POSITISM

適度に適当に。

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あ、あけてた


エッセイ

驚くほどあっけなく平成20年が始まってました。信じられる?平成になって20年も経ったんだぜ?

 そんなわけでみなさま、あけましておめでとうございます。旧年中はお世話になりました。本年も適度に適当によろしくお願いいたします。と定型ですが新年の挨拶とさせて頂きます。


いやぁ、平成20年ですって。

 平成元年のころ7歳だった自分へ教えてやりたい。君は20年後に二児の父親で職場から日記を書いてる人になるんだよ・・ってやめてあげて!なんかいろいろ誤解しそうだから。


 そんなこんなで年が明けていたのですが、みなさま年末年始といかがお過ごしでしたでしょうか?私はクリスマスまで忙しかった仕事もなんとか片付けて、ゆっくりごろごろゴロゴロと寝正月させてもらいました。それでも2日に水族館へ出かけたりもしましたが、基本的にごろごろゴロゴロしてました。


 9連休もあったのであーさん、ちぃさんとも一緒の時間を過ごして癒されまくって、今日仕事始めをしておりますが、正直さびしい気持ちでいっぱいだったりします。ちくしょうめ。まぁ、それでも仕事があることはありがたいことなので、今年も馬車馬のように働くと家庭がぐちゃぐちゃになるので、程よいバランスで働いていこうかと思います。



今年のテーマは【感謝】

 さんざん去年の記事で書いてきましたが、今年のテーマは【感謝】でいきます。感謝されるために何かをするのではなく、自分がそれをさせてもらえることに感謝していこうと思います。なにかしてもらったときに「すみません」ではなくて「ありがとう」を言う意識を持っていく所存です。



若干のリニューアルをします。

 本当に若干ですが、リニューアルを予定してます。というか本当はこの記事をアップするのと同時にリニューアルしたかったのですが、どうにも上手くいかない部分がありまして、それが解決したらリニューアルをします。


 ※年明けごろから「POSITISM」でJavaScriptエラーが発生しておりました。みなさまの閲覧環境によっては大変見苦しいものになっていた可能性があります。現在修正を完了しております。ご迷惑をおかけしました。



ついでに新しいことをはじめます。

 そんな大したことではありませんが、ちょっと自分を試してみたくなったので新しい試みをしていくつもりです。これにはみなさまの協力が必要なので、またお願いしたときには適度に適当にご協力をお願いします。



そんなこんなでスロースタートではありますが
本年も「POSITISM」ならびに、しのめんを
よろしくお願いいたします。
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テーマ:楽しく生きる
ジャンル:ライフ

あたらしいことはじめよう


ハコニワノベル

宇宙を作り上げることはできないけれど、部品があればロケットだって作れる気がする。だからそれを確かめてみようと思うんだ。

 はい、そんなわけで【ハコニワノベル】とか言う今作り上げたかのような、いや実際そうなんですけど、あたらしいことをはじめようと思います。



ハコニワノベルとは?

 【ハコニワノベル】は「POSITISM」を見に来ている方に協力して頂いて、しのめんが物語を書くというものです。


 えーいきなり過ぎて意味が解らないと思うので補足していきます。昨年後半からですね、何度も「みく子」という単語を発してきました。これ、mixiでやったコラボ小説企画なんですけど、私もそれに参加して小説というか物語を書きました。で、元々、小説のような物語のようなものを書こうとはしていたんですが、いつも書き終わることができませんでした。すべてが自由過ぎると書けなくなるんです。


 そんな私なのですが、「みく子」は書き終えることができました。なぜだろう?と考えたら、自分で全設定を1から考えなくても良いし、自由に書こうにも他の方の物語を壊すことができない制限があったからなんです。そういう制限の中で工夫して文章を書くのが思いのほか楽しかったんですね。なので、それを自分のブログでやっていこうじゃないか。そう思ったのがきっかけです。



で、実際に何をどうしていくの?

 簡単にいうと、「POSITISM」を見ているみなさんに、物語のキーワードのようなものをコメントしていただいて、それを元にしのめんが物語を書くというものです。例えば誰かが【中学校】とコメントすれば、物語の中に【中学校】が現れます。例えば【引きこもり】が書き込まれれば登場人物の誰かが【引きこもり】になります。【根暗な主人公】が書き込まれれば主人公は【根暗】になったりもします。


 要するにみなさんのコメントで頂いた設定を使って、しのめんが好き勝手に物語を書くというものなのです。はい。ちなみにmixi上で以前orangeさんが同じことをされてましたが、パ、パクってなんかないよ!と言い訳させてもらいます。(すごい勢いで土下座しながら)



やってみないとわからない。

 どうなるのかなんてまったく見えていないので、とりあえずやってみますか。というスタンスでいきます。そんなにコメントが集まるとも思わないので、特に制限は付けません。この記事のコメントで物語のキーワードのようなものを書き込んでくださいませ。



※注意事項
・キーワードをコメントで書き込んでください。
 (あらすじのようなものはスルーします。)
・コメントしてくれた人が物語りの中に登場する恐れがあります。
 (それは困る!って方はコメントにでも書いておいてください。)
・何かしらの展開は無いとは思いますが
 物語の権利はすべてしのめんにあることにします。
・書き込まれたキーワードをしのめんが曲解して扱う場合があります。




ま、やってみないと解らないのでお気軽に~。

また逢えるまで。 - 表紙 -


ハコニワノベル



■ もくじ ■

第一話
第二話
第三話
第四話
第五話
第六話
第七話
第八話
第九話
最終話


■ 感想フォームはこちら ■
(表紙の帯に使わせて頂く場合があります。)

■ ハコニワノベルとは? ■


■ 頂いたキーワード ■
・夕陽(蜜蜂リリィさん)
・コンピュータ総合商社HAL(まろんさん)
・海(志津さん)
・うなぎ(ちこさん)
・ツインテール(なつめさん)
・ミニスカート(なつめさん)
・花束(Riakiさん)
・初恋(るどさん)
・ケアルダ(黒さん)
・夏(すす*さん)
・双子(muuさん)
・ピエロ(ずまさん)
・三段腹(と~ちゃんさん)
・枝毛(ミッチーさん)
・みっこ米(ariesさん)
・雪(ひなたさん)


※この物語はフィクションです。
実在する人物、団体、その他とは一切関係がありません。

また逢えるまで。 - 第一話 -


ハコニワノベル

「またなんで?時給が低いの?それとも他の子と何かあった?」
「いえ、別になにもありません。すいませんが、お世話になりました。」

 またバイトを辞めた。数えてはいないけれどまた辞めた。理由は特にない。なんとなく・・・そう、なんとなく辞めた。高校を卒業してからなんとなく入った専門学校を卒業して、なんとなくフリーターの道を選んだ。母さんはすごい剣幕で怒っていたけれど、父さんは特になにも言わなかった。それから三年、バイトを始めては辞めるの繰り返しだ。
 家に帰り、自分の部屋に入る。モーター音、それからブクブクとエアポンプの音。電気を付けてから水槽に近付く。

「ただいま、ツイテル。またバイト辞めちゃったよ。」

 自傷気味に言ってみたものの、ツイテルは表情すら変えずに水槽の底にいた。そりゃそうだ、ツイテルはうなぎだから何か言うはずはない。でもただのうなぎでもない。ツイテルは頭が一つなのに尾が二つある、ちょっと不思議なうなぎだ。ツインテールだからツイテル。安易な名前ではあるが可愛いがっている。
 いきなり部屋のドアが開けられた。水槽の前で中腰のままドアを開けた人物を見上げた。そこには三段腹のくせに身体のラインがしっかりでる服と、見たくもない太ももを露出するようにミニスカートを纏った怪物・・・いや母さんだ。
 
「ちょっと!アツシ!あんたまたバイト辞めちゃったの!?これで何度目?」

「そんなの数えてないから知らないよ。」

「まったく、あんたって子はいつもそうやって適当にするから・・・」

「はいはい。」

「んもー!いい加減にちゃんと就職しなさい!はいコレ!」

「・・・なにコレ?」

「あんたの洗濯物でしょ!」

「そうじゃなくて、この上に乗ってるやつ。」

「いいから、目を通してみなさいね。」

 きちんと畳まれた洗濯物と一緒に一枚のチラシを渡された。どうやら派遣会社のチラシのようだ。チラシには「コンピュータ総合派遣HELP」と書かれている。母さんは僕にここに登録しろと言いたいんだろう。洗濯物を片付けると、とりあえず何かしら行動をしておかないとまた怒られる気がしたので、登録するだけなら無料だし、もしかしたらやりたい仕事が見付かるかもしれない。という軽い気持ちでベッドに腰掛けながらケータイでチラシに書かれている電話番号をプッシュした。

「お電話ありがとうございます。コンピュータ総合派遣HELPでございます。」

「あのー、派遣の登録をお願いしたいんですが。」

「ありがとうございます。ではまずお名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」

「笹川といいます。」

「笹川様ですね、ありがとうございます。それでは当社の派遣システムの簡単な説明、それから面接の日時をお伝え致します。」

 妙にテンションの高い人が電話の相手だった。僕は「はぁ」とか「へぇ」という相槌をしながら聞いた。最終的に明日その派遣会社で面接を受けることになった

 翌日、派遣会社を訪れるとパーテーションだけで作られた簡易的な待合室に通された。長机にパイプ椅子が二脚あるだけの待合室。社内の電話のコール音やその応対までがはっきりと聞こえている。この会社は大丈夫だろうか?

「お待たせしました。笹川様でいらっしゃいますでしょうか?」

 突然現れたのはスーツ姿にメガネ、キャリアウーマンのような印象を受ける女性だった。「はい、そうです。」と答えると、その女性は奥のパイプ椅子に座る。促されて僕はその女性に向き合う形で椅子に座った。

「それでは面接を始めさせて頂きます。」

「え?ここで?ここで面接するんですか?」

「そうですよ?何か問題でも?」

「いや、別にないです・・・。」

「それでは本日、笹川様の面接を担当させて頂きます、ミッチーと申します。」

「み、みっちー?それはあだ名か何かですか?」

「私ね、ガッチガチに固いの無理なの。だからミッチーでよろしく!」

「はぁ・・・(この会社大丈夫か?)」

 その後、学歴だとか職歴、派遣登録しようと思ったきっかけや、この会社を知った媒体など、在り来たりな面接をした。ただ面接の合間に「うっそ、フリーター?」とか「あー私が高校生の頃、部活でさー・・・」とか、更には「最近さー枝毛が増えて困ってるんだー。」というカミングアウトなど、面接にはまったく関係のない合いの手を入れられたけれど、面接は無事に終わった。
 どうやら面接は合格らしく、すぐに派遣の登録手続きをして数件の仕事情報を見せてもらった。その中でよさそうな仕事があったので申し出ると、後日その仕事の面談に行くことになった。さすがに総合派遣と社名にうたっているだけはあってか、紹介される仕事の件数の多さと対応の早さに驚いた。あと、面接を担当したミッチーさんがこれから僕の担当になるらしい。いきなりケータイの番号とメルアドを聞かれ早速メールで「よろしくー☆」とか入ってきた。これにも驚いた。この会社大丈夫か?いやこの場合、この人大丈夫か?
 家に帰ると母さんが「どうだった?」としきりに聞いてくるのが面倒だったけれど、派遣登録したことや今度仕事先の面談があることを伝えると喜んでいた。これでまたしばらくは何も言われないだろう。自分の部屋に戻り、ツイテルに「ただいま」を言うと、疲れていたのかベッドに横になるとすぐ眠ってしまった。
 後日、ミッチーさんから連絡が入り、仕事先の面談を無事に済ませ、僕は働くことが決まった。僕はそこで思いがけない再会をする。



第二話へ≫

テーマ:家作り日記
ジャンル:ライフ

また逢えるまで。 - 第二話 -


ハコニワノベル

 なぜかスキップしながら先導するミッチーさんに連れられて、今日から働くことになったそこそこ有名な企業のビルの中に入った。そこの担当者との挨拶が終わるとミッチーさんは「頑張ってねー♪」とか言いながらスキップして帰っていった。大丈夫かあの人?まぁ、楽しそうだからいいけど。
 担当者の人から職場の各施設案内や注意事項、それからセキュリティや機密事項に関する説明を受けた。さすがそこそこ有名企業なだけはある。それらが終わると作業場に通されたが、会議室のような場所に数十名がひしめき合うように座って、パソコンに向かっている。業務内容はデータ入力だとか、不整合なデータの発見と報告らしい。コンピュータ関連の専門学校を出ているので、パソコンの操作や標準的なソフトの使い方が解ると伝えると、担当者の人は「それは良かった。ここに来る人はパソコンを触ったことがない人が多くて・・・」と言っていた。
 自分の席に案内され、そこの業務リーダーと軽く挨拶を済ませると早速実際の作業のやり方等を説明されて仕事が始まった。仕事事態は難しくもなんとも無かったが量が半端じゃない。周りの人はどうやらパソコンの知識があまりないらしく、キーボードも両手の人差し指だけで打ち込んでいる。あっという間に昼になり、リーダーに連れられて昼食となった。

「いやー、笹川君がパソコンできる人で良かったよー。」

「そんなにパソコン使えない人が多いんですか?」

「派遣で来る人の7割ぐらいが未経験だね。」

「そんなに多いんですか・・・へぇ。」

「単調な作業が多いし、大変だと思うけど頑張ってね。」

「はい。よろしくお願いします。」

 そんな会話をしながら昼食を取り、また仕事の続きをした。やること、覚えることが多くて大変だ。隣りの人からパソコンの操作についても質問されてそれに答えたりもした。なんとなく作業の進め方が解ってきたので休憩を取るため別の場所にある自動販売機などが置いてあるスペースに移動した。缶コーヒーでも飲もう。



「え?・・・あっくん?」

 自動販売機から缶コーヒーを取ろうとしてると背後からそう言われた。振り返ってみると少し不安そうにハンカチを握り締めながら、首をかしげている女の子がいた。瞬間、背骨に電気が走ったかのようなショックを受けた。

「もしかして・・・す、鈴ちゃん?」

「そうだよー、うわー良かった人違いじゃなくて。」

「えーっと、高校卒業してからだから・・・7年ぶり?」

「そうだねーもう7年も経ったんだね・・・。」

 鈴(すず)ちゃんは高校の同級生で、いつも明るくみんなの中心にいるようなアイドル的な存在だった。沢山の男子の憧れの的で、密かに僕も彼女のことが好きだった。というか初めて好きになった子だ。中学卒業まで僕は特に人を好きになったりしなかった。高校に入ってたまたま同じクラスだった鈴ちゃん。いつもクラスの隅っこにいた僕とクラスの中心にいた鈴ちゃん。風の噂で彼氏がいることを知った日の夜、本気で泣いた。その時、自分が鈴ちゃんのことを好きなんだって気付いた。でも2年になるとクラスも別になり、想いも伝えられないまま卒業を迎えてしまった。

「いつからここで働いてるの?」

「今日からなんだ。派遣でだけど。鈴ちゃんは?」

「私は、半年ぐらい前かな。」

「へぇ、ほんと偶然だね。」

「そうだね。」

 その後、お互いの現状だとか他愛のない会話をした。お互いに連絡先を交換しあって、作業に戻ろうとしたとき、不意に鈴ちゃんに聞かれた。

「ねぇ、あっくん。あの日のこと覚えてる?」

「え?・・・あの日?」

「ほら、高校最後の時の夏休みにさ、みんなで海に行ったじゃない。」

「えっと・・・」

 鈴ちゃんと会話をしていて不思議だと感じていた。僕はクラスが別になってから鈴ちゃんとまともに会話した記憶がない。いや、今聞かれているあの日、高校最後の夏休みの一日だけだ。思い出してきた、最後の夏休みに友達数人で海に行こうと誘われた。当日女子がいたことにも驚いたけれど、鈴ちゃんがいたことにもっと驚いた。クラスが変わってからも想いは変わらなかった僕は、妙に張り切った覚えがある。

「あー、あったね、高校最後の夏休みだからーって言いながら。」

「そうそう、・・・それで、あの時のこと覚えてる?」

「え?あの時?」

 何度思い出そうとしてもその日はみんなで海に行ったとしか思い出せなかった。何をしたとか、どんなことがあったのかが思い出せなかった。

「忘れちゃったんだ・・・」

「ぁ、え!?」

「ううん、もういいよ。じゃぁね。」

 そう言うと悲しそうな表情のまま、鈴ちゃんは足早に去ってしまった。飲みきった缶コーヒーを持ったまま、僕はしばらく思考停止してから作業場へと戻った。そのあとは放心状態のまま作業を続けて家に帰った。



≪第一話へ
第三話へ≫

また逢えるまで。 - 第三話 -


ハコニワノベル

 家に帰っても鈴ちゃんの悲しそうな表情が脳裏に焼き付いて、食事も上の空、お風呂ものぼせるまで入ってしまった。母さんから「初日で疲れてるんだから、早く寝なさい。」と言われそのまま眠った。



「忘れちゃったんだ・・・」

 夢の中でそう聞こえて目が覚めてしまった。時計は午前0時を指している。その後もなんだか寝付けなくて、ずっと鈴ちゃんのことが気になった。どうやら僕は今でも鈴ちゃんのことが好きみたいだ。
 それにしてもあの高校最後の夏休み、海に行ったあの日に何があったんだろう。確か「男だけで行くからお前も行こうぜ。」とか誘われて行ってみたら、実は女子のグループと合同で僕は人数あわせで呼ばれたんだ。だから最初はバカバカしくなって帰ろうと思っていた。そしたら鈴ちゃんが来たんだっけ。あとは電車とバスを併用して海に行って、泳いだり砂に埋められたりして、夜は花火ではしゃいだ。それぐらいだったと思う。

「んー、何度思い出してみてもあの時というのが解らない。あーもー!僕は何をしたんだ?鈴ちゃんと何があったんだっけ?なーツイテル、教えてくれない?」

 相変わらず無表情で水槽の底にいるツイテルに聞いてみたところで答えてくれるはずはなかった。だけど深夜でテンションが上がっていた僕はツイテルの水槽の前に立つと「教えて!ツイテル様!」だとか叫んでいた。

「お願いだよ!鈴ちゃんに嫌われたくないんだよ。頼むよー。」

「あぁ、なんとか過去に戻れないかなぁ。そしたらあの日のこと絶対に忘れないようにするのに。」

「なぁ、ツイテル。僕を過去に連れて行って!」

「んーー、アダブラカタブラ、タイムスリーップ!」

「これじゃ、ダメなのか!?んー、じゃぁ・・・よしっ!」

 僕はツイテルの身体を表すように両手の人差し指を立ててくっつけて、それを頭上へ突き出しながら叫んだ。

「ツイテル、テルテル、ツインテール!」

 むなしく響く叫び。ふと窓に映る自分の姿が情けなくなって素になった。「そりゃ無理だよなー。」と呟いたそのときだった。

「未来に行きまショ、テールテル♪」

「過去に戻りまショ、ツインツイン♪」

 驚いて声の方を見ると壁際に派手な服を着た二人組みがいた。どうやらピエロのようだ。二人とも壁の方を向いている。

「あれ?向き間違っちゃった?」

「あれあれ?向き間違っちゃったねー。」

「ワタシの名前は、な・つ・め♪」

「ワタシの名前は、ち・こ♪」

 ヘンテコな歌で自己紹介をしながら二人組みが振り向いた。どうやら青いピエロが「なつめ」、赤いピエロが「ちこ」というらしい。いや、それよりもどこから入ってきたんだ?何者?状況が掴めないまま、僕は呆然と二人のピエロを見ている。

『ワタシたち、双子なんだよー!』

 二人で手をとって踊りながら同時に言ってきた。どうやら女の子のピエロみたいだ。楽しそうに踊っている。

「えーっと、何からつっこんでいいのか・・・」

「つっこむの?」

「つっこむのー?」

「えっとね、君たちは誰?」

「ワタシの名前は、な・つ・め♪」

「ワタシの名前は、ち・こ♪」

「よし、そうじゃない。名前は解ったから。」

「名前を覚えられたー!どうしよう?」

「名前を覚えられたねー?どうする?」

「覚えたらダメなのか!ってそこじゃなくて・・・その、君たちは何者なの?」

「ワタシたちは、時間のピエロさ♪」

「ワタシたちはー、時間のピエロー♪」

「時間のピエロ??」

「時間を司る神様なのだ。」

「なのだー。」

「・・・えっと、君たちはどうやってここに来たのかな?」

「あれ?信じてないね?」

「あれあれ?信じてないねー?」

『ワタシたちは、時計うなぎに呼ばれてやってきたんだよー♪』

「時計うなぎ?」

 相変わらず水槽の底にいるツイテルに目をやった。別に普段と変わりはない。視線を戻すと二人の姿はなく、変わりにベッドで飛び跳ねていた。

「ベッドだー♪」

「ベッドだねー♪」

「あの、あのさ、よく解らないんだけど!」

「ワタシも解らなーい♪」

「ワタシも解らないよー♪」

「で、結局のところ君たちは何をしにやってきたの?」

「未来に行きまショ、テールテル♪」

「過去に戻りまショ、ツインツイン♪」

『過去にも未来にも連れてってあげるー♪』

「えっ!?」



≪第二話へ
第四話へ≫

また逢えるまで。 - 第四話 -


ハコニワノベル

 突然現れた時間のピエロだという双子のピエロを正直信じるつもりもなかった。だけど、もし本当なら、あの日に戻って何があったのかを知りたい。思い出したい。僕は双子のピエロに聞いてみた。

「それって、何時へでも連れてってくれるの?」

「未来へ行くのは片道キップ♪」

「過去へ行くのは往復キップ♪」

「え?どういうこと?」

「今、この現在よりも未来へ行くと辿り着いた先が現在になるよ♪」

「過去に戻ったら12時間後に現在に戻ってくるよ♪」

「へ、へぇ、そうなんだ。ねぇ、記憶とかは?今の記憶を持ったまま過去に戻れちゃったりするの?」

「戻れるよ♪」

「戻れるよー♪」

「えっ、そうなんだ!それって便利だね。逆に過去から現在に戻ってきたときも記憶は持ったままなの?」

「待ったままだよー♪」

「持ったままー♪」

「それってさ!簡単に人生とか変えれちゃうね!」

「自分で現在の自分が耐えられないような変化はダメー♪」

「ダメー♪」

「そうなんだ。でもなんで?」

「現在の自分が変化に耐えられなくなると、その人はねー♪」

「その人はねー♪」

『木っ端微塵になっちゃうのー♪』

「木っ端微塵?それってどういう・・・」

「跡形もなく、消えちゃうの♪」

「元々いなかったことになっちゃうのー♪」

 過去に戻って現在の自分が大きく変わるようなことをすると、木っ端微塵、つまり存在そのものが消えてしまうらしい。それから過去と現在を行き来しても記憶はそのままらしい。これは好都合だ。あと、現在よりも未来に行くと二度と今、この瞬間の現在には戻れなくなるらしい。でも、現在よりも未来にいくつもりなんて無いし、あの日の記憶さえ思い出せるならそれでいい。まぁ、ウソかどうかを確かめるために過去に連れて行ってもらうよう頼む価値はあるんじゃないか。

「えっと、なつめちゃんにちこちゃん。」

「なにー?」

「なになにー?」

「僕をね、僕が高校3年生のときの夏休みに友達と海に行った日に連れてってくれない?」

「えーヤダー!」

「えーいいよー♪」

 なぜか青いピエロのなつめが嫌がった。赤いピエロのちこは喜んでいる。どうやら過去に連れて行ってもらうにはちこがメインになるらしく、未来に連れて行くのがメインのなつめには面白くないらしい。頬を膨らませてあからさまにぶーぶー言っている。

「ほら、過去に戻って12時間経ったら現在まで戻って来るんでしょ?そのときはなつめちゃんの力を使って戻ってくるんじゃない?」

「そうだったー♪」

「そうだそうだー♪」

 よかった、なんとか機嫌を直してくれたみたい。ここでヘソを曲げられて過去に戻れなくなるのはごめんだ。もし本当に戻れるのであれば、このチャンスを逃したくはない。

「それじゃ、ちこ。ゲートを開いて。」

「はーい♪」

 元気よく返事をすると、ちこはヘンテコなダンスを踊りながら「過去に戻りまショ、ツインツイン♪」と歌ってる。ダンスは激しさを増してフィニッシュは僕がやったように、両手の人差し指を立ててくっつけながら頭の上に乗せた。「れっつごー♪」その掛け声と共に、部屋が真っ暗になった。いや、世界が消えてしまったかのように感じた。何も見えない、何も聞こえない、何も感じなくなった。
 パチン!という音が聞こえたかと思うと人ごみが見え、その音も聞こえ始めた。どうやらここは駅らしい。思い出してきた、これはあの日の待ち合わせ場所に向かっている最中だ。男だけで海に行くと思い込んでいる僕だ。本当に過去に戻ったんだ。当時付けていた腕時計が懐かしい。時刻は10時を迎えようとしている。僕は記憶を頼りに待ち合わせ場所へと向かった。



≪第三話へ
第五話へ≫

また逢えるまで。 - 第五話 -


ハコニワノベル

「遅ぇーよ、笹川!」

「ほんとほんと、来ないかと思った。」

「へー、あと一人って笹川君だったんだ。」

「いがーい、笹川君ってこういうのに参加するんだね。」

 男子も女子も好き勝手言っている。そうそう、こうやって人数合わせで誘われたんだもんな。で、ちょっと嫌な気分になって帰ろうと思ったら、鈴ちゃんが来るんだ。

「ごめーん、遅くなっちゃったー。」

「鈴ちゃーん!大丈夫大丈夫!こっちも今やっと笹川来たとこだし、全然OK!」

 来た!うわぁ、やっぱり可愛い。現在の鈴ちゃんはあまり変わっていないと思ったけど、やっぱり成長してるんだなぁ。へぇ、この鈴ちゃんがあぁなるのか。そんなことを考えていると鈴ちゃんと目が合って、なんとなく微笑まれたような気がした。

「おい、笹川!なに鈴ちゃんみてデレデレしてんだよっ!w」

「鈴ちゃん、笹川が変なことしたらすぐ言って!俺がコイツぶっ飛ばすから!」

 鈴ちゃんは恥ずかしそうに「大丈夫」と言うだけで、他のやつらは大笑いしてた。(まったく、君たちはガキだな。)その後、全員で電車に乗って目的の海に近い駅に向かう。途中、杖を突いたおじいさんが乗ってきたので席を譲ってあげようと立ち上がると、同時に向かいに座っていた鈴ちゃんも立ち上がってなんだか気まずくなったりしたけど、電車での移動は順調に進み目的の駅に到着した。
 ホームに降りると、どこかしら塩の匂いがして全員のテンションが上がった。しかし、海水浴場まではここから更にバスで20分ほどのところになる。ジリジリと焼け付く日差しを出来るだけ避けながらバス停へと移動すると、ちょうどバスが行ってしまった後なのか15分待ちになった。「俺はコンビニに非難する!」そう一人が言うと続いてその他のやつらがぞろぞろとコンビニへ逃げ込んで行った。気付いたら鈴ちゃんと二人きりになっていた。

「やっぱり優しいよね、笹川君。」

「へ?え?あ、うーん、そうかな?」

「そうだよ、ほら、おじいちゃんに席譲ってあげたじゃない。」

「いや、あれは・・・その、当然のことをしたまでだし・・・」

 鈴ちゃんが顔を覗き込みながら「そういうとこがやっぱり優しいなぁ。」と少し冗談みたいに笑っていた。心の中は大人だけど、どうにも鈴ちゃんに見つめられたりすると照れる。なんとか平常心を保って「あの時」をしっかり覚えておかなくちゃ。

「あーぁ、このまま時間なんて止まっちゃえばいいのにね?」

「え?」

「あ!・・・ううん、なんでもないなんでもない。ほら、もう今年で卒業でしょ?そしたらみんなバラバラになっちゃうじゃない。ちょっと寂しいなーって。」

「あぁー、そうだね。今年で卒業しちゃうんだよね。」

「そうだよー、あっという間だったなー高校生活。」

「でもまだ半年あるよ?」

「うん。そうだね。あ、笹川君は進路どうするんだっけ?」

「僕?まだ決めてないんだけど、たぶん専門学校に行くんじゃないかな?」

「なんで決めてないのに専門学校に行くって解るの?」

「えっ!!?」

 そうか、ここは過去。僕は既にこの日を経験しているし、このあとの僕がどうなっていくかもそれなりに知っている。あまり迂闊なことは話さないほうがいいかもしれない。

「えーっとー・・・なんとなくだよ、なんとなく。鈴ちゃんの進路は?」

 そう言うと、鈴ちゃんは目を大きく見開いて僕の顔を覗き込んでいる。なんだ?聞いちゃいけないことだったのか?それとも鈴ちゃんの進路は有名で誰でも知ってることなのか?

「今、名前で呼んでくれた?」

「へ?え?・・・ぁ、うん。」

 そうか、しまった!僕は鈴ちゃんのことを苗字で呼んでいたんだった。心の中でずっと「鈴ちゃん」だったんだ。これは不味いことを言ってしまった。どうしよう、なんて言い訳すればいいんだろう。

「嬉しいっ!」

「えっと、ごめ・・・へ?」

「嬉しいなー。笹川君が私のことを名前で呼んでくれるなんて!こんなことあったかなー?いや、嬉しいからいっかー。」

「は、へ、えっ・・・その・・・」

「じゃぁ、私も名前で呼んじゃおう!アツシ君!んー、ちょっと硬いから・・・あっくん!うん、これで決まり。」

「あ、え、うん・・・えと、はい。」

「あははー、照れなくていいって!」

 あれ?この日にこんなに鈴ちゃんと話したか?そういえば現在で鈴ちゃんは僕のことを「あっくん」と呼んだ。それは過去にそう呼んだことがあるってことだ。そうか、こういう経緯だったのか。でもなんでそんな大切なこと忘れてたんだろう?

「でも、これはみんなの前では呼ばないようにするね。」

「へ?なんで?」

「私だけが笹川君を名前で呼ぶという特権を持ってるみたいだからw」

「そんな特権いる?」

 その後、しばらく笑い合った。そうか、みんながいる前で呼ばれることがなかったから覚えていなかったのか。もしかするとこの後もそう名前では呼ばれないのかもしれない。鈴ちゃんが冗談で言っただけかもしれないし。
 しばらくしてバスが到着すると、友人たちはまたぞろぞろとコンビニから戻ってきてバスに乗り込んだ。バスは窓を全開にして潮風を感じさせながら海水浴場の方へ走り出した。



≪第四話へ
第六話へ≫

また逢えるまで。 - 第六話 -


ハコニワノベル

 海水浴場に到着するとなぜか男子全員から荷物を「頼むわ!」と渡された。あぁ、そうか思い出せなかった理由が少し解った。そう、僕は高校1年のころからずっと軽くではあるけどいじめを受けていたんだ。確かこの日は雑用ばかりをやらされることになるはず。今になって思えばどうしてこれぐらい「辞めろ」とか言えないんだろう。いや、待てよ。今ここで反抗して言いなりにならないようにすれば、もしかしたら僕の人生はもっと良いものになったんじゃないか?よし。

「やめ・・・」

 木っ端微塵。不意に双子のピエロから聞いた話を思い出した。そうだ、自分で自分の人生を大きく変えてしまうのはダメなんだった。記憶を持ったまま過去に来れるのはすごいことだけど、それは容易く自分の人生を変えようとしてしまいやすい。あの時、こうしておけば。なんていうのは今までで何度も味わってきてるじゃないか。何か行動するにしても注意しないとけないな。そんなことを考えていたら急に怖くなってきた。

「ちょっとー!男子ー!笹川君に荷物押し付けるの、辞めなよ!」

「あー、鈴ちゃんたちも笹川に荷物預けていいって、な?笹川!」

 強く肩を叩かれて「ぇ・・・あ、うん。いいよ、僕が荷物運ぶから。」とだけ言った。満足そうに男子たちは海に向かって走っていった。女子たちは自分の荷物をしっかりと持ってその後に続いていく。僕と、僕の斜め前で腰に手をやりながら怒っている鈴ちゃんだけが取り残された。

「んもー!こういうのって嫌い。笹川君もハッキリ言ってやればいいじゃない!」

「んー、いつものことだから。」

「もぉ!なんでいつもそんなとこまで優しいかなー!・・・ほら半分持ってあげる。」

 鈴ちゃん、僕は別に逃げてるわけじゃないんだ。僕の今回の目的は「あの時」をしっかり忘れないようにするためなんだ。だから忘れていたあまり思い出したくない思い出だけど、また同じ経験をしたってかまわない。僕にとって大切なのは現在の僕なんだから。
 荷物を半ば強引に半分奪われて歩きながら思い出す。そういえば、この時よりも以前に同じようなことを鈴ちゃんに手伝ってもらったような気がする。
 二人で荷物を運び終えると、軽く泳いできた男子たちに買出しを頼まれた。思い出を頼りに素直に従う。なぜか思い出と少し違うような気がしたのは鈴ちゃんも一緒に買出しに来ていることだ。
 その後も、飲み物を頼まれたり、砂に無理やり埋められたりしたけれど、鈴ちゃんがこっそり助けてくれた。暗くなったら花火をしようという話になり、当然のように花火を買いに行かされた。そのときも鈴ちゃんが付いて来てくれた。

「えっとさ・・・みんなと一緒に待ってていいのに。」

「私が行きたいだけだからー。」

 大きな夕陽が海に沈んでいく。赤く染まった空とその色を写す海。夕陽は徐々に赤々と変色しながら海の彼方に沈んでいく。
 その景色を見て思い出した。僕は、鈴ちゃんに想いを告げずに卒業したと思っていた。だけど、この日、この時、この夕陽を見ながら僕は鈴ちゃんに告白している。
 告白をしたことは思い出したけど、告白の言葉が思い出せない。確かにこのタイミングで告白をしたはずだ。この告白が現在の鈴ちゃんが言っていた「あの時」なんじゃないか?思い出せ!どんな告白をしたんだ?早くしないと現在が大きく変わってしまうんじゃないか!?
 焦れば焦るほど、言葉は思い浮かばない。どうしよう。どう言えばいいんだ?

「おーい、どうしたのー?おーい、あっくん?」

 いつの間にか立ち止まっていたらしい。それを心配してか鈴ちゃんが顔を覗き込んでいる。あぁ、そうか。そうだよ。思い出した。海に沈む夕陽をバックに鈴ちゃんのシルエットが重なる。

「おーい、元気ー?」

「ずっと、君が好きでした。」

「へ?」

 僕は両手を伸ばした。手のひらで夕陽をすくい上げるように。

「え?なに?」

「僕からプレゼント。」

「ぇ?・・・なにもないよ?」

「こっちに来てもらってもいい?」

「え・・・?いいけどさ・・・。」

「夕陽の花束。僕は君のことが好きです。」

「・・・ありがとぅ。」

 一度経験しているくせに、逃げ出したくなるほど恥ずかしかった。高校3年にもなってなんというクサい告白をしてるんだ。いや、だからこそ記憶に残らないようにしていたのかもしれない。日焼け以上に顔が熱い。
 その後二人とも無言のまま大量の花火を買ってみんなの所へ戻った。日が沈み薄暗くなったころから僕たちは花火でおおはしゃぎした。花火が終わると告白タイムみたくなったけれどあまり覚えていない。僕は現在の鈴ちゃんが言っていたであろう「あの時」を、僕が鈴ちゃんに告白した時のことをしっかり脳裏に焼き付けていた。
 帰りのバス、電車の中でも僕と鈴ちゃんだけは無言だった。男子がゲームの話で盛り上がって「笹川はさ、じゅもんで言うとニフラムとかじゃね?」とか「まほうならケアルダだな。」「あはは!微妙!」とか言ってたけど気にならなかった。腕時計は午後9時を回っている。もうじきこの過去から現在に戻ることになるのか。ちょっと不思議な体験だったな。自分の記憶ですらなんとなくで覚えていたのがよく解った。僕はずいぶんと鈴ちゃんに助けられてた。ちゃんと覚えておこう。
 朝集合した駅に到着すると、それぞれが家に向かって帰っていった。僕は別に帰らなくてもあと数分で現在に戻るのでそのままぼーっとしていた。



「笹川君!」

 急に名前を呼ばれた。すると帰ったはずの鈴ちゃんが走って近付いて来る。息を切らせながら目の前に辿り着くと、呼吸も整えぬまま僕を見つめる。

「笹川君・・・あのね、今日・・・ね、私、告白して、もらって・・・嬉しかった。」

「ぅぇ!?あ、うん、あー、えーっと。うん。」



「わ、私も!・・・私も笹川君のことが好き!」

「っえ?」



「だから、私と付き合って下さ・・・」



 瞬間、世界が消えてなくなった。何も見えない、何も聞こえない、何も感じない。いや、聞こえる。「未来に行きまショ、テールテル♪」ヘンテコな歌が聞こえる。それから「れっつごー♪」という掛け声。その次に聞こえたのはモーター音、それからブクブクとエアポンプの音だった。



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また逢えるまで。 - 第七話 -


ハコニワノベル

「おかえり♪」

「おかえりー♪」

「どうだった?」

「どうだった?どうだった?」

 僕は自分の部屋にいた。時計は過去へ行く前と変わっていない。現在に戻ってきたんだ。「ねぇねぇ?」「ねぇねぇー?」と感想を聞いてくるピエロたちの声が遠くに聞こえるほど、僕は違和感を感じている。
 あのクサい告白は恥ずかしいから忘れようとしていたのは解る。でもなんだ、最後、あの現実に戻る間際のやり取りはなんだ?告白してその相手が私も好き?それって告白が成功しているってことじゃないか?初めて好きになった女の子に告白して、相手も自分のことを好きだと言ってくれる。そんな大切なこと忘れるだろうか?しかも最後確かに「付き合って下さい」と言われなかったか?これはどういうことだ?考えるよりも早くにある予感がした。同時に胸騒ぎ。

「ねぇってばー!どうだった?」

「ねぇってばー!どうだったー?」

「あのさ!こういうの聞いていいのか解らないんだけど・・・」

「なにー?」

「なになにー?」

「僕の他にもあの日の同じ場所に行った人っていたりする?」

「いるよー♪」

「いるいるー♪」

 ここから先がなかなか言葉に出来なかった。聞いてしまってはいけない。そんな気がした。何度も聞こうとしてはためらった。きっと違う。きっと違うんだ。そう言い聞かせた。それでも胸騒ぎは大きくなってくる。僕はゆっくりと言葉にした。



「それって、もしかしてさ、鈴ちゃんだったりしない?」



「すずー?正解正解♪」

「正解正解♪」

「でも、すずーはダメな子だったよ♪」

「ダメな子だったー♪」

「ワタシたちの説明も聞かずに過去に行っちゃったもんね?」

「それから自分の人生を大きく変えちゃったもんねー?」

「うふふ♪」

「あはは♪」

『木っ端微塵だネー♪』

 やっぱりそうだ。僕が今さっき過去で出会った鈴ちゃんは、現在の鈴ちゃんが過去に戻っていたんだ。だからあんなに一緒にいたんだし、話もしたんだろう。告白したのは思い出した。それは確かに過去にあった事実だ。だけど、鈴ちゃんが僕の告白にOKをくれるなんていうのは本当には無かったことなんだ。

「ねぇ、木っ端微塵って現在に戻ってきた瞬間になるものなの?」

「それはね♪」

「それはねー♪」

「過去で変えたことは♪」

「変えたことはー♪」

『現在に戻ってきてから24時間後に効果が現れるのー♪』



「と言うことは、現在に戻ってから24時間後に現在の自分が耐えられない変化だったら・・・」

『木っ端微塵だネー♪』

「ねぇ!鈴ちゃんが過去に行ったのはいつ!?」

「えっとー、この現在からだとー・・・うん、昨日だ♪」

「昨日だー♪」

『もうすぐ木っ端微塵だネー♪』

 僕は冬だと言うのにコートも持たずに家を出た。出る前に母さんが「夜中に叫んだりするの辞めなさい!」とか言っていた。リビングのテレビでみっこ米とかいう幻の米が紹介されている。だけど、今はそれどころじゃない。ケータイから鈴ちゃんに電話をかける。

「もしもし、鈴ちゃん?」

「・・・あ、あっくん。どうしたの?」

「あのね、今から会えないかな?大事な話があるんだけど!」

「・・・今から?・・・・・・」

「今すぐじゃないとダメなんだ!」

「・・・解った。駅前の公園解る?」

「解るよ!今から行くから!」

 電話が終わるまで家からどこに向かって急げばいいのか解らずグルグル回っていた僕は、駅に向かって走り出した。鈴ちゃんは過去で自分の人生を大きく変えてはいけないことを知らなかった。何も知らなかったのに木っ端微塵になるなんて悲しすぎるじゃないか。だけど、そもそもどうして過去に戻った?どうして現在を変えようとした?鈴ちゃんは明るくて勉強も出来たじゃないか、高校卒業後は希望していた大学に行ったはずだ。人生を変えてしまいたいほどの後悔なんてあるのか?
 ・・・走る走る走る。口の中の水分が奪われていく。階段を駆け上がる、その度に足が重たくなる気がした。線路が見えた、駅が見えた。公園の入り口で止まる。胃液が逆流してきそうになるのを腹の中に押し戻してから公園に入った。寂しげな外灯の下にあるベンチに鈴ちゃんが座っていた。



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また逢えるまで。 - 第八話 -


ハコニワノベル

「お、お待たせ。」

「・・・ううん。私も今来たとこだから。」

「えっと・・・今日はごめん。」

「え?」

「ほら、あのー、今日さ高校最後の夏休みの話しになったでしょ?」

「・・・うん。」

「で、僕が思い出せなくてさ。・・・ごめんね。」

「・・・それを謝るためにわざわざ?」

「いや、・・・それもあるけど、違うんだ。」

「・・・?」

「やっとね、思い出したんだ。鈴ちゃんに告白したこと。」

「・・・そっか。」

「うん。」

「・・・嬉しいな。だけどね、あっくん。私、もうダメなんだ。」

「どういうこと?」

「私ね、もうすぐ消えちゃうの。」

「それってさ・・・木っ端微塵になるってこと?」

「えっ!?・・・なんで?なんで知ってるの?」

「僕も、過去に行ってきたんだよ。」

「・・・そっか。」

 鈴ちゃんは「なら隠しても仕方ないか」と言いながら立ち上がると僕をまっすぐに見つめてきた。



「・・・私、欲張っちゃった。」

「え?」

「私ね、高校1年生の時からあっくんのことが好きだったんだ。」

「ぇっ?・・・え?う、ウソ・・・だって鈴ちゃんあの時彼氏がいたんじゃ・・・。」

「それ、ウソなんだ。」

「うそ・・・?」

「あの頃、3年生の黒井先輩からしつこく付きまとわれて・・・だからウソ付いたの。彼氏がいるっていうウソのおかげで黒井先輩から付きまとわれなくなったけど、逆に好きな人に好きと伝えられないままになっちゃった。」

「・・・で、でもなんで僕なんかを?」

「あっくんは、優しくて、強いから。」

「僕が・・・強い?」

「あの頃ね、黒井先輩のことが好きな2年生の女子グループから因縁を付けられちゃって、ことあるごとに呼び出されていじめを受けてたの。」

「そんな・・・」

「あ、やっぱり覚えてないんだ。」

「・・・なにを?」

「そんな私を助けてくれたのは、あっくんなんだよ?」

「・・・僕が!?」

「大雨の日、私その人たちに傘を壊されちゃって、帰ろうにも帰れずに壊れた傘持ったままでぼんやり雨を見てた。そしたらあっくんが来てさ、『菅那さん、これ使ってよ。僕は身体丈夫だから大丈夫!』とか言って雨の中走って行っちゃったの。でも翌日から二日間、風邪で学校休んでたけど。」

「そ、そんなのあったかなぁ・・・」

 ふと見ると、鈴ちゃんは思い出すように笑っていた。ただ、その指先が透けて見える。もうあまり時間がないのかもしれない。徐々に透けている範囲が広がっていくみたいだった。



「あとね、ゴミ捨て場に呼び出されて顔とか見えてる場所以外を殴られたり、蹴られたりしてた。そしたらね、あっくんがゴミ箱を沢山もって現れて、『すいませんけど、どいてもらえますか?』って言ってくれたんだ。」

「いや、それは・・・僕もいじめでゴミ捨てを・・・」

「そのあと、あっくん・・・女の先輩にいちゃもん付けられたり、叩かれたり、蹴られたりしたんだけど、全然リアクションせずに黙々とゴミを捨ててた。」

 ・・・思い出した。何もしてないのに罰ゲームで学年中のゴミ箱を持って行ってゴミ捨てをしなくちゃならなくなったんだ。で、ゴミ捨て場まで行ったら女子がいて、ヒステリックにいちゃもんを付けられた気がする。そのあと、へたり込んでる鈴ちゃんがいて、一緒に教室に戻ったんだ。「もぉ!なんでゴミ捨て嫌だって言わないかなー!・・・ほら半分持ってあげる。」って言われたな。



「それで、ゴミ捨てが終わったあっくんが『で、なにか用ですか?』って言ったら、女の先輩たち気味悪がって帰っちゃったんだよ。あっくんは私がなにをされたとか聞いたり、言いふらしたりしなかった。」

「いや、あれは・・・その、当然のことをしたまでだし・・・」

「・・・何も言わずに当然のことをやっちゃうのはスゴイよ。かっこいいよ・・・。」

「いや、えっ・・・と・・・」

「それから私はあっくんのことが好きだった。だけど彼氏がいるっていうウソを黒井先輩がいる間は貫き通したかった。だから何も伝えないまま過ごしてた。春が来て進級したら、女子グループからのいじめは無くなったけど、あっくんとはクラスが別々になっちゃったし、廊下とかで会ってもあっくん、目を逸らして逃げちゃうから・・・私、嫌われてるのかと思ってた。」

「そ、それは・・・その、そうじゃなくて・・・」

「結局、そのまま3年生になっちゃって、私の初恋も終わったと思ってた。そしたら夏休みに海に行く話が出たの。それで私も誘われて、あっくんも来るって知って嬉しかった・・・そしたらあっくんから告白された。本当に本当に嬉しかった。だけど、なんて言っていいのか解らなかった。私、真面目に告白されたの今までの人生であの一回だけなんだよ?あ・・・、過去に行ってもう一度聞いてるから二回だけど。」

「・・・」

「何であの時、返事しなかったんだろう。何できちんと想いを伝えておかなかったんだろう。・・・卒業してからもずっと、ずっと後悔した。だってずっと、今でもずっとあっくんのことが好きだったから・・・。あの時に戻りたい、あの時に戻ってやり直したい。そう思ってたら双子のピエロが現れたの。」

 鈴ちゃんの身体は全体が透けてしまって、後ろのベンチがはっきりと見えてしまうほどになっていた。所々が淡く光っているようにも見える。

「私、あの双子のピエロが現れた時、これは神様がくれたチャンスなんだと思った。だから説明も聞かずにあの日に戻った。そして・・・、あっくんに告白した。その後、付き合って下さいってお願いしちゃった。本当はもう一度あの告白を聞くだけでもいいと思ってた。だけど現在に戻る前にどうしても答えたくなって、気持ちを伝えたくなって・・・私、欲張ったの。」

「そんな・・・」

「・・・現在に戻ってきた次の日にあっくんと再会しちゃうから、私、飛び上がるほど嬉しくなった。でも、あっくんはあの日、あの時、私が告白したことも、付き合ってくださいって言ったことも覚えてなかった。家に帰って双子のピエロに問いただしたら、私がしたことはやってはいけないことだと教えられたの。木っ端微塵になって消えてしまうことを知ったのもついさっき・・・。」

「・・・それって、どうにかならないのかな?もう一度過去に戻るとか。」

「ううん・・・。それは無理。」

「どうして!?」

「だって、消えてしまう現在を大きく変えてしまうのだから、結局同じことになっちゃうよ。」

「そんな・・・。」

「私があの素敵な告白を聞くだけで満足して、欲張らずに帰って来てたらこんなことにはならなかったのに。バカだよね、私。」

「・・・それなら、僕がもう一度戻って・・・」

「ダメだよ。だって私が消えちゃう現在を大きく変えてしまうことをしちゃったら、今度はあっくんが消えちゃうじゃない。私、そんなの嫌。私は自分のしたことの罰を受けるだけ。」

「でも、知らなかったんだろ!そんな理不尽なこと、何も言わずに受け入れるの!?そんなのおかしいよ!」

「やっぱり優しいね、あっくんは。最後にあっくんに会えて良かった。」

「ちょっと待ってよ!こんなのってないよ!」

「あっくん・・・好きです。大好きです。私を好きになってくれて・・・ありがとう。」

「僕だって、ずっと、ずっと鈴ちゃんのことが・・・」



 駆け寄ったけれど、鈴ちゃんは一瞬だけ強く光ってからシャボン玉が割れるように消えてしまった。駆け寄った勢いのまま、僕はベンチにぶつかってそのままベンチに倒れこんで泣いた。叫び声が消えた公園に何事もなかったかのように雪が降り出した。それはこの冬最初の雪だった。



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また逢えるまで。 - 第九話 -


ハコニワノベル

 公園のベンチに独りで座る。少し積もりだした雪を眺めていた。「未来へ行くのは片道キップ♪」、「過去へ行くのは往復キップ♪」双子のピエロが歌っていた歌を思い出していた。



「ねぇ、なつめちゃん。ちこちゃん。・・・いるかな?」

「はーい♪なつめちゃんいまーす♪」

「はいはーい♪ちこちゃんもいまーす♪」

『木っ端微塵になっちゃったネー♪』



「・・・3つ、聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「なーに?」

「なになにー?」

「過去に戻ってる最中の現在ってどこになるの?」

「時間は並列には進まないのだ♪」

「進まないのだー♪」

「・・・そっか。それから・・・過去に戻ってる最中になつめちゃんを呼んで、力を使ってもらうこと出来るかな?」

「なつめ、それ出来るー♪」

「出来るー♪」

「最後に3つ目なんだけど・・・」

「なにー?」

「なになにー?」

「・・・木っ端微塵になったら存在ごと消えちゃうんだよね?確か元々いなかったことになるって・・・。なのに僕が鈴ちゃんを覚えてるのはなんで?」

「変化の適応と、記憶の適応は同じなのだ♪」

「なのだー♪」

「え?どういうこと?」

「変化は24時間後に適応されるのだー♪」

「記憶も24時間後に適応されるのだー♪」

「つまり、僕が鈴ちゃんを覚えていられるのは、僕が現在に戻ってからまだ24時間経っていないから・・・?」

『そういうことー♪』

「・・・そっか、そういうことなんだ。・・・ねぇ、なつめちゃんにちこちゃん。また二人にお願いしてもいい?」

「なにをー?」

「なにをー?」

「僕を、あの夏の日、みんなで海にいった日。・・・みんなと別れた時に連れて行って欲しいんだ。」

「どうしてー?」

「どうしてー?」

「もちろん、鈴ちゃんが木っ端微塵にならないようにするんだよ。」

「でもでもー♪そんなことしたら木っ端微塵になっちゃうよー?」

「なっちゃうよー?」

「いいからお願い!過去に連れてって!」

「またちこかぁ・・・」

「またちこだぁー♪」

「過去に戻ったらさ、なつめちゃんにもお願いするから!ね?」

「わーい、お願いされるー♪」

「それじゃー行こー♪」

 ちこのダンスとフィニッシュポーズの「れっつごー♪」で、また世界が消えた。流石に三度目となると慣れてくる。世界は再び駅の前、腕時計は夜の10時前。遠くから駆け寄ってくる足音が聞こえる。






「笹川君!」



「笹川君・・・あのね、今日・・・ね、私、告白して、もらって・・・嬉しかった。」

「・・・うん。」

「わ、私も!・・・私も笹川君のことが好き!」

「ありがとう。・・・ねぇ、鈴ちゃん。」

「へっ?」

「僕も鈴ちゃんが好きです。僕と付き合って下さい。」

「っえ!?・・・あれ?・・・なんで?・・・えっと・・・」

「僕と付き合って下さい!お願いします!」

「ぅ・・・ぇ・・・あの・・・・・・はい。よろしくお願いします。」

「うん。ありがとう。」

「おかしいな、私もね、付き合って下さいって言おうと思ってたんだ・・・。私、1年の頃からあっくんのことが・・・ずっと・・・ずっとずっと好きだったから。」

 優しい笑顔のまま、鈴ちゃんは泣いていた。どうしていいか解らずに、とにかく抱きしめた。「知ってるよ。」と小さく呟いた。そのあと泣き止んだ鈴ちゃんを家まで送ってから、僕はゆっくりと家に帰った。
 モーター音、それからブクブクとエアポンプの音。電気を付けてから水槽に近付くと、まだ小さいツイテルは水槽内を元気よく泳ぎ回っている。その姿を見ながらあることを決心した。

「なつめちゃんいる?」

「いるよ♪」

「ちこちゃんもいまーす♪」

「えっとね、なつめちゃん。僕を明日の朝に連れて行って欲しいんだ。」

「あれれ?明日?明日でいいの?」

「いいのー?」

「うん。明日の朝に行きたい。」

「そしたら現在に帰れなくなっちゃうよー?」

「なっちゃうよー?」

「だけどさ、このまま現在に戻ったら、僕は木っ端微塵になっちゃうでしょ?なつめちゃんの力で【現在】よりも【未来】に行くと、そこが【現在】になるんだよね?」

「うん、なるよー♪」

「なるなるー♪」

「過去に戻って何かを変えて、その変化が適応されたとき【現在】の自分が耐えられないものだと、木っ端微塵になっちゃうんだよね?」

『木っ端微塵だネー♪』

「この今日という【現在】で、鈴ちゃんと僕は現在を大きく変えることをした。それは【7年後の現在】にとっては大きな変化になると思う。だけどさ、現在が7年後じゃなくて【明日】だったら?明日の僕が耐えられないほどの変化になるのかな?」

「ワタシよく解らなーい♪」

「ワタシも解らないー♪」

「・・・僕も解らないや。好きな人に好きと伝えて、その人が自分のことを好きだと言ってくれるなんて。想像以上の変化なんだろうね。だから、どうなるか解らない。だけどさ、きっと、過去は変えちゃいけないんだ。どんな些細な変化でも現在は大きく変わってしまうから。・・・なんと言うかさ、記憶を持ったまま過去や未来に連れて行くなんて、なつめちゃんに、ちこちゃんはちょっと残酷だよね。」

「だってー♪」

「だってだってー♪」

『ワタシたちはピエロなんだもんネー♪』

「そっか。」

 僕は笑っていた。おかしくて笑ったのか、気が抜けて笑ったのか、怖くなって笑うしかなかったのか解らないまま、ただ笑っていた。その笑いが収まってからゆっくりと口を開く。



「それじゃぁ、なつめちゃん、僕を明日の朝に連れて行ってよ。」

「どうなるか解らないのにー?」

「解らないのにー?」

「うん。でもさ・・・いつも未来は解らないものじゃない?」

「一寸先は闇だー♪」

「お先真っ暗だー♪」

「だから現在を大切にしていかないとね。」

「そうだぞー♪」

「そうなんだぞー♪」

「・・・それじゃぁ、なつめちゃん。よろしくお願いします。」

「ほんとにいいのー?」

「ほんとにほんとにいいのー?」

「・・・・・・うん。」

 なつめちゃんが歌いだす。「未来に行きまショ、テールテル♪」ちこは激しく踊ってる。なつめちゃんの「れっつごー♪」という声が聞こえた瞬間、世界が消えてなくなった。何も見えない、何も聞こえない、何も感じなくなる。

「なつめちゃん、ちこちゃん。ありがとう。そしてさようなら。」



≪第八話へ
最終話へ≫

また逢えるまで。 - 最終話 -


ハコニワノベル

「・・・なさい!」

「・・・きなさいっ!」

「いい加減に、起きなさーいっ!」

 驚いてベッドから転げ落ちた。開けられた窓から風が入り、レースのカーテンが揺れている。なんだか蒸し暑い。

「やっと起きたわね。夏休みだからってダラダラしてるんじゃないわよ!あんたまだ進路も決めてないでしょ?」

 スラリと伸びる足、ミニスカート。ラインを強調する服。完璧なボディラインを誇示するかのようにモデルさんが取るようなポーズで綺麗な人が怒っている。誰だ?

「友達と海に行って楽しんだ次は、きちんと現実問題に向き合いなさい!」

「え?母さん?」

「まだ寝ぼけてるの?こんなに綺麗で素敵な女性は、アツシのお母さん以外にいないでしょ!?」

「もしかして僕ってまだ高校生?」

「あんた、遊びすぎて頭おかしくなっちゃったの?」

「ちょ、ちょっと僕トイレ!」

 後ろから「こら!逃げるなー!」とか聞こえる。なんだ、7年前の母さんはあんなに綺麗だったんだ。あれが7年後には三段腹になるんだから恐ろしい。僕はどうやらあの夏の日の翌日に来れたみたいだ。そっと呼んでみたけれど双子のピエロは現れなかった。しばらくしてから遅い朝食を取るためにリビングに行くと、まだ小言を言っている母さんがいた。

「本当にどうすんのよ?進学するの?就職するの?それぐらい決めなさいよー。」

「・・・うん。一応決めてるんだ。」

「えー!そうなの?初耳よそれ。で、どうするつもり?」

「僕さ、大学に行こうかなーと思って。」

「はぁ!?あんたほんとに頭おかしくなっちゃったの?わが息子ながらお世辞にも勉強が出来るとは言えないのに。」

「ダメだったらさ、専門学校に行こうと思う。」

「・・・それじゃぁ、とりあえず進学するのね?」

「うん。」

「解った。お父さんにはお母さんから伝えておくけど、お父さん帰って来たらちゃんと自分で言いなさいよ?」

「はーい。」

 夜、父さんに進学する意思を伝えた。父さんは「お前の人生だから、お前が決めた道を進みなさい。」とだけ言って承諾してくれた。部屋に戻って水槽を覗き込んでツイテルを見る。所狭しと元気に泳いでいた。
 僕はツイテルの身体を表すように両手の人差し指を立ててくっつけて、それを頭上へ突き出しながら叫んだ。

「ツイテル、テルテル、ツインテール!」

 同時にドアが開けられ、電話の子機を持ったまま唖然とする母さんがいた。

「あんた・・・やっぱり頭がおかしくなってるんじゃ・・・海で頭を強く打ったとかない?」

「そんなことないよ。それより、それ何?」

「・・・ん?あぁ、そうそうあんたが急に勉強するとか言い出すから、母さん家庭教師の人を見付けてきてあげたんだから!そしたらその家庭教師の先生があんたに代わってほしいんだって。」

 子機を受け取り耳にあてる。「もしもし?」と声を出すとやたらと声の大きな人がテンション高く話しかけてきた。

「私、アツシ君の家庭教師をすることになった、ミッチーです。よろしくね!」

 その後も「こう見えても現役の大学生なんだ。」とか「枝毛のないキューティクルが目印だから」とかあまり意味のない話を終えて、電話を切った。

「どう?家庭教師の先生と上手くやっていけそう?」

「うん。多分この先生、スキップしながらやってくると思うよ。」

「なによそれ。ま、あんたが何か目標を持ってくれるだけでも、お母さんは嬉しいわ。だからしっかりやりなさいよー。」

「はいはい。」

 それから僕は心に決めたことをメモ用紙に書いた。そのあとでベッドに横になって天井を見上げた。長い長い一日の中で、過去や未来のことを考えすぎたり、現在をなんとなくで過ごしていちゃダメなんだと学んだ。そのまま天井を見上げていたけどすごく疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。
 翌朝、焦って目覚めた。自分の身体をなんども確認してみたけれど透けたりしていなかった。どうやら今現在の自分は変化に耐えられたみたいだ。・・・透ける?変化に耐える?あれ?なんのことだろう?そういえばおかしな夢を見た。赤色と青色のピエロがなぜかうなぎに乗って、寂しそうに手を振りながら『記憶は変化が適用されるとその現在までのものになるんだよー。』とか言われる夢。いや、寂しそうというよりは残念そうに近かったかな。まるでイタズラが失敗してしまったような、そんな顔だった。

「いい加減に、起き・・・てるわね。めずらしい。」

 母さんがドアを開けながらそう言ってきた。相変わらず綺麗なボディラインを強調しつつ、ミニスカートを履いている。なぜ家の中でミニスカートなんだ?とか思っていると持っていた電話の子機をチラチラと見せつけながら近付いてくる。

「あんたが急に勉強するとか言うから、頭でも打ったのかと思ったけど。なるほど、こういうことでしたか。」

「は?どういう意味・・・」

「菅那さんからお電話ですよー?」

「ぇ、ちょ!・・・は、早く代わっ・・・」

 なかなか子機を渡してくれない母さんにイライラした。子機を受け取ると「今度ちゃんと連れてきなさいよ。」とニヤニヤされて再度イライラした。ついでに子機は保留にすらなっていなくて愕然とした。

「も、もしもし・・・?」

「はい。おはよう、あっくん。」

 しばらく受話器の向こうでくすくす笑う声が聞こえる電話になったけれど、鈴ちゃんからの電話は、一緒に図書館で勉強しようという名目でデートのお誘いだった。電話を切ると慌てて身支度を整える。母さんが妙にニヤニヤして絡んでくるので「油断してると三段腹になるよ!」と冗談を言っておいた。目に付いた勉強道具をかばんに入れ、家の鍵をポケットに慌しく突っ込んだ。部屋を出ようとしたときに、なんとなく自分の部屋を見渡した。何の音もしない殺風景な部屋だ。「今度、熱帯魚でも飼おうかな。」水すら入っていない水槽を見ながら呟く。
 待ち合わせた駅で鈴ちゃんと合流して図書館へと向かった。二人ともなかなか話しかけれずにしばらくうつむいて歩いた。話しかけようとして目が合うと言葉がでない。「私、先行っちゃうよ?」鈴ちゃんがそう言って早足になった。追いかけようとしたときにポケットの中で違和感を感じた。鍵と一緒にメモ用紙を入れていたみたいだ。僕はそこに書かれている内容を読むとまたポケットにしまった。少しだけ前を歩く鈴ちゃんに追いついて、そっと手を繋ぐ。二人とも顔面が真っ赤になった。会話はないけど、二人とも手を離さずに歩き続ける。
 君を大切にしていこうと思う。自分も大切にしていこうと思う。今をこの瞬間を大切にしていこうと思う。手を繋いでいない左手でポケットの中のメモ用紙を少しだけ強く握った。





 君が消えないように
 僕が君を護って行こう。
 
 君と二人
 あの公園で
 七年後の初雪に
 また逢えるまで。





完。



≪第九話へ

第01回ハコニワノベルのあとがき


エッセイ

脅威(POSITISM的に)の10日連続更新をしてお送りした。第01回ハコニワノベル「また逢えるまで。」の執筆が無事終了。初の試みで感じたこととか、その他もろもろを書いていきます。


こんなに集まるとは・・・

 もちろんキーワードのことなんですが、5~6個ぐらいだろうな。なんて思ってました。それなのに、気が付いたら10個を軽く超えてしまい、6個目までで書いていた物語(三話分ぐらい)は、そこで闇に消えました(笑)
 最終的に16個のキーワードで「また逢えるまで。」を無事に完結させることができました。キーワードを書き込んでくださったみなさん、どうもありがとうございます。


 ※FC2の不具合で携帯からコメントできない状態になって、キーワードを書き込めなかったり、コメント出来なかったというのを複数名の方から教えていただきました。その情報のおかげで今はコメントできるように対処できました。ありがとうございました。それから、ご迷惑をおかけしました。



所感

 とりあえず感じたのは【楽しい】ということですね。いや、本当に面白かったです。多彩なキーワードが与えられて、それぞれを結びつけたり重ねてみたり。本当に部品を組み立てていく作業みたいで、それが楽しかったです。
 登場人物にすす*さん(鈴)、ミッチーさん(ミッチー)、なつめさん(なつめ:青いピエロ)、ちこさん(ちこ:赤いピエロ)、黒さん(黒井先輩)と多数登場して頂きました。(名前だけお借りしたり、キャラクターそのものだったりします。)これも書いてるときに楽しめた要因です。出演ありがとうごじゃーました!



裏話的なこと

 まぁ、あまり物語の中身をべらべらと決め付けるよりも、読んでいただいたみなさんの中である程度自由に妄想する余地があるのが望ましい(と思っている)ので、そこら辺は書きません。
 えっと、まず今回の物語を書き上げるのにかかった日数は三日ぐらいです。正確に言うと第一話をアップした時に、頭の中で第八話ぐらいまでの構想は終わってました。
 ざっとあらすじみたいなのが書き終わって、第一話が書きあがるとすぐに記事にしたのですが、その瞬間まで物語のタイトルを付けてなくて、アップしたい!の欲求に負けてあまり考えもせず「また逢えるまで。」と付けたのですが、そのせいでラストは悩みました。今回の物語の中で一番悩みました。(いや、ほんとに)まぁ、なんとかなったのでよしとしてます。(えー)
 悩んだと言えばもちろん【キーワード】です。厳しいなと思ったのは「ケアルダ」と「みっこ米」の2つ。物語が近未来的だったり、ちょっと科学的な話とかであれば「ケアルダ」を何か架空のものの名称に出来たんですが、構想として出来上がっていた世界観ではそれが出来なかったので苦労しました。それから「みっこ米」、これは【みく子】の中で出てくるお米なんですけど、これも出すタイミングに悩みました。
 その他で言うと「夏」が出ているのに「雪」とか、「コンピュータ総合商社HAL」なんて私が卒業した学校の名前ほぼそのままでしたしね。その他のキーワードはなるべくキーワードを書いた人が思っていないような使い方をしよう。と意識して使ってます。(まぁ、上手く使えてなかったりもしますが)


 【キーワード】が6個の段階で書いていた(要するにボツになった)物語では、悪質派遣会社に登録してしまった主人公が、コンピュータ関連の仕事に派遣されると聞いていたのに連れて行かれたのは「うなぎの養殖場」だった。という設定でした(笑)



個人的な感想

 展開がありがちになったかなぁ。と感じてます。真面目に個人で書いた物語を公開するのは初の試みなので、ありがちだろうとなんだろうと完結させたことに意味があると思っていますが・・・。ラストがボヤけちゃったなぁと。時間軸を行き来するのは、もっと上手く書けるようになってからしないとダメな気がしてます。なんでも出来てしまえる分、きちんと書くのはほんと難しい。
 自分自身で生み出したものなので、見えていない部分やあえて目を逸らしている部分もあるかと思います。なので、よければ思ったままに感想を頂けるとうれしいです。(この記事のコメントでも感想フォームからでも。)
 ※感想フォームで頂いた感想は表紙の帯に使わせていただく場合があります。



こっそり宣言と告知

 このハコニワノベルは定期的にやっていこうと考えています。第02回のキーワード募集は2月上旬に行うつもりですので、またみなさんの力をお貸しください。



キーワードを書いていただいたみなさん。
コメントで感想を書いていただいたみなさんのおかげで
完結させることができました。ありがとーごじゃーました!

たまにはアレを叫びたい


エッセイ

ここしばらく【ハコニワノベル】関連ばかりだったので、そろそろ気の抜いたことをダラダラ書きます。(と、言いながら「ぽこ温泉」にて紹介して頂きましたっ!ぽこさんありがとー!)

 更新頻度を落としたはずなのに、最近は連日更新してるという自己矛盾真っ只中ではありますが、新年になっても相変わらず仕事中にブログしてます。



娘ズがヤヴァイ。

 なにがって可愛過ぎることなんですけど、忙しかった年末に比べて現在ほぼ定時で仕事を上がっている(来月からまた忙しくなりますが・・・)ので、娘ズとの時間も日々それなりにあるんです。そうすると育児ネタはいくつもありまして・・・というかあり過ぎるので箇条書きしていきます。



・あーさんがとてもお姉さんになってきた。
・ちぃさんがとてもわがままになってきた。
・あーさんがそこそこトイレに行ける。
・それを見よう見まねのちぃさんもオマルでヤれる。
メルちゃんのお世話が生々しくなった。
・あーさんがほぼ正確に今日あったことを言えるようになった。
・ちぃさんが3語以上で話せるようになった。
・あーさんは相変わらず絵が上手い。上達してきている。
・ちぃさんの絵は芸術家のようにダイナミックで先が楽しみ。
・あーさんは一度聞いただけのCMソングが歌える。
・ちぃさんはスプーンのことを何度教えてもプスーンという。



 ほんとあり過ぎてお伝えするのが大変です。ちぃさんが今週土曜で2歳になっちゃいますし、時が経つのは早いもんです。



気付いてました?

 いや、これはほんと些細な話なんですけども、「POSITISM」の下にある「しのめん」をクリックするとしゃべるやつ。(通称長いな)これをちょっとだけリニューアルしてました。(ほんと些細)
 その他にもリニューアルというかカスタマイズしたいなぁと思っていたのですが、下手にごちゃごちゃさせてしまうので現在は休止中です。(「POSITISM」を閲覧するときに、なにかしら不都合、不具合がある場合はコメントでもメールでもなんでも良いので連絡くださいませ。)



あぁ、忘れるとこだった。

 ほら、ずっと物語を書いてきてて、なんというか「POSITISM」らしさが薄れてきてると思うんですよ。だから、そろそろ叫んでおかないとね。せーの!



ラァゥヴゥリィァィィィィーーー!

↑新年一発目だ(笑)

テーマ:ひとりごと
ジャンル:ライフ

罫線で遊んでみた


エッセイ

 "けいせん"で変換することが出来る罫線で遊んでみようと思いついた。これは画期的なひらめきだと思う。(そうだろうか?)

 仕事に煮詰まり、別件の作業も溢れているのでリフレッシュを兼ねて遊んでみようと思う。



あみだくじを作ってみた。

 まぁ、やってみたらいい。



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 当たった?(別に当たってもなにもありません)



迷路を作ってみた。

 まぁ、やってみたらいい。(偉そうだな)



スタート
  ↓
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└──┴┴─┴──- →ゴール

出来た?(別に出来てもなにもありません)



文字を表現してみる。

 もう飽きてきた(早っ!)



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 【POSITISM】っぽく見えていればいいな。(厳しいな)



 ここまで作るのに意外と時間がかかったんだぜ。いやー楽しかった。もちろん忘れてないんだけどさ…



仕事煮詰まったままだぜ…

テーマ:日々のできごと
ジャンル:ライフ

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