POSITISM

適度に適当に。

03« 2008.04 »05
S M T W T F S
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

スポンサーサイト


スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

物欲がすごいことを淡々と書いてみる


エッセイ

 別に絶対に必要だ!とは思わないけど欲しいなぁと思う物。
 そんな絶対!とまで行かない欲求が沢山あったりする話。


いつも欲しくなる物。


まずカバンです。カバン。

ことあるごとにカバンが欲しくなるんです。
別に必要!ではないんです。けど欲しい。
これはきっと自分にジャストなカバンに巡り会っていないからだと思う。
こう、いつでもこいつと一緒だぜ的な
外出時の相棒のようなカバンに出会いたいなぁ。


次にノートPC。

こいつも無くても家のデスクトップで十分にやっていけるのですが
無意味にノートPCのスペックとか調べたり
カスタマイズできるようなメーカーの場合は見積してみたりを
しょっちゅうしてます。
ただ仕事柄、毎日PCを触っているので
PCは消耗品という認識なんですよね。
だから例え手に入れたとしても
すぐに次を欲しがると思うんです。
だからこれは今使ってるデスクトップなどに
重大なアクシデントが発生しない限り
手に入れないだろうな。とは思ってます。


デジカメ。

いや、今持ってるので十分なんだけど
やっぱり一眼レフとかの写真を見ちゃうと
あぁ、こんなカメラでこんなアングル
こんなロケーションでこう撮ったら…って考えると欲しくなるんです。
けど、きっと手に入れたらコンパクトデジカメでいいや。
って言いそうな自分がここにいたりする(笑)


ソファー。

家にソファーが置いてあるのが
なんだかとても憧れだったりします。
まぁ、これは置くスペースの問題があるので
どうにもならなかっていするのですが。


テレビ。

大きい画面で薄いヤツ(笑)
これも地デジになる頃に買い換えるだろうから
今は無理してまで手に入れる必要もないですな。


携帯電話。

今使ってるのが海外メーカーの携帯でして
国産メーカーに出来ないことが多々出来るのですが
国産メーカーに出来ることが多々出来ない(笑)
いや、別に今の携帯気に入ってるので問題はないけれど
カメラをよく使う人なので
カメラの起動と問題なく撮影できる安定性は欲しいなと。
カメラ起動→失敗→起動→失敗→シャッターチャンス逃す。
↑こればっか(笑)


ニンテンドーDS。

単純に欲しい!
けど今だと最低でも2台は買わないといけないし
もっと言うなら4台必要になるので(家族全員)
困るわぁ。
誰か使ってないとか、余ってるのがあれば下さい。


ほんと別に必要じゃないものばかり。
だけどこういう物欲を妄想してるときが
一番楽しかったりするんですよね。




なによりも、それを実現できるほどの成果がいるよね。
スポンサーサイト

テーマ:ひとりごと
ジャンル:ライフ

第04回ハコニワノベルのキーワード募集!


ハコニワノベル

 宇宙を作り上げることはできないけれど、
 部品があればロケットだって作れる気がする。
 だからそれを確かめてみようと思うんだ。

 

という目標と目的があり、前回のアップ完了からたった三日で第04回の開催です。
過密スケジュール過ぎますが、勢いとノリで行きましょうかね。
ただし!今回は従来のハコニワノベルとはちょっと違うので注意して下さい!



ハコニワノベルとは?(概略)


この記事のコメントに
物語の【キーワード】を、読者である皆さんに書いてもらい
その【キーワード】を元にしのめんが物語を綴るという仕組みです。

例)
 第03回のキーワード募集記事(コメントが【キーワード】です。)

 出来上がった物語



今回は若干ルールが違います!


今回は今までのようにフリーワードでの【キーワード】は募集しません!
以下の募集内容、注意書きを確認してください。


募集内容
  【趣味】:
  【特技】:
  【夢】:

↑この3つすべてをコメントにて記入してください。




※注意事項
・今回募集するのは【趣味】【特技】【夢】だけです。
・お一人様につき、【キーワード】の投稿は1回まで。
・コメントしてくれた方全員が物語中に登場します。
・何かしらの展開は無いとは思いますが
 出来上がった物語の権利はすべてしのめんにあります。
・書き込まれた【キーワード】をしのめんが曲解して扱う場合があります。
・実在する人物、団体名はお控え下さい。



 ※重要!【キーワード】の募集締め切りは 2008/04/04 14:59 まで。
 2008/04/04 15:00 に募集は締め切らせて頂きました。



連載開始はきっと04/07からです。
気軽な【キーワード】投稿をお待ちしております!

ある、サクラの季節 - 表紙 -


ハコニワノベル



■ もくじ ■

01:桜並木の坂の上
02:一番目と二番目
03:三角関数
04:数学的ナンパ術
05:姉妹×姉妹
06:夜の蝶
07:ドジふんじゃった
08:弦楽三重奏
09:ギターヒーロー
10:ミッション開始
11:一年三組、しのめん先生!
最終話:夢をかなえる方程式



■ 感想フォームはこちら ■


■ ハコニワノベルとは? ■


■ 頂いたキーワード ■

るどさん
【趣味】:和装、オンラインゲーム「パンヤ」
【特技】:マシンガントーク、妄想
【夢】:猫と(できれば)愛する人とおだやかに人生をまっとうする

RUTYさん
【趣味】:サッカー観戦・ブログ
【特技】:仕事しているふりをすること
【夢】:保険金3億円

なつめさん
【趣味】:ライヴ・野球観戦・献血
【特技】:携帯で長文打ち。
【夢】:寝て見る。

まろんさん
【趣味】:猫もふもふ
【特技】:寝る
【夢】:猫を飼う

まごすけさん
【趣味】:ボクシング、ランニング、ビリヤード
【特技】:整体、足ツボ、車の運転
【夢】:自分の治療所を構えて、カリスマ施術者として活動。

志津さん
【趣味】:読書、音楽鑑賞、映画鑑賞
【特技】:マジボケ
【夢】:年収1000万!(ぉ

つなさん
【趣味】:シロツメ草でティアラをつくる
【特技】:闇に紛れて弓をひく
【夢】:タンポポの綿毛につかまって虹のむこうまで飛んでいく

まるりーんさん
【趣味】:お話を書くこと・お菓子作り・ブログ
【特技】:妄想・物忘れの早さ
【夢】:まっとうな妻と母になること

kayoriさん
【趣味】:マンガと本を読む。小物作り。和装。音楽を聞く。
【特技】:どこでも寝れる。
【夢】: 愛し愛され生きたい。

いそ汁さん
【趣味】:娘を抱っこする
【特技】:娘を泣かす(泣かれる)
【夢】:娘から「なんじゃワレ!」って顔をされない

KIHIROさん
【趣味】:深夜徘徊
【特技】:いおなずん
【夢】:オチ

muuさん
【趣味】:長旅
【特技】:物理・数学
【夢】:建築家

と~ちゃんさん
【趣味】:音楽鑑賞
【特技】:ベースギター
【夢】:孫に囲まれて死ぬ。

ミッチーさん
【趣味】:ブログ、スロット(えー?w)
【特技】:肩の関節を自由に鳴らせる(は?)
【夢】:笑顔で死ぬ

ともさん
【趣味】:ネット徘徊
【特技】:うっかり
【夢】:マイホーム!

春野ひなたさん
【趣味】:飲む。寝る。しゃべる。
【特技】:電話番号の暗記(数字系の暗記かな?)
【夢】: 専業主婦(ちっさ)


※この物語はフィクションです。
実在する人物、団体、その他とは一切関係ありません。

ある、サクラの季節 - 01:桜並木の坂の上 -


ハコニワノベル

 それは、春のことだった。
 桜並木のゆるやかな坂道が鮮やかに彩られ、真新しい制服に身を包んだ新入生がその坂道を上っている。その先に見えるのは桜花坂高等学校。
 ──本日、桜花坂高等学校の入学式。

「続きまして一年三組。担任、志野山先生」

「一年三組。青田夏芽」

「はい」

「赤木智津子」

「はーい」

「磯貝茂」

「はい!」

「門脇瑠伊」

「はぁい」

「北島弘之」

「ぁ、はい」

 ──しんと静まり返った体育館に、新任の教師の声が響いていく。その声に返事をする声も初々しい。名前を呼ばれた者は返事をし、起立していく。それぞれがそれぞれの想いを秘めながら、それぞれの声が響いていく。
 呼ばれては返事をして起立。呼ばれては返事をして起立。春に生える新芽のように、それは続々と伸びていくような若々しさを残している。呼ばれては返事をして起立。呼ばれては──。

「瀬川透」

「はいっ」

「大河志津」

「はい」

「中西美知恵」

「はい」

「早川琉々」

「………んぁ?…っはい!」

「春野ひなた」

「はい!」

「馬子大介」

「は、はい!」

「真崎拓郎」

「はい!」

「丸井鈴音」

「…はい」

「南野奈津」

「はい」

「武藤有紀」

「は…は、はひぃ!」

 ──ぴんとした緊張感の中で、その一瞬に笑いが生まれようとしている。緊迫した空気を突き破るかのような雰囲気を必死に押さえながら、それでも入学式は続いていく。

「…山口ともこ」

「っ……、はい」

「渡瀬香」

「はーい」

「以上、男子十六名、女子十六名。合計三十二名」

「続きまして、一年四組…」

 入学式は粛々と進む。吹き抜ける風は坂道を桜色に染めていく。真新しい季節は色鮮やかに始まりを迎えた。




02:一番目と二番目へ≫

ある、サクラの季節 - 02:一番目と二番目 -


ハコニワノベル

 高校受験は大変なことだ。十五歳という年齢である程度の人生を左右する決断を迫られる。それが高校受験。特に行きたい高校はなかったけれど、なんとなく小学生の頃から高校はここになるだろうな、と思って見上げていた、ゆるやかな坂道の上にある桜花坂高校を見ていた。その高校へ向かってこの桜並木の坂道を上る日が、いつか来るだろうと思っていた。
 ──72番。
 それはあっけない高校受験の幕切れ。そこそこの勉強しかしていなかったものの、結果は合格だった。周りで合格を知った子達も、特別飛び跳ねたり涙を流したりしていないのは、あっけない合格発表だったからなのか、落ちた人がいるかもしれないという心遣いなのかは、良く解らなかった。
 まだ小さなつぼみばかりの桜並木を下って家へと帰る。

「夏芽?どうだったー?」

「んー?合格だったよ」

「あらそう。それなら今日はお祝いしないと」

「いいよ別にいつも通りでさ」

「そう?でもおめでとう。良かったじゃない」

「うん、ありがとう」

 家に帰って母親に報告すると、ひとまず喜んでくれたらしい。そんな会話を終えてから、二階の自分の部屋へ入る。カバンをするりと肩から外し、疲れたわけでも無いのにベッドに仰向けになった。丸い照明がやけに高い位置に見える。
 ブーブーブー、携帯電話がメールの着信を知らせる。床に置かれたカバンへと手を伸ばし、携帯電話を取り出した。


件名:おはよー
本文:今起きたー。25番はあったー?

件名:おはよ!
本文:相変わらずのねぼすけだな(笑)
   私の番号は見たけど、ちこのは見てないよ?

件名:えぇ!なんで!?
本文:どーして私の分も一緒に見てくれないのよー
   (T-T)

件名:自分で見なさいよ
本文:夕方ぐらいまでは掲示してるだろうから、ち
   ゃんと見に行きなさいよー?受かってたらメ
   ールしなさいよ?
   あ、落ちてたときもちゃんとメールしてよ?
   ちゃんと励ましてあげるから(,^^)/(T-T)

件名:なつめのケチー!
本文:もう一回見に行ってよー!(笑)

件名:いーやーだ
本文:だって落ちてたらそれ言うの気まずいしさ。
   ホラホラ、いつまでもわがまま言ってないで
   さっさと見に行きなさい!
   "ヾ(゚▽゚*)>フレー!!フレー!!<(*゚▽゚)ツ"

件名:相変わらず
本文:なつめはせっかちだよねー。はいはい解りま
   したよーだ。後で見に行きますよー。
   とりあえず、もうちょっと寝るー
   おやすむー


「やれやれ」

 赤木智津子と知り合ったのは、中学二年のときだった。私は物事をはっきりさせるタイプで、しかもさっさと結論を出してしまうので、学校内では話す相手はいたものの、学校を出ると口うるさく言われたくないからなのか、誰も私の周りにはいなかった。
 それも当たり前だと思っていた中学二年の春に、一人の転校生がクラスにやってきた。背の小さいショートカットの良く似合う女の子。彼女は間延びした自己紹介をして、空いていた私の後ろの席に座った。そのときに「よろしくーねー」と言われてから、ずっと私達は一緒にいた気がする。
 智津子と呼ぶのが煩わしくて「ちこって呼んでもいい?」と聞くと「いーいーよー、なつめぇー」とにこやかにちこは笑ってくれた。
 ちこはマイペースでいつも遅刻ギリギリで登校してくるので、いつの間にか毎朝私がちこの家まで行き、引き摺るように登校するようになった。私がどんなに怒っても、ちこは「ごーめーんねー」と謝るだけで、私から離れていくことがなかった。それは下校の時も変わらない。
 中学二年のときからずっと続いていたこの関係を、私は終わらせようと考えていた。このままちこを甘やかすことは、これから先、本人のためにならないと思ったからだ。せめて高校入試の結果ぐらいは自分で見に行って欲しい。と思いながら、本当は25番が書いてあったことにとても喜んだことを告げずにいる。
 私は、この春から始まる高校生活が怖かった。また私の周りには人がいなくなるんじゃないかと不安だった。だから、本当のことを言えば、自分の番号よりも先にちこの番号を確認したし、自分の番号があったことよりも嬉しかった。それは、ちこがいれば自分は一人ぼっちにはならない安心感からだろう。今までのことを思い返してみると、私がちこを助けていたのではなくて、ちこが私を救ってくれていたんだな、と思った。

(本当に25番と72番あったかな…)

 ふいに気になって、昼ごはんを食べ終わってからもう一度家を出た。春を迎える日差しが暖かい。交差点を渡って、大通りへ出る。そこから見える桜並木の坂道をゆっくりと上る。さっきよりもつぼみが大きくなっている気がした。
 近付けば近付くほどに25番と72番が書いてあったのかが不安になって、とうとう駆け出した。思っていたよりもゆるやかな坂道は長く、校門に辿り着くころには少し息が上がっていた。足早に合格発表の掲示板へと向かう。

(25…25…25……良かった…ある)

「わー、あったー、よかったー」

 後ろから間延びした声が聞こえて振り返ると、ちこがそこに立っていた。

「あー、なつめぇー、やっぱり、見に来てくれたー」

 ちこはとてもにこやかな笑顔でそう言って近付いてきた。

「い、いや、ち、違うよ?自分の番号が本当に書いてあったかなー?って不安になったからさ」

「えー、ちゃんとあったよー72番」

「あ、そ、そう?ちこ、あんたはどうだったのよ?」

「あー、見てなかったー」

 そう言って改めて25番を探すちこの祈るような、薄目がちな顔がなんだか可笑しかった。

「ちこー!ありがとー!」

「えー?おめでとーでしょー?」

「まぁ、いいじゃない!またこれからもよろしく!」

「はーい。同じクラスだといいねー」

「んー?」

「だって、そしたら私、遅刻しないで済むでしょー?」

「また起こしに行かないといけないのか…、よし、クラスは別になれ!」

「ひーどーいー」



   ※



「一年三組。青田夏芽」

「はい」

「赤木智津子」

「はーい」



   ※



 あっという間に春休みは終わり、新しい季節はやってきた。私の祈りは届かずに、ちこは私の後ろという特等席に座ることになった。入学式は淡々と進み新入生は退場することになった。体育館を出て廊下を歩く。背中に何かが寄りかかってきた。

「なつめぇーおなか空いたー」

「今日は午前中で終わるんだから、もうちょっとだよ。我慢我慢」

「むーりー」

「じゃぁ、今日帰りにどこか寄って帰ろっか?」

「わーい!おごりだー」

「おごらない!」

 ちこが後ろにいることがとても力強く感じた。私を私のまま受け入れてくれるちこがいるなら、きっと私はどこでも頑張れる気がする。少しだけ胸を張って歩いた。

「どーしたのー?にやにやしちゃってー」

 そう言われてそれを隠すように廊下に張られている生徒会長選挙のポスターに視線を移した。

 山下隆之「いじめのない桜花坂高校に!」
 斉藤博史「明るく元気で、ゴミのない桜花坂!」
 大泉順次郎「今こそ改革のとき!自動販売機を設置します!」
 藤山恵「今しかない高校生活を一生懸命良くします」
 小山太司「給食、もしくは学生食堂が欲しい」

「へぇ、この五人の中から今年の生徒会長が決まるんだ」

「あー話そらしたーなー」

「え?なんのことぉ?」

 笑い合いながら、私達は一年三組の教室へ入った。私は廊下側の一番前に座り、ちこはその後ろへと座った。続々と到着するクラスメイト達。いきなり女子に声をかけまくってる男子がいたり、同い年には見えない子、それから耳に手をあてて独り言を言ってる子もいる。まだ顔も名前も知らないクラスメイト達。

「おなか空いたー」

 その声が私の背中を押してくれる。きっと大丈夫。素敵な一年間になる予感がした。




≪01:桜並木の坂の上へ
03:三角関数へ≫

ある、サクラの季節 - 03:三角関数 -


ハコニワノベル

「俺さ…ルティのこと、好きだ」

「へ?なに言ってるの?茂」

「そうだぞ、茂!俺だって…瑠伊のこと、す、好きだ」

「ちょっと二人とも待ってよ、そんな冗談面白くないって」

「俺は本気だけどな」

「ちょ、し、茂?」

「俺だって本気だよ」

「だ、大介まで…」

「ルティは?ルティは俺と大介と、どっちが好きなんだよ?」

「そうだそうだ、ここはハッキリさせとこう」

「は?え?んーと……さらばっ!」

 駆け出した私の背中に「待てよ」と声が響く。けれど女子サッカー部員の中で一番足の速い私に、茂も大介も追いつけるわけがない。とにかく走って走ってグラウンドまで飛び出した。

「あー!門脇先輩!」

「おーっす!みんな元気でサッカーやってるかー?」

「もちろんですよ!先輩達が抜けたから弱くなったって言われないように、私達頑張りますから!先輩も高校受験、頑張って下さーい!」

 女子サッカー部の後輩からエールを送られたものの、高校受験に自信がまったく無かったので「あはは、頑張るよー」とだけ返した。それにしても茂と大介に言われたことが蘇ってくる。中学のイベントも残すところ高校受験と卒業だけだと言うのに、このタイミングで二人から同時に告白された。一人はいつもちゃらちゃらしてる磯貝茂、もう一人は勉強も運動も出来るのに不器用で女子にモテない馬子大介。二人とも小学校の頃からの幼馴染だ。
 小学校のクラブ活動で私はサッカークラブに入った。同じく茂もサッカークラブに入ってきた一人だった。二人でツートップになり、それなりに地元では有名にもなった。特に私は女子なのにサッカーをしていて、うちのチームの得点には必ず何かしら絡んでいたので、特に目立っていたと思う。
 その当時に付けられたあだ名がルティ。私は本名である瑠伊が変化したのだと思っていたけれど、中学に上がるときに茂に言われた真相は、ペナルティエリアの女王様という異名から、ペナ・ルティと呼ばれていたのが省略されたらしい。
 大介はサッカーの練習で足首を捻ったときに、保健室で出会った。適当にテーピングしようとした私を叱ってから、「捻挫を舐めるなよ」とか言いながら素早くテーピングを施してくれた。後で聞いた話だけれど、施術者になりたいと思っていた大介は、必死に整体技術を習得するため練習し、どこかでそれを実践したくて、毎日保健室で待ち構えていたらしい。その実践第一号が私だ。
 それから茂と大介とよく遊ぶようになり、いつも三人でいるようになった。それから毎日はとても充実していたし、中学生活は順風満帆だった。ついさっきまでは。それがいきなりこんなことになるなんて。

「いや、でもさ、確かに私は魅力的だと思うよ?でもなぁ、茂も大介も恋愛対象にならないんだよなぁ」

 トイレの鏡に向かって満更でもない顔をしながら独り言を吐き捨ててみるけれど、決まりが悪い。そのうち、うだうだと考えるのが嫌になって、バシャバシャと顔を洗った。

「茂がいきなり告るから、瑠伊は逃げたんだぞ」

「なんで俺の責任なんだよ!大介だってどさくさに紛れて告白しやがったくせに!」

「はーい、そこまで」

「ルティ!」

「…瑠伊」

「それで、どっちにするんだ?」

「あのね、私考えたんだけど、どっちとも付き合えないよ」

「えー、なんでだよ…俺、勇気出して告白したんだぜ?この男心をどうしてくれるんだ?」

「俺だって、一生懸命に告白したのに…」

「いや、もう受験シーズンだしさ、恋愛よりも今は勉強かなぁって…」

「…つまりそれは、高校生になったら恋愛解禁なんだな?」

「なるほど、つまり瑠伊と同じ高校に行ければかなり有利だな」

『瑠伊、どこの高校受けるんだ?』

「ハモるなよ…、それに恋愛解禁とか言ってないって」

「それで、どこの高校を受けるつもりなんだ?」

「ふっふっふ、茂君。君はもっと焦らないといけないんじゃないかい?」

「なに急に笑ってんだよ、気持ち悪いな…」

「いやぁ、なぁに、君の成績を心配してあげてるのだよ」

「げ…、あ、でもな、俺とルティどっこいどっこいだぞ?」

「あ…、そうか、瑠伊が選べる高校なら、茂もいけるのか…」

「それよりルティ、どこの高校受けるんだよ。まさか女子高とか言わないよな?」

「えーっと…、桜花坂?」

「おー!あの坂道の上の高校だろ?共学じゃん。いいねー、俺も桜花坂にしよーっと」

「二人ともちょっと待て」

「なんだよ大介、俺は今からルティと二人で桜花坂を目指して勉強すんだから、ガリ勉くんはとっとと有名進学校の受験対策でもしてろっての」

「あのな、かなり甘めに考えてだぞ?お前ら二人の成績で、桜花坂は無理だろ」

「へーそうなんだ…」

「って、ルティ知らずに言ったのかよ!」

「うん。なんとなく…三人で通うならあそこがいいなぁって」

「あれ?それに桜花坂って女子サッカー部無かっただろ?」

「いや、なかなか女子サッカー部なんて無いって。ここに入学したときも無かったから作ったじゃん。高校でも作っちゃえばいいかなぁって…」

「君達。それはつまり、この大介さまに勉強の特訓をしてくれと、こう言っているんだな?」

「おい、大介。いや大介君。ちょ、ちょっと待とうか…」

「思い出すなぁ、小学生の頃…。俺はサッカーだけはお前らより下手くそでさぁ、毎日毎日サッカー特訓とか言われて夜遅くまで練習させられたんだよなぁ…」

「あれ?なんのこと?ね、ねぇ茂?」

「お、おう、そうだなんのことだそれ?」

「覚悟しといてもらおうか…ふっふっふ」

「茂、私達生きて受験できるかな?」

「解んねぇ…」

 それからの毎日は大介による受験勉強の特訓の日々で、教師達も驚くほどに私と茂の成績は上がっていった。桜花坂高校の入学試験が終わったとき、解けた満足感よりも大介の特訓が終わったんだということの方が嬉しかった。その苦しかった特訓のおかげで私も茂も奇跡的に桜花坂高校に入学できたのだった。



   ※



「磯貝茂」

「はい!」

「門脇瑠伊」

「はぁい」

 ──。

「馬子大介」

「は、はい!」



   ※



「大介、なに緊張してんだよ、マジだせぇ」

「うるせーよ。新しい門出に緊張して何が悪い」

「でもさー、本当に三人一緒の高校になっちゃったね。私、大介はもっとガチガチの進学校に進むと思ってたよ」

「あー、俺も俺も。わざわざ俺とルティの恋仲を邪魔しに来てくれちゃって…」

「いや、そうじゃなくて…俺さ、施術者になりたいのよ」

「施術者って整体とかする人のことでしょ?」

「そうそう。で、この桜花坂高校はさ、あの藤山国立病院との提携で医療関連の就職にも進学にもに強いんだよ」

「へぇ、そうなんだ。小学生の頃からずっと言ってたもんね」

「んー……大介ってさ、ちゃんと調べてるよなぁ」

「お前らが何も調べなさすぎなんだよ!」

「まぁ、それなら、ますます三人一緒で良かったね」

「…ぉ、おう」

「大介、なんで照れてんだよ?」

「うるせーよ」

「しかも一緒のクラスだって、運命の赤い糸かなぁ?」

「それどっちと繋がってる?なぁ、ルティ!どっちだよ」

「ば、ばか、俺と繋がってるに決まってるじゃねーかよ!」

「なんで、ここぞとばかりにでしゃばるんだよ、このガリ勉!」

「お前こそチャラチャラしやがって、瑠伊に釣り合うわけがない!」

「意外と、茂と大介が結ばれてたりして…」

「ないないない、絶対ありえない」

「あたりまえだ!茂となんて結ばれてたまるかよ」

「あははは…おなか痛い…ひっひっひ…」

 私達は三人で変わらないからいいんだろう。もしかしたら茂か大介のどちらかを好きになるかもしれないけど、私達は三人がそれぞれを大切にしていけると思ってる。新しい季節、新しい環境。周りにも沢山の仲間がいる。高校生活は大いに楽しいものになりそうだ。

「ちょっとごめんよ、君さ、彼氏とかいる?」

「へ?私?」

「そう、そのただ細いだけじゃなくて、運動して引き締まった身体とスラリと伸びる手足。日焼けが逆に綺麗に見えてる、君のことだよ」

「んー、彼氏はいないなぁ。でもなんで?」

「そんなの決まってるでしょー、僕とお友達から始めませんか?僕は北島。出席番号で言うと君の後ろさ。門脇瑠伊さん…いや、瑠伊ちゃん」

「おいおいおい…北島だっけ?ルティは俺とアツアツなの。だから残念でしたー」

「はぁ?なんで茂となんだよ。瑠伊は俺とあ…あつあ…つ……」

「言えないのに無理すんなよ、大介」

「で、瑠伊ちゃん。よろしくね」

「え?あ、うん、よろしくー」

 いきなり火種が転がり込んできたような気がする。北島という男子はそれだけ言うと別の席で話しているグループの輪の中に入っていった。隣りで茂と大介が威嚇する犬みたいになってて可笑しかった。




≪02:一番目と二番目へ
04:数学的ナンパ術へ≫

ある、サクラの季節 - 04:数学的ナンパ術 -


ハコニワノベル

「物凄い発見をしたんだよ!今から武藤の家に行くから!」

「え?今から?もう二十二時だし、明日入学式だよ?」

「ばか!この世紀の大発見を試さずに高校生になんてなれるかよ!」

 勢いよく電話を切った相手は、中学のときに同級生だった北島弘之。どうして北島が僕と一緒にいるのかわからない。中学の卒業式が終わってすぐに髪の毛を茶髪にして、ちょっと理解しがたい髪形になった彼は、春休み中ほぼ毎日を深夜徘徊して過ごしたらしい。理由は彼女が欲しいからだとか。
 中学の頃に特別仲が良かったわけじゃない。たまたま同じ高校の入学試験で一緒になって少し話しただけだった。僕は数学が得意だったから、入試当日に「どこが出そう?」とか聞いてきた北島が受かるはずないと思ってた。それなのにちゃっかり合格している。一生懸命勉強した人がかわいそうに思えた。

「おーい、入るぞー」

 明日が高校の入学式だと言うのに、夜遅くに勝手に玄関から入り込んで、僕の部屋に現れた北島はやっぱり茶髪で、ちょっと理解し難い髪形をしたままだった。なぜかスーツを着ている。きっと簡単に帰ることはないだろうと感じたので、仕方なしに話を聞くことにした。

「で、世紀の大発見って?」

「そうそうそう、それなんだけどさ。武藤って数学得意だろ?ちょっと教えて欲しいんだよ」

「なにを?」

「なーに、確率の問題だよ。えーっとなにがいいかな…んーコインにしよう」

「確率の問題ねぇ…」

「まぁ、聞けって。コインを投げて裏表が出る確率ってあるじゃん」

「まぁ、あるにはあるよ?」

「それのさ、裏が出る確率って何パーセント?」

「え?50パーセントだよ」

「うんうんうん。じゃぁ、その後またコインの裏が出る確率は?」

「連続で裏っていう意味なら25パーセント」

「またその次も裏の確率は?」

「12.5パーセント」

「その次も裏なら?」

「6.25パーセント」

「その次も裏!」

「3.125パーセント」

「さらに裏!」

「1.563パーセント」

「よし、もう一声!」

「0.781パーセントだよ。それが何?」

「ほらみろ、やっぱりそうだ。七回連続すると1パーセントを切る」

「んー、まぁそうだね。それがどう発見なの?」

「ナンパをさ、七回連続でやれば全部失敗っていうのはあり得ないんじゃね?ほら来た、俺天才かもしれないわ」

「あのさ、コインは偶然性を含まないから確率として計算できるだけでさ、その発想は…」

「こうなったら行くしかないだろ!」

「ちょ、引っ張らないで!ってどこ行くの?」

「ナンパに決まってるじゃん」

 確率の話なんてしてくるから、実は北島は頭がいいのかと思ったけど違った。いや、思った以上に頭が悪いのかもしれない。自転車の後ろに無理やり乗せられて、意気揚々とペダルを漕ぐ北島に「なんで今日行くの?」と聞いたら「明日にはこの髪、黒に戻すから」というどうでもいい理由で、僕は入学式の前日、二十二時半にナンパをする北島を見て、その確率を判定する人という、世界中にたった一人しかいないであろう役割を全うすることになった。

「どこでナンパするの?」

「やっぱ駅前でしょ」

 どこからそんな自信が溢れてくるのか、北島はぐいぐいとペダルを漕ぐ。通りかかった駅前の商店街の片隅でストリートミュージシャンがギターを鳴らしていた。しばらく走ると駅の方へと進む自転車が急に止まった。

「あ、あぶなっ!どうしたの?」

「いや、めっちゃ綺麗な人がいる…」

 北島の身体から首を伸ばして前を見ると、薄手の白いカーディガンを羽織った淡いピンクのドレスを着た、いかにも大人のお店のお姉さんが見えた。

「ナンパするの?」

「いや、しない。俺、素人しか興味ないから」

 そう言ってまた自転車のペダルを漕ぎ始める。すれ違う大人のお店のお姉さんは、何かを探しているように見えた。
 駅前に到着して、自転車を適当に止めると「さぁて、七番勝負といきますか!」と北島が意気込んで辺りを歩く人達を観察しはじめた。春休み最期の日だからだろうか、同じ年代だと思われる人影があちこちに見えている。

「じゃぁ、武藤は本当に七番勝負しないんだな?」

「うん、いいよ」

「知らないぜ?俺だけ彼女できちゃってもさ」

「あー、はいはい」

「よっし、それじゃちょっと、いおなずんしてくるわ」

 そう言って北島は歩き出していった。ちなみに北島が言う「いおなずん」とは『いい女をズンと落とす』って意味らしい。北島らしいバカバカしさだ。それよりもバカバカしいのは、そんなありえない可能性の判定をしなきゃならない僕だ。まったく明日の入学式に響いたらどうするんだ。

「こんばんはー、ねぇ、今一人?」

「違うよー彼氏待ち」

「あーあー、あぁ、そうなんだ。そっかそっか、じゃぁねー」

 今ので50パーセントとか思ってるんだろう。こちらに向かって人差し指を高々とあげてアピールしている。二回目、三回目と回数が増えるごとに、こちらへのアピールする指の本数が増えていく。四回目、五回目、そして六回目。右手は人差し指だけ、左手でパーを作って両手をあげた北島が哀れに見えた。そして運命の七回目。
 すぐに断られて終わるだろうと思っていたのに、なかなかどうして楽しそうに話を続けている。まさか、確率が関係しているわけじゃないのに、なぜだ。しばらく話を続けてから北島が照れくさそうに戻ってきた。

「もしかして成功したの?」

「いや、近所に住んでる2コ上の先輩。やっぱり武藤の言う通り、なんだっけ?なんとか性が関係してるみたい」

「いや、それだけじゃないと思うけどね」

「オッケー、オッケー。それじゃ、明日に期待しようぜ」

「明日?」

「そう、入学式だろ?同じクラスに好みの子がいるかもしれないし!」

「それなら僕とは違うクラスになって欲しいよ」



   ※



「北島弘之」

「ぁ、はい」

 ──。

「武藤有紀」

「は…は、はひぃ!」



   ※



 北島が起立した後もきょろきょろと同じクラスの女子を物色していたのが気になって、返事のタイミングがまったく合わなかった。周りが笑いを堪えてるのがひしひしと伝わって、穴があったら入りたくなった。担任であろう教師も笑いを堪えている。それもこれも全部北島のせいだ。
 笑われそうになったこと以外は無事に入学式も終わり、なんの罰ゲームなのか北島と同じクラスへと向かう。教室に到着すると、無理やり黒色に戻した髪の北島が近寄ってきた。

「うちのクラスさ、他のクラスより女子のレベル高くね?」

「まだ顔なんてほとんど見てないから解らないよ」

「いや、マジでレベル高いんだって。特に…」

 教卓の上に置いてあった座席表を見ながら、北島がクラス内を見回した。

「門脇 瑠伊、春野ひなた、渡瀬 香…か。この三人レベル高けぇよ!やっべ、俺ラッキーだわ」

「その観察眼をもっと別のことに使えば、もう少し世界も平和になると思うよ」

「俺、ちょっと行ってくる!いおなずんだぜー!」

 そう言うと北島は廊下側の前から五番目の自分の席に座ると、目の前に座っている背の高いスラリとした女子に声をかけた。

「ちょっとごめんよ、君さ、彼氏とかいる?」

「へ?私?」

 他の男子二人と話している最中に割ってはいるあの空気の読めなさと、度胸は心底すごいと思う。なんどか会話をしてから、今度は窓側の一番後ろの席にいる女子三人組の輪に突撃していった。名前をすぐに覚えるところを見ると、実際に頭は良いのかもしれない。使い方には疑問が残るけれど。
 せっかく真新しい環境で何もかもがスタートすると言うのに、しばらくは北島に取り付かれるのかと思うと、少し嫌になった。だけど、北島のナンパが何回目で成功するのか、実は少しだけ興味があったりする。その確率を元に僕も挑戦しようだなんてことは、ほんのこれっぽっちしか思っていない。




≪03:三角関数へ
05:姉妹×姉妹へ≫

ある、サクラの季節 - 05:姉妹×姉妹 -


ハコニワノベル

 物心付いた頃から私達姉妹と、丸井姉妹は一緒に遊んでいた。姉同士が友達ということもあって、ほぼ毎日会っていたといっても過言ではないほどだ。小学校も中学校も、そして目指す高校も同じ高校になってしまった。しかも姉とは二つ違いなので、もし入学が決まれば四人が揃うことになる。
 親戚などから「ともともちゃん」なんて呼ばれているのは、姉の名前が友美で、私の名前がともこだからだ。姉妹仲は悪いわけではないけど、日々勉強しなさいと言われるのにいつも苦しまされている。丸井鈴音は姉の幸子お姉ちゃんに、日々運動しようと誘われるのが苦痛だと言っていた。お互いにお互いの姉を羨ましく思ったものだ。

「あーあ、こんなときに友美姉ちゃんがほんとのお姉ちゃんなら良かったのにぃ…」

「なんで?鈴音って勉強できるじゃない」

「いや、出来るって言うほどのもんじゃないよー。解らないとこだって沢山あるんだから」

「そうなの?私はお姉ちゃんに勉強しなさい!って言われるたびに勉強したくなくなってるよ」

「えー!友美姉ちゃん教えるのすっごく上手なんだよ?もったいないなー」

「それなら私、幸子お姉ちゃんにバスケ教えてもらいたいよ」

「バスケの、というか運動のどこら辺が面白いの?」

「こう、毎日必死に練習してさぁ、出来なかったことが出来るようになっていく感覚?あと試合とかで負ければ悔しいけど、勝てたときとかすっごく嬉しいじゃない」

「ははは…うちの姉ちゃんと同じこと言ってるよ。それよりさー、ともこは不安になんないわけ?高校受験」

「うーん、気合でなんとかなるんじゃないかなーって」

「うちの姉ちゃんだって、友美姉ちゃんに勉強みてもらわなかったら、桜花坂なんて行けなかったんだよ?」

「そうなの!?」

「そうそう、そうだったなぁ」

「あ、幸子お姉ちゃん!お邪魔してます」

「大変だねー受験生は」

「姉ちゃんも来年から受験生でしょ!」

「まぁ、そうだけどさー、気合でなんとかなるって」

「またそんなこと言って…はぁ」

「ともこちゃんがさ、桜花坂来ることになったらバスケ部においで!歓迎するよ!」

「はい!絶対行きます!」

「その前に受験でしょ?受験」

「我妹ながら、恐ろしいまでに友美みたいだな」

「それは姉ちゃんが勉強にだらしないからです」

 鈴音がふて腐れるようにそう言うと「わぁ、おっかない。ともこちゃんごゆっくり~」と幸子お姉ちゃんは自分の部屋へと戻っていった。
 小学生の頃に一度だけ幸子お姉ちゃんのバスケの試合を見に行ったことがあり、私はそこで幸子お姉ちゃんの活躍する姿や、毎日の努力が報われてる姿を目の当たりにして感動した。この人の下でバスケがしたいとまで思った。もちろん中学に上がったら、すぐにバスケ部に入った。たった一年で幸子お姉ちゃんは卒業してしまったのだけれど、とても充実した一年間だった。それからも私はバスケを続けている。いつか、幸子お姉ちゃんと一緒に試合に出たい。そのためには桜花坂高校へ入るしかない。

「えーっと、鈴音…さん」

「はいはい。どうしても桜花坂に入りたいって言ったのは、ともこの方でしょ?勉強見てあげるって」

「えへへ。ありがとう」

 鈴音がわからないところを教えてくれたり、いつも一緒に勉強に付き合ってくれたおかげで試験までに十分自信がついていた。試験当日はギリギリで遅刻しそうになるうっかりをしてしまって「どうしたの?」と鈴音に聞かれて「徹夜でラストスパートしてて」と答えた。試験は無事に終わって二人とも合格したけれど、実際はネット徘徊して眠るのが遅くなって危うく試験に遅刻しかけたとは、口が裂けても言えない。
 合格が決まったときに、バスケの練習を頑張って試合に勝てたのと同じような感覚になった。きっとお姉ちゃんや鈴音が勉強してるのも、この感覚が嬉しいからなんじゃないかなと、なんとなく感じた。

「鈴音ちゃん、ともこも合格おめでとう」

「ありがとう!友美姉ちゃん!」

「私にありがとうはないのかよ、鈴音」

「姉ちゃんは勉強の邪魔しかしてなかったでしょ」

「お礼を言いたいのは私の方よ、鈴音ちゃん。ともこの勉強見てくれてたんでしょ?」

「半分は私の実力だと思うんだけどなぁ」

「ともこ、あんたからも鈴音ちゃんにお礼言いなさい」

「はーい…鈴音、ありがとね」

「ともこもよく頑張ったんだよねー」

「あー、なんか自分達を見てるみたい」

「あのね、山口さん。あなたのときはもっと大変だったでしょ!試験日の前日に夜更かしして危うく試験受けられなかったんだから!」

「その話はもういいじゃない、終わったことなんだしさ。あと、学校と怒るときだけ山口さんって呼ぶのも辞めようよ」

 物心付いたころから一緒にいるそれぞれの姉妹が、また同じ学校に勢ぞろいする。「一緒にお弁当食べような」と幸子お姉ちゃんが言うと「あなたはおかずが増えたと思ってるでしょ?」とお姉ちゃんが釘を刺していた。それを見て鈴音と大笑いした。

「あぁ、そうだそうだ。入学式が終ると生徒会長選挙の時期なんだよ」

「そうそう。毎年四月に新しい生徒会長を決めるの」

「その生徒会長選挙にさ、友達が出るんだ。半ば無理やり出させたんだけどさ」

「その姉ちゃんの友達可愛そう…」

「…えっと、そのお友達はなんていう人なんですか?」

「藤山恵っていうんだ。唯一女子で立候補するからさ、いいなと思ったら清き一票をお願いしまーす」

「女子で立候補ってすごいですね」

「ううん、去年の生徒会長も女子だったのよ」

「へぇ、そうなんだ」

「すっごい生徒会長でさ、なんて言うの?有無を言わさない女王様みたいでさ。だけど学校の雰囲気はとっても良かったんだよね。なんだろうな…太陽みたいな生徒会長だった。女子バスケ部の部費も多かったし」

「あ!でもね。ちゃんとそれぞれの立候補者の話を聞いて、自分の判断で投票してね。この人、藤山さんが生徒会長になったら女子バスケ部の部費を多くしてもらうのが魂胆らしいから」

「姉ちゃんの考えそうなことだわ…」

「まてまて、私は純粋に友達として応援してるって」

「女子バスケ部の部費が絡むなら、私絶対に藤山先輩に一票入れますよ!」

「ともこ!」

「さすが、ともこちゃんは解ってるなぁ」

 ささやかだった合格お祝いパーティーは、あっという間に高校の政治問題に移り変わり、その後もこの先生には気をつけた方がいいとか、購買のおばちゃんと仲良くなっておくと、パンを安く買えるといった豆知識を教えてもらった。
 穏やかに日々は流れ、桜花坂高校の桜並木のゆるやかな坂道が綺麗に染まり、入学式を迎えた。



   ※



「丸井鈴音」

「…はい」

 ──。

「…山口ともこ」

「っ……、はい」



   ※



「いやー、ともこさー、さっきの良く我慢出来たね」

「あそこで吹いたら、あの人に悪いじゃない」

 出席番号が一つ前の男子の返事が裏返って可笑しかった以外は、淡々とした入学式だった。めでたく鈴音と同じクラスになり、体育館から教室へと二人で移動する。

「あ、これじゃない?」


 藤山恵「今しかない高校生活を一生懸命良くします」


「あー、ほんとだ。幸子お姉ちゃんが言ってた人、藤山恵先輩。女子バスケ部の女神様」

「違うってば、生徒会長に立候補しただけだって。まったく、姉ちゃんのせいで、ともこまでおかしなこと言い出しちゃったよ」

「もう、私は決めてるからね」

「まぁ、いいけどさ」

「さぁ、これから花の高校生活!しっかり練習して幸子お姉ちゃんと一緒にバスケの試合に出るぞ!」

「部活もいいけど、ちゃんと勉強もね。留年とかして後輩にならないでよ?」

「が、がんばるって」

 教室に入ると、ばらばらとクラスメイト達が集まってきていた。教卓の上に置いてあった座席表を確認して、窓際の前から三番目の席に腰を下ろした。まだ名前も顔も一致していないからなのか、基本的に元々知っている人同士でくっついているように見えた。
 声が裏返った男子が目の前に座っている。友達なのか、妙にテンションの高い男子がやってきて、「いおなずんだ」とかなんとか言いながらどこかへ行ってしまった。私は更にもう一つ前の席、窓際の一番前の席に座っている女子に目がいった。本当に同い年なのか疑いたくなるほど、どこと無く浮世離れて見える。そのまま教卓の方に目をやると、教卓の目の前の席で、片手を耳に押し当てて独り言を言っている女子もいた。
 これから始まっていく高校生活がどんなものになるのか、そわそわと楽しみになった。




≪04:数学的ナンパ術へ
06:夜の蝶へ≫

ある、サクラの季節 - 06:夜の蝶 -


ハコニワノベル

 この店で働くようになってもう四年。この世界のキャリアで言えばベテランになろうとしている。物心が付く頃から母親に男の扱い方や、お酒の入れ方、タバコに火を付けるタイミングなどを徹底的に叩き込まれた。その母親が腰痛で店に出られなくなった四年前、私はついにデビューした。
 みなみ、十二歳の夜だった。

「みーなみちゃん!」

「あら、西川さんいらっしゃい。最近来てくれないから、みなみのこと嫌いになったのかと思っちゃった」

「ごっめーん!ちょっと仕事が忙しくてさ、だから今日はめいっぱい飲むから許してよー」

「んもぅ、仕方ないなぁ。じゃぁ沢山飲んでってね」

「任せといて!あと久しぶりだから、みなみちゃんのヴァイオリン聴きたいな」

「リクエストは高く付くわよ?」

 暗い照明に渦巻くタバコの煙。くだらない大人たちの会話とお酒の香り。そこに響く私のヴァイオリン。私にとっては物心付いたころからいつも傍にあったものだ。母親が作ったこの店はバーでありながら自宅も兼ねている。カウンターの奥にある階段を上ると、そこには六畳のスペースにベッドが二台と、小さなテーブルがあるだけの我が家が広がっている。ここで生まれ育てば嫌でも大人の世界に足を踏み入れることになる。
 駅前の商店街近くにある飲み屋街、その一角にあるダイニングバー・トゥナこと、私の家はある。母親が腰痛になるまでは夜の間だけ営業をしていたが、腰痛で母親が夜の店に出られなくなり、変わりに私が夜の店に出るようになると、昼間の間に母親が簡単なパスタや定食でランチを出すようになり、今では昼はランチが食べられるダイニングバーとして定着している。
 働き出してからすぐに男の人が怖くなり、それを態度に出す度に母親に叱られた。その特訓の成果もあって、今ではとても自然な笑顔を振りまけるようになった。中学生になると言い寄ってくる客も増えた。でも誰も私が十代であることを知らない。化粧というマスクを付けた私は年齢不詳だったからだ。
 そんな夜の生活という秘密を持っていることが嬉しかった。ぬくぬくと日々を生きている同級生と私は違う。どんなに学校で存在感が薄くても、夜になれば私は宙を舞うことができた。ただ、それだけが嬉しかった。
 年を重ねるごとに客の誘いを断るのが上手くなり、自分の素の表情を作り出すのが苦手になった。それでも構わないとさえ思っていた。私はきっとこのまま夜の世界で生きていくのだと、いつの頃からか当たり前のように信じていた。

「奈津。あんた高校行きなさい」

「ちょっとお母さん、いきなりなぁに?」

「あんたのおかげで、常連のお客さんも付いたし、この店を建てたときの借金もどうにか目処が立ちそうなのよ。だから今からでも勉強して、高校行きなさい」

「いやよ。私はここでずっと働くの。そしていつか私のお店を出すんだから」

「いいかい奈津、子供の頃からあんたには苦労かけてるけど、お母さんみたいな人生を歩んじゃいけないよ。ちゃんと高校を出て、自分のやりたいことをやって欲しいのよ。ヴァイオリンもお母さんの都合で辞めさせちゃったし…今更、何を言ってるんだろうって思われるかもしれないけど、お母さん、母親らしいことをあんたにしてやりたいんだよ」

「お母さん…」

「あぁ、でも私立高校は辞めてね?」

 申し訳なさそうに、そう言った母親の背中を見て思わず泣いた。
 幸い国語と社会の授業については、客との話題に繋がるからと真剣に受けていたこともあり、なんとかなるレベルだったが、その他の授業は夜働いている影響でほとんど寝て過ごしていた。なので数学や理科の受験勉強は想像を絶するものになった。「マイナスってなに?」とか「こまごめピペット?」と宇宙語かと思うような用語を解読するところから始まった。
 受験する高校は毎日ドレスばかりで年相応の可愛らしい服が着れなかったことから、一番制服が可愛い桜花坂高校に決めた。「あの制服を着るんだ」と念仏のように唱えながら、夜働いて、学校で眠り、バーが開くまでの間にみっちりと勉強を続けた。
 そんな苦労もあって、合格発表で自分の受験番号が掲示されているのを見たとき、軽く魂が抜けそうになった。それは母親も同じで合格を告げると驚きすぎて煩っていた腰痛が治ってしまった。それぐらい私が高校に合格することは奇跡のようなものだった。

「高校始まったら、あんたもうお店に出なくていいからね。お母さん、腰の調子もいいし」

「え……うん。わかった」

 そんな話をしてなぜか怖くなった。私が私でいられるのは、夜だけ大人の世界を飛び回っていたからだ。それがあと数日で出来なくなる。大人の世界に入れなくなったら、自分がどうにかなってしまうんじゃないかと怖くなった。それでも日々は無慈悲に進んでいく。
 後三日、後二日、今日で最期。

「みなみちゃん、ごめんけどタバコ買って来て。マルボロの赤」

「あ、はーい」

 時計を確認すると二十三時まであと十五分。肌寒いので薄手の白いカーディガンを羽織って外に出た。春先の風が少し強く吹いていた。

「今日で最期か…」

 独り言が口からこぼれた。そして急に不安が押し寄せてくる。

(私が私でなくなったらどうしよう)

 不安は少しずつ大きくなっていく。

(そもそも私って何だろう…)

 このままどこか遠くへ逃げ出したくなった。早く逃げ出さないと明日には私はただの高校生になってしまう。夜の間だけ自由に大人の世界を飛び回ることが出来なくなってしまう。
 フラフラと商店街にあるタバコの自動販売機を目指して歩いていると、どこからか歌声が聞こえてくる。


  子供の頃 早く大人になりたいと
  何も考えずに言えたけれど

  この頃 大人になりたくないと
  毎日何度も呟いている

  だけど時間は 勝手に進み
  気が付けば 僕も 大人に近付いていく

  Youth Return
  なにもかもを奪わないでよ

  Youth Return
  僕の自由を決め付けないでくれ

  ほら また今日が過ぎていく
  明日がやってくる


 気が付くとタバコの自動販売機を通り過ぎ、その歌声とギターの音が聞こえる方へと足が向かっていた。「キィ」とブレーキ音を鳴らした二人乗りの自転車が目の前に止まって、しばらくしてから通り過ぎた。その自転車が走ってきた方向から、ギターの音と声が聞こえて来る。


  子供の頃 大きな夢だって
  何も考えずに言えたけれど

  この頃 叶えられそうなことばかり
  毎日何度も呟いている

  だけど時間は 勝手に進み
  気が付けば それも 叶えられずに過ぎていく

  Youth Return
  なにもかもを奪うのは僕だ

  Youth Return
  僕が僕を望むように変えよう

  ほら 顔を上げて進もう
  明日がやってくる

  君にも 僕にも 明日はやってくる


 私がいることに、歌い終わってから気が付いたそのストリートミュージシャンは、深く頭を下げた。私はなぜかお客さんから貰ったタバコ代の千円をギターケースに入れて、お店へと走った。

「遅いよーみなみちゃん」

「ごめんなさい」

「え?どうしたの?みなみちゃん?なんで泣いてるの?」

「私、実は今日で最期なんです。そう思ったら悲しくなっちゃって…」

 泣きながら、タバコ代の千円はうやむやになり。それから明け方まで私の送別会ということでどんちゃん騒ぎになった。あんなに不安でいっぱいだった私の心の中は、あのストリートミュージシャンのことでいっぱいに変わっていた。この感情が何なのか理解出来ずにいた。
 ドキドキして眠れなかった私は朝早くから可愛らしい制服に身を包み、入学式へと向かった。



   ※



「南野奈津」

「はい」



   ※



 入学式が終わり教室へと入ると、同年代らしいそれぞれのクラスメイト達が楽しそうに、これから始まる高校生活に胸をときめかせているように見えた。後ろの方でヴァイオリンの話題が出たのに反応しそうになったけれど、私は必要以上に馴れ合わないと決めていたので我慢した。
 自分の座席である窓際の一番前に腰を下ろす。楽しそうに会話をしているクラスメイト達の中で、たった一人つまらなそうにしている男子が目に留まった。廊下側から二列目の一番後ろで頬杖を付いて座っている。その男子を見つめていると、ふと目が合った。私は目を丸くした。なぜならその男子は昨日のストリートミュージシャンだったから。
 まるで電撃のような感覚が身体に走り、そこでようやく気が付いた。昨日の夜からずっとドキドキしていた理由。──それは鮮やか過ぎる一目惚れだった。




≪05:姉妹×姉妹へ
07:ドジふんじゃったへ≫

ある、サクラの季節 - 07:ドジふんじゃった -


ハコニワノベル

 俺には幼馴染がいる。家が同じマンションということもあって、ずっと一緒にいる幼馴染だ。幼馴染の名前は早川流々。はっきり言って天然でドジでおっちょこちょい。あまりにドジが多いので小学生の頃は「ドジるる」と呼ばれていた。中学になると「ドジる」と略されていた。俺は小さい頃からそのドジを目の当たりにしているので、小学生の時点で「ドる」まで略していた。そして中学に上がり、今現在では略せなくなったのでひっくり返り「るど」と呼んでいる幼馴染がいる。

「おーい、クロスケご飯だぞー」

 ブロック塀に囲まれた住宅街の中にある空き地。俺とるどはそこで小学生の頃に拾った猫を飼っている。名前はクロスケ。若干毛の長い黒猫。拾ったときに既に大きかったクロスケは今では中型犬ぐらいはありそうなほど大きくなっている。毎日学校が終わると家から食べられそうなものを持ってここに来ている。

「あー、拓郎!私が来てからサバカンにご飯あげてよーぅ!」

 入り口である塀と塀の間に若干挟まれながら、るどが言ってきた。

「もう何度も言ってるけどさ、こいつの名前はクロスケ。なんでサバカンなんだよ」

「だって初めて食べてくれたのがサバ缶だったでしょー。きっとサバ缶が大好きだから、サバカンでいいじゃない」

「よくないだろ、どんなネーミングセンスだよ。それにさ、いつも来るのが遅いんだよ」

「拓郎が早いんだってー。んーと、よいしょーっと…あっれー?」

「なに?もしかして引っかかってんのか?」

「違うよー、そんなことないよー。よーっと、ほっ!あれれ?」

「太ったんじゃないか?るど?」

「え!最近夜にココア飲んでるのがいけなかったのかも!」

 カバンの肩紐が塀の角に引っかかっているのを目視しながら続ける。

「じゃぁ、やっぱり太ったんだな」

「えー!大変!今すぐ痩せないと!」

「今すぐ痩せるわけないだろ。しばらく夜のココアは禁止な」

「えー……」

「なら、ずっとそこにいろ」

「……じゃぁ、夜のココアをちょっと辞めます」

「よーし、じゃぁ引っかかってるカバンの肩紐を外してやろう」

「えっ?」

 肩紐を塀の角から外すと、派手な音を立ててるどが地面に転がった。クロスケは少しだけこちらの様子を伺うと、また食事の続きを食べ始める。るどは起き上がると解りやすいほどに怒り出した。

「ひどい!拓郎騙したなー!」

「いや、でも夜ココア飲んでるんだろ?ちょっとは節制しろってこと」

「むー、なんか調子いいこと言われてる気がする。明日こそ琉々が早く来て、拓郎なんて待たずにサバカンにご飯あげるもんねーだ」

「よーし、じゃぁ明日は二人ともご飯の準備して来よう。で、早く来た方がクロスケにご飯をあげられるんだ」

「その勝負乗ったー!」

 翌日、かなりゆっくりめにクロスケのところに来ると、そこには腹を空かせて同じところをぐるぐる回っているクロスケしかいなかった。仕方ないので持って来た缶詰をクロスケに食べさせた。その日るどは来なかった。
 同じマンションのるどの家に行くと、寝ぼけたるどが出てきた。

「お前、クロスケのご飯…」

「……ん?ってもうこんな時間!大変サバカンおなか空かせて…」

「もう俺がご飯あげてきた」

「……あっらー、拓郎、早すぎじゃない?」

「お前が遅すぎなの。なにしてたんだよ」

「いや、ほら、昨日の夜にさ、ちょーっとネットゲーム始めたの。そしたらね、気が付いたら朝になってて、ほんと驚いちゃったなぁ。ちょーっとしかしてないのに朝になってたの!それでね、授業は太股つねりながら頑張れたんだけど、家に帰ったら眠っちゃってて…あははー。って拓郎、ちょっと!何も言わずに帰んないでよ」

「バカバカしいから、俺帰るわー」

 とにかくそんな幼馴染がいる。中学生活も終わりに差し掛かり、大通りから見える桜が植えられた坂道の上にある桜花坂高校を二人共受験した。結果は合格。あぁ見えてるどは勉強がそこそこ出来る。それだけがなぜか納得がいかない。
 春休みになっても、クロスケのご飯を持って空き地に行くという毎日の日課は変わらなかった。毎日るどは遅くにやってきて「明日こそ」と同じ台詞を言っていた。
 春休み最期の日、友達と遊んでいて少し遅くなってクロスケのところに行くと、既にるどが来ていた。

「めずらしいこともあるんだな」

「……」

「おいおい、たまたま俺より早く来たからって無視すんなよー」

「拓郎…サバカンが、サバカンが……」

 るどは泣いていた。駆け寄るとクロスケの姿が何処にも見えなかった。しばらく待ってみても帰ってくる気配もない。

「琉々が、拓郎より早く来たから?それでサバカンは怒ってどこかに行っちゃったの?」

「……んー、きっとさ卒業したんだよ」

「卒業…?」

「俺達から卒業して、またどこか別のところに行ったんだよ」

「そっか。卒業しちゃったなら仕方ないよね、うん!」

 そう言いながらるどは涙を拭いた。きっとクロスケは二度とここには戻ってこない。小学生の頃からずっと一緒にいたその猫は、中学生最期の日に俺とるどから卒業した。

「あのマンション、なんでペット禁止なんだろうな」

「……」

「いつかちゃんと猫を飼える場所に住みたいな」

「……うん」

「明日、入学式だから遅刻すんなよ」

「……解ってるよ」

 重たい空気を残したまま、俺とるどは家に帰った。
 そして翌日。



   ※



「早川琉々」

「………んぁ?…っはい!」

 ──。

「真崎拓郎」

「はい!」



   ※



「お前、さっき寝てただろ」

「寝てないよー、寝てない。ちょっとだけ目を閉じてただけだって」

「まぁ、いいけどさ。あと、そこは隣りのクラスの教室だから」

「え?…あ、ほんとだ」

「初日からやらかし過ぎだろ、まったく」

 二人で教室に入り、自分達の席に座る。なぜかるどが不思議がっていたので近付いてみた。

「どうした?」

「えーっと、なんで拓郎がここにいるの?」

「…あのな、残念なお知らせなんだが、俺とお前は同じクラスらしい」

「うっそ!」

「いやいやいや、さっきお前の少し後で俺の名前呼ばれてたから」

「ほんと?」

「お前、やっぱり寝てただろ」

「寝てないって、ちょっと目を閉じてただけだって」

「あーあ、またお前のドジに付き合わされるのか」

「そうか、拓郎が一緒か!やった!ばんざっ…」

 座ったまま両手をあげようとしたるどは、机で両手を強打して悶絶している。

「ほんとさ、お前といると退屈しないですむよな」




≪06:夜の蝶へ
08:弦楽三重奏へ≫

ある、サクラの季節 - 08:弦楽三重奏 -


ハコニワノベル

 同じ中学の友達が誰一人として受験しなかった桜花坂高校を選んだのは、私が選択できる高校の中で唯一弦楽部があったから。子供の頃からずっとヴァイオリンを弾くことを目標にして生きてきた。というと少し大げさかもしれない。でも、それぐらいに憧れていた。
 コツコツと勉強をしたおかげで、桜花坂高校に合格することが出来たけれど、友達や顔見知りは一人もいない。

「まずは友達作りから!」

 そう意気込んで入学式を迎えた。



   ※



「中西美知恵」

「はい」



   ※



 入学式が終わり教室への移動中、友達を作らないとと意気込んだからなのか、それとも緊張からなのか、私はトイレに入った。

(私の一人前が富田さんで、一人後ろが西川君…)

 トイレの個室の中で出席番号の前後の人の名前を思い返しながら、どんな風に声をかけたらいいのかを考えた。すると声が聞こえる。

「一年三組?」

「うん」

「あ、一緒だ。良かったよ、トイレに入ったらさ教室がいまいちどこか解らなくてさ」

「そうなんだ。じゃぁ、一緒に行こう。私、渡瀬香」

「サンキュー!私は春野ひなた。ひなたって呼んでね。よろしくね、香」

(春野ひなた…渡瀬香…)

 私は個室の中でその名前を思い返そうとすると、目の前にその名前が書いてある。


 『トイレは綺麗に使うこと! 生徒会長:春野日向』


(今、そこに居るのは生徒会長?いやいや、今一年三組って言ってたし…)

 再度名前を思い返してみる。



   ※



「春野ひなた」

「はい!」

 ──。

「渡瀬香」

「はーい」



   ※



(あ、一年三組で呼ばれてた呼ばれてた…これは、チャンスじゃない?……よーし)

 髪の毛を手ぐしで整えて、目をニ、三度大きくぱちりと動かす。とびっきりの笑顔を作りながら、勢い良く個室のドアを開け放った。

「私の名前はー、中西美知恵でっ…」

 ゴンという鈍い音がトイレに響く。それと同時に何かがヒラリと落ちた。勢い良く開けたドアが勢い良く戻ってきて私の後頭部を打ちつけたからだ。「痛ぁ…」と軽くよろめくと、目の前にいた一人はお腹を抱えて大笑いし、もう一人は「だ、大丈夫?」と駆け寄ってきてくれた。

「あ、ありがとう…私も三組なんだ。名前は……」

「中西美知恵でしょ?さっきのはインパクトあったから覚えちゃったよ」

「うふふ。私も覚えちゃった。よろしくね。私は渡瀬香」

「あ、えーっと、その、ミッチーって呼んでね」

「なら、私はひなたって呼んで。春野ひなた、よろしくミッチー」

「うん、よろしく。ひなたに香ちゃん…あ!そうそう、ひなたって生徒会長してるの?」

「はい?」

「いや、これ。ほら、ここに春野日向って…」

 後頭部にドアがぶつかった衝撃で、落ちてしまったポスターを拾い上げながら呟く。

「見せて。あー、違う違う。だって私の名前ひらがなで『ひなた』だし」

「同姓同名だったのかしら?あら、このポスター去年度のものみたいね。ほら、承認印の日付が去年になってる」

「ほんとだー。っていうか入学してきてすぐに生徒会長とかあり得ないよね。冷静に考えると」

「頭打ったからヘンになったのかと思ったよ。まぁ、登場してくるとこなんて十分ヘンだったけどさ」

 大きな笑い声と後頭部に出来た大きなたんこぶの引き換えに、いきなり友達が二人出来たのだからよしとしよう。教室に入り自分の席を確認すると右から三列目、つまり教室のほぼ真ん中で一番後ろだった。後頭部を少しさすりながら席に着く。もっと友達を作ろうと思ったものの、みんなそれぞれに話をしていてなかなか入れなかった。
 目の前に座っている富田さんと思われる女子は、隣りに座ってる男子との会話に夢中。私の左隣に座っている太っている男子は、机に伏せて眠っているような気がした。通路を挟んで右隣の男子は頬杖を付いている。窓際の一番後ろの席でひなたと香ちゃんが話しているのが見えて、私はそこへ移動した。

「中学の顔見知りがいなくて、話す相手がいないからお邪魔してもいい?」

「いいに決まってるじゃん、たんこぶミッチー♪」

「ちょ、そんなあだ名は嫌ー」

「うふふ。でもねミッチーさん、私もひなたさんもさっきのトイレで知り合ったとこなの」

「え、そうなんだ」

「そうそう。だから私達三人は初対面がトイレだったってこと」

「えー、他に顔見知りとかいないの?」

「私は、中学からの友達が二組と四組にいるのと…、あぁ、あの子のことは知ってる」

 香ちゃんが指差した窓側からニ列目の一番前を見ると、なんだか不思議そうな顔をしている女子が見えた。その女子に近くにいた男子が近付いていく。

「あの子、早川さん。私も行ってるんだけど、私の叔母がやってる着物の着付け教室で一緒なの。見てて飽きないの」

「見てて飽きない?」

 もう一度視線をその早川さんに向けると「やった!ばんざっ…」と両手を机で強打して悶絶しだした。香ちゃんが「ほらね」とにこやかに笑って、私とひなたはお腹を抱えて笑った。

「えっと、それじゃぁひなたは知り合いとかいないの?」

「私も他のクラスに友達が固まってるんだよね。ミッチーは?」

「私、友達で桜花坂を受けた人がいないんだ」

「あら、そこまでしてここに通いたかった理由でもあるの?」

「えっとね、私ヴァイオリンが弾きたくてさ」

 教室の前の方を歩いていた、なんだか大人っぽい女子がこちらを見た気がしたけど、気のせいかもしれない。その大人っぽい女子はそのまま窓際の一番前の席に腰を下ろしてしまった。

「それだけ?たったそれだけ理由でこの高校を受験したの?なんかカッコいいな、たんこぶミッチー♪」

「じゃぁ、弦楽部に入るつもり?」

「うん。ってかたんこぶミッチーは辞めようよ」

「あはは」

「はーい、お楽しみのところごめんなさいね」

「え?」

「えーっと、君が春野ひなたちゃん!で、君が渡瀬香ちゃん」

「で、あんたは誰なんだよ?」

「あぁ、僕としたことが申し訳ない。僕は北島。可愛いひなたちゃんと、美しい香ちゃん。僕とお友達から始めませんか?」

「あら、お上手ね」

「あー、私さ、あんたみたいなのパス」

「えーっと、ねぇねぇ、北島君」

「ん?」

「私は?」

「は?」

「いや、だから私は?」

「なにが?」

「私には友達からーって言わないの?」

「えーっと、君、誰?」

「私が紹介してあげよう、たんこぶミッチーだ♪」

「ちょ!ひなた!」

「えっとそれじゃ、ひなたちゃんに香ちゃん、これからよろしくー」

「うふふ、よろしくね」

「あー!逃げられた!ひなたがヘンな紹介するから…」

「ミッチー、もしかして今のやつみたいなのがタイプなわけ?」

「いや、そういうわけじゃないけど、私も言われてみたいなぁって…」

「あと、香もあんなのがタイプなの?」

「あら。私は嬉しいけど?まぁ、お友達ならいいかなって」

「はー、私は無理だ。あぁ言うチャラチャラしてるのは嫌い」

 その後も楽しく会話を続けていると、桜花坂高校のしおりを見てた香ちゃんが「あぁ、やっぱり」と言った。

「どうしたのー?」

「ほら、コレ見て。去年の生徒会長が『春野日向』って人みたい」

「おー、ほんとだ。む、むむむ…。でも私の方が美人だな」

「言い切るんだ…」

「でも、女子なのに生徒会長しちゃうなんて、すごいわ」

「よーし、なら私も生徒会長でも目指そう!」

「え、そんな簡単に決めていいの?ほら、生徒会長とか学級委員ってなにかと面倒そうじゃない?」

「んー、私は割と好きだけどな。責任あるポジション。なんて言うの、こう…人の上に立つ快感?」

「ひなたさんは女王様にでもなりたいのかしらね?生徒会長の前に学級委員でお手並み拝見かしら?」

「あー、それいいね!それでちゃんと学級委員できたら、ひなたが生徒会長に立候補したとき、応援演説してあげるよ!」

「よーし、約束な。応援演説はトイレの個室から出てくるとこからで!」

「まだ言うー!もー!」

「あら?今年の生徒会長に立候補した人の中にも女子が一人いるみたい。藤山恵さんだって。応援演説は有栖川栄一…すごい名前ね」

「もー、香ちゃんはさっきからマイペース過ぎるよー!ひなたがいじわる言うのー、助けてー」

「あらあら、だめよ?」

「香ちゃんってさ、お母さんみたいだ」

「ほんとほんと、ママー!」

 不安に思っていた友達もあっという間に出来ていた。私は弦楽部にこの二人を誘ってみようと思う。にぎやかで少し騒がしい、そんな高校生活が始まろうとしていた。




≪07:ドジふんじゃったへ
09:ギターヒーローへ≫

ある、サクラの季節 - 09:ギターヒーロー -


ハコニワノベル

 俺は何を伝えたい?俺は何を届けたい?このギターで何を叫びたいんだ?
 子供の頃にテレビで見たミュージシャン、そこで演奏されるギターに衝撃を受けた。それはもうショックだった。こんなものが世の中にあるのかと電撃が走ったようだった。それから毎月の小遣いや正月のお年玉を必死に貯めて俺はギターを買った。中学に上がるとオリジナルの曲でストリートライブを毎日していた。ライブといってもファンなどいないし、誰も立ち止まって聴いてくれることも無かった。
 三年間、ほぼ毎日夜になると商店街の片隅でギターをかき鳴らす。聴いてくれる人もいないのに声を出した。誰も聴かなくても構わないと、ずっと思ってやってきた。けれど、それも今日で終わりにすることを決めた。
 身の程を知った。三年間でただの一人も立ち止まらせることが出来ない歌なんて、歌い続ける意味はない。明日は高校の入学式というのもあり、丁度いい機会だと自分を納得させる。

「今日が俺のストリート最期の日だ」

 ギターケースを担いで大通りを歩く。飲食店には多くの客が楽しそうに食事をし、大通りにもまだまだ行き交う人が多い。信号で立ち止まり、しばらくすると赤信号が青信号に変わる。ギターケースを担ぎなおして、いつものように商店街へと入った。閉じられているシャッターを横目に見ながら、この三年間ほぼ毎日を過ごした場所へ腰を下ろす。ギターケースを開き、相棒を取り出して音を確かめる。目の前を行き交う人、人、人。
 ギターをかき鳴らす。


  可愛い 君のこと ただ見つめてるだけなのに
  気付いた 君と 目が合うのを恐れてる

  臆病な 僕のこと 君は知らないはずなのに
  目が合った 僕を 優しく微笑んでくれる

  何気ない仕草も全部 僕を酔わせていく
  だけど踏み込めないよ 想いを告げるアクセル
  だって 君との関係を 壊すのが 怖いから

  だけど!

  止まらない 止められない 君への想い
  そう信じて 信じ抜いて 君へ告げたい
  唸れ Invincible Heart!!


 目の前を行き交う人はチラっとだけこちらを見るばかりで、誰もが足早に過ぎ去っていく。だけど気にしない。三年間で書き溜めたスコアをパラパラと捲ってから手を止める。そしてまた、ギターをかき鳴らす。


  この声が 聞こえてますか
  遠い 遠い あなたへ
  この想いが 届きますか
  届かぬ 届かぬ 君へ

  どんなに叫んでも あなたには聞こえない
  どんなに想っても 君には届かない

  何を伝えたくて 伝えられなくて
  何を届けたくて 届けられなくても
  歌い続けたい

  この声が 聞こえてますか
  遠い 遠い あなたへ
  この想いが 届きますか
  届かぬ 届かぬ 君へ

  この声を 聞かせたいよ
  遠い 遠い あなたへ
  この想いを 届けたいのに
  届けられぬ 遠い 君

  いつの日か 聞いてくれ
  今は 遠い あなたよ
  この想いを 声に乗せて
  届け 届け 君へ


 昼間は学校に行き、授業中に閃いたフレーズをノートに書き写す。家に帰りそれを曲にし、夜はここで出来上がっている曲を歌う。三年間この繰り返しだ。誰も足を止めずに過ぎ去っていくのも、三年前も今も変わらない。ストリートで歌う最期の日も今までと変わらずに過ぎていく。気が付けば商店街の外はすっかり日が落ち、目の前を行き交う人もほとんどいなくなった。ペットボトルの水を飲む。少しだけ喉にしみる。

「誰にも届かない…か……」

 零れ落ちる独り言もむなしいだけだった。春だというのに夜は肌寒い。何も考えずにギターをかき鳴らし、声を張り上げる。ほとんと人もいないのに、何をしているんだと自問自答をしていた。目の前を二人乗りの自転車が通り過ぎていった。
 例え誰も立ち止まらなくても、誰にも届いていなくても、今日は自分が納得するまで歌い続けてやる。そう決めて、一番最初に作ったスコアを眺めると、三年前を思い出した。
 音楽で何かを救える気がしていた。世界を救うことは無理でもこの声が届く人ならきっと救えるだろうと、あの頃は信じていた。だから毎日ここで歌を歌ってこれた。
 いつの間にか歌うことの意味を見失っていたことに気が付いた。いつからか自分が救われたくて歌っていた。目を閉じて三年前を思い出す。

(何のために歌を歌うんだ?)

(世界を救うため?)

(いや…違う……)

(この声が届く人を救いたいからだ!)


 前を見る。誰もいない商店街はシンと静まり返っていた。今ここに誰もいないのなら、目を閉じて心の中にいる誰かに聴いてもらうつもりで、またギターをかき鳴らす。


  子供の頃 早く大人になりたいと
  何も考えずに言えたけれど

  この頃 大人になりたくないと
  毎日何度も呟いている

  だけど時間は 勝手に進み
  気が付けば 僕も 大人に近付いていく

  Youth Return
  なにもかもを奪わないでよ

  Youth Return
  僕の自由を決め付けないでくれ

  ほら また今日が過ぎていく
  明日がやってくる


 遠くからヒールの足音が聞こえる。その音は少しずつ近付いているように感じた。その足音の主に向けて目を閉じたまま、気持ちを、魂を込めて歌う。


  子供の頃 大きな夢だって
  何も考えずに言えたけれど

  この頃 叶えられそうなことばかり
  毎日何度も呟いている

  だけど時間は 勝手に進み
  気が付けば それも 叶えられずに過ぎていく

  Youth Return
  なにもかもを奪うのは僕だ

  Youth Return
  僕が僕を望むように変えよう

  ほら 顔を上げて進もう
  明日がやってくる

  君にも 僕にも 明日はやってくる


 歌い終わって目を開けると、そこに一人の女性がいた。まっすぐに俺を見つめている。高いヒール、ピンク色のドレス、それから白いカーディガン。そこら辺の大人なお店のお姉さんだろう。初めて誰かに立ち止まってもらったことに気が付いて、深く頭を下げた。すると、そのお姉さんは手にしていた千円札をギターケースに入れると、どこかへ走り去ってしまった。その後姿を勝手に視線が追いかけて、お姉さんが見えなくなっても、しばらくそのまま立ち尽くしていた。
 なぜかそこから歌うことが出来なくなり、ギターケースに入れられた千円札を大切にしまってから、ファーストフード店に入った。
 安いハンバーガーを口に放り入れながら、初めて立ち止まってくれたあの女の人を思い出していた。今日がストリート最期の日だと決めていた。それは自分の歌が誰にも届かないからだ。でも、最期と決めた今日、やっと自分の過ちに気が付いた。誰も聴いてない、誰にも届かないと決め付けていたのは自分自身だった。聴いて欲しい、届けたいと心底思いながら歌うことを思い出した。そしてそれは、初めて人に届いた。なぜか目頭が熱くなった。
 乱暴にハンバーガーを詰め込んで店を出た。家に帰ると涙が溢れた。自分の声が届いて嬉しかったのと、今まで不甲斐ない歌を歌っていた悔しさが入り混じった涙だった。三年間でたったの一人。それでも嬉しかった。何度も何度もあの女の人の顔を思い出していた。

「どことなく幼く見えたけど、綺麗な人だったなぁ。また会えるかな」

 気が付けば明日からもストリートに出ると決めていた。きちんと歌いたい。それからまたあの人へ届けたい。もう一度、あの人に会いたい。その思いしかなかった。
 目を閉じるとまぶたの裏にあの高いヒールと、ピンク色のドレス、白のカーディガン、それからどこか幼さを残した綺麗な顔が浮かび上がっていた。
 その翌日、あまり眠れないままに、高校の入学式は始まった。



   ※



「瀬川透」

「はいっ」



   ※



 入学式は終わったものの、頭の中は夜になったらストリートでギターを鳴らすことばかりを考えていた。あの女の人を思い出して少しニヤついた。すると前の方で「どーしたのー?にやにやしちゃってー」という声が聞こえ、焦って視線をそちらに向けると生徒会長選挙のポスターを見てる女子二人がいた。どうやらこちらの話ではないらしい。胸を撫で下ろすのと同時に、その話題となっていたスターを眺めてから教室へと入った。
 廊下側から二列目の一番後ろの席に腰を下ろす。とにかく早く夜にならないかと、そればかりを考えていた。徐々に集まるクラスメイトには興味が無かった。右斜め前で女子一人と男子二人が「運命の赤い糸」がどうとか話をしている。しばらくすると右隣の席に着いた見た感じにも軽くてチャラチャラしてる男が、右斜め前の話に割って入った。
 頬杖を付いて、とにかく時が経つのを待った。左隣の女子がこちらをしばらく見てから、窓際の一番後ろに移動していく。頬杖を付いたまま視線を前に移した。教室の一番前を歩いている女子に目が留まった。どことなく浮世離れた雰囲気があったからだ。その女子は一旦窓際の一番後ろに視線を投げてから、窓際の一番前の席に着いた。

(早く夜にならないかな…)

 そう思ってから再度窓際の一番前に視線を移すと、浮世離れた雰囲気の女子と目が合った。その女子は目を丸くしてこちらを見ている。しばらく見つめられて気が付いた。昨日の女の人だ。三年間でたった一人、自分の歌が届いた人が自分の視線の先に居る。

(き、昨日の…?)

 頭が真っ白になっていく。同い年だとして今年十六歳になるだろう彼女が、なぜあのヒールを履いて、ドレスを着ていたのだろうか。睡眠不足と視線の先にいる女子と目が合って思考回路が鈍っている。右斜め前で話していた話題が脳裏に蘇った。

(運命の…赤い糸……)

 もう一度、彼女を見て気が付いた。初めてギターに出会ったときと同じように電撃が走っていた。──それは鮮やか過ぎる一目惚れだった。




≪08:弦楽三重奏へ
10:ミッション開始へ≫

ある、サクラの季節 - 10:ミッション開始 -


ハコニワノベル

「ボス、こちらシズ。AD2008、桜花坂ハイスクールに到着しました」

「OK、それでは今回のミッションを説明する」

「ラジャー」

 旧文明時代への任務が決まったときは飛び上がるほど嬉しかった。T.P(タイム・パトロール)のエージェントになってから、ずっと大幅な時間軸を越えての任務を志願し続けていた。そして念願が叶って今回、私に二千年ほど過去に遡る重要な任務を命じられることになった。喜び勇んでタイム・ワープ装置でAD2008という旧文明時代へと足を踏み入れた。
 右耳に装着した時空間通信装置を右手で触れる。その小さな装置から二千年先にある私の時代からの通信が行われる。ミツバッチリ上官は続けた。

「今回のミッションは未来から過去へ渡ったと思わしき者の調査、及び必要があれば処分することだ。簡単なミッションではあるが、君はまだまだ実戦経験が少ない。慢心せず、慎重かつ確実に遂行したまえ」

「ラジャー。ターゲットの情報は?」

「ターゲットの名前は笹川篤志。男。その時代で言うと十八歳。桜花坂ハイスクールに通っている」

「その笹川を調査し、未来を歪ますほど歴史に大きく影響する場合は処分」

「歴史に大きく影響がないと判断し、こちらでその確認が出来れば、その時点でミッションコンプリートだ。どうだ、簡単なミッションだろう?」

「処分だけなら二時間で終わらせますが?」

「ちょ、お前怖いな!なに言っちゃってんの?T.Pエージェントはそういう暗殺部隊じゃないから。あくまで時空間に影響が起きないようにパトロールする機関だから」

「ちっ」

「今、舌打ちした?ねぇ、上官に舌打ちした?」

「いいえ。通信機器にノイズが入ったのでは?」

「まぁ、いいけどさ。とにかく必要なければ処分しちゃダメだからね。それこそ歴史が変わる出来事になってしまうから。そしたら君が罪人として追われることになる」

「ということは、確実にターゲットだと認識せずに処分は出来ないのか…、残念」

「あのさ!それ無差別過ぎるでしょ?絶対ダメだかんね!本当は新人に一年以上のタイム・ワープは認められてないんだから。君が無理やりタイム・ワープしたがるから、難易度の低い任務をやっと見つけて…」

「そろそろ任務開始していいですか?」

「ねぇ!人の話とか聞いてる?とりあえずその時代の人達に、自分が未来から来たことを知られないように。それから君が起こす行動が未来に大きな歪を生み出す可能性があるということを、しっかり認識して節度ある行動をすること」

「あー、はいはい」

「適当に流すな!絶対忘れんなよ!それから、右腕に付けてる腕時計は…」

「あー、コレって麻酔針とか打てる?ねぇ、打てる?」

「打てません。その時代の漫画じゃないかそれ。真実はいつもひとつ!やかましいわ!もう疲れてきたから一回だけしか説明しないからね。その腕時計の横にある二つのボタンを同時に押すと、三回だけ時間を止めることが出来るから。いいか、三回だけだぞ。面白そうだからとかって押したら…」

 ──目の前を舞い散るサクラの花びらが静止した。
 再び腕時計の二つのボタンを押すと静止していた花びらが舞い落ちた。

「すげー、本当に止まったよ」

「もう好きにしていいよ。あぁ、それから任務中はコードネームで呼ぶ。君のコードネームは『タイガー』だ。では、今回の任務成功を祈ってるぞ、タイガー。その時代に君が潜入するための措置は全て整っている。君は桜花坂ハイスクールの一年三組に入学する。その時代での名前は大河志津。今日は入学式だ、遅れないように潜入してくれ。あとくれぐれも自分の素性はバラさないように!」

「はいはーい」

「おい、返事軽いな!そんなので…」

 通信装置から手を離すと、口うるさい上官の声は聞こえなくなった。ここは桜花坂ハイスクールの校庭にある、用具入れらしき倉庫の裏側だ。倉庫から顔を覗かせると正面入り口から、沢山の人が入ってきている。フェンス越しに見える本物のサクラが見事な花を咲かせている。

「あぁ!旧文明時代って最高!本物のサクラも見れるし、あとは本物のたこ焼きと、お好み焼ね。あっと、とりあえず任務はこなさないと」



   ※



「大河志津」

「はい」



   ※



 ごく自然に潜入は完了した。あまりにも華麗な潜入だ。T.Pエージェントの訓練で行った潜入の方が、命をかけるスリルがあって楽しかった。ここの潜入はあくびが出るほどに簡単だ。妙にヒラヒラした制服と呼ばれる服は、どうにも動き辛い。そのまま一年三組に入る者達の名前が呼び続けられている。

(さてと、ターゲットは笹川篤志、十八歳。ということは三年生か)

 ざっと確認した感じで、この桜花坂ハイスクールは一学年に六クラス存在する。その中から『笹川篤志』というターゲットを確実に発見し、処分──の前に調査を行い、必要があれば処分する。それが今回の任務だ。

(処分する必要があるといいなぁ…。私の右腕が唸ってるし。さて、ぼちぼち発見しますかね)



   ※



「中西美知恵」

「はい」

「早川琉々」



   ※



 ──右手の腕時計についている二つのボタンを同時に押した。まるで録画映像の停止状態のように時間は音も無く止まる。

「三年生は一番後ろの集団か…」

 止まった時の中でターゲットの捜索を開始する。まずは三年一組──、いない。三年二組──、いない。三年三組──、いない。三年四組──、いない。三年五組──、いた。

「笹川篤志、よーしターゲット発見。それにしてもこんなヤツが未来から来たのか?どうやって?何のために?まぁ、いいや。これで見ればすぐに解るし。さっさと調査、調査っと」

 メガネ型のT.Pスコープを取り出してターゲットの調査を開始した。T.Pスコープは覗き込んだ対象が、どんな経緯で時空間移動をしたのかを視覚的に見ることが出来る。ただし、時空間移動をしていない場合は何も見えない。覗き込んだスコープに笹川篤志の時空間移動の経緯が映し出された。

「よっしゃ、ビンゴ!あとはこいつが処分対象だといいんだけど…」

 右手に力を込める。処分対象であればこのまま一突きすれば任務完了だ。跡形も無く歴史から消し去れる。T.Pエージェントの養成学校で歴代最強と言われた私の一撃を味わせてあげよう。
 徐々に映し出される映像を確認していく。しかしそこには歴史への影響を最小限に押さえ、それまでの記憶を押し殺してでも、好きな人を救おうとする笹川の強い意志と信念が映し出された。気が付けば涙が頬を伝う。

「なんやねん、お前めっちゃええやつやんか!鈴ちゃん大事にせーよ!はー、適わんわー、こういうの弱いねんから!まったく、あかんで、シズちゃん涙ぼたぼたやわ」

 T.Pスコープの映像を保存し、サッと片付ける。涙を拭いて元の位置に戻る。その途中で同じ一年三組の一人が居眠りしていたので、トントンと額を二度叩いておいた。時間が元に戻ればその衝撃が届くだろう。元の位置に戻り、腕時計のボタンを押す。
 ──何事もなかったかのように、時間が再び動き出した。ただ一人を除いて。



   ※



「………んぁ?…っはい!」



   ※



 居眠りしていた一人もなんとか返事が出来て、順調に入学式は終わった。上官への報告を行うため教室へ行く最中にあったトイレへ入った。個室入り、右手を右耳の通信装置へ伸ばす。

「こちらタイガー、ターゲットを確認し、調査を行いました」

「こちらミツバッチリ。てか早いな!早すぎて逆に不安だわ!」

「今から調査した資料を送ります」

「華麗に無視すんのな」

 T.Pスコープからケーブルを延ばし、通信機器へ接続する。先ほど保存した『笹川篤志』の時空間移動の経緯映像を送信する。隣りの個室に誰かが入ってきたようだ。耳をすませると「私の一人前が富田さんで…」とつぶやいている。これはあまりここに長居しない方が良さそうだ。
 映像の送信が完了したので外に出ようとすると、隣りの個室からではない声が聞こえた。

「一年三組?」

「うん」

「あ、一緒だ。良かったよ、トイレに入ったらさ教室がいまいちどこか解らなくてさ」

 慌てて開きそうになったドアを押さえる。どうやら外に誰かがいるらしい。右耳の通信機器が受信を知らせて震え出した。きっと上官がさっき送信した映像について何かあるのだろう。しかし、今ここで着信を受けるわけにはいかない。

(これは素早くトイレから出てしまった方が良いな)

 意を決して個室から出ると、隣の個室のドアが勢い良く開いた。

「私の名前はー、中西美知恵…」

 今まで受けた戦闘訓練の条件反射で、迫り来る隣りの個室のドアを蹴り返すと、ゴンという鈍い音がトイレに響いた。

(まずい…)

 尚も通信機器の受信は続いている。仕方なく腕時計のボタンを二つ押して時間を止めた。素早くトイレを出て時間を元に戻す。そのまま教室に向かった。
 自分の席を確認すると右から三列目の一番前だった。そこに腰をかけて辺りを確認すると、がやがやと騒がしい。そっと通信機器に触れる。なるべく小さな声で通信を開始する。

「やっと繋がったわー、なに?なんかトラブル?」

「あんたのせいでな」

「な、ちょっとなに小声で脅してくれてんだ、怖い、怖いわタイガー」

「いいから、何?」

「え?あーそうそうさっきの映像ね、問題なし。どうも未来からやってきたのも、七年程度のものみたいだし、本人が物凄く強い意志持ってるし、歴史への影響も考えてる。よって処分の必要なし。ミッションコンプリートだよ」

「そっか、処分できないのか…」

「いちいち残念がらないでよ、ほんと怖いわ」

「それで?ミッションコンプリートを告げるためだけに、ずっと通信しようとしてたわけ?」

「あー、あぁ、えーっとね、その、大事なこと言わなきゃいけなくてさ。それがねー、まさか、こんなことになるだなんて、誰も予測できないことだからさ」

「うだうだ言わずにさっさと要件を言え」

「ちょ、上官に向かって命令すんの?」

「いいから言え」

「あ、はい、すいません…。えっとですね、タイム・ワープがしばらく出来なくなったんです」

「しばらくってどれぐらい?」

「えーっと三年?」

「は?」

「いや、君を二千年前にタイム・ワープさせた直後に、タイム・ワープ装置のエネルギーが切れちゃったんだよ。君が勝手にタイム・ワープ装置を作動させちゃったからなんだけど。百年以内なら一年、千年以内なら二年、それ以上だと三年はチャージにかかると思う」

「ちょ!私はどうすんのよ!」

「あー、でもね。時間を止める腕時計渡してたでしょ?さすがだよね、ナイス上官!」

「この腕時計がどうしたって?」

「一回分の時間を止めるエネルギーを使えば、単独時空間移動が出来ちゃう優れものなんだよ!」

「へ、へぇー、すごいなぁー」

「ほんとほんと、私がその腕時計を君に持たせてた甲斐があったでしょ?さすがだよね、ナイス上官!て、ことだから単独時空間移動ですぐに戻ってきてよ」

「えぇ?…あー、うん、そのー、なんだ。例えば時間を止めるエネルギーが残ってなかったら?」

「そりゃ、時空間移動は出来ないよ。って…え?嘘でしょ?だってさっきの今だよ?」

「あー、嘘だったらいいのになぁ」

「マジでか!……あー、でもいいか。いいんじゃない?うん。いいよ、とってもいい!」

「何が?」

「君そこで女子高生をエンジョイしちゃいなよ!エネルギーが溜まったらすぐに帰ってくればいいんだし。それに私の心配事も減るし!」

「なら、この時代でお前のいる時代を無かったことにしてやろうか」

「怖っ!発想が怖すぎるわ!あのね、そんなことすれば君もいなくなっちゃうの!解る?まぁ、三年なんてきっとあっという間だしさ、エンジョイ!エンジョイ!ついでに自分の身の回りでパトロールして、日々報告さえしてくれればいいから」

「てめー、人事だと思って…」

「えー?なにー?よく聞こえないわー。とにかくさ、一生懸命勉強しておいでー。出来たら乙女らしくー」

「おい、ちょっと待て、もっと他に方法とか…、おい!おーい!」

 それ以降、通信機器はうんともすんとも言わなかった。どうやら私はこのままこの時代で三年間を過ごさなければならないらしい。数人が私のことを見ているような気配がして、なんとか何でもない様子を取り繕った。

(ま、いっか。この時代にはたこ焼きとお好み焼もあるんだし)

 教室の中はがやがやと騒がしい。そこに聞こえてくる走る足音と、手を叩く音。何者かが近付いてきているようだ。




≪09:ギターヒーローへ
11:一年三組、しのめん先生!へ≫

ある、サクラの季節 - 11:一年三組、しのめん先生! -


ハコニワノベル

「はい!はい!はい!はい!はい!はい!」

 勢いよく教室のドアを開ける。

「よっしゃー!みんな座れー!自分の席に着けよー!」

 教室中から視線を一気に集める。なんて快感なんだろうか。ボルテージがどんどん上がっていく。

「よっし、自分の席解るか?席着いたかー?はい、よーし!えー、この一年三組の担任をすることになりました、はい、みんなちょっと黒板に注目な」

『志野山 麺真』

「はーい、先生の名前は志野山麺真です。これで、しのやま、めんしんと読みます。
  よくね、メンマなんて読む人がいるけどー、…若干傷つくからやめてね?
  君達と同じで、今年この桜花坂高等学校に赴任してきました。二十七歳のナイスガイです。
  あ、担当は数学ね」


 若干、一年三組全員が引いている。当然だ、いきなり現れた人をいきなり信頼できるわけがない。若い子はデリケートなのだから。ここはひとつ自己紹介をしておこう。


「実家は農家でブランド米作ってます。『みっこまい』って知ってる?
  まぁいいや、そんなお米を作ってます。先生ね、農家を継ごうと、こう思ってた。
  でも、先生のお父さんに断られました。なんで?って聞いたら
  『お前には無理』って言われました。あれは悲しかったなぁ。
  それから必死に勉強して、今君たちの前に立たせてもらってます。
  初めて担任を持つ新米ですが、どうぞよろしく」


 何人かの生徒が笑っている。よしよし。


「はい!というわけで、志野山麺真、略してしのめん先生が、君達の担任です。
  じゃぁ、ちょっと呼んでみようか?せーの……、おーい恥ずかしがっちゃダメだよ。
  いっぺん呼んでみ?ほら、いくぞ?せーの…」

「し、しのめん先生」

「あー、来ちゃった。今、君達の熱い思いが、先生の胸にズバンと来ました。
  よーし、それじゃぁ、さっさとやることやって、明日からの素敵な高校生活を
  エンジョイしましょうか」


 徐々にクラス内の雰囲気が一つになってきている、ような気がした。


「よーし、じゃ、今日やらなきゃいけないことを黒板に書いていきまーす。
  はい、まず皆さんの机の中に封筒が入ってます。その封筒の中身の説明をします。
  次に、明日の予定、持ってくるものなどの連絡をします。
  ほんでその次に、皆さんに自己紹介をしてもらいます。
  そして最期に、学級委員と副委員を決めます。そしたら帰ります。いいですか?」


 クラス全体を見回す。遅れているような生徒がいないことを確認して、先へ進む。


「よし、じゃぁ、まず机の中の封筒を出して下さい。その中に、桜花坂高校で
  生き抜いていくために、必要なことと、不必要なことが書いてあります。
  この、冊子になってるしおりについては、帰ってからでも軽く目を通しておいて下さい。
  で、A3サイズの、はいこれね、この大きいプリントは保護者の方に記入してもらって、
  明日。いいですか?明日、必ず持ってきてください。
  これ、まず重要だから忘れないように」


 『A3サイズのプリント→保護者の方に記入してもらう→明日提出』と黒板に黄色で板書してから、クラス全体がそのプリントに目を通したことを確認する。チョークを置き、手を二度三度払ってから続ける。


「次にこのB5サイズのプリント…あ、これはいいや。
  これは生徒会長選挙についての連絡が書いてあります。
  要約すると、候補者の演説を聴いて投票するという、
  ベーシックな生徒会長選挙があるよ。という内容です。ちなみに今週の金曜日にあります。
  はい、えーっと、こっちのA4サイズのプリントに、一年間の行事予定が書いてあります。
  サッっと目を通しておいてください。ちなみに先生の誕生日は九月です。メモしてもいいぞ」


 全員が追いついてきていることを確認すると、一人遅れているのが解った。すかさずフォローに入る。


「はい、えーっと、早川さん?大丈夫?」

「だ、大丈夫です!た、たぶん」

「もし、解らなかったら言って下さいね」

「あ、はい…」


 少し待つと、早川さんも追いついた。一呼吸置いてから続ける。


「はーい、それからこっちのプリント、あー、この赤色のやつね。
  ここに、この桜花坂高校の主な施設の場所案内が書いてあります。
  トイレや購買、それから避難経路まで書いてあるので一通り覚えておいて下さい。
  見ても解らない場合は実際に歩いて見てください。先生もまだ覚えきれてません。
  さっきもこの教室に来るのに随分迷いました。
  よーし、これでひとつめおしまい。お次は、なんだっけ?あぁ、明日の予定連絡ね。
  明日の予定は…あー、これはちゃんとメモしておいて下さいね」


 全員が筆記用具とメモ帳を取り出すのを確認する。


「明日は午前中にレクリエーション、まぁ簡単に桜花坂高校での生活についてを
  学年主任の先生とかから基本的に面白く無く説明されると思います。
  そしてお弁当を食べてから、午後は部活動の紹介があって、
  最後に、教科書の配布があります。
  なので、明日持ってくるものはー、筆記用具、それからメモ帳、お弁当の三点セット。
  それから、さっき説明した、このA3サイズのプリント、
  もちろん保護者の方に記入してもらったもの。以上4つを忘れないように。
  教科書は手で持てるように梱包されてるらしいので、大きなカバンなどは不要です」


 全員が必死にメモしている。重要な部分を簡単に黒板に板書しておく。しばらくして、全員の顔が上がり始めたので、続ける。


「はいはいはい、よーし、それじゃ一年間一緒に過ごす仲間をもっともっと知るために、
  自己紹介いってみようかー。何を言えばいいのか解らない!なんて言って
  時間だけがだらだら過ぎるのはもったいないから、うーん、そうだな…
  名前と【趣味】それから【特技】、あと【夢】、を大いに紹介して下さい。
  何か一言あればついでにどうぞ。テンポ良くいこうか」


 がやがやと教室が騒がしくなる。この生徒達が何を言ってくるんだろうという期待が膨らんだ。


「よし、まずは先生な。
  志野山麺真です!
  趣味はボウリング。
  特技はカラオケ。
  夢は自分が担任をした生徒全員が幸せになること!
  みんなで楽しい一年三組にしていこうぜ!
  はい、先生の顔覚えとけよー。
  みんなも、クラスの仲間の顔と名前を覚えちゃうように。
  先生も一生懸命みんなのこと覚えるからなー。
  それから、自己紹介が終わったら拍手。はい、拍手!」


 パチパチパチとまばらな拍手が巻き起こった。


「よっしゃー、それじゃ、出席番号順でいってみよう!どうぞ!」

「あ、青田夏芽です。
  趣味はライヴに行くことと、野球観戦。それから献血にも行きます。
  特技は携帯で長文が打てます。よく電話の方が早いよって言われます。
  夢は…えーっと、んー、寝て見るものです」

「はい、オッケー。趣味で献血というのがすごい。
  ちなみに先生はAB型です。ほとんどの人にB型と言われます。
  はい、みんな、青田さんに拍手!それじゃぁ次の人」

「赤木智津子ですー。
  趣味はー、ひなたぼっこ。
  特技は、んーと、お昼寝。
  夢は時間を操れるようになりたいです。ずっと二度寝とかできるからー」

「よーし、春は眠たくなる季節だけど、遅刻とかしない程度にしっかり寝て
  学校では居眠りしないように気をつけよう。よーし、次」


 ──自己紹介は進んでいく。


「磯貝 茂です。
  趣味は娘を抱っこすることで
  特技は娘を泣かしたり、泣かれること。
  夢は娘から「なんじゃワレ!」って顔をされないことです。
  ちなみに、まだ娘はいません。
  後ろに座ってる門脇瑠伊と結婚して可愛い娘を授かる予定です」

「今のプロポーズじゃない?オッケー、そのプロポーズを受けて次!」

「はい、門脇 瑠伊です。
  えっと、まずプロポーズですが、ごめんなさい」

「えー!なんでー?」

「茂、まぁ黙ってて」

 ごほんと一度咳払いをしてから、門脇瑠伊は続けた。

「趣味はサッカーとブログです。
  特技は勉強しているふりをすることです。
  夢は、そうだなぁ…保険金3億円の受取人になることです」

「サスペンスな夢だなぁ。あと磯貝君、断られちゃって残念。
  保険金かけられないように気をつけて!
  それから先生の授業中はきちんと授業受けようね。はい!次」

「はいどうも、北島弘之です。
  趣味は深夜徘徊して素敵な女性に出会うことです。
  特技はいい女をズンと落とせるナンパです。
  夢は、そうだな…、夢オチってことで」

「えーっと、素敵な女性がいたら先生にも紹介してください。よっし次」


 スピーディに自己紹介が進んでいく。最近の若者の傾向なのか、ほぼ全員の夢があまり希望に満ち溢れていないように感じた。


「瀬川透です。
  趣味は音楽鑑賞。
  特技はベースギター。
  夢は孫に囲まれて死ぬこと」

「淡々としてるなぁ、今度先生にもギター聴かせてくれな?
  ちなみに先生の得意な楽器はカスタネットです。よし、次」

「大河志津です。
  趣味は読書、音楽鑑賞、映画鑑賞。もう乙女の王道やね。
  特技はマジボケ。今日もな、お家に帰れんくなったわ…、いやほんまに。
  夢は年収一千万!」

「家なき子みたいになってるけど大丈夫?
  困ったことがあったら先生に相談するんだよ?お金はないけど。はーい、次」


 ──自己紹介は続く。ここにいる三十二人全員を一気に覚えるように、集中して聞いていく。


「中西美知恵です。
  趣味はブログ、それからスロット…じゃなくてタロット。
  特技は肩の関節を自由に鳴らせます。ほら!(パキィ)
  夢は笑顔で死ぬことです」

「今一瞬スロットって言わなかった?気のせい?まぁ、いいか。はい、次どうぞー」


 自己紹介を半分の人数がやり終わると、徐々にリラックスムードになっていく。自己紹介を終えたものはホッとした表情になり、順番が近付いている者は少し顔が強張っている。


「野田君、君は食べることがとても好きそうだなー。早弁とかするなよー。はい、次」

「早川琉々です。
  趣味は和装で、毎週着付け教室に通ってます。あとはオンラインゲームを少々。
  特技はマシンガントークと、妄想。
  夢は猫と愛する人とおだやかに人生をまっとうすることです」

「早川さん、今日の入学式中に寝てなかった?え?目を閉じてただけ?まぁ、いいか。
  えーっとね、なんかさぁ、みんな人生の終わりについての夢多くない?十代でしょ?
  もっとこう若さ溢れる夢、語っちゃってもいいんだぞ?よーし、次いってみよう」

「春野ひなたです。
  趣味は飲む。寝る。しゃべる。
  特技は電話番号とか数字の暗記です。
  夢は専業主婦」

「はい来たね、数字の暗記。先生ね、数学担当だからね。
  これは先生に対するナイスアピールですよ。先生も数字の暗記が得意です。
  自分の預金通帳の残高とか絶対に忘れません。三十円です。
  あと飲むについては過大解釈してカルピスにしておきます。はい次」

「馬子大介です。
  趣味はボクシング、ランニング、ビリヤードです。
  特技は整体、足ツボ、それから車の…自転車の運転。
  夢は自分の治療所を構えて、カリスマ施術者として活動すること。
  それから、さっき中西さんが肩の間接を鳴らしていたのが心配なので
  あとでちょっと診せて頂きたいです」

「おっと、いきなりこのクラスに整骨院が出来そうで、先生嬉しい。
  ちなみに車の免許は十八歳になってからね。よし、次」

「真崎拓郎です。
  趣味は猫をもふもふすること。
  特技は寝ること。
  夢はちゃんと猫を飼えるようになることです」

「並々ならぬ猫への愛が伝わってくる自己紹介!
  ちなみに先生は爬虫類が大好きです。カエルとか最高。よっしゃ次の人どうぞ」

「丸井鈴音です。
  趣味はお話を書いてブログにしてます。あとはお菓子作り。
  特技は妄想するのと、物忘れの早さ。
  夢はまっとうな妻と母になることです」

「はい。お菓子作りの得意な奥さんを先生も探しています。それじゃぁ、次の人」


 まだ自己紹介をしていない生徒も残りわずかになってきた。テンポよく自己紹介を進めているのか、全員あまりダレていない。間を空けないようにすればダレることも少ないようだ。こっそりメモ書きをしておく。
 ──自己紹介は最期の列に入った。


「みなみで…じゃないや、南野奈津です。
  趣味はシロツメ草でティアラをつくること。
  特技は薄暗い中でもヴァイオリンの弓がひけることです。
  夢はタンポポの綿毛につかまって虹のむこうまで飛んでいくことです」

「おー、ヴァイオリン弾けるなんてすごいなぁ。
  あと夢はあれだ、束縛している何かからの解放を望んでる気がするよね。
  はーい、その次の方どうぞ」

「武藤有紀です。
  趣味は長旅。
  特技は物理と数学です。
  夢は建築家になること」

「はい来たね、特技数字。先生ね、数学担当だからね。
  これは先生に対するナイスアピールですよ。お手並み拝見していくのでよろしく。
  よーし、次」

「山口ともこです。
  趣味はネット徘徊です。
  特技はいつでもうっかりすること。
  夢はやっぱりマイホーム!」

「先生もマイホームが欲しいです。暖かい家庭に憧れてます。
  預金残高三十円じゃ、銀行もローンを組んでくれません。
  残り三名になりました、どんどん行こうか」


 自己紹介は淡々とリズミカルに進んだ。腕時計を確認してから、手にしたレジュメに目を通す。


(予測タイムよりも五分近く早い。このクラス、ノリが良さそうだ。授業のリズムもこの感じで進めるといいかもしれない)


 ──そして自己紹介は残り一人。


「はい、それでは三十二人の大トリ、いってみよう!」

「渡瀬香です。
  趣味はマンガと本を読むこと。小物作りも少々。
  早川さんと同じ着付け教室に通っていて、和装が趣味です。あとは音楽を聞くこと。
  特技はどこでも寝れることかしら。
  夢は、愛し愛されて生きていきたいです」

「多趣味で素晴らしいなぁ。あと和装が若干流行ってるのかな?
  先生も和装に興味が出てきました。機会があったら教えてください。
  よーし、これで全員終わったなー。
  同じクラスのメンバーを早く覚えて、楽しい高校生活にしていこう。
  はーい、それじゃぁ、この一年三組をまとめていく学級委員と副委員を決めますか」


 教室の中は今までと違うざわめきに変わった。こちらからの視線を避けていくのが良く解る。
 自分が学生の頃、授業の問題をあてられるときや、こうした委員などを決めたりするときに、先生の視線をそれとなく逸らしていたのを思い出した。今こうして教壇の上から見渡すと、そのそれとなくが明らかに故意に避けているのが解るし、学生の頃は気付いていないだろうと思っていたようなことも、実際は丸見えになることに気が付いた。それがなぜか微笑ましく思える。

「さぁて、決めるぞー」




≪10:ミッション開始へ
最終話:夢をかなえる方程式へ≫

ある、サクラの季節 - 最終話:夢をかなえる方程式 -


ハコニワノベル

「先生!私、学級委員やります!」

「おーっと、春野さんが立候補。いいねー、その積極性。他にいないかー?立候補するなら今のうちだぞー?……よし、学級委員は春野日向さんに決定!じゃ、次は副委員。これは男子にしてもらおうかな」

 ──廊下側の席から話し声が聞こえる。

「茂、あんたやりなさいよ」

「はぁ?なんで俺がやらなきゃならないんだよ」

「意気地なし」

 その会話が聞こえていたのか、春野日向の後ろから手が上がった。

「先生、俺やります、副委員」

「お、我クラスの施術士、馬子君が立候補。他にはいませんか?」

「いいの、茂?大介が一歩リードしてるよ?」

「あのなルティ、俺はあいつみたいに単純じゃないの。それともなにか?副委員になったら俺と付き合ってくれるのかよ?」

「いや、それはないよ」

「だろ?ならいいの。あいつに花を持たせてやらないとね」

「よーし、いないなら副委員は馬子大介君に決定。早いなー、先生この学級委員、副委員を決めるのにもっと時間がかかると予測してたのになぁ。このクラスはとてもノリがよくていい」

 腕時計を確認し、レジュメに視線を移す。

(予測タイムより二十分以上早い。流石にこの時間に帰りだすと問題ありだな…)

 レジュメに『学級委員:春野日向(出席番号:22)』と書き込み、その下の行に『副委員:馬子大介(出席番号:23)』と書いた。
 クラス全員の自己紹介を聞いて、それぞれの夢が消極的だったことを思い返す。

(よし、残り時間で一つやりますか…)

「はい、サクっと学級委員も副委員も決まったので、若干時間があるから、先生が今からみんなに最初の授業をしたいと思います」

 教室中から「え~」という声が聞こえた。十年前に何度も自分が言っていた台詞を、こうして聞く立場になったのかと思うと少しだけ可笑しく思えた。

「五分前には終わって、他のクラスよりも先に帰れるようにするから。それから、筆記用具もメモ帳もいりません。ただ、きちんと聞いて脳みそのどこかに、この一年間入れておいて欲しい」

 黒板に書いていた内容を全て消し『夢をかなえる方程式』と大きく書いた。

「はい、今から先生がする授業は『夢をかなえる方程式』これです。さっきみんなに自己紹介をしてもらって、それぞれの【夢】を聞かせてもらいました。その大多数が消極的な【夢】のように、先生感じました。はい、いいですかー?」

 黒板に全員が言った【夢】を分類ごとに分けて板書する。



   ◆



■自分が誰かを○○したい
  自分が担任をした生徒全員が幸せになる
  ちゃんと猫を飼えるようになる
  愛し愛されて生きていきたい


■自分が○○になりたい
  建築家になる
  自分の治療所を構えて、カリスマ施術者として活動する


■家族・家庭
  専業主婦
  まっとうな妻と母になる
  娘から「なんじゃワレ!」って顔をされない


■お金
  保険金3億円の受取人になる
  年収一千万
  マイホーム


■自分の人生の終わり方
  孫に囲まれて死ぬ
  笑顔で死ぬ
  猫と愛する人とおだやかに人生をまっとうする


■睡眠中に見る
  寝て見るもの
  夢オチ


■実現不可能だと認識している
  時間を操れるようになりたい
  タンポポの綿毛につかまって虹のむこうまで飛んでいくこと



   ◆



「はーい、ざっと大まかにピックアップするとこうなるかな。
  まず君達に解って欲しいのは、夢を夢のまま放置しないで下さい。ということなんです。
 
  それにはまず、自分の夢が本当は何なのかを理解することが必要です。
  例えば…『自分が担任をした生徒全員が幸せになる』という夢は、
  そのまま読んだら生徒、つまり君達任せになっちゃうよね?
 
  先生が担任をした君達が勝手に幸せになれば、この夢は達成するか?というのを自問すると、
  達成はしません。じゃぁ、どう幸せになって欲しいのか。それを考えていく。すると、
  【先生が担任をする君達が、幸せになれるように出来うることに全力で取り組む】という
  夢を達成するために実現させるべき目標が見えてくる。
 
  その目標に向かって【努力】をすることで、先生の夢はかなえられるわけだ」



「その他の夢についても同じことが言えます。


  『ちゃんと猫を飼えるようになる』ためには何を実現しましょうか?
  ペット可の家に住む必要があるなら、その家に住むために必要なこと…と掘り下げていく。

  『愛し愛されて生きていきたい』のなら、愛すべき相手を探さないといけないし
  その人から愛されるような自分になる必要がある。そのためには?


  『建築家になる』ために必要なことを調べたり、学んだりしますよね。
  『自分の治療所を構えて、カリスマ施術者として活動する』ためにも同じです。

  ただ、自分が○○になりたいという夢で忘れてはいけないことが一つあります。
  それは【なんの為に】自分がそうなりたいと願うのか。
  自分が○○になることだけが夢や目標になってしまいやすいです。
  本当にかなえたいものは、自分が○○になった先にあるはずでしょ?


 『専業主婦』になるためには、家事全般が出来ないと困るだろうし
 専業主婦で生活が回るだけの所得がある旦那さんも見つけないといけないですよね。

  『まっとうな妻と母になる』その思い描く【まっとうな】をこなすために
  今自分に足りていないものはなんだろう?それを補うにはどうすべきだろう?

  『娘から「なんじゃワレ!」って顔をされない』ために自分が出来ることは?
  また出来ないことは?

  この三つも○○になりたい夢と同じで、本当にかなえたいものは
  自分がそうなった先にあるはずです。


  『保険金3億円の受取人になる』これは保険金殺人をしたいわけではなくて
  保険金でなくても三億円が手に入ってから先で、かなえたいことがあると思います。

  『年収一千万』にするためには?自分の中にあるスキルのどれを使って
  年収一千万になると嬉しいんだろう?きっと自分の中にコレで!というのがあるはず。
  なら、それでお金を稼ぐためにはどうすべきかを考える。

  『マイホーム』立地、間取り、ローン。考えることは沢山あります。
  例えば何歳までに買うぞという目標があれば、それまでに頭金をいくら貯めて…
  というスケジュールが出来上がっていきますよね。それをどうやったら達成できるだろうか?


  『孫に囲まれて死ぬ』そのためには孫がいないといけません。
  すなわち自分の子供がいないといけません。そして、孫に囲まれて死ぬためには
  孫に嫌われてたら無理ですよね。もっと言うと自分の子供に嫌われてもいけません。
  そのために出来ること、やるべきことはなんだろう?

  『笑顔で死ぬ』ということは、心穏やかな人生を送ってないといけませんよね?
  じゃぁ、心穏やかな人生ってなんだろう?どういう人生を送れば心穏やかかな?
  それを実現させるためにすべきことは?

  『猫と愛する人とおだやかに人生をまっとうする』これもちょっと同じで、
  穏やかな人生は、猫と愛する人がいるだけで達成される?
  達成させるために必要なことはなんだろう?それを得るための努力はなにをしなきゃいけない?


  『寝て見るもの』は確かに夢です。夢の中はどうなってますか?
  どんな夢を見ると幸せですか?その夢を見るために現実世界での充実した生活はいりませんか?
  その充実した生活とは、どういうものなんだろうか。

  『夢オチ』、どんなものが夢オチだと救われますか?
  こんな状況が夢オチならいいのに。と思うことがあれば、そんな状況にならないように
  出来ること、考えることがあると思います。


  『時間を操れるようになりたい』
  『タンポポの綿毛につかまって虹のむこうまで飛んでいくこと』
  この二つも○○になりたいと同じですね。
  そうなった先でどうしたいのか、例えばずっと二度寝をしても困らない生活を送るためには?
  虹の向こうへ飛んでいった先でやりたいことは?


  ほら、こんだけでもただの夢で終わるものは一つもないでしょ?」



 黒板に今までのどんな文字よりも大きく腕を動かして文字を書く。



『G=C+T』



「これ、夢をかなえる方程式です。G=C+T。これだけ脳みそのどこかに置いていてほしい。
  【Cはチャンス】、【Tはトライ】つまりね、君達が思い描く夢をかなえるために必要なのは
  夢をかなえるために必要な様々な目標を明確にして、その目標を達成するチャンスに
  勇気をもってトライすることなんです。

  たったそれだけでチャンスのCにトライのTがくっついて【ゲットのG】に変わります。

  ちなみにTはトライだけじゃなくて
  トレーニングかもしれないし、トークかもしれない。
  チームだったりするし、もしかしたらティーチャーなのかもしれない。
 
  夢を夢のままにして諦めれば、その夢は絶対にかなうことはありません。
  宝くじを買わなければ当たらないのと同じこと。
  みんなで一年間【G=C+T】を意識して、一歩でも二歩でも夢に近付いていってほしい。
  先生も先生の夢をかなえるために、一生懸命頑張るからな!

  よっしゃ、そろそろ五分前、どのクラスよりも早く終わろうか。
  春野さん、学級委員の初仕事、号令をお願いします」






「起立!」






 椅子の擦れる音や、机が揺れる音があちこちで響く。






「礼!」






 窓の外に暖かな光が溢れている。サクラの花びらが風に乗って舞っている。






「ありがとうございました!」






 それは、どこにでもある
 だけど、ちょっとヘンテコな
 ある、サクラの季節の物語。



 完。




≪11:一年三組、しのめん先生!へ

第04回ハコニワノベルのあとがき


エッセイ

 キーワードを投稿して頂いた方全員に出演して頂いた第04回。
 ほんのちょっとでも楽しめたなら幸いなのです。なあとがき。


今回の物語はリフレッシュ


いや、第03回が終わってすぐに第04回が始まってしまったので
頭の切り替えが必要だなと思ったんです。

なので【キーワード】募集前に決めていたこと
・短編集のようにする
・全部で十個のエピソードを書く(+オープニング、エンディングで十二話)
・今までのハコニワノベルで出てきた人をチラつかせる
・キーワード投稿してくれた人を全員出演させる

春だし、4月なので入学シーズンということもあり
学園モノにすることだけ決めて、入学すると自己紹介があるなぁと思ったので
【キーワード】を【趣味】【特技】【夢】に絞りました。

最終的には各エピソードがそれぞれにリンクする
ひとつの物語のようになったかなと思ってます。


まだ読んでないよ?な方はこちら
■「ある、サクラの季節」の表紙

もう読んじゃったよ?な方は是非感想を下さい。
■感想フォーム



ちょこっとごにょ話


実は、一時期「先生」という職業に就きかけたことがあります。
その前段階で学生の頃、既に授業(80分を3クラスで)をしたこともあります。
壇上で一斉に視線を浴びる緊張感と、高揚感はたまらないですが
いろいろありまして、その道には進めなくなりました。

第01回~第04回まで、毎月物語を書いて気が付いたことがあります。
まず、自分の得意なジャンル。(第04回で言うと第十話)
それから自分が物語を通して描きたいもの。
これが明確になりました。

今までは、自分を試すように物語を書いていましたが
これからは自分の描きたいものをしっかりイメージして書ける気がしてます。
ジャンルについてはまだ書いていないジャンルもあるので
いろいろと挑戦をしていこうとは思います。

サラっと吹き抜ける春の風のように
第04回はあっという間に終わってしまいました。

もしかしたら登場していただいたキャラクターで嫌な気分になった方もいるかもしれません。
が、フィクションとして受け入れていただければなと思います。

読んで頂いて、ありがとーごじゃーました!
コメント、メール、メッセージ等でやる気が出ました。
こちらも、ありがとーごじゃーました!



今回の物語が面白かった方へ


各エピソードが他のエピソードと少しずつリンクしているという
今回の物語を【面白い】と感じる方に朗報です。

以前も書いていましたが
「みく子」の物語、「M線上のアリア」(共同自費出版します!)
今回の物語のようにそれぞれのエピソードの中でそれぞれとリンクしている物語なんです。

「M線上のアリア」は13人で書いているので
そのリンクの仕方も十人十色です。
あのシーンが実はこうだったんだ!とか
裏ではこんなことが!という物語になっています。

今まで「M線上のアリア」はmixi上でしか読めなかったのですが
出版化に向けて、その前段階として【ブログ化】します!


現在、その準備を進めておりまして、皆さんにご紹介できるようになったなら
是非、読んでみて頂きたいなと思います。
一話一話のボリュームはそんなに多くありませんが
現時点で300話を越える物語です。(もうじき完結します…するよね?)

またご紹介できるようになったら、改めて告知します。




さーて、エッセイブログらしくエッセイ書くぞー!

ちょっと笑った


エッセイ

 エッセイブログなのに、エッセイの書き方があやふやに。
 焦っても仕方がないので、思いつきを実行したら笑った。というお話。


ブログの更新って疲れますよね。


唐突になんだ?って話ですが
こうブログでも、なんでもいいんですけど
何かを世に出すのって大変だと思うんです。

それが仕事だとさらに大変だとも思うわけですが
最近、この【産みの苦しみ】と呼ばれるものは
ごくごく一般的に皆さんにも訪れてるんじゃないかなと。

ほら、ブログとかWEB上で日記を書いてたりするのは
間違いなく【産み】じゃないですか。
文章や写真なんかを世の中に出してるわけです。

そういう意味で、ブログなどを運営されている方にとって
ブログの更新って疲れちゃいますよね。ということが言いたい。



諦めて見つけた思いつきを実行


そんな【産みの苦しみ】があるので
今日は書きたい内容も特にないから、更新はやめよう!と思ったんです。
それよりも仕事しよう!と思って。
↑いや、仕事はしよう。

と、潔く更新を諦めたんですよ。
そしたら何気なく思ったんです。



一年前ってどんな記事書いてたんだろ?



それを確認してみますかね。って思いつきで実行したんです。



2007/04/23の記事へ
※別ウィンドウじゃないので「戻る」で戻ってくるか
 IE系ブラウザなら「shift」を押しながらクリック、firefoxなら「ctrl」押しながらクリックで。







えっとね、記事そのものにも笑ったんだけど









一年前も仕事中に更新してるんですよ。

すごく、髪の毛が切りたいです


エッセイ

 なら、切りにいけよ。ということになるのですが
 なにぶんお店では切らないので、簡単にはいかないことがある。というお話。


前に美容室行ったのは5ヶ月前。


別に美容室とかが嫌いじゃないです。
むしろ好きなぐらいです。

初めて行く店だったりすると
こう、左手の薬指に光る指輪を見られて…



スタイリスト
あれ、結婚されてるんですかー?
しのめん
はい。しちゃってますね。
スタイリスト
新婚さん?
しのめん
いや、もう五年目です。
スタイリスト
えっー!?見えない。
しのめん
可愛い娘が二人います。
スタイリスト
え?今おいくつでしたっけ?
しのめん
27です。
スタイリスト
若いお父さんですねー。
しのめん
ですよねー。




みたいな会話から
なぜかいつも担当してくれるスタイリストさんの人生相談を受けます。

やれ、結婚はしたいけど相手が見付からないだとか
やれ、仕事で休みが少ないから出会いがないだとか
やれ、結婚秒読み段階だったけど○○が××だとか

髪の毛を切られてるので逃げるわけにもいかず
「えーっ!?」「それは厳しいですね」「あー、なるほど」
とか言いながら乗り切るわけです。

まぁ、それも楽しいので美容室は好きなんですよ。
あの清潔な空間とか、シャンプーの心地よさとか
スタイリストさんとのおしゃべりとか
切り終わったあとの爽快感とか大好きです。

大好きなんですが、高い。
お値段が高い。お小遣いの半分とか使えるわけがない。

かと言って、850円カット!とかに行くと
嫁にあからさまにがっかりされるんですよね。
(自分もがっかりするんですけど)

そんなわけで美容室には行ってないのです。
結論だけ書けば、『金額が高いから』七文字で済む話(笑)



で、どうやって切ってるの?


私の髪の毛って多いんです。で、固い。
なのに伸びる速度が尋常じゃなく早い。
一ヶ月ぐらいで切り時になります。

で、前の話をぶり返すんですけど
毎月美容室になんて行けるわけがない。
ロン毛は似合わないし、セット、乾かす時間などがもったいない。

というわけで、いつも嫁に切ってもらってます。
基本バリカンです。

まぁ、こう「すく」ためのアタッチメントが付いてまして
坊主にはならないやつですけどね。

そのバリカンでブィーンと大まかに切ってもらって
髪型を決める前髪とかてっぺんとかは
自分でスキバサミ(子供用)を使って切ってます。

切った当日はよく解らないものの
次の日になると「あれ?これ変じゃない?」と気付いて修正するので
最終的に三日ぐらいかかります。


で、それならそれで、嫁に切ってもらえばいいんじゃないの?
って話になるんですが、ほら仕事で遅く帰ったりすると
どうしても出来ないじゃないですか。

夜遅くにブィーンとか鳴り響かせてたら
もうめくるめく大人の世界みたいじゃないですか。

そんなこんなで毎日髪の毛で重たい頭を引き摺りながら
仕事をしてたり、仕事をしてるフリをしています。



ちなみに


ワックスなどのスタイリング剤を付けるのがあまり好きじゃないです。
仕事柄、頭を使うことが多いのですが、考え事をしてるときは割と髪の毛をいじってます。
スタイリング剤を付けてると、どうしても手にそれらが付いてウガー!となるので
ワックスとかを付けないのです。

という話を美容室で言うと
ほぼ確実に「付けてください!」と怒られます。
綺麗なお姉さんに怒られるのは好きです。
(↑ちなみにと言ってまで話す内容じゃない)




ほんとに頭が重たい…。誰か、誰か切ってください!!
   (週末切るとは思うけれど)

テーマ:楽しく生きる
ジャンル:ライフ

もう4月が終わるんですね


エッセイ

 気が付いたら連休で更新してませんでした。
 そして4月が終わるということは、アレが始まるということ。そんなお話。


もう今年も1/3が終わりました。


早い。早すぎる。
1/3の純情な感情が流行って廃れるぐらい早い。
いや、微妙に解りづらい。

そんなこんなで4月があっという間に過ぎ去ってしまうわけですが
皆さんはあれか、ゴールデンなウィークに微妙になってなくて
適度に適当にお休みを満喫してる感じですか?

11連休の人は3日ぐらいボランティアでもしてなさい。



サクッと告知しましょうかね。


第05回ハコニワノベルを開催します。
今回はゴールデンウィークだったりするので
あまり【キーワード】が集まらないのではないか?
とか懸念してますが、構わず開催します。

あぁ、言うほどエッセイ書いてないなぁ…。
まぁ、いいけど。(いいのか)


第05回ハコニワノベルの【キーワード】募集記事は
5/2(金)にアップ予定です。

今回は従来のフリーワードにするつもりです。
運よく投稿できるタイミングであれば
気軽に【キーワード】を投稿下さいませませ。



どっしり書くぞー!!!

テーマ:楽しく生きる
ジャンル:ライフ

FC2Ad

  [D]esigned by 218*
Copyright c POSITISM All Rights Reserved.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。