「ナナ!」

 駆け寄ると、ナナらしき後姿は別の場所に移動した。移動した場所はまたほんの少し先。また追いかける。近付くとまた別の場所へ、まるで磁石の同極同士を近付けているみたいに、駆け寄っては離れていくを繰り返した。右手をナナへ向けて目を閉じた。

「ナナ!もう大丈夫だ!一緒に帰ろう!」

 叫んでから目を開いた。一瞬の浮遊感のすぐあとにナナの目の前に移動している自分がいた。すかさず手を繋ぐ。ナナはそれ以上離れていくことは無かった。ただ、意識はなく寝ているようなナナは涙を流していた。
 暗闇の中にあった緑色の光が点々とそこら中に現れていく。手を繋いだナナもその光のように輝き出した。これが強制的に排除されるということなのだろうか?ナナを抱きしめて右手を前に向ける。

「絶対に連れて帰るからなっ!」

 一瞬の浮遊感。目に飛び込んでくる薄暗いアーケード。それから着地。六角形の外に戻ってきた。腕の中を見ると益々涙を流しているナナがそこにいた。そしてナナはまだ光り続けている。

「おい、カズミ!聞こえるか?」

「…ユウキ、無事か?」

「俺は大丈夫、でもナナが緑色に光ってるんだよ」

「……始まってしまったか…もう間に合わないかもしれない」

「ちょっと待てよ、何が間に合わなかったんだ?強制排除はまだされてないだろ?だってナナはここにいるじゃないか!」

「…いや、ナナちゃんは、もうそこにはいない」

「いや、いるよ!ここにいる!」

「……ちゃんと受け入れろ。もう、そこにナナちゃんはいない」

 腕の中をもう一度見る。ナナの身体は緑色に輝きながら透けていた。

「いる!ここにいる!」

 叫んでみたものの、腕の中のナナはどんどん薄く透けていき、重さを感じなくなっていく。

「嘘だ、こんなの嘘だ!」

 ──そして腕の中からナナは消えてしまった。

「ナナァァァァァァァーーーーーッ!!!」




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アーケードの向こう側 - 第十八話 -


ハコニワノベル

   ◆



「何泣いてるのよ、ユウキ」

「別に泣いてない」

「ほら、行くよ!」

「どこに行くの?」

「ぞうさん組の部屋」

「ダメだって、今はみんなで工作してるんだから」

「だから行くんじゃない。私達だけこっそり行くの」

「何しに行くの?」

「何しにって…ぼ、冒険よ」

「何も考えてないでしょ?」

「か、考えてるわよ!ほら、さっさと行くわよ」

 工作をしている部屋を抜け出して、隣りの部屋へ移動する。確かにちょっとだけワクワクしてきた。みんなと違うことをする。それだけなのに、自分が特別なんじゃないかと思えた。隣りの部屋ではみんな絵を描いていた。ナナはそこに滑り込むように入ると、他の子に混じりながら絵を描き出した。僕もそれに合わせるように絵を描く。他の子達が僕らを指差して「あー」とか言い出すと、すぐに先生が近付いて来た。そのまま先生に注意され、なぜか全部僕が悪いことになった。ナナは少し泣いていたけど、先生の注意から解放されると僕に向かって少しだけ舌を出して笑った。



   ◆



「おい、ユウキ?大丈夫か?」

 耳元でカズミの声が聞こえる。何度も名前を呼ばれていることにやっと気が付いた。周りを確認するとどうにも薄暗い。徐々に記憶が蘇ってくる。ここは『フツウのアーケード』の中だ。むなしく行き場を無くした腕の中を見る。ナナはいなくなっていた。

「ユウキ?大丈夫なのか?」

「……ナナが、消えた」

「そうか…」

「俺は、ナナを助けてやれなかったよ」

「………」

 ナナを抱きしめていた腕の力が抜けてぶらりとぶら下がる。ナナが消えた。ただそれだけだった。気が付いたら涙が出ている。悲しいのか空しいのか良く解らない。一つ言えるのは自分が何も出来なかった悔しさだけが残っていた。泣き声がもう誰もいなくなったアーケード内に響く。

「そう言えば、そっちは大丈夫なのか?」

「………一応、まだ生きてるな」

「あのさ…俺もまだ、何か手伝えるかな?」

「………あぁ」

「そっか。今からそっちに戻るよ」

「頼む」

 涙を拭いた。どちらにせよこの世界はおかしい。終わらせることが出来るなら終わらせよう。ナナのことを考えないように、断ち切るように走り出した。商店街は静まり返っている。ジュジュさんのヒールの音や、あの化け物が暴れてる音が聞こえなかった。商店街には人気がまったくない。そう言えば、ミユキと『フツウのアーケード』で出会ってから、カズミとジュジュさん以外に人を見ていないことに気が付いた。まるで商店街が『フツウのアーケード』のような雰囲気になっている。嫌な予感がした。息を止め、奥歯を噛み締めて走る、走る、走る。

「少年。無事か?」

 商店街の入り口付近でジュジュさんにそう言われたものの、何も答えられなかった。ジュジュさんは左肩から背中にかけて、あの化け物から伸びた腕のようなケーブルのようなものが貫通していたからだ。笑顔を見せてはいるものの、既に顔には血の気がなくなっている。カズミは「おかえり」と言ったが、化け物の左腕にがっしりと握り締められている。化け物の腕からカズミのものと思われる血が滴り落ちていた。
 化け物はそのままピクリとも動いていなかった。

「複製が、始まった…」

 化け物の左腕の中からカズミが言った。

「第三段階…、もう止められないかも知れない……」

 カズミが話すたびに、化け物の腕から血が滴り落ちる。

「辞めろ!カズミ、もうしゃべるな!」

 化け物の腕によじ登って手を広げさせようとしてみるが、ビクともしない。カズミはそのまま話を続けた。

「いいか、ユウキ。落ち着いて聞けよ?……ナナちゃんはまだ消えていない」

「えっ?」



   ◆



「ユウキ、さっきはごめんね」

「べつに、いいよ。いつものことだし」

「やさしいね」

「そうかな…」

「そうだよ。なんで私が誘ったとか言わないの?」

「自分で決めたことだから」

「え?どういう意味?」

「ナナが誘ったとしても、それに着いて行くことを決めたのは僕ってこと」

「ふーん」

「なに?」

「………かっこいい、なぁって」

「……ぇ?」

「ほら、これあげる」

 ナナがそういって一枚の紙をくれた。

「ねぇ、ユウキ。いつか大きくなったら、私をお嫁さんにしてよね」

「……ぇぇっ?」

「んもー、そこは男らしく『任せとけ』とか言うとこでしょ!」

「ま、任せとけ!」

「やった!絶対だよ?ほら、約束!」

「う、うん」

 ナナから貰った紙には男の子と女の子が手を繋いで楽しそうに歩いている絵が描いてあった。



   ◆



「まだ、ナナは、消えてない?」

「まだ消えてないよ」

「ど、どこにいるんだよ!?」

「目の前にいる」

「目の前?」

 目の前にいるのはカズミとジュジュさん、それから動かない化け物だけだった。目を時折うつろにさせながら、カズミが大きく息をついてから言った。

「ナナちゃんの本当の名前は『NAT Nature Alpha』複製する意識の波」




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第十九話へ≫

アーケードの向こう側 - 第十九話 -


ハコニワノベル

「………ちょっと待ってくれ、もしかしてこの化け物がナナだって言うのか?」

「……そうだ」

「いやいやいや…、この化け物は元々ミユキだったじゃないかよ」

「ナナちゃんの力は、自分の別人格を具現化する力。その力で生み出されたのがミユキちゃんだ」

「どういうことなんだよ…」

「ナナちゃんが生み出したミユキという人格は、ナナちゃん自身がそうなりたいと思いながら、どうしてもなれない人格なんだよ」

(ミユキは…ナナから生まれた……???)

「だけど、ミユキという人格は完全に自立してしまった。そこにシゲミチが『μ-key』の力をインストールしたんだろうな。ナナちゃんはコントロールできなくなったミユキという人格を自分に戻そうとして、そこを逆に『μ-key』に取り込まれてるんだよ。『μ-key』の第一段階は意識の暴走、第二段階は身体制御、第三段階は……人格の上書き、つまり完全に乗っ取られる。『μ-key』は、ナナちゃんになろうとしてる」

「………」

「第三段階に入る前にナナちゃんが目覚めていれば、状況は変わっていたはずだった」

「……」

「思っていたのよりも何倍も早く、『μ-key』は第三段階に入ったんだ。おそらく…シゲミチだ……くそっ…あのバカ親父……ぐっ…」

「…」

 化け物の腕から血が滴り落ちていく。その度にカズミは押し殺すように呻いていた。

「………なんとかならないのか?」

「多分、どうにも出来ない…」

「……」

「だけど、この世界を終わらせれば、これ以上の惨劇は起こらない。この世界と外の世界を繋ぐコネクタの位置を今サーチ中だ。もうじきその位置が解る。そしたらユウキ、この世界と外の世界を繋いで、この世界を終わらせてくれ…」

「………なぁ、こいつの中に、まだナナはいるかもしれないんだよな?」

「ユウキ?……何する気だ!?」

 化け物の上で立ち上がる。真っ直ぐにその化け物を見た。下からジュジュさんの笑い声。

「少年…、行ってきな」

「ジュジュさん、ありがとう。カズミ、ごめんな。俺、やっぱりナナを助けたい」

「待て!ユウキ!待ちなさい!『μ-key』の中に入るな!」

 右手を化け物へ向ける。

「無茶だ!既に第三段階は始まってる!お前まで取り込まれたら……や、やめて!ユウキ!ユウキ!!ユウキーっ!!」

「俺は、ナナのことがぁっ!!………     !!!」

 一瞬の浮遊感、そして重力。辺りを見渡すと、まるであの六角形の中のように真っ暗闇の中にいた。その暗闇の奥から足音が聞こえる。足音が徐々に近付いてくるのが解った。

「あらあら、お客さんが来るなんて初めてのことだわ」

「ミユキ…」

「私のことを化け物と呼んだときから『ミユキちゃん』じゃなくなったのね。もっと別のタイミングでアナタに呼び捨てにされたかったな」

「ナナは、どこにいる?」

「ほんと呆れるくらいにナナ、ナナ、ナナ!………だけどね?もうすぐ私がナナになってあげるんだから、それも嬉しいわ」

 足音が止まると突然目の前が明るくなった。さっきまでの真っ暗闇から何も無い白い空間に変わった。その中にナナが立っているのが見える。

「ユウキ、助けて」

「………」

「早く、早く助けてよ、ユウキ!」

「……」

「なんで?どうして?どうして私を助けてくれないの?」

「…ミユキだろ」

「……ちぇ、気付いてたのか。残念」

 見た目は完全にナナにしか見えない。そのままぎこちない笑顔を見せながらナナにしか見えないミユキは話を続けた。

「ナナはね、ずっとアナタに素直になりたがってたわ。あなたに素直になりたい一心で私を生み出したの。だから私はアナタにだけ素直になれるの」

「ナナから生み出されたはずなのに、ナナを飲み込むのか?」

「だってあの子、私がアナタに近付きだしたからって消そうとしたのよ?自分勝手に生み出して、自分勝手に消し去る。そんな存在の私ってナニ?なんなの?だから力を欲してた。そしたらお父様が力を授けてくれたの。まぁ、その力じゃあの子を消せなかったから、私があの子になることにしたのよ。素敵でしょ?あはは」

「なにが目的なんだよ、お前」

「そんなの決まってるわ、アナタを手に入れることよ」

「俺を手に入れてどうするんだよ」

「この世界を自分の思い通りにするわ。そして私は外の世界へ出るの。実体を持たない私が実際の世界へ出られるチャンスなのよ。そのために必要なアナタも後から飲み込む予定だったけど、あなたから飛び込んできてくれて手間が省けたわ。アナタもバカよね、さっさと世界を繋いでしまえばよかったのに」

「ナナとはさ、約束してることが二つあるんだよ」

「は?約束?」

「一つは、ナナをお嫁にもらうこと」

「ふふふ、くだらない約束ね」

「もう一つは、ナナと豚丼を食べる約束」

「ふざけてるのかしら?そんな約束のために、アナタはわざわざ危険をおかしてまで、あの子を助けに来たっていうの?」

「そうだよ」

「馬鹿馬鹿しい!そんな些細な約束を守るために命をかけるだなんて、頭おかしいんじゃない?」

「命がかかってるんだよな、これが」

「は?」

「ナナとの約束守らないとさ、俺の命がないんだよ。ナナに首を絞められるからな」

「………だからなに?二人とも助かるつもりでいるわけ?この状況で?もうあの子本人の人格もほとんどなくなっているのに?もう、誰も助からないことがどうして解らないの!?」

「ほとんどなくなってたとしても、全部はなくなっていないんだろ?それだけで助けられるかも知れないって思うには十分だ」

「なぜ諦めない?アナタもあの子も!なぜワタシノモノニならナイ!ワタシガ、コンナニホシガッテルノニ!ドウシテワタシニハ、テニイレラレナイ?ナンデ!?ナンデ!!?ナンデ!!!?」

「相手のことを思いやれない奴に、相手の心が奪えるわけないだろ」

「ユルセナイ!ケシテヤル!コロシテヤル!ミンナコロシテヤル!」

 目の前のナナの身体が大きく波打つと、ミユキがそうであったように右腕、続いて左腕が巨大化していく。あっという間に人の姿ではなくなった。真っ白な空間に浮かぶような真っ黒な化け物。しばらく不安定な変化を続けてから、こちらに向かってくる。

「ギュィィィィィァァァァァァァァァォォォーーーーーッ!」

 人の出す声ではない叫びを発しながら、ものすごい勢いで化け物は突撃して来た。目を閉じて両手を開く。
 ──下腹部に激痛。化け物の腕が身体に突き刺さる。続いて右肩、左足、そして心臓。

「キエロ!キエロ!!キエロ!!!キエロォォォォォォォォオオォッ!!!」

「ナナ…、一緒に帰ろう」

 朦朧とする意識の中で、真っ黒な化け物をそっと抱きしめた。

「ナナ…、ミユキもナナの、一部なんだろ?怖がるなよ、俺が全部受け止めてやるから」

「キエロ!キエロ!!キエロ!!!キエロ!!!」

「俺さ、ナナのことが好きなんだよ」

「キエロ!キエロ!!キィエェロォォ……」

「ナナ、好きだ。俺はナナが好きだ」

「………!?………ヤメロ、ヤメロ!ヤメロ!!ヤメローーッ!!!」

「なぁ、ナナ。一緒に手、繋いで帰ろう」

 一瞬の浮遊感、それから重力。再び真っ暗な空間。その中心に背中を向けたナナが見えた。




≪第十八話へ
第二十話へ≫

アーケードの向こう側 - 第二十話 -


ハコニワノベル

「ナナ!」

「………」

「ナナ?」

「……」

「おい、ナナ!」

「…」

「聞こえるか?おーい!ナナ!」

「………聞こえてるわよ」

「そうか。それならよかった」

「……なにしに来たわけ?こんなとこまで」

「なにしにって、お前を助けに来たんだよ」

「私を助けるため?バカなんじゃないの?」

「そうなんだよ。バカだよな。自分でもそう思う」

「ほんと……バカだよ、あんた」

 ほんのすぐ目の前にいるナナは背中を向けたままで、そこに近付こうと思っても足が一歩も動かなかった。

「なぁ、ナナ。一緒に帰ろう」

「……無理、だよ」

「なんで?」

「私、消えちゃうもん」

「消えてないだろ?」

「でも、もうすぐ消えちゃうもん」

「諦めるなよ」

「これは罰だもん。私が…、自分勝手に力を使った罰だもん。だから私は消えなきゃいけないの」

「お前、バカだろ?」

「そうよ!バカよ!それがなに!?」

「ほら、いいからさっさと帰るぞ」

「……無理だよ。だって私、もう身体もないよ?ほんの少しだけしか自分が残ってないんだよ?」

「でもまだナナだろ?」

「そう、だけど………」

「消されずに残ってるじゃないか。奪われずに残ってるじゃないか。だったら…」

「……?」

「もう一度奪い返せばいいだけだろ?元々お前の身体、お前の意識なんだからさ」

「そんなの…できっこないよ」

「出来るって」

「なんでそんなことが言い切れるのよ!」

 振り返ったナナは、あの六角形の中から出てきたときのように涙を流していた。顔をぐしゃぐしゃにしながら、こちらをしっかり見ている。

「それじゃ、なにか?俺はお前が助からないと思いながらここまで来たと思ってるのか?冗談じゃねーぞ。俺はな、ナナを絶対に助けてやるって決めたから、ここまで来たんだ」

「……だから、無理だよ。…もう、無理だよ」

 そのままペタリと座り込んで、ナナは泣いた。その足元が薄く緑色に輝き始めていた。

「ナナ、一緒に帰ろう」

「無理だよ。もう、私にはどうすることも出来ないよ」

「手、伸ばせるか?」

「え?」

「手、伸ばして。ほら、早く!」

「…で、でも……」

「早く伸ばして!」

「…ぅ、うん」

 ナナは恐る恐る手を伸ばした。同じようにナナに向けて手を伸ばす。届かない。ナナの足は既に膝下まで緑色の光が覆いだしている。徐々にその光はナナを覆っていこうとしている。一度、目を閉じてから大きく深呼吸をして目を開く。右腕に力を込めて叫んだ。

「俺は!ナナのことが好きだ!!」

「はっ?な、ななな、なに言ってるの?…ユウキ?」

「俺は!ナナのことが、好きだっ!」

「いや、ちょ、え?なに?え?えぇ!?」

「くっそ、ナナは目の前なのに…」

「いや、え?おーい、ユウキ?あんたなに言ってるの…?」

「だから、俺は、ナナのことが、大好きなんだよ!」

「………え、えっと、うん…」

「大好きだ!だから一緒に帰ろう!」

「………」

「好きだ!大好きだ!好きだ!好きだ!好きだ!!」

「…何回も言わなくても、聞こえてるわよ!バカーーー!!!」

「ナナ、好きだ!!」

「うるさいわね!わ、私だって、あんたのことが好きなのよ!!」

 ──浮遊感、そして重力。目の前にはナナ、繋がった右手と右手。

「やっとだな」

「…え!?なに?どうして?な、なんで??」

「これが、俺の力らしいよ」

「いや、でも、その、さっきの…」

「あぁ、あれは………」

「………」

 二人とも俯いていた。どうしても視線を合わせることができない。

「えーっと、お楽しみのところ悪いんだけど、ちょっといいか?」

「カ、カズミ?」

「よし、ちゃんと声は届くみたいだな。あのな、ユウキ。外の世界に繋がるコネクタがどこなのか解ったんだ。『南凪町アーケード』が外の世界とのコネクタだ。そこをお前の力で繋げてくれれば、メルトタウン・システムは終わる。全てが元に戻るんだ」

「全てが元に戻る?」

「このメルトタウンの中は別の世界、別の空間だ。だけど現実の世界との繋がりはある。人が死ぬと現実の世界でもその人は死んでしまう。だからこのシステムを終わらすことが出来れば、ここが元の世界に戻るんだ。何事も無かったかのように。お前たちのような特殊な力は使えなくなるけどな」

「例えば、ナナが消える前にこのシステム?とかを終わらせることが出来たら、ナナは助かったりするのか?」

「助かるな。絶対とは言い切れないが」

「よっし、それならやるっきゃない………ってちょっと待て」

「どうした?」

「外の世界と繋がるだけでシステムが終わったりするのか?」

「そこは安心していいぞ。世界が繋がった瞬間に、外の世界でこのシステムを制御してるマシン全てを、完全に制御不能にするウィルスをお前の体の中に仕込んであるからな」

「なに物騒なものを仕込んでるんだよ!」

「悪い、世界が元に戻ったら、何でも買ってやるからさ。それより、ナナちゃんの方は大丈夫か?」

「あっ!」

 確認するとナナの腰から下は既に緑色の光で輝いている。繋いでいる右手にナナは力を込めた。

「ここから出て、『フツウのアーケード』まで走ってる時間、ないよね……ごめんね、ユウキ。私は一緒に行けないや」

「諦めるな!絶対なんとかしてやる!絶対、なんとか………あ」

「どうした、ユウキ?『μ-key』の抵抗か?」

「いや、違う」

 ナナ覆う光が徐々に上半身を蝕みだした。ナナは隣りで声を出さずに泣いている。繋いでる右手にナナの震えが伝わってきた。その右手を強く握り返す。

「大丈夫。間に合うよ」

「……でも、私…もう」

「ほら、大丈夫だから、泣くなよ」

「でも、でも!」

「あれ、何か解る?」

 今まで真っ白で何も見えなかった空間を指差す。その方向をナナが見た。

「嘘…これって……」

「そう、Y字になってたとこにあった商店だ。で、あっちが…」

 そう言ってもう一つの方向を指差す。そこには剥げかけのペンキで『南凪町アーケード』と書かれた小さな看板が見える。ミユキが消したモノがこの空間にはひしめき合っていた。ナナを引っ張り起こして、繋いだ右手を左手に持ち替える。右手をその小さな看板に向けた。ナナが繋いだ手に力を込めた。強く、強く握り返す。それから全てを込めて叫んだ。

「俺は、アーケードの向こう側に行きたいんだ!」




≪第十九話へ
最終話へ≫

アーケードの向こう側 - 最終話 -


ハコニワノベル

 白から黒、黒から白、反転する色を続く浮遊感のままで超えていく。目を開くと球体が見えた。左手にはナナの右手がしっかりと繋がれている。世界は反転し、また逆転を始める。薄い膜のようなものが全身に絡みついた。

「起きろって言ってるだろ!おい!ユウキ!」

 名前を呼ばれて目を覚ますと、シーツに絡まっていることに気が付いた。視線を上げると両手を腰に当てたカズミが呆れ顔でこちらを見ている。あくびと背伸びをしてそれから口を開いた。

「おはよう」

「はい、おはよう。さ、さっさと起きて、朝ごはんを作ってくれよ。腹減って死んじゃうぞ」

「それぐらいで死ぬわけないだろ」

 起き上がる。キッチンへ移動して簡単な朝食を作った。カズミはそれを美味しそうに食べ終わると、にやにやとこちらを見続けている。

「なんだよ?」

「これ、見てくれ!ジャジャーン!私の新発明だ!」

「はぁ?」

 カズミが差し出したのはどこからどう見ても電動歯ブラシだった。手にとってスイッチを入れると小気味良い振動でブラシが動いた。

「あのな、こんなの薬局とか、下手したら百円ショップにだって売ってるぞ」

「な、本当か?」

「お前さ、もう少し外に出ようぜ」

「くそう、128段階に強弱付けられるようにしたのに!」

「そういう無駄な機能付けるのやめとけよ」

「じゃぁ、こういうのはどうだ?電動歯磨き粉!自動でウニューっと出てくるんだ」

「そういうの、随分昔に本か何かで見たことがあるぞ?それに、電動でやるより手でやった方が絶対早いだろ」

「ちぇ、じゃぁ違うテーマで研究だな」

「いや、それよりもお前さ、ちょっとは普通に働こうとか思わないわけ?」

「よーし、次こそ絶対ノーベル賞だからな!待ってろよ!」

「待ってねぇよ!」

 片づけをして、準備をする。「行ってきます」に「行ってらっしゃい」の声が返ってくる。靴を履き玄関扉を開く。昨日まで降り続いていた雨は上がり、青空に雲が高く見えた。大通りを抜けた公園で駆け寄る足音。

「おーそーい!」

 引っ張られる耳が痛い。しばらくしてから解放される。アジサイが昨日までの雨でキラキラ輝いて見えた。二人で並んでゆっくり歩く。

「何も変わらないね」

「そうだな。別に何も変わってないよな」

「みんな前の世界の記憶、なくなってるしね」

「嘘だったみたいだよな」

「………それは困る」

「なにが?」

「嘘だったら困る」

「なんで?」

「そ、そんなの言えないわよ」

「はぁ?よく解らない奴だよな、相変わらず」

「う、うるさいわね!大きなお世話よ!」

 学校までの道を歩く。出来るだけゆっくり。どちらからも言い出していないけれど、自然に出来た二人のルールだ。学校に行くと二人きりになる時間がなくなるから。

「あのさ、ユウキ」

「なんだよ?」

「私のこと、好き?」

「………ぉぅ」

「ちゃんと言って」

「今、言っただろ!」

「聞こえなかった!もう一回!」

「だー、もう解ったよ、好きだよ!ナナのことが好きだ!聞こえたか?バカ」

「な、なんでバカなんて言うのよ!あのね、言っておきますけど、あんたが私を好きだと思うよりも、私の方があんたを好きなんだからね!」

 そう言った瞬間のナナは、驚くほど早く赤くなって立ち止まった。

「あっはっは…お前、ほんとにバカだろ?」

「………」

「でもさ、そういうとこも嫌いじゃないよ。俺」

「バッ、バッカじゃないの!からかってるんでしょ!もう一緒に学校行ってあげないから!」

 ナナはそのままプイと後ろを向いた。少しだけ笑ってから右手を伸ばす。

「なぁ、手、伸ばせるか?」

「………」

「手、伸ばして。ほら、早く!」

「……」

「早く伸ばして!」

「…仕方ないなぁ」

 俯いたまま振り向いたナナが右手を伸ばす。その手を掴んでそっと引いた。

「もうさ、消える心配はないからさ」

「……うん」

「あんまり不安になるなよ」

「…うん」

「あぁ、そうだ。そう言えばさ、この前の豚丼もそうだけど、電車賃とかなんでいつも俺がナナの分まで払ってるわけ?」

「はぁ?あんたね、デートと言ったら男の子が全部出すもんでしょ!常識よ、常識」

「ちょっと待てよ、今までの全部デートだったのか?」

「そうよ、学校帰りに一緒にどこかに行く。十分デートじゃない」

「………っぷ、ははは」

 少し笑い合ってからナナの右手を左手で握る。そっと握り返してくるのが手に伝わる。
 繋がった世界と世界、思いと想い。そこから学校までを、今までで一番ゆっくりと歩いていく。
 ナナと二人、手を繋いだままで。



完。




≪第二十話へ
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第05回ハコニワノベルのあとがき


エッセイ

 自分の小学生時代を思い出したりもしながら
 子供を初めて主人公にしてみたんだぜ。な、あとがき。


大きな偶然


まずは、書き終えました!よし、良くやった!
↑と自分を褒めておきまして、あとがきを始めます。

「アーケードの向こう側」表紙はこちら。


まずですね、今回はものすごい偶然で物語が進行しました。

ぶっちゃけると、それは名前なんですけど。
ユウキとミユキは完全に偶然です。

『U-key』も『μ-key』も書き出してから後で思いつきました。
驚いた。

なんせ、ミユキに付いては嫁に名付けてもらってますからね。
(↓以下そのときのやりとり)


名前が思いつかないから何かいい名前ない?
どんな人物?
小学五年生、女の子、最初可愛い、後で変わる
ミユキでいいんじゃない?
じゃ、ミユキで。



いやー、ほんと驚いた。
『μ-key』を最初に思いついたんですけどね
ほんとユウキって名前にして良かった。
あと、ミユキって名前にしてくれた嫁にも感謝。




出演して頂いたのは三名


まずは、ヒロイン:美崎ナナにNANAさん
それからセクシーな花屋の店長:ジュジュにじゅじゅさん
そしてクラスメイトのタイキにタイキ≒蓮火さん
どうもありがとうございました。

当初、ジュジュに関しては二回だけ出てくる予定だったんですが
じゅじゅさんが各話のコメントで「ミユキめ!」となってたので戦わせてみました。
(↑完全に雰囲気で戦うことに決めました)

でも、キャラクターとしてはとても好きなキャラになったと思ってます。
ほんとセクシーで戦う、それで粋な女性はカッコいいです。はい。

ナナについてはもう好き勝手にツンデレにしました。
というか、自分が小学生の頃に好きだった子を重ねてしまったり
あぁ、こういうこと言われたら嬉しいなぁとか、実際の思い出だとかいろんなものをミックスして
今回の物語は基本ベースが出来てます。
ナナのキャラに合わない部分はミユキに担当してもらったり。

そういう意味では書くのは楽でした。

タイキに関しては、なんだか最近タイキ≒蓮火さんが惚気まくってるので
どうにか仕返しを!と思ったとか思ってないとか。です。




キーワードについて


さすがに五回もやってるので
キーワードの扱いにも慣れてきてます。
まぁ、それでももう少し上手く使えるようになれればなぁとは思っていますが。
ちょっとそれぞれのキーワードにコメントでも。


■メルト(來弥(aries)さんより)

「溶ける、溶かす、次第に変化する」みたいな意味があります。
メルトダウンという言葉が有名ですよね。
そこから今回の「メルトタウン・システム」に繋がってます。
その他に【溶け込む】という意味などなど。

ちなみに初音さんのメルトはしっかり聴いたことがありません。


■三角関係(RUTYさんより)

これは純粋にユウキとナナとミユキの関係に使ってます。


■ホコ天(黒さんより)

ホコ天としてではなく、アーケード、商店街という位置付けで使わせて頂きました。
一応物語には出てきませんが『南町商店街』は、歩行者天国だった場所が商店街になったという
歴史があったりします。(自分で書いた設定メモより引用)


■赤い鯉(なつめさんより)

南凪神社の池にいる鯉です。
ミユキが池の水を消してしまったので大変だったのですが
あの池は湧き水なのでしばらく後に助かってます。
今も行くと優雅に泳いでます。


■馬(志津さんより)

これ、正直悩みました。
化け物の容姿にしようかなとも思ったのですが
単純にミユキの「白馬の王子様」発言に押さえました。
(化け物の容姿を細かく描写してたら、話数が増え過ぎてしまう予感がしたので)


■鬱(るどさんより)

消えてしまったナナの噂話になりました。
ただね、小学生で鬱ってなかなか使わないんじゃないかなぁと
こっそり悩んだキーワードでもあります。


■ヒエログリフ(☆まりモさんより)

メルトで物語のメインを固めると決めたので
あまり深く取り上げるとえらいこっちゃ!になるため
簡単に授業中に出てくるだけにしました。
多分、メインに持ってくれば別で一本物語が書けます。
それぐらい、深いキーワードでした。


■煉瓦(ちこさんより)

『フツウのアーケード』はレンガ造りにすることで使用しました。


■柏餅(千砂さんより)

ジュジュより、押し付けられそうになるアイテムで登場させてます。


■ストレリチア(タイキ≒蓮火さんより)

この花を出すためだけに、ジュジュは生まれたといってもいいです。
このキーワードを消化するため、セクシー花屋のジュジュは登場したのです。はい。


■オーダーメイド(ともさんより)

これ、一番どうしようと思ってたんですが
まごすけさんが『ストライプジャケット』と書き込んだのを見て
よし、どうにかできるぞ。と思ってました。


■素数(NANAさんより)

遊凪市の人口で使ってます。
実は、作品全部の文字数も素数だったりします。
ちなみに52361文字です。

↑絶対にこれをやってやるぞ!と思ってたので
最終話でジュジュの花屋で花を買うエピソードなどを削りました。
ごめんちゃい。


■みぃみぃ(ミッチーさんより)

これね、いや、いいんだけども
キーワード募集の注意に

【・実在する人物、団体名はお控え下さい。】

と書いてるんですが(まぁ、実在はしてないけれど)
ミッチーさんとこのブログにいるブログペットなんですよね。
ミッチーさんが一生懸命書ブログを更新すると
まるで狙ってたかのように、そこに自分の記事を被せるという可愛らしい子です。

サクっと動物園の噂に使わせて頂きました。


■電動歯ブラシ(じゅじゅさんより)

最期まで忘れてたキーワードだったり(笑)
なので最終話にドサっと出てきてます。


■りんご酢(あやさんより)

カズミが箱買いして、かつ名前まで書き込んでいるというほどのハマりっぷりです。


■豚丼(まるりーんさんより)

ナナと食べる約束をした食べ物です。
牛丼も豚丼も大好きです。(個人的な意見をただ言っただけ)


■ストライプジャケット(まごすけさんより)

↑に出た『オーダーメイド』を助けていただきました。
ジュジュが羽織ってます。


■洗濯(春野ひなたさんより)

ユウキが家事の出来る男になったのは
このキーワードのおかげです。



感謝と告知


こうして無事に書き終えられたのも
投稿して頂いたキーワードであったり、連載中のコメントだったりするわけです。
もちろん読んで頂けたのなら、それが一番ありがたい。
皆さんにどうもありがとうを。

もし、感想があれば↓の感想フォームからお願いします。
感想フォーム


そして、告知。

第06回ハコニワノベルも、もちろんやります。
【キーワード】の募集記事は6/3、4、5ぐらいにアップ予定です。
また募集期間中に、皆さんの【キーワード】投稿をお待ちしております。




とにもかくにも、皆さん。ありがとーごじゃーました!

わーい、やっとエッセイが書けるぞー!


エッセイ

 と言いながらも今月が終わってしまうわけですよ。
 ちょっとハコニワばかりになってるよな。とか思ってるお話。


ハコニワとエッセイの頻度


ハコニワノベルは自分ルールにより
連載開始をしたら毎日一話をアップし続けることにしているわけですが
理由はいくつかありまして

・締め切りを自分に設定しないと途中で放棄してしまいそう
・間延びしてしまうよりも、毎日アップされる方が読んでもらえそう
・後々、ブログで閲覧するときに、間に別の記事があるのが嫌だ

特に1つ目は大きいです。
別に誰からも強制されていないからこそ
自分への縛りを付けないと【書き終えられない】事態に陥りそうなので
ハコニワが始まったらハコニワだけをモリモリ書くようにしてます。

あとは3つ目を意外と気にしてます。
記事の順番は入れ替えられるのですが、記事番号は変わらないので
出来れば連番で物語を綴っておきたいのです。

で、毎月初めに【キーワード】を募集して
月末に書き終えていたら、ハコニワしか書いてないブログになってますよね。
出来ればハコニワは15話ぐらいで終わらせて、残り半月はエッセイを書く。
これが理想ではあるんです。

でもね、いざエッセイ書くぞー!とか言っても
ハコニワを書き終えたら、特に書く意欲もなかったりするんです、これが(笑)

だから、変に5:5でハコニワとエッセイを書こうとせずに
9:1でいいんじゃないかなぁと、これを書き始めて思いました。

毎月、頭から月末付近までハコニワを毎日更新して
エッセイは月一本!みたいな感覚。

細かいこと、ちょっとだけ書きたいことなんかは
ポジメモで書けばいいやと。そう心に決めました。今。



ハコニワノベルをいつまで書くか


これ、別に誰にも聞かれてないけど
インタビューみたくなってるな(笑)

せっかくだからインタビューっぽくしてみよう。

-----



記者
まず、ハコニワノベルを書き始めたきっかけはなんだったんですか?
しのめん
mixiで13人がコラボして書いた物語がありまして
「M線上のアリア」と言うんですけど、それに参加したら触発されて書き始めました。
記者
ランダムなキーワードで物語を書くのは
大変じゃないですか?
しのめん
最初は大変でしたけど、「世界の終わりを変えるモノ」ぐらいから
慣れたというか、キーワードの受け取り方が上手くなった気がします。
記者
純粋に、物語を書いてて楽しいですか?
しのめん
楽しいです。ただ、自分の今までの経験とか、他から受けた影響が
そのまま文章に現れるので、今までの自分に後悔してる部分はありますね。
私はほとんど本(活字)を読まずにここまで来たので。
本以外で言えば、学生までにもっと沢山の経験を積んでおくべきだったなとか。
バイトとかしっかりやったこと無いですし。
記者
他にも、もっとこうしておけば良かったと思うことは?
しのめん
まぁ、さっき挙げた点もそうですけど、過去には戻れないので
これからの人生でいかに沢山のものを吸収できるか。だと思ってます。
出来るだけ本を読んで、参加できるサークル活動には参加して。
あとは落語をちゃんと聞きたいなと。
記者
なるほど。
そうやって切磋琢磨して物語を生み出していくわけですね。
では、ハコニワノベルの目標は?
しのめん
えーと、ちょっと言えない部分もありますが
キーワードを貰わなくてもきちんとした物語が書けるようになること。
これが目標ですね。
記者
では最期に、ハコニワノベルはいつまで続けますか?
しのめん
とりあえず今年12本の物語を書き上げたいと思ってます。
残り7本もありますけどね(笑)
記者
その先は辞めてしまう?
しのめん
正直、一本書き上げるのにヒィヒィ言ってるので
7本先なんてまったく見えてないです(笑)
記者
では、その話は残り7本を書き上げたときにということで(笑)
しのめん
頑張って書き上げようと思います(苦笑)
記者
本日はありがとうございました。
しのめん
ありがとうございました。




-----

なんだか、そんな感じの一人インタビューごっこ(笑)



いろいろこっそり


出版作業中の「M線上のアリア」がどんどん熱くなってきております。
そろそろですね、大きな発表も出来るようになるといいなぁと思ってます。
(その発表が出来るようになるために、自分の作業をこなさねば!)



いろいろやるぞー!!

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